ありふれた職業と共に一刀両断!!   作:籠城型・最果丸

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どうも、最果丸です。

遂にシアとハジメ、香織が接触を果たします。ですが、再会には至りません。雫と膵花はオルクス大迷宮にいます。

ここまで三種の神器に因んだ名前のアーティファクトが登場してきました。(八咫と草薙)気づけば名前の方は〝八尺瓊〟を残すのみとなりました。果たして、その名は何処で付けられるのでしょうか……


第二十五陣 ゆったり休息まったり準備

夕食の時間になり、来はベッドで寝ているシアを起こした。

 

「あれぇ? もうご飯のお時間ですかぁ?」

「そうだよ。おはようのとこ悪いけど、髪撥ねてるよ」

「えっ!? わわわ、早く整えないと……」

 

シアは慌てて自分の髪を手櫛で申し訳程度に整える。

 

「……よし、これで何とかなったでしょう」

 

髪を急いで整えたシアを伴って、来は階下の食堂に向かった。

 

「……何でこの人達まだそこにいるんだ?」

 

チェックインの時にいた客が、何故か全員まだ其処にいた。

 

冷静を装って席に着く来とシア。すると、ほんのり頬を赤く染めた少女が給仕に来た。瞳の奥の好奇心が隠しきれていない。

 

「ご、ご注文はいかがなさいますか?」

「この定食を二人前で頼む」

「は、はい。か、かしこまりました」

 

取り敢えず量が多めの定食を二人前頼んだ。樹海の魔物の素材のお陰で金銭はたんまり持っているが、来は庶民育ちだったのでそれ程豪華ではない一品を選んだ。

 

「お、お待たせしました……」

 

少女は震えた声で料理を運んできた。それなりに美味しそうに盛り付けてある。

 

「もぐもぐ……美味しいです……」

「うん、久し振りに食べる料理は格別だね」

 

確かに久方振りの料理は美味だった。

 

でも、もう少し落ち着いて料理を堪能したかったと呟いた来なのであった。

 

 

風呂の時間。シアとは時間を分けている。シアが先で来が後だ。

 

「やっぱり一人は寂しいものだな……」

 

今の彼の許にはシアという仲間がいる。だが、入浴の時間は、孤独の苦しみを味わうことになるのであまり長く浸かりたくなかった。それでも疲れは大分取れるので結局時間一杯浸かってしまうのが彼。

 

「膵花……」

 

そこへ、上がったはずのシアが湯船から飛び出してきた。

 

「隙ありですぅ~」

「うわぁっ!?」

 

風呂に入っている時は索敵を解いているのでシアの存在にギリギリまで気づかなかった。

 

「シア!? もう上がったはずじゃ……」

「ふふふ、来さんが気を緩めるまで潜ってて気を緩めた瞬間に襲うというこの作戦、完璧ですよね!?」

「……」

「来さん? 聞いてますか?」

「……風呂に潜るんじゃない!」

「「ひぃぃぃぃ! ごめんなさぁぁぁぁい!!」」

 

風呂場に二箇所、雷が落ちた。一つは、シアに。もう一つは、陰からこっそり覗いていた少女に。

 

 

シアがベッドでぐーすか寝てる時でも、来は眠らなかった。というか記憶が戻ってから一睡もしていない。前に何度か眠ろうとしてみたのだが、いずれもあの惨劇を繰り返して見せられるだけだった。孤独の苦しみをここでも味わってしまう。特に苦痛なのが、悲痛に染まった膵花の顔を見ることだ。かなりストレスが溜まっており、いつ限界を来してしまうかも分からない。

 

「ごふっ……」

 

来は吐血してしまった。これもオスカーの隠れ家で休息していた時からずっと来を苦しめていた。隣に膵花がいないから安心して眠れない。無理に眠ろうとすれば悪夢がそれを許さない。来の細胞一つ一つが膵花の匂い、声、温度を欲している。宛ら禁断症状だ。不眠のストレスと膵花を欲する禁断症状の合わせ技が、来を苦しめる。

 

「……僕は絶対、生きて膵花と再び巡り会うんだ……」

 

そう言って神水を飲み、少しでも気を紛らわすために、一晩中自分の刀、舞鱗の手入れと、()()()()()()()()をしていた。

 

 

翌朝、朝食を摂った後で、シアは言ってきた。チェックアウトは昼なのでまだ数時間は部屋を使える。

 

「そうだ、来さん。私、服を見ておきたいんですけどいいですか?」

「ん? どうした? 今の服がきついのか?」

「いえ、替えの服も用意しておきたいな~と思いましてですねはい……」

 

シアは和服を気に入っていたのだが、数が少ないのと、もう少し軽装のものが欲しかったのだ。

 

「そうか、じゃあ買い出しも頼もうかな」

 

そういって来はシアにいくらか金銭を手渡した。シアは可憐な笑顔で部屋を後にした。

 

 

現在、シアは一人で町に出ていた。ただでさえ容姿端麗で愛玩用としても人気の高い兎人族のなかでも、青みがかった白髪という珍しい髪色をしているのだ。首に着けた奴隷用の首輪を模したチョーカーと、口元を隠す手拭がなければすぐにでも人攫いに遭っていただろう。尤も、今のシアは和服姿に刀を装備している。更に〝身体強化〟もある。一人で行かせても多分問題はないだろうと来が判断したのだ。万が一シアが人攫いに遭ってもチョーカーがシアの居場所を示しているので直ぐに駆けつけることができる。流石にシアが人攫いに遭うほどおっちょこちょいではあるまい。

 

町の中は、既に喧騒に包まれていた。露店の店主が元気に呼び込みをし、主婦や冒険者らしき人々と激しく交渉をしている。飲食関係の露店も始まっているようで、朝から肉の焼ける香ばしい匂いや、タレの焦げる濃厚な香りが漂っている。

 

道具類の店や食料品は時間帯的に混雑しているようなので、シアはまず衣服から揃えることにした。

 

キャサリンの地図には、きちんと普段着用の店、高級な礼服等の専門店、冒険者や旅人用の店と分けてオススメの店が記載されている。やはり彼女は有能だ。

 

シアは早速、とある冒険者向きの店に足を運んだ。ある程度の普段着もまとめて買えるという点が決め手だった。

 

その店は品揃え豊富、品質良質、機能的で実用的、されど見た目も忘れずという期待を裏切らない良店だった。

 

一つだけデメリットを挙げるとすれば……

 

「あら~ん、いらっしゃい♥可愛い子ねぇん。来てくれて、おねぇさん嬉しいぃわぁ~、た~っぷりサービスしちゃうわよぉ~ん♥」

 

身長二メートル強、全身に筋肉という天然の鎧を纏い、劇画かと思うほど濃ゆい顔、禿頭の天辺にはチョコンと一房の長い髪が生えており三つ編みに結われて先端をピンクのリボンで纏めているちょっと個性の強過ぎる人がいた。動く度に全身の筋肉がピクピクと動きギシミシと音を立て、両手を頬の隣で組み、くねくねと動いている。腕と脚、腹筋が丸見えの服装をしている。

 

シアは既に意識が飛びかけていた。

 

「あらあらぁ~ん? どうしちゃったの? 可愛い子がそんな顔してちゃだめよぉ~ん。ほら、笑って笑って?」

「あ、あはは……すみません……」

 

シアはぎこちない笑顔を作るのが精一杯だった。思わず「……人間?」と呟きかけたがそんなことをすれば確実に殺されるのが目に見えているのでぐっと堪えた。

 

 

ユエ「くしゅん」

 

 

「ふぅ~ん。それでぇ? 今日は、どんな商品をお求めかしらぁ~ん?」

 

ここに来がいれば直ぐにでも抱きついているだろうが、この場に彼はいない。シアは意を決して衣服を探しに来た旨を伝えた。キャラの濃い人は「任せてぇ~ん」と言うやいなやシアを担いで店の奥へと入っていってしまった。その時の、シアの目は、まるで戦場に赴く神風特攻隊の隊員のようだった。

 

結論から言うと、個性の強い人……もとい店長のクリスタベルの見立ては見事の一言でしかなかった。店の奥へ連れて行ったのも、シアが粗相をしたことに気がつき、着替える場所を提供するためという何とも有り難い気遣いだった。

 

シアは、クリスタベル店長にお礼を言い店を出た。その頃には、店長の笑顔も愛嬌があると思えるようになっていたのは、彼女?の人徳ゆえだろう。

 

「やはり人は中身ですよね……」

 

次は道具屋に回ることにしたシア。しかし、唯でさえ目立つシアだ。すんなりとは行かず、気がつけば数十人の男達に囲まれていた。冒険者風の男が大半だが、中にはどこかの店のエプロンをしている男もいる。

 

その内の一人が前に進み出た。この男、実は来達がキャサリンと話しているとき冒険者ギルドにいた男だ。

 

「シアちゃんで名前あってるよな?」

「え? あ、はい」

 

シアは、亜人族であるにもかかわらず〝ちゃん〟付けで呼ばれたことに驚いた表情をする。

 

シアの返答を聞くとその男は、後ろを振り返り他の男連中に頷くと覚悟を決めた目でシアを見つめた。他の男連中も前に進み出て、シアの前に出る。

 

「「「「「「シアちゃん! 俺の奴隷になれ!!」」」」」」

 

奴隷の譲渡は主人の許可が必要だが、昨日の宿でのやり取りでシアと来の仲が非常に近しい事が周知されている。まず、シアから落とせば来も説得しやすいだろう……とでも思ったのか。

 

告白を受けたシアはというと…

 

「……急いで買い出しを済ませなきゃ……」

 

……完全に上の空だった。

 

「ちょっ、ちょっと待ってくれ! 返事は!? 返事を聞かせてく『断ります』……ぐぅ……」

 

男は呻き、何人かは膝を折って四つん這い状態に崩れ落ちた。しかし、諦めが悪い奴はどこにでもいるようで、ましてやシアの美貌は他から隔絶したレベルだ。多少、暴走するのは当たり前である。(トータス限定)

 

「なら、なら力づくでも俺のものにしてやるぅ!」

 

最初に声を掛けてきた男が、雄叫びを上げながらシアに飛びかかった。

 

シアは男を視認することなくそれを躱し、地面に向かって煙玉を投げつけた。煙玉は炸裂し、周囲を煙で包んだ。煙が晴れると、既にシアの姿は消えていた。ハジメが見たら「あっ、ウサミミくノ一」って言うに違いない。

 

最初にシアに飛び掛かった男はその後、懲りていないのか今度は()()()()()()に声を掛けて氷漬けにされ、挙句の果てには股間に何度も攻撃を喰らって潰され、男としての死を迎えて漢女(おとめ)に生まれ変わることになるのだが、それはまた別の話。

 

「ひゅ~、危うく酷い目に遭うところでした……」

 

何とか撒いたようだ。

 

「早くお使いを済ませないと……うわぁ! すみません!」

 

今度は人にぶつかってしまった。やはりシアは歩くトラブルメーカーのようだ。

 

「いってぇな……何処見て歩いてんだウサミミくノ一のドジウサギ!」

「ちょっとぉ!? 何なんですかぁ!? いきなり初対面の人に向かってど、ドジウサギだなんて……」

 

ぶつかったのはシアと同年代位の少年だった。髪は黒く、容姿は平凡だった。だが、目つきは鋭かった。そしてウサミミくノ一と言った。

 

「兎人族を一人で歩かせるとは……お前のご主人様の顔を拝んでみたいもんだ」

()()()()()、もうこのくらいにしたら? 彼女、凄く落ち込んでるみたいだよ?」

「……ごめん、()()。あいつが見つからないからついカッとなっちまってな」

「ううん、気にしないで。()()()()()がごめんね?」

「いえ、大丈夫です。こちらこそすみませんでした」

 

香織と呼ばれた少女に謝られ、シアも謝り返した。そしてそそくさとその場を後にしたのだった。

 

()()()()、一体何処にいるんだろうね」

()()()()が生きてるって言ってんだ。きっとこの世界の何処かで生きてるだろ」

「もしかしたらもうこの町に来てたりしてね……なんて」

「もしそうならぶっ飛ばす」

「そういえば、さっきの子に()()()()のこと聞くの忘れてた」

「あっ……」

 

 

シアが宿に戻ると、来は丁度何かの作業を終えていた。

 

「お疲れ。町中が少し騒がしかったようだったが、何か遭ったのか?」

「……いえ、何でもありません……」

「そうか、無事でよかった」

 

服飾店の店長が個性の強すぎたり、男共に囲まれて煙玉で逃げる破目になったり、同年代の男の子にキレられたりしたが、概ね何もなかったとシアは流した。

 

「必要なものは全部揃ったか?」

「食料も沢山揃えましたから大丈夫です。にしても宝物庫ってホント便利ですよね~」

 

シアに渡した〝宝物庫〟がかなり役立ったようだ。

 

「さてと、シア。これは君のもう一つの武器だ」

 

そう言って手渡したのは刃渡り?が百センチ、取っ手が二十センチの大剣のような物体。しかも重そうな外見とは裏腹に軽量に作られている。

 

「な、なんですか、これ? 見た目に反して少し軽いんですけど……」

「そりゃあ、君用の大鋸なんだ。重過ぎたらうまく振れないと思ってね」

「へっ、これが……ですか?」

 

大鋸とは言うものの、これには刃が一本も無い。誰が見ても棍棒にしか見えないだろう。

 

「今は待機状態だ。取り敢えずそれに魔力を流してみてくれ」

「えっと、こうですか? ……ッ!?」

 

指示通りに大鋸らしき武器に魔力を流してみると、近未来を思わせる機械音を響かせながら無数のプラズマ刃が飛び出し、回転を始めた。見た目は完全にチェーンソーだ。

 

草薙と命名したこのチェーンソー型の大剣は文字通り()()()()()()()()()()()が自慢のシア用の武器だ。更に魔力を流すことで回転速度を速めることもできる。草薙という名がついているが、草どころかタウル鉱石製の壁すら切断してしまう。

 

来が一晩中かけて作っていたのがこの武器で、シアが買い出しに行っている時に最終調整をしていたのだ。

 

「腰の刀が使えない状態の時に使うといい。これから何があるか分からないからね。僕の指南を受けたとはいえ、まだ十日しか経っていない。シアは大事な仲間なんだから、死なれたら困る」

「来さん……ふふ、大丈夫です。私、まだまだ強くなって、どこまでも付いて行きますからね!」

 

シアは嬉しそうに草薙を抱く。ちなみに待機状態である。大鋸の贈り物に大喜びする美少女という異様な図が出来上がっているが、気にしてはいけない。

 

はしゃいでいるシアを連れて、宿のチェックアウトを済ませた。宿の少女が来達を見ると頬を染めるが一々相手にする暇がない。

 

外に出ると太陽は天頂近くに登り燦々と暖かな光を降らせている。後ろではシアが頬を緩めて来を見ている。

 

「行こうか。〝ライセン大峡谷に〟」

「はい!」

 

白狐の剣士と兎の少女は、まだ見ぬ大迷宮に向かって、一歩を踏み出した……




次回
第二十六閃 突入

IF編を書くタイミングで迷ってます。何時書いた方がいいですか?(但し書くなという意見は一切受けつけません)

  • 外伝をある程度進めてから
  • 今でしょ!
  • 別途執筆
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