がっこうぐらし!RTA『オヤシロモード』覚醒素材生存ルート   作:シグアルト

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9.かいげん

 

 

「“学園生活部”じゃと?」

 

「はい。“学校の中の環境を利用した合宿生活を通じて自主独立の精神を育むこと”を目的とした部活動、それが学園生活部です。部長は私、顧問はめぐねえにお任せしたいと思ってます」

 

「若狭さん、こういう時位は『佐倉先生』って呼んでくれないかしら?」

 

「いいえ、学園生活部では自主性と共に協調性も育みたいと思います。大仰な呼び名は壁を作る事にも繋がってしまいますので」

 

 

 

「……で、本音は?」

 

「もう“めぐねえ”で定着しているのでいいかなと思って……ちょ、ちょっと柚村さん!」

 

「おいおい、大仰な呼び名は禁止なんだろ? ()()()()

 

「も、もう……わかったわよ。貴依さん」

 

 

「しょぼーん……先生の立場って」

 

「せんせー、いーこいーこ」

 

「る、瑠璃ちゃ~~ん」

 

「うっわ、めぐねえがとうとう幼女に癒しを求め始めたぞ」

 

「しょうがないよくるみちゃん。るーちゃんは可愛いから、めぐねえが夢中になるのも仕方ないよね」

 

「恵飛須沢さん、丈槍さん! 誤解を招くような言い回しをしないでください!」

 

 

 

 

 

 過剰介護によるパニックホラー(笑)のRTAは──じま──ーるよ────! 

 

 はい。

 という訳で無事るーちゃんと覚醒素材先輩を連れ帰って来た一行は、朝食に集まった席でりーさんとめぐねえの発表を聞く事になりました。そう、待望の【学園生活部発足イベント】です。

 このイベントは「メンバーの誰かがゆきちゃん化」などの起因するイベントがおこらない場合、一定確率で発生するイベントになります。本当に確率なので、14日目に発生してその日の午後に学校脱出の即落ち2コマになる喜劇の可能性もあったので、早々に発生したのは嬉しい限りです。

 初日から校舎内で寝泊まりし、惨劇らしい惨劇を経験していない一行だったのでこんなほのぼの空間で大丈夫なのか心配してたので、ようやく来たか! (ガタッ)という気分ですね。

 

 

()()()にしてようやくのがっこうぐらし! の開始です。えぇ、そう。本日は【4日目】です。

 2日目深夜にるーちゃん救出に向かった一行は3日目朝方に帰宅。そのまま全員でスヤァ……となって4日目に突入した訳ですね。一日潰れてしまいましたが進捗具合を見ればロスでも何でもありません。

 

 アウトブレイク初日で既に3階居住スペース確保。

 2日目夜から朝にかけて各階の階段付近と1階侵入口を全て占拠済みです。コレナンテムリゲ(《かれら》談)

 

 3階の安全区域も広げておいたので、普通に生活する分には危険はもうありません。なお地下室はまだフラグが立ってなかったので放置、ショーガナイネ。

 というわけであーちゃんこと神様は存分に─────

 

 

 

 

 

 

「明日から本気出す」

 

 

 オフモードでgdgdタイムでも問題ない状態です。さすがに徹夜作業は、丸一日休んでも治らなかったようです。

 因みに覚醒素材先輩は、戻って来た瞬間に拘束されました。あまりにも放浪癖が過ぎるという事で、紐を首に引っ掛け反対側を柱にぐるぐる巻きに固定し部屋から出れない様、処置がされました。

 プレイヤーが勝手な行動をするとお腹にロープを巻いて、いわゆる“お散歩状態”になるのは他の方の実況でもよく見ましたが、それとは比べ物にならない厳重具合です。

 もはや危険人物扱いですね。取扱い注意(実体験)

 

 まぁこれも一種のコラテラルダメージです。

 ここまでの処置をして、ようやく我等がくるみ(ゴリラ)は納得して部屋から離れてくれました。やべぇよ、アイツ絶対ヤンデレの素質あるわ。

 翌日、首の紐がキュッ(優しい表現)ってなってないかなと心配していましたが、アウトブレイク4日目も覚醒素材先輩は元気でーす! (昏睡)

 

 

 

 

「ねー、りーさん。私達は部員でいいけどあーちゃんは?」

 

「りーねー、あーちゃんはー?」

 

「フフ、大丈夫よ。ゆきちゃんもるーちゃんも安心して」

 

「神様には私達の部活の“客員部員”となって頂きたいと思っています」

 

「“客員部員”? りーさん、なんだそれ」

 

「大学には『客員研究員』という非常勤の研究員を指す言葉があります。それの部員版という事ですよ、恵飛須沢さん」

 

「おー、すげー。めぐねえが教師っぽい」

 

「柚村さん、『っぽい』は余計です!」

 

「まぁいーんじゃないか? 神様がお客なのは間違いないんだし。先輩の事含めてお世話になりっぱなしだけどさ」

 

「るーちゃん、かみさまおもてなしするー」

 

 

 

 客員部員ですか、この響きは初めて聞きますね。

 生徒でも教師でも、外部の人間でも狂戦士でも、異世界から来た掃除人でも傭兵でもない神様はオヤシロモード専用の新しい役職を手に入れたようです。地味ながらこういう微細な変化は大切です。謹んで拝命しましょう。

 

 

 そして朝食後。りーさん主導による学園生活部初日の分担が決まりました。

 

 

 ゆきちゃん・チョーカーさんペア→食料調達

 

 くるみ・めぐねえペア→使える物資の捜索

 

 りーさん・るーちゃんペア→生活スペースの清掃

 

 

 

 初日なので色々やる事が多そうです。大変だなぁ(他人事)

 因みに神様の分担が決まってないのはりーさんの意向のようです。自由に動いてくださいって事ですね、コレデヨイ。

 プレイヤーが部長になれなかった場合、分担が決められて行動が制限される場合があるのでこれはラッキーと言えるでしょう。まぁオフモードの状態では『自由=何もしない』の公式が当てはめられてしまいますが。

 また《神域》のおかげでバリケードは突破どころか触れる事すら難しいので、修繕などの時間が必要ない分時間がだだ余ってしまいます。通常モードでは、ここは生命線なので当たり前ではありますが。

 

 

 そして各々が仕事へ向かう中、神様はソファーで横になりその様子を見つめているのでした。

 まぁ覚醒素材先輩がまた出歩かない様、彼が寝てる部屋のソファーでゴロゴロして皆の作業を邪魔しない様にしましょうねー

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

「あ、あーちゃんだ。ただいまー!」

 

「うむ、よくぞ戻った。こちらに来るがよい、頭を撫でてやろう」

 

「えへへへ。りーさんも、ただいま!」

 

「おかえりなさい、ゆきちゃん。これで全員揃ったわね」

 

 

 ごろごろしていたら、無事夜になりました。(ダメ人間感)

 イベントも特にありませんでしたし、スキップで一瞬ですね。きょうは なにもない すばらしい いちにちだった。

 そんなソファーにいるぐだぐだ神様をよそに、テーブルを囲む一行は今日の成果を話し合っています。

 

 

「ひとまず購買で食料品を中心に取って来たよ。《あいつ等》もいなかったし楽なもんさ」

 

「うんうん。クレヨンや画用紙なんかも持ってきたから、学園生活部の部室っぽくここも『れくりえーしょん』できるよ!」

 

「『デコレーション』な」

 

 

 ゆきちゃん・チョーカーさんは楽しそうに報告をしています。問題はなかったようです。

 

 

「私とめぐねえは3階の教室や資料室、倉庫を中心に探してみたんだ」

 

「はい。簡易テントや携帯食料、ランタン等の非常用品が見つかりました」

 

「教室から筆記用具やノートも持ってきた。スマホもいくつか見つけたけど、今は充電して電源を切ってある。電波は全部圏外だしロック解除も出来ないからほぼ充電ライト代わりだな」

 

 

 くるみとめぐねえは順当な成果ですね。他人のスマホ集めても活用できないのはまず味ですね。

 

 

「るーはね、りーねーとおそうじがんばったよ!」

 

「えぇ、もう見て貰ったと思うけれど3階の生活スペース内の清掃はもう終わったわ。これで落ち着けるわね」

 

 最後のりーさん姉妹も成果を報告してますが、問題もなく順調に進んでいますね。【がっこうぐらし! オヤシロモード】はただのサバゲーだった? 

 食料も潤沢に揃い、電気ガス水道も自家発電可能な学校。全員SAN値が全く減っておらず和気あいあいとした空間。パニックホラー的要素が皆無ですね。

 トラブルの原因になりがちな「あめのひ」イベントも、《神域》に守られている校内であれば何も問題はありません。

 

 ただこのままズルズルと流されてはいけません。

 安全な拠点に加え、インフラも食料も万端。14日以上外出しない事で手に入る称号『校内警備員』を狙うならこのままでよいですが、撮れ高さんの霊圧が……消えた? になってしまいます。

 学園生活部員たちにはこのままニート入りせず、何かアクティブに生きて貰いたい所です。撮れ高的に

 

 

 

「しかし食料品は大体似たようなものばかりだな。ステーキとか喰いたくなるよなー。そういうのはなかったのか、たかえ?」

 

「くるみ、校内の購買にあまり期待しなさんなって。外は電気も止まってるだろうし、生の肉や野菜はもうすぐ全滅だろうね」

 

「まじかよ……着る物も制服と体操着くらいしかないしキツいよなー」

 

「恵飛須沢さんの言う事もわかりますが、制服や体操着は服飾室に行けばまだ代えはあるので暫くは大丈夫だと思います」

 

 

 

「…………先生、外に調達にいきませんか?」

 

 

 おぉっ。まじか、でもりーさんナイス提案! 

 校内の安全を確保出来た場合、次の段階として通常プレイでは状況により『このまま現状維持』か『外に目を向ける』か変わってきます。部員のSAN値が低い場合、やる気不足でひきこもるパティーンが多いのですが、例えSAN値が確保されてても「外に出なくても生活できるからよくない?」的な考えで現状維持になる流れもあります。

 神様が速攻で校内環境を整理したのも学園生活部が『現状維持』を選んだ場合、本RTAの目標である【そつぎょう】イベントを故意に起こす為、奔走する必要があったためです。

 

 具体的に言うと、14日目の襲撃時《神域》のせいで《かれら》は校内に入ってこれないので、ヘリを貯水槽に落とす事で火災を発生させ、学校のインフラを崩壊させた後に「実はあそこにさぁ、ランダル社の跡地があるんだどさぁ、行かない?」と言って送り出す綿密な(その場しのぎな)計画を行う必要がありました。

 

 そんな思案の最中、学園生活部内で一番の現状維持派だと思われたりーさんがまさかのアクティブ発言です。

 これには皆も驚いたのか、りーさんに皆が注目しています。よくわからないまま、一緒にりーさんを見てるるーちゃんは除きますが。

 

 

「な、何。どうしたの、皆?」

 

「い、いや。アンタがそういう事を言うのはちょっと意外だったからさ」

 

「だなー。私は『生活には問題ないし保存食も色々あるわ。工夫すれば何とかなるんじゃないかしら』とか言うかと思ってた」

 

「うっわ、くるみがそういう言葉遣いするのすごい違和感」

 

「い、いいだろ! 私の事は別に。今はりーさんの事で……」

 

「そうです、危険です! 瑠璃ちゃんの事は仕方がなかったとしても、今すぐに外に出る必要なんてありません!」

 

 

 りーさんは非常に珍しく、RTAに非常に協力的な積極性を見せています。

 他の方の実況でもおわかりの通り、りーさんが積極的になる時は大体SAN値が風前の灯火なので走者の妨害がほとんど、逆に不安になります。(スゴイシツレイ)

 当然の如く発動した『めぐねえガード』ですが、りーさんはキリッとした顔でめぐねえを見据えます。やだ、格好いい……

 

 

「ですが先生。今の時期なら痛む前の食材を集める事も可能ですし、神様のおかげで余裕のある今だからこそ動くべきです」

 

「若狭さん……」

 

「それに昨日お借りした車なら運搬や移動も安全ですし、今後も見据えるのであれば冬季の備えも必要になります」

 

「そ、それは……そうですけど」

 

「この拠点は神様の力で安全が保障されてます。だからこそより盤石な備えにしたいんです」

 

 

 

 おぉ、さすが部長。感情ではなく損得にかけて説得してますね。

 大人として、そして教師として危険な事を避けて欲しいめぐねえですが、感情論ではどうにもならないんだよナァ。

 そんなめぐねえに、くる(ゴリ)み達からの援護射撃も入ります。

 

 

「いいんじゃないか? もしかしたら生存者がまだいるかもしれないぜ」

 

「リバーシティトロンだったら洋服もお菓子も食べ物も沢山残ってる筈だよね、学園生活部発足記念に『えんそく』にいこうよ♪」

 

「おっ、悪くないな。ゆきもたまにはいい事言うじゃん」

 

「“たまに”は余計だよっ!」

 

「るーちゃんも、るーちゃんもおかしほしー!」

 

 

「皆さん……」

 

「諦めなよ、先生。こんな状況だ。『危険のないように』なんて求めてたら私達、一歩も動けなくなるぜ。何でもかんでも神様任せにする訳にもいかないだろ?」

 

「柚村さん……」

 

「じゃあ決まりだ。早速明日いこうぜ。神様は留守番でいいんだよな? 先輩を任せたいんだ」

 

「うむ」

 

 

 

 ソファーでトドのようになって答える神様ですが、明日にはオフモードが解除されている筈です。

 前回の『がっこうぐらし無双』のおかげで、スキルポイントは十分に溜まっています。明日、見送りの前に新たなスキルを取得すれば大丈夫そうですね。

 という訳で、明日は『えんそく』パートに入る予定です。

 

 待て、しかして期待せよ! (何か格好いい引き)

 

 

 

 ──────────────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 ─────「……ふぅ」

 

 

 

 生徒の心配をするめぐねえを説き伏せ、翌日『えんそく』(ゆき命名)に向かう事を決めた一行。場所はリバーシティトロン、車で行けばそれ程距離がなく学園生活部の面々にとって慣れ親しんだ場所で、物資がまだ数多く残されているだろうという事で決まった場所だった。

 その夜、若狭悠里は寝袋で横になりながら、不安を籠めた息を吐いた。

 

 

(物資の運搬や、現地で救助者を見つけられるかもしれない事を考えると行けるのは3人程度)

 

 

 学園生活部の部長として、そして今回のえんそくの発案者として自分が行かない選択肢はない。

 元来責任感の強い悠里は、未知の不安や恐怖を必死に抑え込みながら、そう決意していた。

 

 そう決心させたのは3日目の早朝。

 若狭瑠璃を救出し、学校に戻って来た一行を迎えた“神”を名乗る少女。その黒ずんだ手を見て感じた不安感からだった。

 

 少女の手は次に見た時には、最初と同じ染み一つない綺麗な手をしていたし、アウトブレイク初日に屋上で彼女の指先の黒ずみを見た時も同じだった。

 だが彼女には、それが見間違いや気のせいだとはどうしても思う事は出来なかった。

 

 

 この学校は神様により、ほぼ確実な安全が保障されている。

 本来であればめぐねえの言う通り、多大なリスクを払って学校を離れる理由などない。だが、このまま神様任せで全てなあなあで過ごしていては、何か致命的な間違いが起きてしまうのではと言う漠然とした不安が彼女の胸中にはこみ上げてきていた。

 

 

 

《「何でもかんでも神様任せにする訳にもいかないだろ?」》

 

 

 柚村貴依がめぐねえの説得のために放った一言。

 だが彼女も多くの窮地にあい、自分と同じ考えに至ったからこそ自然と出た言葉なのだろうと悠里は推測する。

 

 

 人の歴史には神仏の存在に依存し、間違いを起こした事例は数多くある。

 決して自分たちはそうなってはならない、そうさせてはならないのだと、夜のまどろみの中悠里は一人決意するのだった。

 

 





開元(かいげん)→基礎や、国を築く事


執筆スキルが落ちてないか不安で、筆がちょいちょい止まりました。
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