ありふれた職業と共に一刀両断!!   作:籠城型・最果丸

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どうも、昨日誕生日を迎えたばかりの最果丸です。

お待ちかねの三連続投稿です。

今回は私の考えたオリジナルモンスターが登場します。


第十三陣 兎人族を照らす陽の光

ライセン大峡谷に悲鳴と怒号が木霊した。

 

兎人族達が岩陰に身を潜める。その数およそ四十人。そして上空から睥睨する体長およそ三~五メートル、鋭い爪と牙と先端が膨らみ、棘が付いている長い尾を持ったワイバーンのような魔物、ハイベリアが六体。兎人族達は絶体絶命の危機に瀕していた。

 

「は、ハイベリア……」

 

シアの震える声が肩越しに聞こえた。その声を聞いた途端、来はシアの入った籠を降ろす。

 

「……来さん? 何をするんですか?」

 

来は〝舞鱗〟に手を掛けてハイベリアを睨みつけながら言う。

 

「ハイベリアを六体全て墜とす。シアは今のうちに家族の許へ」

 

「……はい!」

 

シアが兎人族達の許へ駆けだしたのと同時に、一体のハイベリアが大きな岩と岩の間に隠れていた兎人族の下へ急降下し、地面に激突する寸前に一回転し、遠心力を乗せた尾で轟音を響かせながら岩を砕いた。兎人族が悲鳴と共に這い出してくるのを見て顎門を大きく開いた。腰が抜けて動けない子供を庇う男性の兎人族。

 

周りの兎人族は瞳に絶望を浮かべた。また家族が命を散らしてしまう、誰もがそう思った、その時、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『!?』

 

一つの閃光がハイベリアの頸を斬り落とした。直ぐ近くには兎人族が谷底にへたり込んでいる。胴体から離れた頸は大きく顎を開きながら切り口から血を空中に散らした。胴体からは血が噴き出し、頸が地面に付く前に倒れ込んだ。

 

「な、何が……」

 

子供を庇っていた男の兎人族が呆然としながら頸を斬り落とされたハイベリアとハイベリアの頸を斬り落とした()()()()()を交互に見る。

 

「【鳴ノ舞 〝円転電環(えんてんでんかん)〟】」

 

見慣れない武器を構えた人間の青年がよく分からないことを口にしたかと思えば、次の瞬間には上空に跳び上がっていた。上空では仲間の死にハイベリアの群れが怒りの咆哮を上げる。聴覚に優れた兎人族達には甲高い蒸気の噴き出した音に聞こえる。

 

そこに一人の人影が向かってくる。兎人族達には見覚えがありすぎる。今朝方、忽然と姿を消し、ついさっきまで一族総出で峡谷を捜しまわっていた女の子。皆この状況に酷く心を痛めて責任を感じていた。彼女を捜しているうちに間抜けにもハイベリアに見つかってしまった。これでは彼女を見つける前に一族が全滅してしまう、皆はそう悟り、一族の全滅を覚悟していた。だが……

 

その彼女はこちらに向かって走りながら手を振っているではないか。その表情には普段の明るさが現れている。誰も今の状況を信じられなかった。

 

「みんな~、助けを呼んできましたよぉ~」

 

その聞き慣れた声色が、これは現実だと一族に突きつけた。兎人族が一斉に彼女の名を呼んだ。

 

「「「「「「「「「「シア!?」」」」」」」」」」

 

 

跳び上がった青年はハイベリアの群れに突っ込んだ。いきなり跳び上がって来たので、流石のハイベリアも度肝を抜かれていた。青年はその隙を逃さず、雷を纏わせた刀を横に薙ぎ払った。刀身の軌道は環を描き、雷と共にハイベリアの頸を五つ斬り落とした。

 

 

シアは仲間の許へ走る。何度転んでも立ち上がり、再び前へ進む。兎人族の中から初老の男性がシアに声を掛けた。

 

「シア! 無事だったのか!」

「父様!」

 

親子は無事に再会し、互いの無事を喜んでいた。そしてハイベリアを斬り捨てた青年に向き直った。

 

「来殿で宜しいか?私は、カム。シアの父にしてハウリアの族長をしております。この度はシアのみならず我が一族の窮地をお助けいただき、何とお礼を言えばいいか。しかも、脱出まで助力くださるとか……父として、族長として深く感謝致します」

 

来に向かってハウリア族族長、カム・ハウリア他一同が深々と頭を下げた。

 

「お礼は受け取っておきます。ですが、いいんですか? そう簡単に人間を信用して……亜人は人間族にはあまりいい感情を持っていないでしょうに……」

 

亜人は被差別種族だ。人間族によって峡谷まで追い詰められた。にもかかわらず、兎人族達からは一切嫌悪感を感じない。

 

カムが苦笑いで返す。

 

「シアが信頼する相手です。ならば我らも信頼しなくてどうします。我らは家族なのですから……」

 

ハウリア族に感心している一方で、少し呆れている。

 

(一人の女の子のために一族ごと故郷を出るほど情が深いのはいい。だが彼らは警戒心が薄すぎる。それに戦闘能力も全く無い……)

 

「えへへ、大丈夫ですよ、父様。来さんは対価が無くても動いてくれるし、ハイベリアやダイヘドアだってたった一撃で倒しちゃうほど強いですからね。ちゃんと私達を守ってくれますよ!」

「彼がハイベリアを倒すのはこの目で見たが、あのダイヘドアまで倒してしまうような実力者なのか!? それなら安心だ」

 

周りの兎人族達も生温かい目で来を見ながら頷く。かなり強い部類に入るダイヘドアさえ()()()()()()()()()()()のか、そう思いながら頷いた。

 

「誰一人死なせないので安心してください。それと、樹海の案内を頼めますか?」

 

来の頼みをハウリア族が断れるはずもなく、あっさり了承した。

 

「お任せください」

「では行きましょう。一か所に長く留まっていると危険だ」

 

一行はライセン大峡谷の出口を目指して出発した。

 

 

四十二人の兎人族を引き連れて青年が峡谷を歩く。

 

大人数を引き連れているので当然ばっちり目立つ。数多の魔物が一行に襲い掛かったが、全て一瞬のうちに斬り飛ばされた。おかげで死傷者は無しだ。

 

一つの閃光の前にライセン大峡谷の凶悪な魔物が為す術無く命を散らした。その光景に兎人族達は唖然とし、来に畏敬の念を向けていた。

 

小さな子供達はつぶらな瞳を輝かせて圧倒的な力の一端を振るう来をヒーローの如く見ている。

 

「ふふふ、来さん。ちびっ子達が見つめていますよぉ~手でも振ってあげたらどうですかぁ~?」

 

子供に純粋な眼差しを向けられ、来は若干居心地が悪そうだ。そこにシアがうざったく指でつつく。

 

「解った、解ったから止めてくれ」

 

仕方なく来は苦笑いで子供達に手を振った。子供達は嬉しそうだった。そこへカムも入る。

 

「はっはっは、シアは随分と来殿を気に入ったのだな。そんなに懐いて……シアもそんな年頃か。父様は少し寂しいよ。だが、来殿なら安心か……」

(また何か勝手に安心されてる……本当に大丈夫かな……)

 

そうこうしている内に、一行はライセン大峡谷の出口に辿り着いた。見える限りに立派な階段がある。岸壁に沿って壁を削って造った階段は、五十メートルごとに反対側に折り返す構造になっている。岸壁の先には樹海の一角が見える。ここから半日歩けば樹海だ。

 

シアが不安そうに話しかけてきた。

 

「帝国兵はまだいるでしょうか?」

「もしまだ残っているならば、邪魔をするなら……」

「邪魔をするなら?」

 

周囲の兎人族達も耳を立てる。

 

()()()()()()()()()()

 

その言葉に兎人族達が恐れ戦く。シアは意を決したように尋ねる。

 

「解ってますか? 今まで倒してきた魔物と違って、相手は帝国兵……貴方と同じ人間族なんですよ? ……敵対できますか?」

 

シアの言葉に周りの兎人族達も神妙な顔つきで来を見る。小さな子供達は大人達と来を交互に見る。

 

「聖都教会……人間族が亜人を差別対象にしているのは、君達亜人が魔力を持っていないからだ。だがシア、君は魔力を有している。他の亜人達は君を忌み子とみなし排除しようとしているが、僕は君を〝運命(さだめ)に選ばれし者〟だと思っている。君のように魔力を有する亜人が増えれば、少なくとも人間族からの差別は無くなるはずだ。君は魔力を持って生まれたことを誇りに思え。君という亜人の希望を摘み取る輩は誰であろうと、滅ぼすまでだ」

 

兎人族の目に希望が宿った。シアは頬を少し染めて来を見ていた。

 

「もし仮に帝国軍が撤退せずに出口で待機しているのなら、一人でも生かせば君達兎人族が狙われる可能性が高い。だから、もし君達が生かしてくださいとお願いをしても、その願いだけはいずれ君達を必ず殺す! だから聞くことはできない!」

 

これは単なる正義感で言っているのではない。ギブ&テイクの関係にある。帝国軍のうちたった一人でも生かせばそれが近い将来、牙を剥いて兎人族達に襲い掛かる。そうなればその先にあるのは生き地獄だ。だから誰一人生かさない。それに、魔力を有している亜人族の存在が人間族に知られれば、聖都教会はもう亜人族を神から見放された獣とは言えなくなる。

 

「……はっはっは、分かりやすくていいですな。樹海の案内はお任せくだされ」

 

カムは来の言葉の真意を読み取った。そして来を信用に足る人物だと結論付けた。

 

 

一行は階段を順調に登っていく。亜人は魔力が無い代わりに身体能力が高い。しかもほとんど飲まず食わずだ。これだけで亜人の凄さが解る。

 

 

階段を登り切り、遂にライセン大峡谷から脱出を果たす。だがそこには、兎人族達の悪夢が居座っていた。

 

「おいおい、マジかよ。生き残ってやがったのか。隊長の命令だから仕方なく残ってただけなんだがなぁ~、こりゃあ、いい土産ができそうだ」

 

三十人の帝国兵が出口付近に居座っていた。周りには大型の馬車数台と、野営跡が残っている。全員カーキ色の軍服を纏い、剣や槍、盾を携えている。

 

来達を見るなり驚いた表情を見せたが、直ぐに喜色を浮かべて兎人族を見渡した。

 

「小隊長!白髪の兎人もいますよ! 隊長が欲しがってましたよね?」

「おお、ますますツイてるな。年寄りは別にいいが、あれは絶対殺すなよ?」

「小隊長ぉ~、女も結構いますし、ちょっとくらい味見してもいいっすよね?」

「ったく。全部はやめとけ。二、三人なら好きにしろ」

「ひゃっほ~、流石、小隊長! 話がわかる!」

 

帝国兵達は兎人族を完全に獲物と認識していた。その視線に兎人族、特に女性達は怯えて震えるだけだった。

 

周りの盆暗共が好き勝手騒いでいると、ようやく小隊長が来の存在に気づいた。

 

「あぁ? お前誰だ?兎人族……じゃあねぇよな?」

「当たり前だ」

「なんで人間が亜人族と一緒にいるんだ?しかも峡谷から。あぁ、もしかして奴隷商か?情報掴んで追っかけてきたとか? そいつぁまた商売魂が逞しいねぇ。まぁ、いいや。そいつら皆、国で引き取るから置いていけ」

 

バチッ。

 

来の中で、堪忍袋の緒が音を立てて千切れた。

 

()()()()()()()()()()()()()? 冗談じゃない。巫山戯る(ふざける)な。誰一人お前達には渡さない」

 

不遜な物言いが返って来た。小隊長の額に青筋が浮かび上がった。

 

「……小僧、口の利き方には気をつけろ。俺達が誰かわからないほど頭が悪いのか?」

「そう言えば帝国では強い奴が偉いそうだな。三十人の内誰か一人でも僕を殺せたら兎人族は好きにしていい。だがこっちも殺す気でいく。後で命乞いなんかするなよ?」

 

小隊長の怒りを煽る来。最早小隊長には来の隠している実力が見えなかった。

 

「あぁ~なるほど、よぉ~くわかった。てめぇが世間知らずの餓鬼だってことがな。ちょいと世の中の厳しさってヤツを教えてやる。震えながら許しをこッ……!?」

 

小隊長が盾を構えると、目にもとまらぬ速さで盾が綺麗に真っ二つになった。来は兎人族達に「下がれ」の合図を左手で出し、左足を大きく後ろに引いて前に屈み、黒い刀、〝舞鱗〟の柄に右手を掛けた。

 

「な、なんだ? コイツ……気配が変わった!?」

 

小隊長は直ぐに部下の兵士から盾を取り上げる。それと同時に〝舞鱗〟の刀身が少しだけ露わになる。

 

「【抜刀術・鳴ノ舞 〝紫電一閃〟】」

 

(空気が変わっている……どいつもこいつも怯えやがって……!)

 

「【〝七連〟】!」

 

技名を言い終わると同時に雷を伴って一筋の閃光となり、小隊長の横を神速で突き抜けた。そしてそのまま周りの帝国兵達の横を軌道で七芒星を描きながら縦横無尽に駆け回る。そして残りの一人の前で急停止し、刀を仕舞った。刀を仕舞う時に発する独特の歯切れのよい音が響くと、頸から血を噴き出し、二十九人分の頸が一斉にごとりと地面に落ちた。

 

残った一人は腰が抜けたのか、その場にへたり込んでいた。ほんの瞬きの間に仲間が殲滅されたのだ。彼らは帝国でも上位に並ぶ程の実力者達だ。故に悪夢だと思いたかった。だが突然頬にできた切り傷の痛みが、これは現実だと突きつける。

 

「ひぃ、く、来るなぁ! い、嫌だ。し、死にたくない。だ、誰か! 助けてくれ!」

 

兵士が怯えを大量に含んだ瞳を来に向ける。黒いコートを靡かせて歩み寄る様子は正に死神。

 

「た、頼む!殺さないでくれ! な、何でもするから! 頼む!」

「…他の兎人族はどうなった? 既に全員帝国へ移送済みか?」

「……」

 

兵士は恐怖で声を発することができなかった。来が今度はドスの効いた黒い声で再び尋ねた。

 

「もう一度訊く。他の兎人族は全員帝国に移送されたのか?」

「……人数を絞って、既に移送済みだと……」

 

最後まで言い終わることなく兵士は頸を刎ねられた。

 

あまりの容赦の無さに息を呑んでいた。彼らの瞳には恐怖が宿っていた。それはシアも同じだった。だが、来に何かを尋ねようとして思いとどまった。階段を登る前に放たれた言葉を思い出したからだ。

 

『もし仮に帝国軍が撤退せずに出口で待機しているのなら、一人でも生かせば君達兎人族が狙われる可能性が高い。だから、もし君達が生かしてくださいとお願いをしても、その願いだけはいずれ君達を必ず殺す! だから聞くことはできない!』

 

「……行くぞ」

 

来は静かに出発の合図を出した。帝国兵の死体は一か所に集め、タール状に融解したフラム鉱石をかけて燃やした。死体の山を包む炎からは、帝国兵達が今まで殺してきたであろう亜人達の数だけ、火の粉が散った。

 

丁度そこに無傷の二台の馬車と一頭の馬がいたので、兎人族を馬が引く馬車に乗せる者、馬の無い馬車に乗せる者に分けた。するとそこへ、九十人程の兎人族が駆けてきた。

 

「族長! 無事だったんですね!」

「お前達……帝国に移送されたはずじゃ?」

「そのことで話が。実は……」

 

 

帝国兵に捕まった百人以上の兎人族は、何人かの老人や赤子を殺された後、帝国へ移送されるために馬車に乗せられた。だが、兵士が馬を走らせようと鞭を打った瞬間…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごはっ!?」

 

その兵士は()()()()に串刺しにされた。帝国兵は次々と馬車から降り、辺りを見回した。その時、また一人、竹に串刺しにされた。彼らの頭上には、竹のような長い脚を八本持つ、体長十二メートル、体高十八メートルの蜘蛛のような魔物が立っていた。異様に脚の長い蜘蛛が次々と帝国兵を殺していくなか、その隙を盗んで檻に入れられた兎人族を解放し、そのまま生存者全員で逃げて行った。幸いだったのは、あの蜘蛛に兎人族が一人も殺されずに済んだことだ。

 

 

「……ということがあったのです」

「そうか……お前達もよく無事に生き残った」

 

兎人族が喜びに包まれる中、たった一人だけ、考察に耽っていた者が一人。

 

(竹のような脚を持つ蜘蛛みたいな魔物……まさか、〝クシザシ〟……!?)

 

「……来殿?」

「……はっ!? すまない、少し考え事をしていた」

 

こうして新たに九十名程兎人族を加え、一行は樹海へ向かって出発したのだった……




解説

サキュスラ(クシザシ)
Saquzla
体長10~12m
体高18m

樹海や竹林に生息する蜘蛛型のモンスター。四対の脚は木や竹と同じ成分からできている。周囲の風景に擬態して獲物を狩る。生息する場所によって脚の見た目と狩りの方法、擬態の方法が異なる。

樹海に生息するものは脚が木のような見た目で、仰向けになって獲物を待つ。獲物が通りかかると脚から糸を噴き出し、獲物を捕縛する。

竹林に生息するものは脚が竹とほとんど見分けがつかない。こちらは立って擬態する。獲物を脚で串刺しにして捕食する。

脚が植物と同じなので炎には弱い。


次回
第十四閃 皇帝✕錬成師(ガハルド対ハジメ)

オリ主ヒロインにミレディ・ライセンを追加しようと思っていますが、入れてもいいと思いますか?

  • 入れてもいい(むしろ入れてくれ)
  • 原作重視(入れるな)
  • 死亡回避ならOK
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