【安価?】掲示板の集合知で来世をエンジョイする【何それ美味しいの?】   作:ちみっコぐらし335号@断捨離中

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一方その頃 十二

 ◆

 

 

 

 その時、夜闇を塗り潰すような黒い光が立ち上ったのをコナンと赤井は目撃した。

 

 組織の奴らによって脱輪させられた観覧車を止めるために、コナンと赤井、そして安室の三人は奮闘していた。

 観覧車のホイール同士を伸縮式サスペンダーで繋げ、転がる観覧車の前方へ回り込みボール射出ベルトの機能を利用してボールを大きく膨らませ――――思いつく限りの手を打った。

 

 しかし、それでもなお観覧車は止まらなかった。水族館の施設を破壊し尽くし、多数の客が身を寄せるイルカショーの会場をもその毒牙にかかる。その寸前で、一台の重機が観覧車に突っ込んできた。

 重機による特攻が最後の決め手となり、観覧車の暴走は止まった。だが、観覧車の重みに耐えきれなかった重機は押し潰され、爆発――――その時に奇妙な黒い光を目撃した。

 

 イルカショーの会場に避難していた客らに黒い光を気にする様子はない。恐らく気付いたのは転がりゆく観覧車の梯子にぶら下がっていたコナンと赤井だけだろう。

 

 あの時、急に風が吹き荒れたかと思うと爆発に紛れるように光の柱が上がった。

 

 先ほどのあれは一体――――。

 

 そのまま考え込みそうになり、コナンは慌てて頭を振った。

 このままでは警察や救急隊に見つかって騒ぎになる。赤井と共に急いで観覧車のホイールから降りた。早急に、群集に紛れる必要がある。

 

 その最中、脱輪した観覧車の横に突き刺さるクレーン車だった物を観察する。

 辛うじて原形を残しているのはクレーン部分のみ。車両は爆発の影響をもろに受け、一部分は消失していた。焼失ではなく消失だ。全体的に黒く焦げ付き、ひしゃげてしまった重機の運転席部分は完全に消え失せていた。まるで蒸発したかのように。

 

「小型の核でも落ちたかのような惨状だな」

 

 目立たぬよう木立の陰に隠れた赤井がポツリと呟いた。

 

「赤井さん、それってまさか組織が核兵器を使ったってことじゃ――――」

「いや………………これは核とは違うものだろう。無論、それに比肩する破壊力を持つ『何か』が使われたのは間違いないが」

「そんなもの、誰が何のために? 奴らがキュラソーを殺すために仕掛けたものだとしたら――――」

「例え持ち運びできる核兵器の類いだったとしても、それをピンポイントであの重機に仕掛けることは難しいだろう。だが」

 

 今我々の知る情報では答えに辿り着くのは難しい――――それは明かす者(たんてい)にとって敗北宣言に近しいものだった。

 

 その後、表舞台に出られない赤井と別れ、コナンはやってきた救急隊員らの会話に耳をそばだてる。

 

 内容は負傷した客の手当てに関するものが多かったが、観覧車の周囲にいる隊員の話を根気よく探っていると目当てのものに行き当たった。それは公安の捜査官との間で交わされた会話の一部だ。クレーン車を運転していたはずの人物の死体は発見できなかった、と。

 ただ重機の置かれていた工場現場や破壊された観覧車内部に大量の、致死量と思われる血痕が発見されたことからして生存は絶望的だろう、と。

 

 ともあれ、これでノックリストを巡る黒の組織との戦いは終わった。

 蓋を開けてみれば、リストを盗み出したキュラソーは奴らの下に戻らず、奴らはリストの入手に失敗。

 水族館の被害は甚大、多くの負傷者を出したものの、死者・行方不明者は合わせて一人。

 

 奴らとの戦いには勝った。そのはずだ。

 

 消えた死体というただ一つの謎を残して。

 




 時間がなくて今回更新分で書ききれなかったので、その部分を次話で書いたら純黒の悪夢編は完結予定です。

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