【安価?】掲示板の集合知で来世をエンジョイする【何それ美味しいの?】   作:ちみっコぐらし335号@断捨離中

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一方その頃 その七

 

 

 

 ――――ついに奴らに反撃するための糸口を掴めるかもしれない。

 

 緊張や高揚感などがない交ぜになり、コナンは無意識のうちに己の拳を握り締めた。

 

 

 あの時、東都水族館の観覧車、その上りエスカレーターから落下した元太に怪我はなかったが、念のため一同は医務室に向かうことになった。そして、再び観覧車に乗ろうとする彼らを引き止めたのは灰原だった。

 

 水族館の入口近くのベンチでコナンが灰原から告げられたのは、記憶喪失の女性が黒の組織のNo.2であるラムかもしれないという疑惑だ。

 このままでは危険だ――――という会話の最中、離れたベンチに座っていたはずのアルトが傍に来ており驚いたが、彼から子供たちが女性と共にいなくなっていることを教えられ、二人は更に仰天した。

 

 観覧車に向かったのだろう、と二人はアルトの両脇に抱えられ、観覧車の乗り場までの道を猛スピードで連行されていった。

 博士は置いてきてしまったが、ギリギリのところでアルトが子供たちに追いつき、その場にいる全員で観覧車に乗ることになった。

 灰原は一人で地上に残ろうとしていたが、子供らの無邪気さに押し切られてしまい、内心怯えながら同乗した。

 

 途中まで、観覧車のゴンドラ内部は平和そのものだった。

 少年探偵団だけではなく女性やアルトも物珍しそうに窓からの眺めを楽しんでいるようだったし、景色を撮影していたアルトは子供たちの「一緒に写真を撮ろう!」という提案を快諾し、全員で記念撮影の自撮りをしていた。

 コナンや灰原の心配を余所に、観覧車内はかなり和気藹々とした雰囲気だったと言える。

 

 状況が変わったのは、観覧車のゴンドラが頂点に達したまさにその時だった。

 突然、記憶喪失の女性が苦しみ出したのだ。そして彼女は譫言のように呟いた――――――ノックはバーボン、キール、スタウト、アクアビット、リースリング、と。

 

 バーボン、キール、スタウト、アクアビット、リースリング――――これらは全て酒の名前、黒の組織で幹部に与えられるコードネームである。

 やはり彼女は組織の関係者だったのだ。

 

 しかし、状況は決して良くはない。彼女が同じように呟いた『ノック(NOC)』という言葉は『Non Official Cover』の略語、組織に潜入している諜報員(スパイ)を指し示すものだ。

 しかも、そのうちのバーボンとキールはコナンは知り合いでもある。

 もし彼女が記憶を失う前にこれらの情報を組織に伝えていたとしたら――――彼らの命はない。組織は決して裏切り者を許さないからだ。

 

 彼女の所持品だと思われる破損したスマホは、博士に頼んで解析してもらっている。

 情報が組織の手に渡っていたかどうかは解析結果を待つしかない。

 

 ひとまずバーボンこと安室には注意喚起のためのメールを送信済みだ。

 バレたかどうかはまだ未確定な上、もし組織にメールを見られた時のために具体的な用語は何一つ出していない。更に念を入れて()()暗号じみた文面にしてしまったが…………彼なら問題なく解けるだろう。

 

 女性は観覧車から降りてすぐ医務室に戻り、警察病院へと搬送されていった。

 彼女があの時記憶を取り戻したかどうかはまだ不明だが…………今は警察に任せておけば悪い方向には行かないはずだ。今後、組織の更なる情報を得られるかもしれない。

 無論、組織に関係がある以上多少の危険は付きまとうだろうが、警察病院の警備は厳重なので少なくとも子供たちだけで外を連れ回すよりは余程安全だろう。

 

 

 となると…………残るもう一つの問題はアルトだ。

 

 あの後、女性が苦しんだ後に病院に搬送されたのを見ていた子供たちが水族館を楽しむどころではなくなってしまったため、米花町に帰ることになり、アルトともその場で別れた。彼も「家に帰る」と言っていたが…………果たして本当だろうか。

 

 三人に確認を取ったが、子供たちがアルトと知り合ったのは五日前の月曜日。公園で一時間ほど一緒にサッカーをしていたという。

 同日、灰原が組織のメンバーらしき気配を察知した家電量販店からも程近い場所だ。

 やはり、あの時灰原が感知したのだという殺気の主はアルトだったのだろう。

 

 彼は赤井や安室の情報網すらかい潜る、恐ろしく隠密性に長けた組織のメンバーに違いない。

 

 目的は何だ? コナンが彼と最初に遭遇したのはちょうど一週間前。その前日には小五郎と競馬場で出会っていたらしいので、八日前には既に米花町に入り込んでいたことになる。

 記憶喪失の彼女がノックの情報を探っていたとして、彼女の補佐のために活動していたのだろうか?

 

 だが、彼が黒の組織の一員だとすると不可解な行動がいくつもある。

 観覧車の傍で発生した彼女との戦闘は恐らく予想外の物だったにしろ、コナンと灰原を両脇に抱えてもなお恐ろしい速さで観覧車まで駆け抜けることができる人物だ。コナンと灰原の二人より先に彼らの動きに気づいたのだから、声など掛けずに一人だけ先に行くことも容易だったはず。一人で行っていれば、適当な用件を告げて子供たちから女性を引き離すこともできた。そうすれば奪還も抹殺も思いのままだったのに、何故そうはしなかった?

 

 それとも彼が米花町に来たのは別件のためで、女性の顔を知らなかった?

 だとしても観覧車での女性の様子から同じ組織のメンバーだということは察したはず。

 観覧車から降りてすぐに動かなかったのは、人の目が多く、女性が一人で動けない状態だったからだろうか?

 

 ――――いや、もしかしたら。

 

 元太が落下し、念のためにと一同が最初に医務室に行った時、付いてきたアルトに『何故東都水族館に来たのか』と質問した時のことを思い出す。ただ遊びに来たわけではないだろう、と疑ってのことだった。

 彼は確かこう言ってなかったか。『友人に頼まれて、友人の知り合いの様子を見にきた』と。

 『怪我がなかったのだから医務室にまで付き合う必要はないし、早くその人のところに行ったらどうか』とコナンがアルトに対し暗にサッサと出ていけと言った時、彼は何と言った?

 

 ――――目的は既に果たされたからその必要はないよ。

 

 あの後すぐ子供たちに「コナン君ばかりお兄さんと話しててズルい!」と言われ、訊ねることは叶わなかったが――――彼の言う目的とは何のことだ?

 友人とは何のことを示している? 組織のことを言っているのか、あるいは――――彼の背後には黒の組織とはまた何か別の存在がいるのか?

 

「――――だぁぁぁあ! ダメだ、わっかんねぇ……!」

 

 歩きながら、頭をガシガシかきむしる。

 まだあの男(アルト)の正体を明らかにするための情報(パーツ)が足りない。そうひしひしと感じていた。

 

 だが決して諦めたわけではない。奴が黒の組織にとって『何者』なのか。全ての謎を解き明かし、絶対に正体を暴いてやる。だから、

 

 ――――首を洗って待ってろよ、アーサー(アルト)

 

 コナンは己を奮い立たせた。

 

「…………って、そうだ」

 

 あの人にも今回の件を伝えておこう。

 

 コナンがポケットからスマートフォンを取り出した時、タイミングよく着信を知らせるコール音が鳴り響いた。

 画面に表示された発信者の名は――――世良真純だった。

 

 







『純黒の悪夢』の時間の流れ

・初日の夜に某所からノックリストが盗まれ、首都高湾岸線でのカーチェイス中に情報が途中送信される。

・翌日の日中、コナンらに水族館前で遭遇→警察病院に搬送される。

・その後、同じく日中の時間帯に少年探偵団のお見舞いがあるが、このシーンを女性の搬送と同日だとするのは組織側の移動時間的にも無理がある。

→二日に分割


 …………おや? 半日分の時間が浮きますね?
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