ありふれた職業と共に一刀両断!!   作:籠城型・最果丸

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完全にリリアーナの存在を忘れていました。そして天之河光輝の苗字を間違えてました。


第十二陣 帝国と生存組

ハジメ、香織、雫、ユエ、膵花は迷宮での来の捜索を中断し、地上で捜索することに決めた。ユエ以外の四人は龍化を発動させ、そのまま上層へ向かい、翼で奈落から跳び上がった。橋の上で龍化を解除し、階段を駆け上がる。

 

ハジメ達は二十階層まで上ってきていた。

 

「んっ、ハジメ。何でわざわざ上に戻ろうとしてるの?」

「あいつが地上に出ているかもしれないからだ」

「……ハジメくん! 魔物が……」

「……ったくッ! 鬱陶しいんだよ!」

 

かなり疲弊していたところに魔物が襲い掛かって来た。レオを振るうのも面倒だと思ったのか、ドンナーで蹴散らした。

 

「やっぱクタクタの時は拳銃の方がいいわ」

「ハジメさん、また魔物が……」

「今度は私が! 【妖術 〝清濁併吞〟】」

 

膵花が槍を振るうと、何もないところから激流が現れ、魔物を包み込み、引き裂いた。

 

「ん、私もやる。〝緋槍〟」

 

また別の魔物の群れを炎の槍が貫いた。

 

「私だって……えい!」

 

香織のイベリスが火を噴いた。取りこぼした魔物の一体を撃ち抜く。

 

 

一方その頃、勇者一行は迷宮の探索を中断し、既に迷宮を後にしていた。六十五階層から先は未知の領域、攻略速度は格段に落ちていた。また、度重なる戦闘と魔物のレベルが上がったことによりメンバー全員が疲弊し切っていたため、休養を取るべきという結論に達した。

 

休養を取るだけなら宿場町ホルアドでもよかったのだが、ヘルシャー帝国という名の国から使者が送られ、王宮まで戻らねばならなくなった。

 

元々、エヒト神による〝神託〟がなされてから光輝達が召喚されるまでほとんど間が無かった。そのため、同盟国である帝国に知らせが届く前に勇者召喚が行われてしまい、召喚直後の顔合わせができなかった。仮に知らせが届いても帝国は動かなかっただろう。

 

理由は解るが、何故このタイミングなのか。それは、【オルクス大迷宮】攻略で歴史上の最高記録である六十五階層を突破したという事実に帝国が興味を示したのだ。

 

帝国とは吸血鬼が滅びた頃にとある名を馳せた傭兵が建国した国であり、冒険者や傭兵の聖地と呼ばれる完全実力主義国家なのである。大多数の民が傭兵か傭兵業からの成り上がり者で占められている。

 

帝国にも聖都教会はあるが、信仰よりも実益を取りたがる者が多いため、王国民と比べれば信仰度は低いがそれでも熱心な信者だ。

 

そんな話を帰りの馬車の中で聞かされていた。

 

 

光輝達が馬車に揺られている頃、ハジメ達はホルアドの宿屋に戻っていたが、そこの従業員から光輝達が王宮に戻ったことを伝えられ、急いで後を追った。

 

 

光輝達の乗った馬車が王宮に入り、全員が降車した。王宮の方から金髪碧眼の少年、ランデル殿下が駆けてきた。

 

「む! 香織と膵花は何処におるのだ?」

 

光輝がそれに答える。

 

「その二人は、まだ迷宮にいると思われます」

「な……何だと!? まさかお前、あの二人を死なせてはおるまいな!?」

 

ランデル殿下は顔を真っ青にしながら光輝に詰め寄った。

 

「いえ、香織達がどうなったかは俺達にも分かりません。でも俺は生きていると信じています」

 

ランデル殿下は香織と膵花のことを好いていた。召喚の翌日から二人に猛烈なアプローチを掛けていたが、ランデル殿下より七つ上の香織には弟、どれ程歳が離れているか分からない膵花には甥っ子のように見られていた。しかも香織にはハジメ、膵花には来という恋人(夫)がいるのだ。

 

「本当なのだな? もし二人共死んでいたらお前を一生許さんぞ!」

「ランデル、いい加減にしなさい。光輝さんにご迷惑ですよ」

「あ、姉上!? ……し、しかし」

「しかしではありません。皆さんお疲れなのに、こんな場所に引き留めて……相手のことを考えていないのは誰ですか?」

「うっ……で、ですが……」

「ランデル?」

「つ、続きは中で話し合うとする! そして、どちらが誰を取るか今日こそ決めようぞ!」

 

ランデル殿下は光輝に言い放ち、踵を返してずんずんと王宮の方へ戻っていった。

 

「光輝さん、先程は弟が失礼いたしました。代わってお詫びいたしますわ」

 

リリアーナはそう言って頭を下げた。綺麗なストレートの金髪がさらりと流れる。

 

リリアーナはランデル殿下より四つ上の才媛だ。その容姿にも非常に優れていて、国民にも大変人気のある金髪碧眼の美少女である。性格は真面目で温厚、そして程よく柔らかい。TPOを弁えつつ使用人達とも気さくに接する人当たりの良さも持っている。

 

光輝達召喚された者にも、王女としての立場だけでなく一個人としても心を砕いてくれている。彼らを関係ない自分達の世界の問題に巻き込んでしまったと罪悪感まであるくらいだ。

 

率先して生徒達と関わるリリアーナと彼らが親しくなるのに時間はかからなかった。特に同年代の香織、雫、膵花(見た目)達との関係は非常に良好で、今では愛称と呼び捨て、ため口で言葉を交わす仲になっている。

 

「いや、気にしてないよ、リリィ。あれはランデル殿下との約束だよ」

「約束……ですか?」

 

実はランデルの恋は光輝に知られている。初めは言い争いになっていたが、どちらを取るかはまだ決まっていないことを互いに知り、光輝の提案で、決めたら互いにすぐ告げることにした。光輝もランデル殿下もまだどちらを取るかは決まっていない。更に光輝には雫も気にかけており、話し合いは長くなりそうだった。

 

「だから、相手の方が決まったら互いに報告することにしてるんだ」

「そうでしたの……お相手と言えば、あのお方が亡くなられてからもう十日以上経ちましたのね」

 

リリアーナは碧眼に涙を浮かべながら言った。リリアーナの言うあのお方とは、〝迷宮の悲劇〟唯一の犠牲者である(とされている)来のことである。こちらも実年齢はかなり離れている。

 

ランデル殿下が香織と膵花に恋をしている一方で、姉のリリアーナは来を恋い慕っていた。来の死の報せが届くと、リリアーナは一人部屋で泣き崩れていたという。

 

リリアーナは来と王宮で過ごした日々を思い出していた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

生徒達の中でリリアーナが最初に話した男性は来だった。性格の似た二人は直ぐに打ち解けた。来は自身と膵花、そしてハジメ以外誰も知らないことをリリアーナに話した。自分と膵花が幾度となく転生を繰り返してきたこと、膵花とは前世からの夫婦であること、幾多の人生の中で、親友と死別してきたこと、来は隠すことなくリリアーナに告げた。

 

『そうだったのですか……随分と壮絶な人生を辿って来たのですね……!? 私ったら、王女でありながら失礼なことを……』

 

『いや、ハジメにもほとんど同じことを言われたから……気にしないで』

『そうですか……』

 

この時はまだリリアーナにとって、来は親友という存在だった。

 

 

或る日の夜、リリアーナと来はバルコニーで話し合っていた。

 

『……辻風様はどうして戦闘訓練に参加しない日が多いのですか?光輝さんからも不真面目だ、って言われておりますよ』

『僕が訓練を休んでいる日、何をしていると思う?』

『それは……』

『……僕は昔から観察力が鋭いって言われてきた。実力もかなりあるみたいだし。それをメルド団長に買われて、こう言われたんだ。訓練に参加する日を少なくする代わりに皆の状態を見ていてくれないか、って。常に全員の熟練度を把握しておきたいかららしいけど』

『……そう、なのですか……』

『ただ、僕らは会ってからそれほど経っていないし、別に信頼を全部僕や天之河に預けろ、なんてことも言わない。でも、これだけは解って欲しい』

 

来はハジメに作ってもらった刀を抜いて、月明りにさらした。本当は自分でも作れるが、作るより振る方が性に合うらしい。

 

『僕は居場所や武器をくれた人達に報いようとしている。たとえ、誰が何と言おうとも』

『辻風様……』

 

来はゆっくり背伸びをして、身体の緊張を解す。そして穏やかな笑顔で言った。

 

『ありがとう。僕の話を信じてくれて』

『!?』

 

リリアーナは驚いた。彼女は来の話を信じる、とは口にしていない。なら何故それが判ったのか。

 

『言ったでしょ、観察力が鋭いって』

『そ、そうでしたね……』

『それに……今こうやって君と話していることが毎日の小さな楽しみになってるんだ』

 

その言葉に下心は無い。下心が無いのは光輝も同じだったが、来と光輝では放つ光の種類が違う。光輝の放つ光は一等星のようだが、その光に温度はない。一方来は変光星のように光の強さが変わる。ある時は月明り、またある時は陽の光、と時と場合によって光の強さが変わる。そして温かみがある。

 

『えっ、そ、そうですか? え、えっと』

 

王女である以上、国の貴族や各都市、帝国の使者などからお世辞混じりの褒め言葉を貰うのには慣れており、笑顔の仮面の下に隠れた下心を見抜く目も自然と鍛えられている。それ故、来が一切下心無く素で言っているのがわかってしまう。家族以外でそういう経験はほとんどないので、つい頬が赤くなってしまう。どう言葉を返そうかオロオロとしてしまうところもまた人気の一つである。

 

(ああ、やはりこの方の放つ光は光輝さんとはまた違う……まるで陽の光を浴びているかのようですわ……ずっとこの時が続いて欲しい、心からそう思えるほどに……)

 

リリアーナは日光浴をしているかのような気分だった。これは初めて話をした時からそう感じていたことだ。今まで関わってきた者はほとんど下心で近づいてきた者だった。だが、彼だけはまるで親友のように接してくる。

 

『じゃあ、そろそろ僕は戻るよ』

 

そう言って来は自室に戻ろうとすると、リリアーナは一瞬呼び止めた。

 

『あ……あの……』

『ん? どうしたんだ?』

 

今この場で言わなければ、リリアーナはそう思いつつ言葉を紡ぐ。

 

『もし、よければ……また空いた時間に私の部屋でお話をしませんか?』

『うん、時間が空けば何時でも』

 

最後にそう言い残して来はバルコニーから飛び降りた。リリアーナは凄く嬉しそうな顔をしていた。この夜以降、リリアーナは来との話が楽しみになっていた。

 

 

ランデル殿下の恋は王族ではリリアーナ以外知らなかったが、リリアーナの恋はランデル殿下以外全員知っていた。

 

『どうした? リリィ。この頃何かに想い耽っているように見えるが……』

 

ハイリヒ王国国王エリヒドがリリアーナに訊ねる。

 

『お父様……』

『ひょっとして、勇者様に惹かれたのではないか?』

 

確かに光輝は女性達に人気だ。このご時世、王城で女性が想い耽っている様子を見せれば、多くの者が光輝に惹かれたのだろう、と思うだろう。

 

『いえ、確かに光輝さんとは良好な関係を築いておりますが……私には光輝さん以上に大切なお方がいるのです』

 

だがリリアーナにとって、光輝以上に大切な者がいた。

 

『ほう、勇者様より魅力的なのか、その者とは』

『はい、そのお方は、光輝さんよりもステータスが上だったそうです』

『もしや……辻風殿か?』

『……はい……』

 

勇者である光輝を差し置いて高ステータスを持つ者といえば、来以外にいない。

 

『そうか……彼は今他の者達と共に迷宮に潜っているのだろう?そこで辻風殿が何か功績を挙げれば、その者をお前の伴侶として相応しい者とみなすことにしよう』

『……ええ、そうですね。今は辻風様がお帰りになられるのを待つばかりです』

 

そこへ使いの一人が入って来た。その様子からかなりの急ぎの報せなのが判る。

 

『陛下、急ぎお伝えしたいことが……』

『何事だ』

 

使いの話にエリヒド国王の顔が徐々に青ざめていくのがリリアーナにも判る。嫌な予感を感じた。

 

使いの者が退くと、エリヒド国王はリリアーナに告げる。

 

『迷宮で一人犠牲が出たそうだ』

『ええ!? ……辻風様は……無事なのですか?』

『……非常に言いにくいのだが……その犠牲者は片刃の曲刀を装備していたそうだ』

『まさか……』

『そう、辻風殿だ』

 

リリアーナは犠牲者の名を聞くなり自室へ走り去ってしまった。召使によると、その後夜明けまで一人で泣き崩れていたそうだ。

 

ちなみに、エリヒド国王はハジメを貶すことはしなかった。理由は、リリアーナが慕っている来の親友と聞いているので、ハジメを貶すことはすなわち、来を貶すことと同義であるということだった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「辻風のことは残念だったな……あいつも香織や膵花と同じように、誰にでも優しかった」

 

リリアーナはまた泣いていたが、涙を拭いて乱れた精神を立て直した。

 

「えっと……改めて、お帰りなさいませ、皆様。無事のご帰還、心から嬉しく思いますわ」

 

リリアーナはそう言うと、ふわりと微笑んだ。香織や雫、膵花といった美少女が身近にいるクラスメイト達だが、その笑顔を見てこぞって頬を染めた。リリアーナの美しさには三人にない洗練された王族としての気品や優雅さというものがあり、多少の美少女耐性で太刀打ちできるものではなかった。

 

現に、永山組や小悪党組の男子は顔を真っ赤にしてボーっと心を奪われており、女子メンバーですら頬を薄っすらと染めている。異世界で出会った本物のお姫様オーラに現代の一般生徒が普通に接しろというのが無茶なのである。昔からの親友のように接することのできる香織達の方がおかしいのだ。

 

「ありがとう、リリィ。君の笑顔で疲れも吹き飛んだよ。俺も、また君に会えて嬉しいよ」

 

気障な台詞だが、その言葉に下心はない。だがそんな光輝ですら、今のリリアーナの頬を染めることはできなかった。

 

「とにかくお疲れ様でした。お食事の準備も、清めの準備もできておりますから、ゆっくりお寛ぎくださいませ。帝国からの使者様が来られるには未だ数日は掛かりますから、お気になさらず」

 

光輝達が迷宮での疲れを癒しつつ、居残り組にベヒモスの討伐を伝え歓声が上がったり、これにより戦線復帰するメンバーが増えたり、愛子先生が一部で〝豊穣の女神〟と呼ばれ始めていることが話題になり彼女を身悶えさせたりと色々あったが光輝達はゆっくり迷宮攻略で疲弊した体を癒したのだった……




次回
第十三閃 兎人を照らす陽の光

オリ主ヒロインにミレディ・ライセンを追加しようと思っていますが、入れてもいいと思いますか?

  • 入れてもいい(むしろ入れてくれ)
  • 原作重視(入れるな)
  • 死亡回避ならOK
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