…旅のお方、また刺々しい遺灰をお持ちになりました。
これは誰よりも不器用で
多くの人に嫌われたものの遺灰…
得られるものは多く、また全て語り継がれるべきもの。
時に、どこで拾われましたかの?
婆めに聞かせてくださりませ。
…ほう、それはそれは…
そうか、あやつは使命を、貫き通したか…
やはりこれは語られるべきものの遺灰ですじゃ。
貴方様もそう思いますじゃろ?
アッハハハハ…
ああ、旅のお方、婆めに、何か入り用ですかのう?
…ふむ、では遺灰を下さったお礼に
この遺灰の者の道を。
婆めは語り部。であればそうするしかあるまいて…
ある男がいた
全身をトゲに覆われた特徴的な鎧を身に纏い
数多の世界へ渡り歩き、使命持つ者を殺した
その者の目的は、人間性
ただそれだけのために、それを人から奪うために
まだ希望を捨てていなかった男を
夢を追い続ていた女を
誇りを捨てなかった人を
命乞いをしてきたモノを
殺して、コロして、そして奪った
その姿は、正しく
トゲの騎士カーク
その男の名は、多くの人に知られることとなった
刀身にびっしりと鋭いトゲが生えている
その鋭いトゲの効果により
大量の出血を強いる禍々しい武器
その男は人間性を集め続けた
たとえ1度敗北した相手であっても
たとえ同じ相手に幾度も殺されようとも
ではなぜ、男は人間性にこだわるのか
誰かが言った
灰が残り火を求めるように
奴は人間性を求めたのだろうと
忌々しい闇の蛇に唆されたのだろうと
それに誰も、疑問を抱かなかった
闇のソウルにより人間性を奪う吸精の業をなし
また特殊な盾ともなる
偉大なる古の者ともなれば、人間性溢れる聖人とて
一度にすべてを奪い取ることができるだろう
だが、男の目的はそうではなかった
その行動の原点は、己の内にあるものではなかった
そもそも彼は、『ダークレイス』ではなかった
確かに『闇霊』として活動はしたが
闇の蛇と誓約を結び、忠誠を誓ってなどいなかった
己の為ではない
闇の蛇とも関係がない
その男の行動原理は、たった1人の女だった
その女は、疫病に沈んだ村を救うため
その身が異形になることも厭わず、村を救おうとした
同情か、恋慕か、畏敬か
男が女にどんな感情を抱いたのかは分からない
だが、男が女の為に人間性を集め続けたことは事実だ
たとえ自分にどのような悪評が降り掛かろうとも
たとえ世界を敵に回そうとも
たとえ勝てぬ相手に挑み、朽ち果てることになろうとも
たった1人の女の為の、騎士となるために
男は、人間性を集め続けたのでは無いだろうか
旅のお方、別の話を聞きたくば、
また遺灰をお持ち下さり
何せ、婆めは語り部。語り継ぐことしか出来ぬ。
あの時代を知る、たった1人の生き残りなのじゃから。
アハハ…ッ。