ありふれた職業と共に一刀両断!!   作:籠城型・最果丸

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どうも、回答数が少ないとはいえ、アンケートの投票数が回答ごとにあまり大きな差が無いという現実にIF編の出し方を改めて構想し直している最果丸です。

遂にライセン大迷宮編が終わりました。この章からはティオとミュウが登場し、オリ主と原作主、オリヒロが再び会合します。


この回は前半が滅茶苦茶な展開になりました。


第六章 新たなる出会いと再会
第三十一陣 異変


来とシア、ミレディは透明なカプセルの中に入っていた。

 

「じゃあ、準備はいいかな?」

「ああ」

「はい!」

「水路、オープン!」

 

ミレディは重力魔法で部屋の壁を移動させ、脱出用の水路を出現させた。

 

「一同、いっきま~す!」

 

そしてカプセルを乗せた床が動き出し、カプセルが水路に落下する。水路に突入したカプセルは激流で満たされた地下トンネルのような場所を猛スピードで流されていた。

 

「もう少しマシな脱出方法とか無かったんですかぁ~!!」

「これしか用意して無いんだよぉ~!!」

 

カプセルの中は盛大に荒れていた。中に入っている三人はカプセルが何度も壁にぶつかった衝撃でぶつかり合っていた。

 

何度も壁に衝突するうちに、カプセルは傷だらけになる。

 

と、その時、来達の視界を魚群の影が覆った。今流れている場所は、他の川や湖とも繋がっている地下水脈のようだ。魚達は激流の中を逞しく泳いでいき、流されている三人を追い越していく。

 

と、背後からウツボのような魚がカプセルに襲い掛かった。

 

シアは驚いた拍子にカプセルの開閉ボタンに誤って触れてしまい、激流の中カプセルが開いてしまった。三人は激流に放り出された。

 

 

町と町、あるいは村々をつなぐ街道を一台の馬車と数頭の馬がのんびりと進んでいた。馬車には十五、六歳の少女と巨漢の漢女が乗っており、その周囲を馬に乗った冒険者の男女四人(男三人女一人)が護衛している。

 

「ソーナちゃぁ~ん、もうすぐ泉があるから其処で少し休憩にするわよぉ~」

「了解です、クリスタベルさん」

 

漢女の方は以前ブルックの町でシアが世話になった服飾店の店長、クリスタベルだった。隣に座っている少女は〝マサカの宿〟の看板娘ソーナ・マサカである。常人と比べて好奇心と脳内の桃色部分が多いが普通の少女だった。

 

この二人、現在、冒険者の護衛を付けながら、隣町からブルックへの帰還中なのである。クリスタベルは、その巨漢からも判る通り凄まじく強いので、服飾関係の素材を自分で取りに行く事が多い。今回も仕入れ等のために一時、町を出たのだ。それに便乗したのがソーナである。隣町の親戚が大怪我を負ったと聞き、宿を離れられない両親に代わって見舞いの品を届けに行ったのだ。冒険者達は元々ブルックの町の冒険者で任務帰りなので、ついでに護衛しているのである。

 

ブルックの町まであと一日といったところ。一行は、街道の傍にある泉でお昼休憩を取ることにした。

 

泉に到着した一行が、馬に水を飲ませながら自分達も泉の畔で昼食の準備をする。ソーナが水を汲みに泉の傍までやって来た。そして、いざ水を汲もうと入れ物を泉に浸けたその瞬間、音を立てながら突如、泉の中央が泡立ち一気に水が噴き出始めた。

 

「きゃあ!」

「ソーナちゃん!」

 

悲鳴を上げて尻餅をつくソーナに、クリスタベルが一瞬で駆け寄り庇うように抱き上げ他の冒険者達のもとへ戻る。その間にも、噴き上げる水は激しさを増していき、遂には高さ十メートル以上に達する水柱となった。

 

この泉は街道沿いの休憩場所としては、よく知られた場所で、こんな現象は一度として報告されていない。それ故に、クリスタベルやソーナ、冒険者達も驚愕に口をポカンと開き、降り注ぐ雨の如き水滴も気にせず巨大な水柱を見上げた。

 

噴水の如く吹きあがる水の勢いに乗せられ、二人の少女を抱えた一人の剣士が飛び出した。一行は思わず目が飛び出た。十メートル近く吹き飛ばされ、そのまま一行の対岸側に落下した。

 

「「「「「「……」」」」」」

「な、何なの一体……」

 

言葉もない冒険者達とクリスタベル。ソーナの呟きが皆の気持ちを代弁していた。

 

 

「ぷはっ、危なかった……シア、ミレディ、無事か?」

 

何とか水面まで浮かび上がり、シアとミレディの安否を確認する来。しかし、しっかり抱えているから逸れはしなかったものの、二人の返事は無かった。

 

少女二人を抱えたまま岸へと上がる。仰向けにして寝かせたシアとミレディは青白い顔で血の気が無く、また大量に水を飲んでいたようで呼吸と脈が止まり、心肺停止状態にあった。

 

(不味い……早く水を吐かせないと窒息死してしまう……躊躇するな! 羞恥より人命を優先しろ!)

 

流石に二人同時に心肺蘇生法を施したことはない。というか今まで前例がない。両方救えるかどうかは分からないが施さねば救えるものも救えない。

 

意を決した来は二人に心肺蘇生法を施す。両方とも最優先だが、シアの方は咄嗟に身体強化を発動させているのでいくらか延命されている可能性がある。だがミレディにはそんな手段などない。どちらにしろ一刻も早く水を吐かせないと二人共溺死してしまう。

 

何度か人工呼吸を施した後、先ずミレディが、その直後にシアが水を吐き出した。水が気道を塞ぐのを防ぐために顔を横に向ける。

 

「こほッこほッ……らーちゃん?」

「ケホッケホッ……来さん?」

「シア、ミレディ、助かってよか……!?」

 

二人共無事に救えてホッと一息つく来。そんな彼をぼんやりと見つめていたシアは突如、来に抱きつきそのまま接吻をした。予想外の反応だったのと、至近距離であったことから、避ける隙も無かった。

 

「んっ!? んー!!」

「あむっ、んちゅ」

 

シアは両手で来の頭を抱え込み、両脚を腰に回して完全に身体を固定すると遠慮も容赦もなく舌を来の口に捩じ込んだ。だが、シアの剛腕をものともせず、あっさりと押し退けてしまった。シアの表情は言うまでもなく、悲しそうにしていた。

 

実は何度目かの人工呼吸の時、何故かシアには自分が惚れた相手に接吻されていることがわかっていた。体は思うように動かず、意識もほとんどなかったが、水を飲んだ瞬間、咄嗟に発動させた身体強化がそのような特異な状況をもたらしたのだろうか。

 

何度もされる接吻に、シアの感情メーターは振り切り、理性が融けてしまった。逃がすものかと、来の身体をしっかりと固定すると無我夢中で接吻を返した。

 

一方、そんな光景を見ていたミレディはというと、少し不機嫌そうにしていた。

 

「わっわっ、何!? 何だったんですか、さっきの状況!? す、すごい……濡れ濡れで、あんなに絡みついて……は、激しかった……お外なのに! ア、アブノーマルだわっ!」

 

そこへ妄想過多な宿の看板娘ソーナが寄って来た。そして「あら?あなた確か……」と体をくねらせながらシアを記憶から呼び起こすクリスタベル。そして、嫉妬の炎を瞳に宿し、自然と剣にかかる手を必死に抑えている男の冒険者三人とそんな男連中を冷めた目で見ている女冒険者だった。

 

(まさか蘇生直後に襲い掛かってくるとは……流石に反応できなかったぞ……でも、もしこれがシアじゃなくて膵花とだったら……って何考えてるんだ僕は!)

 

息を荒げてから髪を掻き上げる来。そして最愛の妻とのえっちい妄想で勝手に赤面してしまうというお茶目さも見せてしまう。

 

「うぅ……押し退けるなんて酷いです……来さんの方からしてくれたじゃないですかぁ~」

「いや、あれは歴とした救命措置で……」

「うへへ~」

「シア、笑い方が……いいか、あれはあくまで救命措置で、深い意味はないんだ」

「そうですか? でも、キスはキスですよ。このままデレ期に突入ですよ!」

「ないよ!」

 

視線を感じ、来の視線がソーナに向いた。ソーナは体を震わせると、一瞬で顔を真っ赤にした。

 

「お、お邪魔しましたぁ! ど、どうぞ、私達のことは気にせずごゆっくり続きを!」

「え?あっ、ちょ……」

 

踵を返そうとするソーナの首根っこを踵を返そうとするソーナの首根っこをクリスタベルが摘む。そしてそのまま来達の許へと歩み寄ってきた。

 

「あっ、店長さん」

「シア、知り合いか?」

「はい、以前ブルックの町でお世話になった服飾店の店長さんです」

「そうだったのか……ところでミレディ、さっきから顔色が優れないようだが、どうかしたのか?」

「あ、あ……ば…ぐへぇ!?」

 

ミレディが何か言いかけていたようだが直前でシアに殴られた。その表情は凍りつくようだったという。

 

「ちょっと! 何するのさシーちゃん!」

「人を見た目で判断しちゃダメです!」

「あらぁん? そこで何を話していたのかしらぁん?」

 

直ぐ近くまでクリスタベルが寄って来ていた。

 

「「い、いえ! 何でもありません!!」」

 

ミレディとシアは揃って青白い顔で否定した。クリスタベルは少し首を傾げていたようだが、聞き流すことにしたようだ。

 

この場所について聞いた結果、ブルックの町から一日ほどの場所にあると判明し、来達も町に寄って行くことにした。馬車に便乗させてくれるというので、その厚意に甘えることにした。濡れた服を着替え、道中、色々話をしながら、暖かな日差しの中を馬の足音に包まれながら進んでいく。

 

新たな仲間と共に二つ目の大迷宮攻略を成し遂げ、更にもう一人仲間を加えた来。馬車の荷台に腰掛け、陽の光を浴びながら一休みするのであった…

 

 

「ふふっ、あなた達の痴態、今日こそじっくりねっとり見せてもらうわ!」

 

上弦の月に照らされながら、建物の屋根からロープを垂らし、それにしがみつきながら華麗な下降を見せる一人の少女。

 

スルスルと三階にある角部屋の窓まで降りると、そこで反転し、逆さまになりながら窓の上部よりそっと顔を覗かせる。

 

「この日のためにクリスタベルさんに教わったクライミング技術その他! まさかこんな場所にいるとは思うまい、ククク。さぁ、どんなアブノーマルなプレイをしているのか、ばっちり確認してあげ……」

 

とある客室をやらしい目で覗いていたのは、宿の看板娘、ソーナ・マサカであった。しかし、上手く隠れていたつもりだったようだが、彼女の真正面に白髪の青年が立っているところ、どうやら既にバレていたようだ。思いっ切り叫びそうになったが何とか堪えたようだ。

 

「……何やってるんだ? こんな夜中に」

「ち、ちなうんですよ? お客様。これは、その、あの、そう! 宿の定期点検です! ほら、夜中にちゃちゃっとやってしまえば、昼に補修しているところ見られずに済むじゃないですか。宿屋だからガタが来てると思われるのは、ね?」

「成程、そう言えば廊下もガタが来ている場所があるんだが、修繕の方頼めないか?」

「わ、わかりました! 直ぐに修繕いたします!」

 

そう言ってソーナを客室に入れ、廊下に連れ出す。

 

「ところで、この宿には覗き魔がいるという噂を耳にしてね、何でもある特定の人物が泊っている部屋にしか出没しないらしいんだ」

「そ、それは由々しき事態ですね!の、覗きだなんて、ゆ、許せません、よ?」

「宿の評判がガタ落ちしますよね?」

「え、ええ、そんなこと、勿論許せませんとも……あぅ」

 

そう言った後、ソーナは気絶してしまった。実は、客室に入れた時から麻酔針を首に刺したのだが、今になって麻酔が回ったようだ。

 

その後、ロープでごめん寝の姿勢でぐるぐる巻きにされ、布で猿轡をされ、目隠しをされ、『私は客室の見回りや宿の修繕と称して数日間に渡って様々な手口で覗き(特定の人物の宿泊部屋のみ)をしていました。あとそれから男風呂も覗き(特定の人物のみ)に行ってました』と、年頃の少女らしからぬとんでもないことを書かれた看板を首から提げた状態で一晩中、カウンターの奥で気絶していた少女がいたとかいないとか。流石のハジメもここまではしないだろう。

 

 

突然気絶してしまったソーナをカウンターの奥に運んだ後、宿の部屋に戻った来はそのままベッドに仰向けになった。

 

「らーちゃん、お疲れ様」

「お帰りなさいです」

 

そんな来に声を掛けたのはネグリジェ姿のミレディとシア。窓から差し込む月明りが、二人の姿を淡く照らす。ミレディは対面のベッドの上で女の子座りをし、シアは浅く腰掛けている。

 

「しかしあの子には困ったものだよ……まさか屋根から降りて来るとは思ってもみなかった」

「きっと、私達の関係がソーナちゃんの女の子な部分に火を付けちゃったんですね。気になってしょうがないんですよ。可愛いじゃないですか」

「可愛いと言っても限度というものがあるよね。手口がどんどん巧妙になって来てるし」

「昨日は湯船にシュノーケルが立ってるのが見えて、湯煙で包んで気配を完全に断ち切らないと入れなかったよ」

「う~ん、確かに、宿の娘としてはマズイですよね…一応、私達以外にはしてないようですが……」

「それが唯一の救いだよ」

 

看板娘の奇行について雑談していると、シアは立ち上がり来の近くに腰掛けた。ミレディも、いそいそと立ち上がると来のベッドに移動し、横たわる来の頭の下に自らの膝を入れた。

 

「!?」

「ふふふ、女の子の膝枕だよ? これなら安心して眠れるんじゃない?」

 

ミレディは来の白い髪を撫でながら温かい目を向ける。すると今度はシアが来の手を取り自分の胸元へと誘導する。

 

「……そういえばライセンで血を吐いてましたよね……今になって聞きますけど、来さんの体に一体何が起こってるんですか?」

「シーちゃんの言う通り、らーちゃんの体に何か異変が起こっている。それに君の心は未だにぽっかり穴が開いているまま。私達でよかったら、埋めてあげることもできるかもしれない」

「それは……多分無理だろうね」

 

シアもミレディも悲しい表情をする。

 

「僕の心に穴が開いているなら、それを埋められるのは……」

「……膵花って人唯一人、だよね?」

「!?」

「シーちゃんから聞いたよ、君が想い続けている女性の名前」

「……うん。ミレディの言う通りだよ」

「らーちゃんは、彼女に逢えないストレスに君の体は蝕まれている。そしてそれが日に日に酷くなっている」

「吐血する度に神水を飲んで体を落ち着かせてきた。でも眠ろうと目を閉じると、彼女の姿がはっきりと見えるんだ。そしてまた血を吐いてしまう、それの繰り返しだ」

 

流石に幻覚は見えていないようだが、頭の中からは最愛の妻のことが離れることはなかった。

 

「らーちゃん、私は治癒師じゃないから詳しくはわからないけど、君の身体の具合から見るに……このままだとあと数週間しか持たないだろうね」

 

シアはショックで目を見開いた。

 

「過去にも前例がいたんだ。らーちゃんと同じような症状を見せた人物……三百年前にライセン大迷宮を訪れた、私の剣術の師匠だよ」

「ミレディさんの、剣術の師匠……」

「うん、師範も同じ症状を患っていたみたいで、私に稽古を付け始めてから数週間で衰弱死してしまったよ」

 

ミレディの剣術の師匠も、来と同じように吐血する度に神水を飲んで凌いでいたようだが、処置も虚しく僅か数週間で息を引き取ってしまったという。

 

「じ、じゃあ、もし数週間の間に膵花さんを見つけられなかったら……」

「うん、ほぼ間違いなく死ぬ」

「そんな……」

 

ミレディも信じたくなかった。圧倒的な戦闘力を持つこの青年が、数週間で落命するかもしれないということを。シアは彼の腹に顔を埋めて泣いた。ミレディも涙を零す。

 

「だから、シーちゃんにも私と同じ悲しみを背負わせたくないんだ。一刻も早く彼を膵花って人の許へと連れて行かないといけない」

「うぅ……来さん……嫌です……出会ってまだ一か月くらいしか経ってないのに、死んじゃうなんて……お願いだから生きて……生きてぐだざい……」

 

そして無駄だと判っていても、少しでも延命しようとミレディは自らの膝の上で眠る青年にそっと唇を重ねた。

 

「……らーちゃん……こんなウザい私にも優しくしてくれた君を私は死なせたくない……お願い……生きて……」

 

 

一方、ライセン大峡谷にできた洞窟から、二人の人間の女性が出て来た。だが、二十代前半の女性は十代後半の少女に背負われていた。

 

「何で…何でこんなことになったの……お願い、膵花……辻風君を……来さんを置いて逝かないで……」

 

剣士の少女に背負われている縹色の髪の女性もまた、生死の境を彷徨っている最中だった……




次回
第三十二閃 出発の時

IF編を書くタイミングで迷ってます。何時書いた方がいいですか?(但し書くなという意見は一切受けつけません)

  • 外伝をある程度進めてから
  • 今でしょ!
  • 別途執筆
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