ありふれた職業と共に一刀両断!!   作:籠城型・最果丸

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ようやくシアが登場します。原作では散々ハジメに酷い扱いをされていましたが、果たしてどうなるのでしょうか。

オリジナルのアーティファクトの方は、ゼルダの伝説ブレスオブザワイルドに登場するシーカーストーンみたいなのだと思ってください。


第四章 迷宮の外へ ~樹海編~
第十一陣 兎は慄き剣士は廻る


「……久し振りだね、『相棒』」

 

来は〝舞鱗〟を手に取ると、まるで長年共に過ごしてきた相棒のように語りかけた。この〝舞鱗〟は、前世で来が長年使い続けてきた刀なのだ。超一流の鍛冶師が打ったこの刀はハジメが作ったものとは比べ物にならないほど硬く、切れ味も抜群である。持ち主が持ち主なら刀も刀である。

 

来は〝舞鱗〟を鞘に仕舞い、ベルトに差した。今現在オスカーの骸が羽織っていた服を羽織っている為、腰に日本刀を差している光景はかなりシュールだ。

 

 

生成魔法を手にした来は早速アーティファクトの製作に取り掛かった。イメージとしてはどこぞの会社の秘書が使うようなタッチパネル式の端末である。

 

〝宝物庫〟という指輪型のアーティファクトを解析し、指輪に取り付けられた一センチ程の紅い宝石の中に創られた空間よりも更に広い空間を青い宝石をシュタル鉱石を加工した縦十センチ、横二十センチの板に沢山並べることで実現した。固定には神結晶を使用した。収容スペースは〝宝物庫〟の二百倍。

 

続いてトータスの地図を記録する部分。これはハジメの父親が運営するゲーム会社で培った技術の応用である。パソコンが無いので大変苦労したが。試しに地球の世界地図を記録させてみたところ、世界地図が記録させた通りに映し出された。マッピングシステムも備えてある。しかし肝心のトータスの正確な地図が無いので技術としては完成した、というところである。

 

そして最も重要なタッチパネルの部分、こればかりは神結晶を使わざるを得なかった。他に透明な素材が見つからなかったのだ。だが神結晶を使ったことでバッテリーの代替品としても使えるようになり、バッテリーとなる部分の製作の手間が省けた。

 

製作期間およそ一か月、遂にアーティファクトが完成した。

 

保管部分の厚さが理想よりも厚かったため、イメージ図よりも分厚くなってしまった(厚さ三センチ)。外枠の部分はこの世界最高硬度を誇るアザンチウム鉱石で作った。落としても踏んでも壊れない(理論上)。取っ手が付いているので、持ちやすい。

 

保管している物を取り出すには、取り出したい物のアイコンをタップすることで、取り出す数と出現させる場所を設定することで任意の場所に出現させることができる。逆に収納したい場合には、収納モードに切り替え、画面を収納したい物に向けて取っ手に付いたスイッチを押すことで収納できる。試しに神結晶のアイコンをタップすると、テーブルの上に神結晶が出てきた。

 

望遠鏡の機能も追加されており、取っ手のスイッチを押すことで遠くの物を見ることができる。

 

シーカー族も驚くこのタブレット端末型アーティファクト〝八咫(やた)〟はトータスにおける最高峰のアーティファクトにして唯一無二の代物である。

 

 

〝八咫〟の完成から更に一月もの間、来は剣術の修行をしていた。他にも使える技があるのだが、トータスに来てから技を〝紫電一閃〟とその派生技しか使っていない。故に腕が鈍ってしまっている。鈍ってしまった分を一月の修行期間で元に戻した。

 

 

修行を終えてから十日後、遂に地上に出る時が来た。

 

愈々(いよいよ)か……久方ぶりに日を拝める時が来た」

 

そう呟きながら、三階の魔法陣を起動させる。魔法陣は強く光を放ち、来の身体を包む。

 

そして光が収まると、そこは洞窟だった。

 

「洞窟……出入口……トラップの方は大丈夫かな……」

 

予測通り道中には封印を施された扉やいくつかのトラップが仕掛けられていたが、オルクスの指輪によって次々に解除されていった。

 

「流石オルクスの指輪だな……扉の封印やトラップが次々と解除されていく…」

 

何事もなく進み続けていると、遂に陽の光が差した。数か月ぶりの陽の光だ。

 

来はそれを見つけた瞬間、逸れた親を見つけた子供のように光の方向に駆けだした。

 

(奈落のように澱んでない、新鮮な風だ。空気が旨い)

 

そして……光に飛び込み、待望の地上へ生還を果たした。

 

「やった! 遂に地上に出たぞ!! 久し振りの娑婆だ……」

 

地上に出た来は奈落での苦労が報われた喜びに浸っていた。

 

「そういえばここって……ほとんど魔法の使えない【ライセン大峡谷】だったよな……」

 

来が現在立っているライセン大峡谷は、西の【グリューエン大砂漠】から東の【ハルツィナ樹海】まで大陸を南北に分断する、深さ平均一・二キロメートル、幅九百メートルから最大八キロメートルの峡谷である。ここでは魔力が分散してしまい、十倍以上の魔力でやっと発動できるほど魔力の効率が下がってしまう。

 

「……不味いな、囲まれたか」

 

魔法を使えないところに更に魔物に囲まれてしまう、これを泣き面に蜂と言わずして何と言うのか。

 

「けど、奈落に比べたら大したこと無いな」

 

来は魔力に頼らず己の剣術と刀だけで魔物を次々と倒していった。最後の魔物を斬り捨てたところで、来は自身の刀〝舞鱗〟を眺めた。

 

「何度見ても凄い切れ味だ……ハジメには申し訳ないけどこの刀さえあれば他の剣は何も要らないよ」

 

見事な回転納刀で刀を収め、再び歩き出した。

 

 

樹海に向けて道なりに進んでいると、それほど遠くない場所で魔物の咆哮が聞こえてきた。

 

突き出した崖を回り込むと、向こう側に双頭のT-レックスらしき姿の魔物を発見した。その足元を半泣きで逃げ惑う兎耳を生やした少女が跳ね回っていた。

 

(何故あんなところに人が……!)

 

兎耳の少女は来を発見するなり彼の方へ向かって逃げてきた。

 

「だずげでぐだざ~い! ひっーー、死んじゃう! 死んじゃうよぉ! だずけてぇ~、おねがいじますぅ~!」

 

(どうする?魔力は分散してしまうから技は使い辛い……そもそもここは処刑場としても使われていたらしいから放っておいてもいいのかもしれない……だけど……)

 

少女の涙の懇願に来は意を決した。

 

「おねがいですぅ~! たずげてぐださ~い!!」

(直接あの子に聞いてみるとしよう)

 

〝舞鱗〟を鞘から抜き、双頭の魔物目掛けて飛び出した。

 

「うおぉぉぉッ!!」

 

少女の目の前で跳躍する。

 

(十倍の魔力でようやく発動できる……一瞬、かつ一撃で決めるしかない!)

 

「【鳴ノ舞】」

 

刀身に雷を纏い、縦に廻りながら魔物を切り裂き、見事な着地を決める。

 

「【〝轟大車輪〟】!!」

 

刀身の軌道に沿って雷の魔力が円状に集まり、大放電を起こした。魔物は縦に一刀両断され、真っ二つに分かれて倒れた。

 

「そ、そんな……ダイヘドアがたった一撃で……」

 

双頭の魔物…ダイヘドアの死体を見つめながら硬直する少女に来は歩み寄る。

 

「怪我はないか?」

 

兎耳の少女は陽だまりのような笑顔を見て涙を零した。

 

「あ……ああ……」

「今君の仲間の許に……」

「助けて頂きありがとうございますぅ!!!」

 

兎耳の少女が泣きながら来に抱きついてきた。

 

「ちょっ……どうしたんだ急に!?」

 

少女は来の胸の中で泣いていた。肩に手を置いて引き剥がしてもすぐに抱きついてくる。そして自己紹介をしてきた。

 

「私、兎人族ハウリアの長の娘、シア・ハウリアといいますです! 私の仲間と家族を助けてください!」

 

シア・ハウリアと名乗った少女に対し来は赤子をあやすように頭を撫でる。

 

(な、なんだこの娘は……なんか訳ありみたいだ……取り敢えず話を聞こうか……)

 

「教えてくれ、一体何が遭ったんだ?」

「はい、実は……」

 

そこからシアの話が延々と続いた。

 

 

ハウリアの姓を持つ兎人族はハルツィナ樹海にて数百人規模の集落を作りひっそりと暮らしていた。兎人族は聴覚や隠密行動に優れているものの、スペックが他の亜人族より低いことから格下と見られていた。争いを好まない性格をしていて、一つの集落全体を家族として扱うほど仲間同士の絆が深い。容姿はとても可愛らしく、帝国では愛玩用の奴隷として人気なのだそう。

 

そんな兎人族の集落の一つ、ハウリアにある日異常な女の子が生まれた。濃紺のはずの髪は瓶覗色の髪で、亜人族にはないはずの魔力を有しており、直接魔力を操り、固有魔法を使うことができた。

 

「魔力が使えるのか……そりゃ凄いじゃないか」

 

来はシアの肩に手を置いてシアを称賛する。

 

「えっ? す……すごい……ですか?」

「ああ、亜人族って本来魔力を持たないだろう? なのに君は魔力を持っている。神童と呼ばれていいのに、迫害の対象にするなんて……」

 

聖都教会では亜人族は魔力を持たないことから神に見放された獣と扱われている。その亜人族の中に魔力を持った者が生まれたら、神に見放された者ではなくなる。まして王都の者達から差別されることはなくなるはずだ。……多分。

 

「亜人族は魔物をけっこう嫌ってますからね……存在がばれたら私殺されちゃうんですよぉ! つい先日それがフェアベルゲンにばれちゃいましたぁ!」

「えぇ…」

 

思わぬ爆弾発言により、来は驚愕する。

 

「だから……樹海にはもう居られなくなって……初めは北の山岳地帯に逃げようとしたんですぅ……そしたらぁ……」

 

ハウリア族に降りかかった不幸は更に続く。

 

「えぇ!? 樹海を出てすぐ帝国兵に見つかった!?」

「はい……」

 

運悪く一個中隊規模の帝国兵と出くわしてしまったハウリア族は南に逃げるしかなかった。

 

女子供を逃がすため男達が追っ手の妨害を試みたが、元々温厚で平和的な兎人族だ。魔法を使えて戦闘訓練まで受けている帝国兵に敵うはずもなく、気がつけば半数以上が捕らわれてしまった。

 

必死に逃げ続けて、ライセン大峡谷に辿り着いた彼らは、苦肉の策でこの峡谷に逃げ込んだ。魔力が分散してしまうこの峡谷なら、帝国兵も追ってこないだろう。だが、追っては来なかったが、撤退することなく階段状に加工された崖の入口に陣取ってしまった。

 

そして魔物が襲来してきた。もう無理だと悟ったハウリア族は帝国兵に投降しようとするが、魔物に回り込まれてしまい、峡谷のさらに奥へ逃げることとなった。

 

「そうやって逃げ惑ううちに……気がつけば六十人はいた家族も、今では四十人程しかいません。このままでは全滅です。どうか助けてください!」

 

来はしばらく考えていた。

 

(どうする? ここで彼女を助けてもデメリットの方が圧倒的に大きい……でも、今こうして考えている間に、何人もの兎人族が犠牲になっているだろう……しかし一つ気になることがある)

 

「……そういえば、さっき固有魔法を使えるって言ったよね? どんな魔法なんだ?」

「え?あ、はい。〝未来視〟といいまして、仮定した未来が見えます。もしこれを選択したら、その先どうなるか? みたいな……あと、危険が迫っているとき勝手に見えたりします。まぁ、見えた未来が絶対というわけではないですけど……そ、そうです。私、役に立ちますよ! 〝未来視〟があれば危険とかも分かりやすいですし! 少し前に見たんです! 貴方が私達を助けてくれている姿が! 実際、ちゃんと貴方に会えて助けられました!」

 

〝未来視〟は、危険が迫っている場合、自動で発動するという。任意でも発動できるが、自動の場合の三倍魔力を消費し、一回で枯渇寸前になるのだという。

 

「そんなに凄い魔法を持ってるなら、何でフェアベルゲンの連中に見つかったりしたんだ?」

 

シアは目を泳がせてポツリと零した。

 

「そ、その時は……しばらく使えない状態だったので……」

「一体何に〝未来視〟を使ったんだ?」

「ちょ~とですね、友人の恋路が気になりまして……」

「貴重な魔法を私用で使うんじゃない、大事な時にとっておくものだろう」

 

これには流石の来も呆れた様子だった。

 

「うぅ~猛省しておりますぅ~」

 

ユエの封印部屋で壊れてしまったハジメなら置いていくだろうが、シアが話している相手はクラスでもトップクラスの強さと慈悲深さを持つ辻風来だ。彼女は運が良かった。もしご都合主義の阿保たれ勇者だったら間違いなく死ぬだろう。

 

「はぁ、丁度樹海の案内人を必要としていた処だし……解った。その願い、聞き入れよう」

 

溜息を吐きながらも、来はシアの頼みを聞き入れた。

 

「あ、ありがとうございます! うぅ~、よがっだよぉ~、ほんどによがったぉ~」

 

嬉し泣きをするほどの喜びを表したシア。しかしここで油を売るというわけにもいかず、すぐに立ち上がる。

 

「あ、あの、宜しくお願いします! そ、それで、貴方のことは何と呼べば……」

(しまった。そういえばまだ名を名乗っていなかったな……)

「僕は来。辻風来だ」

(短くて覚えやすいですねぇ)

 

今シアが来に対して失礼なことを考えていたが当の本人は気にすることもなく…

 

「ほら、行こう?」

「はい!」

 

来とシアはハウリア族を助けるため歩き出した。

 

「あ、あの。そういえば、さっきダイヘドアを倒したあの技、一体何なんですか?もしかして魔法ですか? ここでは使えないはずなのに……」

「ああ、あれは確かに魔力を使っているが、魔法とは違う。それにあの程度、わざわざ十倍の魔力を使ってまで出した技を使うまでもなかったな」

 

シアは来の強さに開いた口が塞がらない様子だった。

 

来は道中、腰の刀や自分の使う技、そして〝八咫〟が自身の作った最上級のアーティファクトであることを簡潔に説明した。

 

「え、それじゃあ、魔力を直接操れたり、固有魔法が使えると……」

「ああ、そうなるね」

 

しばらく立ち止まって呆然としていたシア。だが突然、何かを堪えるように来に抱きつき、肩に顔を埋めた。

 

「……いきなりどうしたんだ? 落ち込んだかと思ったら今度は急に泣き出すし……」

「……ただ、一人じゃなかったんだなっと思ったら……何だか嬉しくなってしまって……」

「……」

 

シアは魔物と同じ性質や能力を有するという事、この世界で自分があまりに特異な存在である事に孤独を感じていた。一族はそんなシアを家族として十六年もの間危険を背負ってくれた。故郷である樹海を捨ててまでシアの為に共にいてくれる家族、きっと多くの愛情を感じていただろう。だからこそ、〝他とは異なる自分〟に余計孤独を感じていたのかもしれない。

 

来とシアには決定的な共通点があった。それは、自分が〝他とは異なる存在〟である事。愛してくれる家族がいる事。

 

(この娘は……どれほど苦しみを受け続けてきたのだろうか……嗚呼、辛かっただろう……寂しかっただろう……記憶を失っていたときの僕だったらコロッと堕ちていた……)

 

陽だまりのような慈しさ(やさしさ)を零しながら、来はシアの頭を撫でた。

 

「へっ!?」

 

突然頭を撫でられたことに、シアは驚く。

 

「君はずっと……〝他とは異なる自分〟に孤独さを感じていたんだね。隣を見てごらん? 君と同じで髪の白い〝異端児〟がここにいるだろう?」

 

共通点がもう一つあった。二人共白っぽい髪色であることだ(ただし来の髪はシアとは異なり、完全に真っ白)。

 

「……うう……ぐすっ……」

 

シアはまた涙を零し始めた。来は続けて言葉を紡いだ。

 

「だから、君には死なれたら悲しいんだ。長く生きてくれるかい? 〝シア〟」

 

その言葉は、孤独という名の闇に包まれたシアの心に一筋の光を差した。それよりも自分のことを名前で呼んでくれたことにシアは心を打たれた。

 

「……はい!」

 

シアは堕ちてしまった。しばらく来に見惚れていると、遠くで複数の魔物の咆哮が聞こえた。音量からして相当な数だろう。

 

「……! 来さん! もう直ぐ皆がいる場所です! あの魔物の声……ち、近いです! 父様がいる場所に近いです!」

「解った。取り敢えず籠の中に入ってくれ」

「……え?」

 

シアは来に言われた通り籠に入った。頭が出てしまっているが今はそれを気にしてはいられない。来はシアが入った籠を背負い、全力で走った。

 

走ること二分、最後の大岩を越えた先には、複数の魔物に襲われている数十人の兎人族達がいた。




解説

『舞鱗』

四人の来訪者が七人の解放者に預けた〝七星刀〟のうちの一振りで、オスカー・オルクスが所有していた。

超一流の鍛冶師が打った刀で、雌雄の双刀のうちの〝雄〟。水を清める力を持った妖刀でもある。


次回
第十二閃 帝国と生存者

オリ主ヒロインにミレディ・ライセンを追加しようと思っていますが、入れてもいいと思いますか?

  • 入れてもいい(むしろ入れてくれ)
  • 原作重視(入れるな)
  • 死亡回避ならOK
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