【安価?】掲示板の集合知で来世をエンジョイする【何それ美味しいの?】 作:ちみっコぐらし335号@断捨離中
アンケートでも感想でも掲示板形式以外の話の需要ありすぎィ!?
前書きと後書き書くの間に合わんかったぞワレェ!!
……あ、推理力/Zeroな奴が書いたので雰囲気で読んでね!
その日の昼前、『いつもより美味い物を食べに行こう』と提案してきたのは毛利小五郎だった。
小学校から出されていた宿題を早々に終え、シャーロック・ホームズシリーズの『まだらの紐』を読んでいた江戸川コナンは首を傾げた。
はて、昨日入っていたのはペット探しの依頼ぐらいで、決して儲かるような仕事ではなかったはずだが。
しかし、コナンがどうしたのかと訊いても、小五郎は臨時収入があったとしか答えない。
娘の蘭から疑惑の目を向けられても、小五郎はニヤニヤと薄笑いを浮かべていた。
もし昨日の依頼報酬が上乗せされただけなら隠すまい。
となれば件の臨時収入の入手先は仕事以外。昨晩の帰宅時間はいつもと変わらず。依頼内容と照らし合わせた小五郎の行動範囲は――――と、丹念に選択肢を絞っていけば自ずと答えは見えてくる。
競馬か。
コナンは小五郎をジト目で見つめた。仕事帰りに何してるんだこのおっちゃんは。
呆れると同時、その払戻金を居候を含めた家族に還元するのだからまだマシか、と思い直す。
美味しい思いもできるわけだし。
『いつもより美味いもの』ということで、デパートにテナント出店されていた少しお高めの
お洒落な内装のレストランは一見空いているように見えた。しかし、いくつかの席は予約で埋まっており、コナンらの直後に入店した老夫婦が席に着くと店内は満席となった。
今は店の外に客が列を形成し始めている。どうやらタイミングが良かったらしい。
程なくして、テーブルの上に三人分のお冷やが置かれる。
何を食べようかな、とメニューを広げる蘭の後ろを、一人の男が通り過ぎた。
「
「悪い悪い、ちと大きい方が詰まっててな」
「ちょっと! 食事の場でそーゆーこと言うのやめなさいよ!」
騒がしいな、とコナンが振り向くと、テーブル席には男女五人グループ。友人らしい気安い会話が店内に反響している。
「なんだァ? あいつらは」
小五郎が胡乱な目を向けた。これにはコナンも同意だった。せっかくの落ち着いた雰囲気が台無しである。店内に流れるジャズが半ばかき消されて、虚しく空転していた。
しかし、店側には罪はない。何を食べるのかも決まり、注文しようとしたその時だった。
「ぅ――――う゛う゛う゛う゛…………!」
男の呻き声と何かが倒れる音をコナンの耳は捉えた。
「――――キャァァアアアア!?」
「お、おいトシ!? どうしたんだよ!?」
間髪入れず悲鳴が上がる。件のグループの席で、一人の男性が椅子ごと床に倒れ込んでいた。
コナンは素早く駆け寄った。
男の呼吸、脈拍、瞳孔を確認していき――――思わず歯噛みする。
――――死んでる…………!
手遅れだった。先ほどまで友人らと談笑していた彼は亡くなったのだ。
苦悶の表情で固まる男の顔。首や胸をかきむしった痕跡――――コナンの探偵としての勘が告げていた。
これは恐らく不審死ではない。殺人事件だ。
近くにいた人間の異常を死ぬまで感知できなかった悔しさを振り払い、店内の人間に外へ出るなと指示を出そうとして――――不意に背後からコナンの身体が持ち上げられた。
またおっちゃんか、とコナンは嘆息した。本人としては大変不本意だが、よくあることだった。
実年齢はともかく、身体が縮み子供の姿になってしまったコナンは、事件現場から排斥されやすい。特に小五郎はその傾向が顕著だ。
普通に考えれば、大人が子供を凄惨な現場から遠ざけるのは当然かもしれないが、小五郎の言葉遣いに年少者を労る気配は微塵もない。
そもそも自分は子供ではないし、探偵としては余計なお世話だ、とどうしても思ってしまう。
しかし、身体は空中でブラブラと揺れているが、いつもと違い叱責の声が降ってこない。
おかしい、何故おっちゃんは黙っているのだろうか。コナンが訝しみ顔を動かすと、そこには見知らぬ若い
「――――――っ!?」
誰だ、と咄嗟に誰何しかけて、コナンは思い当たった。ああ、窓際の席にいた青年だ、と。
線の細い小柄な身体に黒いスーツをキチッと着込んだ彼は、一人で椅子に腰掛け、足下にはデパートの紙袋を置いていた。
テーブルの上に空の皿が残っていたから、恐らくは食事を終えたばかりなのだろう。
染め物やコンタクトではない金髪碧眼の持ち主だったから、恐らくは外国人で――――――いや、今はいい。
――――いつの間に移動していたんだ!?
遠くにいたはずの青年が、一体どうやってコナンに気づかれずにすぐ傍まで来ていたのか。
混乱のただ中にいるコナンを、青年は現場から少し離れた場所でパッと解放した。その後は動かずにジッと倒れた男を見つめている。
黒い服装、直前まで気配に気付けなかったこと、まさか彼は――――ふつふつと浮かんできた最悪の予想にコナンは頭を振った。いくらなんでも過敏になりすぎだろう。黒い服を着ているだけで疑っていたらキリがない。だが、何故か疑惑をぬぐい去ることのできない自分がいた。
しかし、
――――今はそれどころじゃない!
気を取り直し、コナンが各所への連絡を指示する間、小五郎は店員らを集め、素早く説明していた。
探偵としての推理力は悲惨なものだが、さすがは元警察官。この辺りはそつがなく、手慣れている。店員も動揺しているようだが、テキパキとした小五郎の態度にひとまず落ち着いたらしく、皆協力的だった。
微かなサイレン音と共に、やがて店内に見知った顔が現れた。先頭を歩くのは目暮警部と高木刑事の二人。目暮警部から「また君たちか」と呆れられたのは特筆すべきことでもなかろう。コナンや小五郎とて、別に好き好んで事件現場に居合わせているわけではないのだが。
一見ただの不審死に見えたが、毒殺の疑いもある。事件の可能性を視野に入れ、鑑識らによる現場検証と並行して事情聴取が行われた。
まず、先ほど死亡が確認された男性は
彼と共に食事をしていたのは、
念の為、店内にいた老夫婦の名も聴き、他に店内にいた客は――――と順番に聞き取りしていた高木刑事が固まった。最後にいたのはあの外国人の青年だ。
「ええっと、キャンユースピークジャパニーズ?」
「日本語で大丈夫ですよ」
たどたどしく話しかけた高木刑事に、青年は流暢な日本語を返した。
幸いにも意思疎通には問題なさそうだ。
「貴方のお名前をお聞きしても?」
「アーサー…………いえ、名前でしたね、失礼。アルト、と言います」
「本日はどのようなご用件でこの店に?」
「買い物のついでに昼食をと思いまして」
一つ一つ質問に答える様子に不審な点は見られない。
やはり、先ほどの予想は考え過ぎか。
鑑識と警部の話を聞くに、目黒という男性に何らかの薬物が用いられた可能性は高いという。まだ特定はできていないとのことだが、これで殺人事件の疑いが強まった。
犯人として一番怪しいのは、飲食物に薬剤等を仕込みやすい店の従業員だ。
しかし、店内に顔見知りの客はいなかったことが既に判明している。無差別でない限り、犯行動機も皆無。引き続き店内の捜査は行われるが、彼らは容疑者候補から外していいだろう。
老夫婦も被害者との面識はない。被害者が席に戻る際にも老夫婦の近くは通らなかった。
あとのもう一人だが――――。
「わかりましたぞ警部殿! 犯人はあの男です!」
意気揚々と小五郎が指差したのは、アルトと名乗った青年だった。突然の事態に、青年は目を丸くしている。
その後、紙袋の中身を改められ、披露された推理とも呼べないようなめちゃくちゃな推理に、犯人呼ばわりされた青年も呆れ顔だった。
「そこの彼らとは今日初めて会いました。まあ、店内に顔見知りがいないわけではないですが――――」
そう徐に彼が見つめる先にいたのは――――小五郎だった。
「…………え?」
「毛利くん、どういうことかね?」
目暮警部に問いただされるが、小五郎にはまるで覚えがないらしい。
「悲しいです。昨日はあれほど親切だったというのに…………」
「は、昨日?」
紙袋の中に入っていたジャージと青年の顔を交互に見、小五郎はあんぐりと口を開けた。
「ま、まさかあの時の!?」
「…………やっと思い出したようで」
青年は再度溜め息を吐いた。
「で、毛利くん、彼との関係は?」
「その、競馬場で…………まあ彼は見知らぬ相手を殺すような人間ではないですな!」
ガハハと笑って誤魔化そうとしている小五郎にコナンは得心した。なるほど、競馬仲間か。
目暮警部もそんなことだろうと思っていたようで、改めて友人らの事情聴取をしようとしたが、加川と花田は青年を目の敵にし出した。
うっかり『名探偵の毛利小五郎』が犯人と言ってしまったせいで、すっかり犯人だと思い込んでしまったらしい。
「でもやっぱりソイツ怪しいだろ! 休みの日なのにスーツ着込んでるし!」
「お恥ずかしながら、先日この町に来たばかりで求職中でして。第一、平日に仕事のある人しかスーツを着てはならない、なんてルールは存在しないはずですが」
ピシャリと青年が言い放つが、二人は聞く耳を持たない。
それでも自分たちより前に店にいたのだから殺害の準備もできたはず、という考えに拘泥しているようだ。グループたちの中に犯人がいる可能性が高いのに、である。考えないようにしているのか、それとも――――。
青年は相手にしても無駄だと悟ったのだろう。
「警察の捜査を待ちましょう。何もやましいことなどありませんから」
逃げる必要はないと言わんばかりに彼は席に着いた。
突っかかっていた加川と花田は渋々といった様子を隠そうともしない。納得していないのが丸分かりだった。手始めに、彼らから詳しい事情を聞き出した方がいいだろう。
子供の見た目を活かして、順番に話を聞いていく。そして浮かび上がってきた人間関係に、コナンは思わず眉をしかめた。
目黒、加川、花田、樋渡、吉木…………五人の間柄はかなり込み入ったものだった。というか昼ドラ並みにひどかった。元カレ元カノに今カレ今カノ、更にフったフられたという話が出てくるわ出てくるわ。
どうしてこの人たちは仲良くできているのだろう。昔のことを気にしないほどの大物たちの集まりなのか。あるいは――――何か思うところがあって友人として付き合っているのか。
「あの、被害者は本当に毒薬を盛られたんですか? アレルゲンとか、持病の薬と飲み合わせの悪い市販薬を服用した可能性は?」
不意にアルトという青年が高木刑事に話した内容に、コナンは引っかかりを覚えた。
周囲はアルトの言にポカンとしている。被害者からアレルギーや持病の話は聞いたことがないと口々に言うが、ある人物の表情が変化した一瞬をコナンは見逃さなかった。
脳内で急速に組み上がっていく推理。そう、あとは物的証拠さえあれば。
――――そうだ、もしかしたら!
知らなかった男女関係を知ってしまったらしい男女の言い争いを尻目に、コナンは小五郎の名を出し厨房へと潜り込む。
ゴミ箱の中を確認――――あった。
よし、謎は全て解けた。早くあの人の犯行を明らかにしなくては――――。
コナンが小走りで戻ると、店内が俄かに騒がしくなっていた。
「お、おい、何だこの薬は」
「何って、ただの頭痛薬よ!」
手持ちのバッグから錠剤が見つかった加川という女性が、槍玉に上げられていた。
このままでは容疑者として連れて行かれてしまう――――彼女は犯人ではないのに!
マズい、急がなければ。
コナンは時計型麻酔銃を構え、素早く小五郎に麻酔針を打ち込んだ。ふにゃ、と声を漏らし、小五郎が座り込むように眠ったことを確認して、その椅子の陰に滑り込む。
人々の視線は突如として眠り出した小五郎に集まっており、コナンが注目されている様子はない。
あとは蝶ネクタイ型の変声機を通し、小五郎の声で推理を述べるのみ。
犯行に使われた凶器とその証拠、犯行の手口を白日の下に晒し出す。
時折コナンとして姿を現しながら、己の推理を補強していき、
「つまり、目黒さんを殺した犯人は――――」
いつも通り、犯人を名指ししようとしたその時だった。ズズ、と椅子を引き摺る音がした。
何だろう、誰か立ち上がったのか。と、コナンが椅子の背もたれから覗き込むと、
「私よ」
ゆらりゆらりと歩いてくる犯人――――吉木がいた。
彼女は小五郎の前に立つと、髪を束ねていた簪を引き抜き、逆手に構える。その簪の先端は鋭く研がれていた。
――――まさか、おっちゃんを襲う気か!?
何とかしなくては――――そう思うが、あまりに近い。小五郎との距離は二メートルもないだろう。
目暮警部や高木刑事も取り押さえようとしているが、それよりも女が近くに来過ぎている。間に合わない。
小五郎を眠らせるのに用いた時計型麻酔銃は
「危ない――――っ!!」
まるでスローモーションのように人が動く中で、小五郎と犯人の間に黒い影が金色の尾を引いて割り込むのが見えた。
※なお更新時、咄嗟に『その一』とサブタイに付けたが『その二』があるとは言ってない。