焔の行く末   作:ラウガメア

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忠狼の遺灰

…旅のお方、また従順な遺灰をお持ちになりました。

これは大切な物を守り続けたものの遺灰…

得られるものは多く、また全て語り継がれるべきもの。

時に、どこで拾われましたかの?

婆めに聞かせてくださりませ。

 

…ほう、それはそれは…

 

そうか、あやつは、最後まで…

やはりこれは語られるべきものの遺灰ですじゃ。

貴方様もそう思いますじゃろ?

アッハハハハ…

 

ああ、旅のお方、婆めに、何か入り用ですかのう?

…ふむ、では遺灰を下さったお礼に、この遺灰の者の道を。

婆めは語り部。であればそうするしかあるまいて…

 

 

神とは何か

神とは精神体であり、誰かの思いで確立されるものである

多くの神々が存在する中、一際有名な者がいる

『深淵歩きのアルトリウス』

今なお語り継がれる物語であるが、その実虚構の塊である

 

アルトリウスは道中で倒れた友の為、盾を結界と成した

そして利き手を失い深淵に侵され、終ぞ呑まれてしまった

 

深淵に飲まれたグウィン王の騎士

アルトリウスの用いた鋼の大盾

 

深く傷つき、深淵に侵されはじめた彼は

この盾を友たるシフを守る結界の糧とした

これにより盾は痛み、物理的に脆くなっているが

一方で魔法などには高い防御効果を持った

 

結界の大盾より抜粋

 

狼にとって、アルトリウスは正しく英雄であった

己を救うために盾を捨て、1人で深淵に立ち向かった

優しく勇敢な彼を崇拝し

最後まで共に行けなかった己が身を恥じた

そして通りかかった名も知らぬ人に救われ

共に深淵の魔物を討った

―アルトリウスは魔物に負けた―

そんな彼の身に泥を塗るような話を

許容できるはずがなかった

故に、狼は嘘をついた

守れなかった大好きな彼を、今度こそ守るため

華々しい伝説を語り継いだ

真実を知るものは己と名も知らぬ人しかいない

己が彼の墓を守れば、遺品から虚構が崩れることも無い

やがて人は死に、嘘は真実へと昇華するだろう

そうして狼は墓守となった

 

「深淵歩き」の騎士アルトリウスの墓守

灰色の大狼シフのソウルから生まれた大剣

 

アルトリウスはダークレイスの狩人であり

その剣もまた闇の眷属に大きな威力を発揮する

 

アルトリウスの大剣より抜粋

 

そして永き時が流れ、狼は大狼と呼ばれるほどになった

幾度も現れる墓荒らしから虚構を守るため

友と同じ大剣を振るい続けた

そうしていつものように墓荒らしを見つけ、押し倒した時

その者の顔を見た時、狼は気づいてしまった

この墓荒らしはかつての人

己を救ってくれた恩人であり、共に戦った戦友であり

―己以外の、真実を知るただ1人の存在である

狼は葛藤した

これは確かに恩人である

これは確かに戦友である

だがこれは殺さねばならぬ存在である

彼を守るため、殺さねばならぬ存在なのである

 

故に、吠えた

それは覚悟の表れであり、決闘の合図であった

これは、共に魔物と戦った存在である

これには、真実を暴く権利がある

だからこそ、不意打ちではなく決闘で

己は嘘をつき続けた汚れた身なれど

騎士()のやり方で、決着をつけようと

 

 

旅のお方、別の話を聞きたくば、

また遺灰をお持ち下さりませ。

何せ、婆めは語り部。語り継ぐことしか出来ぬ。

あの時代を知る、たった1人の生き残りなのじゃから。

アハハ…ッ。

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