がっこうぐらし!RTA『オヤシロモード』覚醒素材生存ルート   作:シグアルト

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8.かんぎょ

 

 

 

 

 

 

 ─────悠里は妹と奇跡ともいえる再会を果たした。

 

 

 悠里の妹である若狭瑠璃の生存は、薄氷を渡るかのようなものだった。

 

 学校の授業中、突如学校に侵入した『かれら』。不審者として対処にあたった警備員や事務員、教員へと瞬く間に感染し、まともに抗う力も持たない児童達へ襲い掛かった。

 

 たまたま若狭瑠璃の周囲には精神的に成長した友人が多く、彼女たちの助けを借りて瑠璃は『かれら』の手から逃れていた。

 

 

 だが、それはほんの数日の僅かな抵抗となった。

 

 運の巡りあわせが悪かったのか、些細な歯車のかみ合わせが上手くいかなかったのか……瑠璃の友人達は全て還らぬ事となり、瑠璃は一人空腹に耐えつつ戸棚の奥へ隠れるしかなかった。

 

 

 

 

 そんな経緯をたどたどしい言葉で話す瑠璃を、悠里は彼女を抱きしめながらただ頷いて聞いていた。

 

 二人は葛城 紡(覚醒素材先輩)の眠る用務員室に戻り、彼が目覚めるまでの間、離れていた時間を埋める様にひたすら会話を続けていた。

 

 瑠璃が説明に疲れたら悠里が高校にいる仲間たちの近況を話し、瑠璃が喋る元気が出てくると自分を守ってくれたかつての友人達の話をまたはじめる。二人の会話は何回昼夜を繰り返しても止まる事がないのではないかと思わせるほどに、ゆっくりとひたすらに言葉が紡がれていっていた。

 

 

 

 

 だが、そんな二人の会話も聞きなれた……今はもう聞きなれない音が遠くからやって来た事により終わる。

 

 

「……!」

 

「─────それでね、りーねえ。その時まりーったらね……りーねえ?」

 

「ごめんね、るーちゃん。静かにね」

 

「う、うん」

 

 

 

 断続的に聞こえる静かながらも重く低く響く駆動音。土が何かに踏みしめられる音。だがそれは足音ではなく、何かが滑っていくような音。

 

 

 

 

 

 

 

 

「この音は……車?」

 

 

 そう、聞こえていた音は自動車の走行音だった。

 

 悠里が瑠璃を胸に抱き抱えたまま、大きな格子で塞がれた窓から校庭を見ると一台の自動車が校舎に近づいてくるのが見えた。

 

 昨今の環境に配慮した型なのか、ガソリン車ではあるがエンジン音は控えめで『かれら』を必要以上に引き寄せる事はない。視界に車を捉える事が出来た数人の『かれら』だけが、その車へと近寄っていく。

 

 

 そして、車から人型の影が二つ…………運転席と助手席から現れたかと思うと、『かれら』に向け助手席の影が何かを振り下ろした。月の光に反射し三角の形をした鉄のような鋭さからシャベルだと悠里は判断した。

 

 

 

(─────神様!?)

 

 

 その人影が持つ獲物から、悠里は即座にある人物に結び付ける。

 

 突如襲われた絶望を全て吹き飛ばしてしまうような、太陽の様な眩しさと愛おしさを持った幼女。彼女がいれば何だってうまくいく、そう思わずにはいられない希望の象徴。

 

 どうやって幼い瑠璃と、未だ目覚めない葛城を連れて戻ろうか思案していた悠里は、思わず破顔してしまう。だが、その胸中を瑠璃も理解できたのか彼女の胸元を掴む力が緩んでいった。

 

 

 

「るーちゃん。私達の仲間が助けに来てくれたわ。先輩を起こしてもらえるかしら?」

 

「う、うん。わかった」

 

 

 悠里はすぐにでも飛び出して車の持ち主たちと合流したい気持ちを抑える。自分が声を出し『かれら』を引き寄せてしまっては目も当てられない。

 

 ゆっくりと、だが着実に正面玄関へと進み、影の主たちと合流を果たした。

 

 

 

「神……様……?」

 

「! その声、若狭か?」

「まじか! やったな、たかえ!」

「声を抑えろよ。まだ校舎内にいるかもしれないんだぞ」

「あ……わ、悪い」

 

「その声……、くるみと柚村さん?」

「そっちもりーさんで間違いないな。先輩は?」

「この先の用務員室よ。私のせいで無理させちゃったから、休んでもらってる。るーちゃんが見ててくれてるわ」

「そっか……って事は!」

「えぇ、私の家族よ。何とか助ける事が出来たの」

「やったな、若狭! 外にめぐねえから借りた車が止めてある。早く準備して行こうぜ」

 

 

 

 声を潜めながらも情報交換を行う。

 

 私が無事るーちゃんを保護できた事を知り、我が事の様に喜ぶくるみとたかえ。

 

 すぐに二人を連れ用務員室へ戻ると、葛城の眠る布団の上に馬乗りになり、彼の頬や鼻を必死に引っ張り目覚めさせようとしている瑠璃と合流した。

 

 結局、葛城は目覚める事がなかったのでくるみと悠里が協力して運び、たかえが僅かに現れる『かれら』を一手に引き受けていた。

 

 そして、一同は無事に校庭に止めた車に乗り込み帰路に就く。

 

 

 彼女達を心配する仲間と、自分達を守護してくれる神の下へ

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

「ところで、神様は一緒に来なかったの?」

 

 

 

 ふと、帰りの車内で疑問に思った事を聞いてみた。

 

 結果的に問題なかったとはいえ学校外は危険だ。二人が助けに来るくらいならば神様が直接来た方が確実で安全に思える。

 

 

 

「あぁ、あーさんは学校を守る為に残って貰ってる。ゆきやめぐねえを連れて来る訳にもいかないしな」

 

「あと神様が言ってたぞ。まだ権能は私達の学校内でしか効果がないって」

 

「たかえ。“権能”ってなんだ?」

 

「権利を主張・行使し得る能力……まぁ、あの神様の力はまだ校内限定って事だよ」

 

「なるほどな。なら留守番でも仕方ないよな」

 

「そういう事だ」

 

「…………そう」

 

 

 

 その言葉に納得しようとする。が、何か腑に落ちない。

 

 根拠はない、理由はない、そもそも私の勝手な行動が原因なのだから異を唱える資格すらない。

 

 でも何か、私達は見落としてしまっているのではないかという不安が心の隅に残っている。

 

 

 

(そういえば……)

 

 

 悠里は屋上で《かれら》を倒し戻ってきた際の、神様の姿を思い浮かべる。

 

 その時一瞬だけ見えた彼女の指の先…………、マニキュアか何かだろうと結論付けていたが言い知れぬ不安感が襲ってくる。次に神様の指を見た時は綺麗な白い手だったので聞くタイミングを逃した事も、それを引き立てる要因となっていた。

 

 しかし、その思考は運転席にいるくるみの言葉で中断される。

 

 

「しかし先輩、大丈夫なのか?」

 

「……ぁ。噛まれた場所はないわ、そこは安心して」

 

 

 くるみの言葉に即座に返す。

 

 今回の事態は明らかに自分が原因である。ならば、そこから起因する不安や懸念は自身が晴らさねばならない。そう考えた悠里は、先程までの考えを漠然としたものとして、それ以上思考を続けることを止めた。

 

 

「本当なのか? それならいいんだけど」

 

「えぇ。車に運ぶ前にるーちゃんと私で体の隅々まで確認したから、傷一つないのは確実よ」

 

「ひぇー、やるじゃん若狭。先輩の()()()()までだってよ、くるみ」

 

「な、何─────!?」

 

 

 

「ちょ、前! 前見てくるみ!!!」

 

「ぶつかる、ぶつかるって!? 落ち着けくるみ! 冗談、冗談だって!!」

 

「せ、せせ先輩の……かっ、体の……すすすすみ、すみず……!」

 

 

「こ、言葉のあやよ! それ以上何もありません!! 柚村さんもからかわないで!」

 

「……悪ぃ。マジで反省した。命の危機に直結するとは思わなかったわ」

 

 

 

 喧々諤々とした車内は、外の静寂を吹き飛ばすように努めて明るく帰路への道を進む。

 

 ちなみに、もう一人の救出者。若狭瑠璃は、そんなやかましい車内でも関係ないとばかりに眠り続けていた。

 

 

 

 

 

 ──────────────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 あい──ん(ザシュ)

 

 

 

 つヴぁ────い(ドシュッ)

 

 

 

 

 

 どら────ーい(ズバッシュ) L E V E L  U P ! 

 

 

 

 

 

 神様の学校開放RTAは──じま──ーるよ────!! (ガシュッ)

 

 はい、現在2日目夜が終わり3日目の早朝となっています。

 神様やる気ダウンによるニート化は深夜を過ぎた辺りで終わり、無事神気を纏いなおした状態となっています。深夜~朝方に更新はいるとかスマホゲーかな? 

 

 そして現在、りーさんが覚醒素材先輩を連れて家出したことによりチョーカーさんとゴリみが迎えに言っている状態です。(ザクッ)

 神様はそんな外出組を迎える準備をしているという訳ですね。

 

 

 

「神様、正面玄関は隠れる場所はもうなさそうです」

 

「あーちゃん。2階の階段近くもバリケードができたよ──!」

 

 

 うむうむ、素晴らしきはRTAよ! 現在神様部隊は()()()()の安全化を図っています。

 

 本来であれば、学校の開放は少しづつ段階をかけて安全地帯を広げるつもりでした。あまり急ぎすぎると、皆に油断が生まれ不意打ちにやられたりSAN値の下降が早すぎて不和が生まれたりするからなんですね。

 ですが今回は『緊急事態』の名のもとに、平常時以上の働きを許容してくれます。

 神様が一気に学校内を走り回り《かれら》を倒し続けても、「危険です」と止める言葉(めぐねえガード)もないんですね。だって開放しておかないと外出組が戻ってくる時、危険じゃないですか! (言い訳)

 

 

 めぼしい《かれら》だけ倒してしまえば、神様にはスキル《神域》があるので校内への侵入口全てを《神域化》。こうすれば外部からの攻撃はシャットアウトできます。天才かな? 

 こうなってしまえば、後は神域化してない区画への侵入時だけ注意すれば大丈夫です。その危険区画も今後どんどん狭めていける事でしょう。

 

 そんな訳で神様は校舎内を走り回り、要所要所で《神域化》を図っているところなんですね。おかげで経験値がウマー

 めぐねえとゆきちゃんには、神域化してる場所としてない場所の境界に簡易バリケードを作って見やすいようにして貰いました。皆が生活できる安全地帯は中央3分の1くらいの区画ですが、校内はほぼ安全といって差し支えないでしょう。

 

 では、後は車で出ている外出組が帰ってきやすいようにグラウンドのお掃除を適当にしておきましょうか。ざっしゅざっしゅとな

 

 

 

 ……………………

 ………………………………

 

 

 L E V E L  U P ! 

 

 

 

 お、太陽が昇り始めて間もなく車の音が聞こえてきましたね。

 グラウンドの《かれら》を一旦潰し終えたタイミングので丁度よいですね。《神域》は建物内限定なので外から来る《かれら》を防げないのだけ難点です。

 

 

 

「うむうむ。よくぞ戻った、妾は嬉しいぞ」

 

「よー、神様。無事に連れて帰って来たよ」

 

「あ、りーさん。先輩は私が……ただいま、神様」

 

 

「あ、ぁの……はじめまして、かみさま」

 

 

 フレンドリーなチョーカーさん。家族の出迎えを受けるかのような笑みをうかべるくるみ。るーちゃんは、私の事を皆から聞いたのかおっかなびっくりで挨拶してきますね、かわいい。

 

 そして最後に車から出てきたりーさんが、ばつの悪そうにこちらに頭を下げてきます。

 

 

 

「神様……その、すみませんでした。ご迷惑をお掛けしたみたいで、その─────!!?」

 

 

 ……ん? 

 頭を上げた途端、固まったよこの人。何か発作でも起こしたんでしょうか(タイヘンシツレイ)

 

 もうちょっと突っ込みたい気持ちはありますが、グラウンド内は《神域化》はされていない場所。今は《かれら》を全滅させてますが、またやってくるのは時間の問題です。さっさと校内へ入るように促しましょう。

 

 ほら、りーさんもはよ来るんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「神様……。何で、手全体が真っ黒に黒ずんでいるんですか……?」

 

 

 

 

 ん? 何か言った? 

 

 

 




 

還御(かんぎょ)→貴人が出先から帰ってくること
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