今回も本文が短くなったので閑話を入れました。
キャラクター紹介
名前 プリズム・ヘールボップ
性別 女性
年齢 25歳
身長 179cm
体重 60kg
天職 拳士
得意武器 武具
得意属性 虹
超能力 千里眼
誕生日 霜月二十三日
星座 射手座
好物 焼鳥
ハジメ達とは違う世界線からトータスへ転移した異世界人。来や膵花とは知り合いで、長い付き合いになる。トータスでも女性に人気な光輝を殴り飛ばした唯一の女性。彼女曰く、眩しすぎる位に気障らしい。
性格は頼れる姉御肌で、元居た世界では多くの冒険者に慕われていた。彼女には来とは別に気になっている男性がいるらしい。
本作では光輝を殴り飛ばすという偉業を成し遂げた初の女性キャラとなったヘールボップ。あまり本編では絡んでこないが、果たして、彼女がトータスに与える影響とは……?
「えへへ、うへへへ、くふふふ~」
同行を許されて上機嫌のシアは、奇怪な笑い声を発しながら緩みっぱなしの頬に両手を当ててクネクネと身を捩らせてた。発情した膵花のようなこの表情は、先程の真剣な表情とは打って変わって物凄く残念なものだった。
(これは私にメロメロになる日も遠くないですねぇ~)
「いや、絶対そこまでは行かないからね?」
「心を読まないでください!!」
シアは少しばかり調子に乗っている。そんなシアに向かって来はシアの心中を読み取って告げる。
「はぁ、シア、カム達と合流したら大樹の下へ向かうぞ。準備はできているな?」
「あ、はい。一応できてます」
「それはよかった」
シアと来が話をしていると、霧の中から数人のハウリア達が姿を現した。全員が忍を連想させる和服を着ている。来が課した最終試験として魔物の討伐を終えたようだった。手には魔物の部位を持っている。その内の一人がカムだった。
シアは久しぶりに再会した家族に頬を綻ばせる。本格的に修行が始まる前、気持ちを打ち明けたときを最後として会っていなかったのだ。たった十日間とはいえ、文字通り死に物狂いで行った修行は、日々の密度を途轍もなく濃いものとした。そのため、シアの体感的には、もう何ヶ月も会っていないような気がしたのだ。
早速、父親であるカムに話しかけようとするシア。報告したいことが山ほどあるのだ。しかし、シアは話しかける寸前で、発しようとした言葉を呑み込んだ。カム達が発する雰囲気に違和感を感じたからだ。
カムはシアを一瞥すると仄かに笑みを浮かべたが、直ぐに来へ視線を戻す。
「師範、最終試験の魔物、誰一人欠けることなく無事に討伐致しました。これがその魔物の部位でございます」
「し、師範?と、父様?何だか雰囲気が……」
父親の言動に戸惑いの声を発するシアをさらりと無視して、カム達は、この樹海に生息する魔物の中でも上位に位置する魔物の牙やら爪やらをバラバラと取り出した。
「……一体だけでよかったんだが?」
最終試験の課題は、一チーム一体、上位の魔物を狩ってくることだ。だが、部位だけでも軽く十体は超えていた。来の疑問に対し、カムは声を張り上げて答えた。
「魔物を狩っている最中、別の魔物が我々に襲い掛かってきたので、一体残らず狩り尽くしました」
「大隊長の仰る通りです。あの程度、今の我々の敵ではありませんでした」
「無論一体ずつ丁寧に止めを刺しました」
「流石にあの数は少し手こずったけど……結果オーライね」
「負傷者、死亡者共にいませんでした」
「それが何よりの幸いでした」
全員、元の温和で平和的な兎人族の面影を少し残しつつも、魔物を殺すことに躊躇を覚えなくなっていた。
それを呆然と見ていたシアは一言、
「……誰?」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ど、どういうことですか!? 来さん! 父様達に一体何がっ!?」
「……少し
「少しどころじゃないじゃないですかぁ! 何をどうすればこんな有様になるんですかっ!? 完全に別人じゃないですかっ!」
「……ごめん、シア」
彼等が下手なドラマを見せる度に雷(物理的)を落とし、跳躍素振り千本をやらせ続けた結果、元の温厚さは戦いでは消え失せ、来の呼び方も〝来さん(兄ちゃん)〟から〝師範〟に変わった。
「……〝刃卯鱗亜〟の諸君、よく無事に戻ったな。魔物の素材を一か所に集め終えた後、我らが師範と我が愛娘シアに〝刃卯鱗亜〟を改めて紹介しようではないか」
よく見たら男衆だけでなく女子供、果ては老人に至るまで全員が和服を着ているではないか。左胸のところには縦書きで〝刃卯鱗亜〟と漢字で刺繍がされてある。そしてシアのいる位置からは見えないが、背中にも〝兵
「……え? 〝刃卯鱗亜〟? 何か前のハウリアから大分変ってる気がするんですが……父様! みんな! 一体何があったのです!? まるで別人ではないですか! さっきから口を開けば訳の分からないことばかり……正気に戻って下さい!」
縋り付かんばかりのシアにカムは、ギラついた表情を緩め前の温厚そうな表情に戻った。それに少し安心するシア。
しかし次の瞬間、シアは致命傷レベルのショックを受けることになる。
「シアよ……私達は正気だ。師範のお陰で私達は強くなれた。あの時の弱い私達は一度腹を切って死んだ。私達は生まれ変わったのだ」
「(ガーン)」
腹を切ったというのは勿論比喩である。
「やっぱり別人ですぅ~! 優しかった父様は、もう死んでしまったんですぅ~、うわぁ~ん!!」
「落ち着けシア。優しさなら
「うわぁぁぁん!! もう騙されないですぅ~!!」
ショックのあまり泣きじゃくりながら踵を返して樹海の中に消えようとしたが第一歩目で転げた。何時の間にかシアの左足首にはボーラが巻き付いていた。すばしっこい生物や飛んでいる生物を捕まえる時に使うアレである。
「ぐすっ……ひっぐ……もう、何なんですかぁ~」
「大丈夫ですか?」
倒れたシアに少年が手を差し伸べる。
「あっ、ありがとうございます」
「いえ、お気になさらず。男として当然のことをしたまでですから、
「あっ、姉上?」
少年は他の刃卯鱗亜達が持つ打刀よりも短い小太刀(体格的な問題)を装備しており、左目には眼帯をしている。(隻眼になったわけではなく、完全に少年の趣味)
少年はスタスタと来の前まで歩み寄り、跪いた。
「報告がございます」
「何だ?」
「魔物の追跡中、完全武装した熊人族の集団を発見いたしました。場所は、大樹へのルート。恐らく我々に対する待ち伏せと思われます」
「御苦労、パル。下がって休むといい」
「はっ」
パルと呼ばれた少年は下がった。パルと入れ替わるようにカムが来の前に跪く。
「宜しければ、熊人族の相手は我ら〝刃卯鱗亜〟にお任せ願えませんでしょうか」
「……できるのか?」
「然様でございます」
来は一度、瞑目し深呼吸をすると、ゆっくりと目を開いた。
「〝刃卯鱗亜〟の諸君、最終試験は全員文句無しの合格だ。依って、これより〝刃卯鱗亜〟は正式な魔物討伐部隊だ。そうだ、まだ〝刃卯鱗亜〟の紹介がまだだったね」
カムが声を張り上げた。
「〝刃卯鱗亜〟隊律其ノ壱、〝刃卯鱗亜〟の刃は刀の刃! 敵を切り裂く必殺の
「「「「「「「〝刃卯鱗亜〟の刃は刀の刃! 敵を切り裂く必殺の刃!」」」」」」」
ちなみに〝刃卯鱗亜〟はハジメが趣味で読んでいた小説を読んで影響されたものである。
「其ノ弐、〝刃卯鱗亜〟の卯は兎の卯! すなわち我ら兎人族なり!」
「「「「「「「〝刃卯鱗亜〟の卯は兎の卯! すなわち我ら兎人族なり!」」」」」」」
〝刃卯鱗亜〟という文字はカム達がお願いをして来に入れて貰ったものである。
「其ノ参、〝刃卯鱗亜〟の鱗は〝舞鱗〟の鱗! 我らが師範の愛刀の名から賜ったものである!」
「「「「「「「〝刃卯鱗亜〟の鱗は〝舞鱗〟の鱗! 我らが師範の愛刀の名から賜ったものである!」」」」」」」
途中からカムに代わりパルが声を張り上げて隊律を読み上げる。
「其ノ肆、〝刃卯鱗亜〟の亜は亜人の亜! 亜人であることを誇れ!」
「「「「「「「〝刃卯鱗亜〟の亜は亜人の亜! 亜人であることを誇れ!」」」」」」」
「うわぁ~ん、やっぱり私の家族はみんなお腹をぱっか~んして死んでしまったですぅ~」
これは流石に変わり過ぎてしまった。と来は苦笑いした。普段の彼等は以前と同じく温厚なのだが、いざ戦いとなるとまるで人が変わったように戦闘モードになる。さっきから泣きじゃくっているシアの頭を来が撫でている。
「よし、熊人族の相手は頼んだ。決して殺してはいけない」
「「「「「「「「「はっ!!」」」」」」」」」
和服を羽織った刃卯鱗亜達が一斉に霧の奥へと駆けていった。
しくしく、めそめそと泣くシアの隣を少年が駆け抜けようとして、シアは咄嗟に呼び止めた。
「パルくん! 待って下さい! ほ、ほら、ここに綺麗なお花さんがありますよ? 君まで行かなくても……お姉ちゃんとここで待っていませんか? ね? そうしましょ?」
シアはまだ幼い少年だけでも元の道に連れ戻そうとしていた。傍に咲いている綺麗な花を指差して必死に説得している。かつてパルは花の大好きな心優しい少年だった。勿論今もそれは変わらないのだが…
…パルの返答は予想外のものだった。
「今は戦闘準備の最中です。今ここで花を愛でている場合ではありません。あまり古傷を抉らないで下さい」
「……え?」
流石に花が好きではなくなった訳ではなかった。ただ、戦闘中は花を愛でなくなった。ただそれだけのこと。ちなみにパルは今年十一歳である。
「それに……」
「そ、それに?」
〝シアお姉ちゃん! シアお姉ちゃん〟と慕ってくれて、時々お花を摘んで来たりもしてくれた少年は、今ここにあらず。
「訓練で失態を犯したかつての自分と決別すべく、『波楼羅』と名乗っています。仲間からは〝宵月の波楼羅〟と呼ばれてます」
「ちょっ、『波楼羅』ってどこから出てきたのです!? ていうか宵月ってなに!?」
「失礼、仲間が待っているのでもう行きます。では」
「あ、ちょっ……」
シアの必死の呼び止めも虚しく、パルは霧の奥へと姿を消してしまった。もうあの頃の優しい家族はもういない。(戦場のみ)何とも哀れな姿であった。
「……僕らも行こうか」
「うぅっ……はいぃ……」
来に宥められ、しくしくと泣きながらも渋々霧の奥へと歩き出すシアなのであった……
閑話 六彗星異界に集う
ターツェルの巣から命辛々逃げ帰って来たヘールボップ。彼女は馬車も無しにギルド支部まで爆走していた。
「はぁ、はぁ、何でアイツがここにいるんだよぉ~」
メルドを超えるステータスを持ちながら実は一度も一人でターツェルに勝ったことがないのだ。トータスに来る前は五人も仲間がいたが今は何処にいるかも分からない。
「今頃嬢ちゃん達どうしてるかな……死んじまったら許さないからね」
その頃ターツェルの巣では一匹を除いて狩り尽くされていた。
ブルックの町に入るや否や、町では大騒ぎであった。
「一体何が遭ったんだ?」
「何もないところから突然魔物の群れが現れたんだよ!」
突如町に体長一・五メートルの両生類型の魔物が十数体出現した。この魔物達もトータスには本来いない外来種であるが、ハルツィナ樹海のサキュスラや村跡のターツェルと比べると格段に弱い魔物である。
「……そうかい。この程度のモンスター、アタイ一人で十分だよ」
そう言うとヘールボップは一瞬で魔物の群れに突っ込んでいった。群れの中央に達すると同時に地響きが鳴り、衝撃で数体の魔物が飛び上がった。
「ちっ、町のど真ん中じゃ〝アレ〟が使えないじゃないか……」
彼女の言う〝アレ〟とは高威力の光線技である。しかし今は威力の落ちる昼間、それも町の真ん中である。そんな場所で交戦技を使おうものなら周囲に被害が広がってしまう。
「一体一体殴り殺していくんじゃあ間に合わない……早く全滅させないと……」
魔物の残りが五体になったところで突如攻撃を止め、同族の死骸まで歩み寄っていった。
「不味い! 今ここで死骸を喰われちゃ……」
近くで死骸を貪っていた一体の隙を突いて殴り殺したが、残る四体はそれぞれ一体喰ってしまっていた。
「遅かったか……皆早くここから逃げな!! 捻り潰されるぞ!!」
ヘールボップの怒号で町民はぞろぞろと魔物達から離れていく。その間にも四体の魔物は同族の死骸を貪り続ける。
「……こりゃ不味いことになっちまったな」
死骸が粗方喰い尽くされ、後に残されたのは体長十四メートルにまで巨大化した魔物達だった。そしていつの間にか五メートル級の中型の魔物まで出現していた。
「流石のアタイでも、あんな馬鹿でかい奴を殺すのは……時間が掛かるんだよぉぉぉぉ!!」
中型の魔物も残った死骸を貪り、七メートルまで巨大化してしまった。
(どうするんだ? アタイが一体を相手取っている間にも残りが人々を襲うし……〝アレ〟を使うしかないのか……?)
と、ヘールボップが悩んでいる間にも魔物達は破壊活動を続けている。
だが、次の瞬間……
「〝ジャイロブレード〟!!」
七メートルの魔物が切り裂かれた。
「〝フロストウェーブ〟」
巨大魔物の一体が一瞬で氷漬けにされる。氷漬けになっている間に何者かによって粉々に砕かれる。
「〝バサルトアッパー〟」
地面から勢いよく石柱が飛び出て、残った二体を纏めて天高く突き上げる。
「〝黒淵圧殺〟」
二体が徐々に球状に押し固められ、限界まで圧縮されたところで炸裂した。技を繰り出したと思われる五人が降り立った。
「あ……ああ……」
ヘールボップには繰り出された技の数々に見覚えがあった。自身の記憶に間違いが無ければ……恐らく彼等は……
「まさか……
ヘールボップの声に五人は気づいたようだ。五人はヘールボップを見ると、一斉に彼女の許へ駆け寄る。
「はい、ヘールボップ様」
「御無事で何よりでございます」
「姐さんもいたんだ~」
「やっと会えた……リーダーに逢えた」
「ただいま、プリズム」
「ひぐっ……皆何処に行ってたんだよぉ~」
ヘールボップと五人は抱き合って再会の喜びに浸っていた……
余談
プリズム・ヘールボップの苗字の由来はヘール・ボップ彗星という実在の彗星。
次回
第二十二閃 対峙のち旅立ち
IF編を書くタイミングで迷ってます。何時書いた方がいいですか?(但し書くなという意見は一切受けつけません)
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外伝をある程度進めてから
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今でしょ!
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別途執筆