【安価?】掲示板の集合知で来世をエンジョイする【何それ美味しいの?】 作:ちみっコぐらし335号@断捨離中
なので別にこの前書き部分を読まなくても話は辿れます。
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「って、世良から?」
一体何の用件だろうか。通行の妨げにならぬよう、道の端に寄ってから、画面の通話ボタンをタップする。
『もしもし、コナン君か!? キミ、今どこにいる!?』
「世良の姉ちゃん? どうしたのそんなに慌てて。今は博士の家から事務所に帰る途中だけど……?」
ただ事ではない。息が上がっているが、走っているのか。
コナンが現在地を告げ、何事かと訊ねると世良はスピーカー越しに叫んだ。
『強盗が人質を取って米花町五丁目方面に逃走中だ!』
「な、何だって!?」
「――――コナン君!!」
スケートボードで公道を爆走していたコナンが振り返ると、世良のバイクが間近に迫っていた。
「乗れ!」
「わかった!」
コナンはスケボーを器用に操り、タンデムシートに飛び移る。受け取ったヘルメットを装着した。
「それで状況は!?」
「聞いていたナンバープレートの車は見つけたよ! 車の追跡もできるようにしてある!」
「上出来だ、このまま追いつくぞ!」
「うん!」
世良はギアを一段上げると更にバイクを加速させた。車両の間を縫うようにして、世良の駆る
コナンは犯人追跡メガネを使い、世良との通話の直後に車に投げつけるように張り付けた発信機の位置を確かめる。
目標は未だ移動中だが、その速度は確実に落ちている。渋滞区間にでも差し掛かったのだろう。
――――大丈夫、これなら問題なく追いつける。
「で、どうしてこうなったの!?」
「どうしてって…………さっき電話で説明しただろ? 依頼で出掛けた帰り道、宝飾店に二人組の強盗が入ったのを見かけたんだよ! 人質を車に押し込めるところもな!」
風切り音に負けないよう声を張り上げながら会話をする。
なるほど、先程電話で『強盗が
「警察に通報は!?」
「ちゃんとしたさ! でも人質を放っておくわけにもいかないだろ?」
「確かにそうだけど…………」
こうして追跡を続けた方が人質にとって危険なのではないか。ふと疑問に思ったが、それでもパトカーや白バイよりは犯人の警戒も薄いだろう、と思い直す。
再びメガネで発信機を取り付けた車の位置を確認。
「犯人の車はこの先の渋滞に捕まってるみたいだ!」
「渋滞? ――――ああ、昨日の首都高湾岸線で起こった事故の影響か。ゴールデンウイーク中に首都高が塞がるなんて不便だと思ったけど、今回ばかりは幸運だったな!」
予め逃走経路の交通情報を確認していなかったのか、あるいは高速道路での事故の影響が一般道にまで及ぶと考えていなかったのか。どちらにせよ犯人が不運なのは間違いない。
やがて遠くに黒いミニバンが見えてくる。ナンバープレートは他の車に隠れて見えないが、発信機の反応からしてあれが強盗犯の車だ。うっすら煙が立ち上っているが、強盗犯は渋滞のストレスからか煙草を吹かしているらしい。呑気なものだ。警察車両以外に追跡されているとは夢にも思っていないのだろう。
こちらの存在はまだ気付かれてはいないようだ。減速しつつ、最後の打ち合わせを行う。
「最優先事項は人質の救出で間違いない?」
「ああ、コナン君は運転席にいる奴の気を引いてくれ。その隙にボクが人質を救出する」
「車の鍵は開けておいた方がいいよね?」
「そりゃその方が助かるけど…………できるのか?」
「あの強盗犯たちは単純そうだからね、思いつきだけど多分いけると思うよ?」
コナンの思いついた作戦はかなり単純なものだ。
まずコナンが運転席の男に話し掛ける。車道に子供が立ち入っていることに疑問を持たれないよう、相手が反応したらすぐに『スケボーで走っていたらこの車から何かキラキラする物が落ちるのが見えた』と伝え、犯人の意識を車の右側後方に誘導する。
通常であれば子供の発言などまともに取り合わないだろうが…………犯行直後だ。『まさか奪取した品物の一部を落としたのか』と犯人が少しでも思えばこちらの勝ち。コナンが指差す方向を覗き込むだろう。当然、落とし物など存在しないが、もっと見るように畳みかける。そして見つかるはずのない落とし物を探し、後方を見るために犯人は大きく身を捩る。その隙にロックを解除するのだ。
あとは犯人たちから見えない位置で待機している世良が、コナンの合図を受けて移動。
コナンの犯人に対する分析は概ね的中しており、犯人の気を引いて車の鍵を開けることに成功した。
そして車内に侵入した世良が後部座席にいた強盗犯の一人を素早く無力化、人質の無事を確認したまでは良かったのだが――――。
「クソッ! 何なんだテメェ!!」
コナンが気を引いていたもう一人の強盗犯が前後に車をぶつけながら、無理やり渋滞を抜け出そうとしたのだ。
開いたままのドアから仲間が放り出されても構うことなく、その男は渋滞で立ち往生する車同士の合間をこじ開けるようにハンドルを切った。
――――マズい、まだ世良も人質も中にいる!!
すぐさまスケートボードのターボエンジンを起動し、追い掛ける。
黒のミニバンは左右に車体をこすりながら猛スピードで走行しているため、あのままでは後部座席から逃げることもままならない。
世良が運転中の犯人を取り押さえれば、とも考えたが、下手なことをすればあの車は渋滞中の車列に突っ込むだろう――――その場合の被害は考えたくない。
――――どうする? 考えろ考えろ…………!
何とか先回りして――――いや、どこか人気のないところに誘導すれば――――刹那の内にいくつものアイディアが浮かんでは消えた。
実行力と安全性の担保ができない。
このまま渋滞区間が終わるまで待つか――――そんな消極的な意見が内心鎌首を擡げた時、突風が砂塵を撒き散らした。
「な、何だ…………!?」
薄目で様子を窺う。微かに風の中を何かが駆け抜けていく姿が見えた気がした。
明日の分で寄り道は終わるはず…………というか終われ……。