ありふれた職業と共に一刀両断!!   作:籠城型・最果丸

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キャラクター紹介

名前 白崎香織
性別 女性
年齢 17歳
身長 163㎝
体重 62㎏
天職 治癒師
得意武器 杖
得意属性 回復魔法
好物 ケーキ

ハジメサイドのメインヒロイン。来と膵花が八重樫流道場に通っている為、二人とは知り合いである。雫、膵花とは親友。光輝から好意を寄せられているが、本人はハジメ一筋である。
性格は基本的に温厚だが、ハジメのことになると、周りの目を気にすることなくハジメといちゃつく。(膵花はもっとヤバい)
本作では来の書き残した手紙を読んだ後、ハジメから告白され、晴れて恋人同士となる。雫は羨ましがっていたが、香織は雫もハジメの嫁の仲間入りしてもいいと思っている。ユエとは良好な関係を築いている。(但し正妻の座を譲る気はない)


第十七陣 亜人族との対峙

樹海の中を人間族と亜人族が共に歩いている光景に、目の前の虎の亜人はカム達に裏切り者を見るような眼差しを向けた。手には両刃の剣が握られている。周囲を数十人の亜人族が殺気を向けて包囲している。

 

「あ、あの私達は……」

「ここは僕が」

 

カムが何とか誤魔化そうとすると、来に止められた。虎の亜人の視線がシアを捉え、その眼が大きく見開かれた。

 

「白い髪の兎人族…だと? ……貴様ら……報告のあったハウリア族か……亜人族の面汚し共め! 長年、同胞を騙し続け、忌み子を匿うだけでなく、今度は人間族を招き入れるとは! 反逆罪だ! 最早弁明など聞く必要もない! 全員その場で処刑する! 総員かッ!?」

 

虎の亜人が攻撃命令を下そうとした瞬間、来の腕が一瞬ぶれ、一条の閃光が虎の亜人の頬を掠めた。

 

音も無く虎の亜人の頬に切り傷を作り、なおかつどこから攻撃されたのかも分からない……いや、攻撃を受けたとも思わない程の神速の攻撃に誰もが硬直する。

 

虎の亜人の耳元で来は囁く。何時の間にか視界から来の姿が消えていた。

 

「お前らの場所は既に把握済みだ。何処にいても僕の目から逃げられると思うなよ?」

「な、なっ……何時の間に!?」

 

視認不可能な攻撃を受けた上、味方の場所も把握されてしまっていることを知り、吃ることしかできなかった。霧の向こう側にいる虎の亜人の腹心の部下がいる場所に来が剣先を向けていることがそれを証明している。

 

「ハウリア族は僕の連れだ。お前らが彼らを殺そうというのなら、その前に僕がお前らを殺す」

 

殺意と強大な圧迫感が虎の亜人を襲う。冷や汗を大量に流しながら喚きだしそうな自分を必死に抑えるしかない。

 

(嘘だろ!? こんな、こんなものが人間だというのか!? 完全に化け物の類じゃないか……!)

「何初対面の人を化け物扱いしているんだ? これでも一応人間だからね?」

 

思考まで完全に読まれてしまった。顔面どころか身体中真っ青な虎の亜人は失神寸前だった。それでもなおまだマシな方で、最悪心臓発作を起こして死に至ってしまうかもしれなかった。ハウリア族の方まで震え上がっており、既に何人か気を失っていた。

 

「文字通り尻尾巻いて家に帰るのなら、さっきのことは水に流そうじゃないか。それでも敵対するというのなら……どうなるか解ってるよな?」

 

攻撃命令を下した瞬間、確実に殺される。虎の亜人はそう確信した。これでもフェアベルゲンの第二警備隊隊長である。この仕事に誇りと覚悟を持っていたので、たとえ部下が全滅しようが安易に退くことはできなかった。

 

「……その前に、一つ聞きたい」

 

掠れそうな声を絞り出して来に尋ねた。

 

「……何が目的だ?」

 

端的だが、返答次第ではここを死地と見定めて身命を賭す覚悟を感じ取ることができた。亜人達やフェアベルゲンに危害を加えるのならたとえ全滅してでも一矢報いると不退転の意志を込めて来を睨みつける。

 

「樹海の深部にある、大樹の下へ行きたい」

「大樹の下へ……だと? 何のために?」

 

神聖視されているが、大して重要視されていない〝大樹〟が目的と言われ、虎の亜人は若干困惑していた。

 

「そこに、真の大迷宮への入口があるはずだ。僕は七大迷宮を廻って旅をしている。ハウリア族は案内のために協力して貰っている」

「真の大迷宮? 何を言っている? 七大迷宮とは、この樹海そのものだ。一度踏み込んだが最後、亜人以外には決して進むことも帰ることも叶わない天然の迷宮だ」

「は? 何を言っている」

「なんだと?」

 

虎の亜人は訝しげに問い返す。

 

「そもそも七大迷宮を攻略すること自体、非常に難易度が高い。もしこの樹海そのものが七大迷宮の一つなら、亜人族は全員攻略者、ということになる。だが、亜人族だけが容易く迷宮を攻略して神代魔法を会得してもそれは不公平だし、元々魔力を持たない亜人族には神代魔法は宝の持ち腐れだ。七大迷宮というには樹海の魔物が弱すぎる。七大迷宮とは〝解放者〟が遺した試練だ。樹海そのものが七大迷宮だと?笑止千万。全く持って試練になっていない」

 

虎の亜人は困惑していた。樹海の魔物を弱いと断じることも、亜人族が容易に深部に行けるなら試練になっていないということも、解放者というのも、迷宮の試練とやらも、全てが聞き覚えの無い言葉ばかりだ。普段なら〝戯言〟と切り捨てているだろう。

 

だがしかし、来は適当なことなど何一つ言っていない。圧倒的に優位に立つ者がこの場で言い訳を言う訳が無い。その証拠に確信に満ちていて言葉に力がある。本当に大樹自体が目的だというのなら、部下の命を無意味に散らすより、目的を果たさせてすぐさま立ち去ってもらうほうがいい。しかし、これほどの脅威を野放しにすることもできない。虎の亜人にとってこの一件はあまりに荷が重すぎる。虎の亜人は来に提案した。

 

「……お前が、国や同胞に危害を加えないというのなら、大樹の下へ行くくらいは構わないと、俺は判断する。部下の命を無意味に散らすわけにはいかないからな」

 

周囲の亜人族達に動揺が広がった。樹海の中で、侵入してきた人間族を見逃すということ自体、異例なのだ。

 

「だが、一警備隊長の私ごときが独断で下していい判断じゃない。本国に指示を仰ぐ。お前の話も、長老方なら知っておられる方もおられるかもしれない。お前に、本当に含むところがないというのなら、伝令を見逃し、私達とこの場で待機しろ」

 

この提案は限界の瀬戸際の譲歩だ。樹海に侵入した他種族は問答無用で処刑される。本当なら今すぐにでも処断したくて仕方ないはず。だが、そうすれば間違いなく部下の命を失うことになる。それを避け、かつ、来という危険を野放しにしないための瀬戸際の提案。

 

来は、部下思いの良い人だと、感心した。今ここで虎の亜人達を殲滅すればデメリットの方が圧倒的に大きいし、そもそも殲滅する気などない。ただ大樹の下へ行きたいだけである。

 

「……承知した。先程の言葉、曲解せずに素のまま伝えてくれ」

「無論だ。ザム! 聞こえていたな! 長老方に余さず伝えろ!」

「了解!」

 

虎の亜人の言葉と共に部下の一人が霧の奥に消えていった。来は、それを確認すると、構えていた〝舞鱗〟を回転させて鞘に仕舞い、警戒を解いた。空気が一気に弛緩する。それに、ホッと一息吐くと共に、あっさりと警戒を解いた来に訝しそうな眼差しを向ける虎の亜人。中には、〝今なら!〟と臨戦態勢に入っている亜人もいる。それに気づかないはずもなく、不敵な笑みを零す。

 

「お前達が攻撃するよりも早く、お前達の頸が飛ぶことになるが……それでもいいのか?」

「……いや。だが、下手な動きはするなよ?我らも動かざるをえない」

「解っている」

 

包囲はそのままだが、ようやく一段落着いた。カム達にも安堵の息が漏れた。だが、彼らに向けらる視線は、来に向けられるものより厳しいものもあり、居心地は相当悪そうだ。

 

しばらく重苦しい雰囲気が周囲を満たすが、そんな雰囲気に耐えられなくなったのか、それとも場を和ませるためか、シアがちょっかいを出し始めた。苦笑いしながら相手をする来に、少しずつ空気が弛緩していく。敵地のど真ん中だというのに、いきなりイチャつき始めた(ように亜人達には見えた)来に呆れの視線が無慈悲にも突き刺さる。何度も言うが、来には膵花という最愛の妻がいる。

 

時間にして一時間程して、急速に近づいてくる気配を感じ取った。

 

場に再び緊張が走る。

 

霧の奥から数人の新たな亜人達が現れた。彼らの中央にいる初老の男、彼こそが虎の亜人が言っていた長老の一人なのだろう。流れる美しい金髪に知性を備える碧眼、その身は細く、ターツェルの鼻息で吹き飛んでいきそうな軽さを感じさせる。威厳に満ちた容貌は、幾分皺が刻まれているものの、逆にそれがアクセントとなり美しさを引き立てる。何よりも特徴的なのが、その尖った耳である。彼は、恐らく森人族(エルフ)なのだろう。

 

「ふむ、お前さんが問題の人間族かね? 名は何という?」

「来、辻風来と申します」

「私は、アルフレリック・ハイピスト。フェアベルゲンの長老の座を一つ預からせてもらっている。さて、お前さんの要求は聞いているのだが……その前に聞かせてもらいたい。〝解放者〟とは何処で知った?」

「オルクス大迷宮の奈落の底に位置する、解放者の一人、オスカー・オルクスの隠れ家です」

 

フェアベルゲンでは解放者という単語と、〝オスカー・オルクス〟という人物の名は長老達と極僅かな側近しか知らない。アルフレリックは内心驚愕していた。

 

「ふむ、奈落の底か……聞いたことがないがな……証明できるか?」

 

証明しろと言われ、取り敢えず隠れ家にあったオスカーの遺品や非常に純度の高い魔石を〝板葛籠〟から取り出した。

 

「こ、これは……こんな純度の魔石、見た事がないぞ……」

 

アルフレリックの隣に立つ虎の亜人が思わず声を上げた。

 

「そしてこれがオスカー・オルクスが着ていたコートと付けていた指輪です」

 

確かに来はオスカー・オルクスの骸が羽織っていた衣服を借用している。そしてオルクスの指輪も指に嵌めているままだ。指輪に刻まれた紋様を見てアルフレリックは目を見開いた。そして、落ち着かせるようにゆっくり息を吐く。

 

「なるほど……確かに、オスカー・オルクスの隠れ家に辿り着いたようだ。他にも気になるところがあるが……よかろう。取り敢えずフェアベルゲンに来るがいい。私の名で滞在を許そう。ああ、もちろんハウリアも一緒にな」

 

周囲の亜人達だけでなくカム達ハウリアも驚愕の表情も浮かべた。虎の亜人を筆頭に、猛烈に抗議の声が上がる。かつてフェアベルゲンに人間族が招かれたことなどなかったから、無理もない。

 

「彼等は、客人として扱わねばならん。その資格を持っているのでな。それが、長老の座に就いた者にのみ伝えられる掟の一つなのだ」

「ありがとうございます……ん? 滞在?」

「大樹の周囲は特に霧が濃くてな、亜人族でも方角を見失う。一定周期で、霧が弱まるから、大樹の下へ行くにはその時でなければならん。次に行けるようになるのは十日後だ。……亜人族ならだれでも知っているはずだが……」

「……は?」

 

来は案内役のカムの方を見た。そのカムはと言えば……

 

「あっ」

 

まさに、今思い出したという表情をしていた。これには流石の来も額に青筋を浮かべてしまう。

 

「……カムさん?」

「あっ、いや、その何といいますか……ほら、色々ありましたから、つい忘れていたといいますか……私も小さい時に行ったことがあるだけで、周期のことは意識してなかったと言いますか……」

 

しどろもどろになって必死に言い訳するカム。しかし来のジト目に耐えられなくなり、遂に逆ギレを起こした。

 

「ええい、シア、それにお前達も! なぜ、途中で教えてくれなかったのだ! お前達も周期のことは知っているだろ!」

「なっ、父様、逆ギレですかっ! 私は、父様が自信たっぷりに請け負うから、てっきりちょうど周期だったのかと思って……つまり、父様が悪いですぅ!」

「そうですよ、僕たちも、あれ? おかしいな? とは思ったけど、族長があまりに自信たっぷりだったから、僕たちの勘違いかなって……」

「族長、何かやたら張り切ってたから……」

 

シアの逆ギレ返しを皮切りに他の兎人族達も目を逸らしながら責任を擦り付ける。

 

「お、お前達! それでも家族か! これは、あれだ、そう! 連帯責任だ! 連帯責任! 来殿、罰するなら私だけでなく一族皆にお願いします!」

「あっ、汚い! お父様汚いですよぉ! 一人でお仕置きされるのが怖いからって、道連れなんてぇ!」

「族長! 私達まで巻き込まないで下さい!」

「バカモン! 道中の、来殿の容赦のなさを見ていただろう! 一人で罰を受けるなんて絶対に嫌だ!」

「あんた、それでも族長ですか!」

 

亜人族の中でも情の深さは随一の種族である兎人族。その彼等が、ぎゃあぎゃあと騒ぎながら互いに責任を擦り付け合っていた。

 

(情の深さは何処に行った……)

 

青筋を浮かべた来が一言、ハウリア達の許に歩み寄る。

 

「もしもーし、聞こえますか?」

 

来に気がついたハウリア達の表情が引き攣る。

 

「まっ、待って下さい、来さん! やるなら父様だけを!」

「はっはっは、何時までも皆一緒だ!」

「何が一緒だぁ!」

「来殿、族長だけにして下さい!」

「僕は悪くない、僕は悪くない、悪いのは族長なんだ!」

 

喧々諤々に騒ぐハウリア達に鉄槌が下されようとしていた。

 

「……こんなところで揉めてないで、早く行きますよ」

「「「「「はい……」」」」」

 

揉めていたハウリア達を抑え、再び歩き出したのだった……




次回
第十八閃 運命の会議

オリ主ヒロインにミレディ・ライセンを追加しようと思っていますが、入れてもいいと思いますか?

  • 入れてもいい(むしろ入れてくれ)
  • 原作重視(入れるな)
  • 死亡回避ならOK
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