ありふれた職業と共に一刀両断!!   作:籠城型・最果丸

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第三十六陣 巡り逢い

広大な平原のど真ん中に、北へ向けて真っ直ぐに伸びる街道。

 

何度も踏みしめられることで自然と雑草が禿げて道となっただけの獣道のようなこの道を、信じられない程の速度で駆け抜ける影が二つ。一つは、メタリックな塗装の機体で、地面から浮いていた。地球から見てもオーバーテクノロジーである。更に、車体前方には砲台が一門装備されており、魔力を消費することでほとんどの小型魔物を殲滅できる程の魔力弾を放つ。もう一つの機体も、メタリックな塗装を施されており、地面から浮いていた。また、砲台も左右三門ずつ、前方に一門装備されている。これも魔力を消費して砲撃する。

 

地面から浮く二つの物体には、細長い方に一人、平たい方に二人の影があった。

 

細長い方、〝飛脚改〟に乗っているのがシア。平たい方、〝弩空〟に乗っているのが来とミレディだ。元々は車輪が付いていたのだが、重力魔法を手に入れたことにより改造を施され、ホバーバイクとなったのだ。その結果、スペックも上昇したが、その分魔力消費も大きくなった。既に時速百キロは超えているが、全力を出せば二百キロは出る。

 

走行速度が速い分、風圧も大きくなっているのだが、全員ゴーグル無しで操縦または搭乗している。

 

「ひゃっはー! ですぅ!!」

 

百キロオーバーの速度で走行しているのにもかかわらず、一人の美少女がゴーグルも無しに近未来的なビークルを操縦している。傍から見ればかなりシュールな光景になっている。

 

一方、助手席(砲撃用座席)に座り込んでいるミレディが来と話している。

 

「らーちゃん、今何処に向かってるの?」

「今向かっている町、ウルはね、水源が豊かで、町の近郊は大陸一の稲作地帯なんだそうだ」

「稲作?」

「そう。つまり米だ。生まれ故郷でも盛んに食べられているよ。久し振りに食べてみたいと思ったのさ」

「来さんの生まれ故郷の食べ物ですかぁ……食べてみたいですねぇ」

 

来の言う生まれ故郷とは、地球にある日本のことではない。別世界にある古都という、日本の京都に似ている都市のことを指している。

 

 

「はぁ、今日も手掛かりはなしですか……清水君、一体どこに行ってしまったんですか……」

 

悄然と肩を落とし、ウルの町の表通りを元気なく歩く召喚組の一人にして教師、畑山愛子。普段の快活な様子がなりを潜め、今は、不安と心配に苛まれて陰鬱な雰囲気を漂わせている。心なしか、表通りを彩る街灯の灯りすら、いつもより薄暗い気がする。

 

「愛子、あまり気を落とすな。まだ、何も分かっていないんだ。無事という可能性は十分にある。お前が信じなくてどうするんだ」

「そうですよ、愛ちゃん先生。清水君の部屋だって荒らされた様子はなかったんです。自分で何処かに行った可能性だって高いんですよ? 悪い方にばかり考えないでください」

 

元気のない愛子に、そう声をかけたのは愛子専属護衛隊隊長のデビッドと生徒の園部優花だ。周りには他にも、毎度お馴染みに騎士達と生徒達がいる。彼等も口々に愛子を気遣うような言葉をかけた。

 

ここにいる六名の生徒は愛子を守るべく「愛ちゃん護衛隊」なるものを結成し、彼女と共に行動している。

 

ちなみに、デビッド他数名は教会に直接仕える神殿騎士であるが、愛子に骨抜きにされてしまい、彼等も行動を共にしているのだった。

 

クラスメイトの一人、清水幸利が失踪してから既に二週間と少し。愛子達は、八方手を尽くして清水を探したが、その行方はようとして知れなかった。町中に目撃情報はなく、近隣の町や村にも使いを出して目撃情報を求めたが、全て空振りに終わった。

 

当初は事件に巻き込まれたのではと騒然となったのだが、清水の部屋が荒らされていなかったこと、清水自身が〝闇術師〟という闇系魔法に特別才能を持つ天職を所持しており、他の系統魔法についても高い適性を持っていたことから、そうそう、その辺のゴロツキにやられるとは思えず、今では自発的な失踪と考える者が多かった。

 

元々、清水は、大人しいインドアタイプの人間で社交性もあまり高くなかった。クラスメイトとも、特別親しい友人は()()()()おらず、愛ちゃん護衛隊に参加したことも驚かれたぐらいだ。そんなわけで、既に愛子以外の生徒は、清水の安否より、それを憂いて日に日に元気がなくなっていく愛子の方が心配だった。護衛隊の騎士達が憂えたのは、言うまでもない。

 

王国と教会には既に報告しており、捜索隊を編成して応援に来るそうだ。清水も、魔法の才能に関しては召喚された者らしく極めて優秀なので、〝迷宮の悲劇〟と同じく上層部は楽観視していない。捜索隊が到着するまで、あと二、三日といったところだった。

 

愛子に次々と気遣いの言葉が掛けられたが、彼女自身は内心で自らを殴りつける。事件に巻き込まれようが、自発的な失踪であろうが心配であることに変わりはない。しかし、それを表に出して、今、傍にいる生徒達を不安にさせるどころか、気遣わせてどうするのだと。それでも、自分はこの子達の教師なのか!と。一度深呼吸をし、ペシッと両手で頬を叩き気持ちを立て直す。

 

「皆さん、心配かけてごめんなさい。そうですよね。悩んでばかりいても解決しません。清水君は優秀な魔法使いです。きっと大丈夫。今は、無事を信じて出来ることをしましょう。取り敢えずは、本日の晩御飯です! お腹いっぱい食べて、明日に備えましょう!」

 

無理しているのは一目瞭然。しかし気合の入った掛け声に生徒達も「は~い」と素直に返事をする。騎士達は、その様子を微笑ましげに眺めた。

 

愛子達は、自分達が宿泊している宿の扉を開いた。ウルの町で一番の高級宿だ。名を〝水妖精の宿〟という。その昔、ウルディア湖から現れた妖精を一組の夫婦が泊めたことが由来なのだそう。ウルディア湖は、ウルの町の近郊にある大陸一の大きさを誇る湖。面積は日本の琵琶湖の四倍程である。

 

〝水妖精の宿〟は、一階部分がレストランになっており、ウルの町の名物である米料理が数多く揃えられている。内装は、落ち着きがあって、目立ちはしないが細部までこだわりが見て取れる装飾の施された重厚なテーブルやバーカウンターがある。また、天井には派手すぎないシャンデリアがあり、落ち着いた空気に花を添えていた。〝老舗〟そんな言葉が自然と湧き上がる、歴史を感じさせる宿だった。

 

当初、愛子達は、高級すぎては落ち着かないと他の宿を希望したのだが、〝神の使徒〟あるいは〝豊穣の女神〟とまで呼ばれ始めている愛子や生徒達を普通の宿に止めるのは外聞的に有り得ないので、騎士達の説得の末、ウルの町における滞在場所として目出度く確定した。

 

元々、王宮の一室で過ごしていたこともあり、愛子も生徒達も次第に慣れ、今では、すっかり寛ぐことが出来る場所になっていた。農地改善や清水の捜索に東奔西走し疲れた体で帰って来る愛子達にとって、この宿でとる米料理は毎日の楽しみになっていた。

 

全員が一番奥の専用となりつつあるVIP席に座り、その日の夕食に舌鼓を打つ。

 

「ああ、相変わらず美味しいぃ~異世界に来てカレーが食べれるとは思わなかったよ」

 

優花はカレーが好物である。

 

「まぁ、見た目はシチューなんだけどな……いや、ホワイトカレーってあったけ?」

「いや、それよりも天丼だろ? このタレとか絶品だぞ? 日本負けてんじゃない?」

「それは、玉井君がちゃんとした天丼食べたことないからでしょ? ホカ弁の天丼と比べちゃだめだよ」

「いや、チャーハンモドキ一択で。これやめられないよ」

 

極めて地球の料理に近い米料理に毎晩生徒達のテンションは留まるところを知らない。見た目や微妙な味の違いはあるが、料理の発想自体はとても似通っている。素材が豊富というのも、ウルの町の料理の質を押し上げている理由の一つだろう。米は言うに及ばず、ウルディア湖で取れる魚、山脈地帯の山菜や香辛料などもある。

 

美味しい料理で一時の幸せを噛み締めている愛子達のもとへ、この宿の主人らしき、六十代くらいの男性がにこやかに近寄ってきた。

 

「皆様、本日のお食事はいかがですか? 何かございましたら、どうぞ、遠慮なくお申し付けください」

「あ、オーナーさん」

 

愛子達に話しかけたのは、この〝水妖精の宿〟のオーナーであるフォス・セルオである。スっと伸びた背筋に、穏やかに細められた瞳、白髪交じりの髪をオールバックにしている。宿の落ち着いた雰囲気がよく似合う男性だ。

 

「いえ、今日もとてもおいしいですよ。毎日、癒されてます」

 

愛子が代表してニッコリ笑いながら答えると、フォスも嬉しそうに「それはようございました」と微笑んだ。しかし、次の瞬間には、その表情を申し訳なさそうに曇らせた。何時も穏やかに微笑んでいるフォスには似つかわしくない表情だ。何事かと、食事の手を止めて皆がフォスに注目した。

 

「実は、大変申し訳ないのですが……香辛料を使った料理は今日限りとなります」

「えっ!? それって、もうこのニルシッシル(異世界版カレー)食べれないってことですか?」

 

優花がショックを受けたように問い返した。

 

「はい、申し訳ございません。何分、材料が切れまして……いつもならこのような事がないように在庫を確保しているのですが……ここ一ヶ月ほど北山脈が不穏ということで採取に行くものが激減しております。つい先日も、調査に来た高ランク冒険者の一行が行方不明となりまして、ますます採取に行く者がいなくなりました。当店にも次にいつ入荷するかわかりかねる状況なのです」

「あの……不穏っていうのは具体的には?」

「何でも魔物の群れを見たとか……北山脈は山を越えなければ比較的安全な場所です。山を一つ越えるごとに強力な魔物がいるようですが、わざわざ山を越えてまでこちらには来ません。ですが、何人かの者がいるはずのない山向こうの魔物の群れを見たのだとか」

「それは、心配ですね……」

 

愛子が眉をしかめる。他の皆も若干沈んだ様子で互いに顔を見合わせた。フォスは、「食事中にする話ではありませんでしたね」と申し訳なさそうな表情をすると、場の雰囲気を盛り返すように明るい口調で話を続けた。

 

「しかし、その異変ももしかするともう直ぐ収まるかもしれませんよ」

「どういうことですか?」

「実は、今日のちょうど日の入り位に新規のお客様が宿泊にいらしたのですが、何でも先の冒険者方の捜索のため北山脈へ行かれるらしいのです。フューレンのギルド支部長様の指名依頼らしく、相当な実力者のようですね。もしかしたら、異変の原因も突き止めてくれるやもしれません」

 

愛子達はピンと来ないようだが、食事を共にしていたデビッド達護衛の騎士は一様に「ほぅ」と感心半分興味半分の声を上げた。フューレンの支部長と言えばギルド全体でも最上級クラスの幹部職員である。その支部長に指名依頼されるというのは、相当どころではない実力者のはずだ。同じ戦闘に通じる者としては好奇心をそそられるのである。騎士達の頭には、有名な〝金〟クラスの冒険者がリストアップされていた。

 

愛子達が、デビッド達騎士のざわめきに不思議そうな顔をしていると、二階へ通じる階段の方から声が聞こえ始めた。男の声と少女二人の声だ。何やら楽しそうに話している。それにフォスが反応する。

 

「おや、噂をすれば。彼等ですよ。騎士様、彼等は明朝にはここを出るそうなので、もしお話しになるのでしたら、今のうちがよろしいかと」

「そうか、わかった。しかし、随分と若い声だ。〝金〟に、こんな若い者がいたか?」

 

デビッド達騎士は、脳内でリストアップした有名な〝金〟クラスに、今聞こえているような若い声の持ち主がいないので、若干、困惑したように顔を見合わせた。

 

そうこうしている内に、三人の男女は話しながら近づいてくる。

 

愛子達のいる席は、三方を壁に囲まれた一番奥の席であり、店全体を見渡せる場所でもある。一応、カーテンを引くことで個室にすることもできる席だ。唯でさえ目立つ愛子達一行は、愛子が〝豊穣の女神〟と呼ばれるようになって更に目立つようになったため、食事の時はカーテンを閉めることが多い。今日も、例に漏れずカーテンは閉じられている。

 

そのカーテン越しに若い男女の会話の内容が聞こえてきた。

 

「〝らーちゃん〟の料理も凄く美味しいけど、たまには外食で〝らーちゃん〟とゆったりしたいな~って思ってたところだったんだよね」

「えへへ~、〝来〟さんの生まれ故郷の料理、どんな味か楽しみですねぇ~」

「味の方は期待しておいてくれ。()()()()()()()の僕が保証するよ。それに、米が手に入れば直ぐに和食を作ろうとしてたところだしね」

「へぇ~、〝らーちゃん〟が得意な料理ね……想像しただけで涎が出てきそうだよ」

()()()()()()()()()()……もっと賑やかになってたかもしれないのに……」

「〝来〟さん、折角食事に来たんですから、もっと笑いましょうよ~」

「そうだよ。〝らーちゃん〟が凹んでたらこっちまで気分が落ち込んじゃうからさ」

「……そうだよね。ごめん、場の雰囲気を悪くしてしまった」

 

その会話の内容に、そして少女の声が呼ぶ名前に、愛子の心臓が一瞬にして飛び跳ねる。彼女達は今何といった? 少年を何と呼んだ? 少年の声は、〝あの少年〟の声に似てはいないか? 愛子の脳内を一瞬で疑問が埋め尽くし、金縛りにあったように硬直しながら、カーテンを視線だけで貫こうとでも言うように凝視する。

 

それは、傍らの園部優花や他の生徒達も同じだった。彼らの脳裏に、およそ四ヶ月前に皆の前で儚く命を散らした、とある少年が浮かび上がる。クラスメイト達に〝異世界での死〟というものをとても強く認識させた少年、消したい記憶の根幹となっている少年、良くも悪くも目立っていた少年。

 

尋常でない様子の愛子と生徒達に、フォスや騎士達が訝しげな視線と共に声をかけるが、誰一人として反応しない。騎士達が、一体何事だと顔を見合わせていると、愛子がポツリとその名を零した。

 

「……辻風君?」

 

無意識に出した自分の声で、有り得ない事態に硬直していた体が自由を取り戻す。愛子は、椅子を蹴倒しながら立ち上がり、転びそうになりながらカーテンを引きちぎる勢いで開け放った。

 

存外に大きく響いたカーテンの引かれる音に、ギョッとして思わず立ち止まる一人の青年と二人の少女。

 

愛子は、相手を確認する余裕もなく叫んだ。四ヶ月前に亡くした、大切な教え子の名前を。

 

「辻風君!」

「むっ、何奴!? ……………………………………………畑山先生?」

 

愛子の目の前にいたのは、腰に差した刀に手を掛けつつも、鮮やかな黄金の瞳を大きく見開き驚愕を露わにする、和装の白髪の少年……否、青年だった。記憶の中にあった辻風来という少年とは大きく異なった外見だった。相変わらず背丈は高いが、何処か大人びている。そして学校では黒髪に染めていたが、本来は茶髪だったはず。愛子の知る辻風来は、唯一人の少女を愛している、一途な少年だった。だが、目の前の青年は少女を二人も連れている。この場に彼が愛する少女はいなかった。

 

多少記憶とは異なっていたが、顔立ちと声は記憶のものと一致した。そして何より……目の前の少年は自分を何と呼んだのか。そう、〝畑山先生〟だ。ほとんどの生徒から愛ちゃん若しくは愛子先生と呼ばれてる自分を苗字で呼ぶ生徒は知っている限り唯一人のみ。愛子は確信した。外見は変わってしまっているが、目の前の少年は、確かに自分の教え子である〝辻風来〟であると。

 

「辻風君……やっぱり辻風君なんですね? 生きて……本当に生きて……」

「畑山先生、お久しぶりです。突然の失踪をお許し下さい。僕達は訳あって……」

 

死んだと思っていた教え子と奇跡のような再会。感動して、涙腺が緩んだのか、涙目になる愛子。今まで何処にいたのか、一体何があったのか、本当に無事でよかった、と言いたいことは山ほどあるのに言葉にならない。それでも必死に言葉を紡ごうとする。

 

涙目の愛子を穏やかな声色が包み込む。だが、直ぐに六人の少年少女の悲鳴に掻き消されることになる。

 

「「「「「「ギャ―――――ッ!! 辻風が化けて出たぁぁぁぁ!! 幽霊だぁぁぁぁ!!」」」」」」

「……幽霊? 来さんが?」

「……化けて出た? らーちゃんが?」

 

あの日、来が橋の上で大量に血を流して倒れたのを直接見たのだ。普通に考えて生きているはずがない。確実に死んだはずの人間が今自分達の目の前にいるのだ。幽霊だと思うのも無理はない。

 

「皆さん!! 人を幽霊だなんて呼んではいけません!! ……ところで辻風君、ちゃんと生きてますよね?」

「ちゃんと生きてますよ……? 結局貴女まで怖気づいてるじゃないですか」

 

そう言って愛子に自分の脈を触らせる来。確かに拍動がある。それに温かい。

 

「うぅ……ごめんなさい……さっきのは人としてどうかと自分でも思いました……」

「いえ、無理もないですよね。あれだけ血を流して、奈落に落ちたんですから」

 

中身は全く変わって無かった。記憶通りの慈しさだった。

 

「……ところで辻風君、こちらの女性達はどちら様ですか?」

「共に旅を続けている、シアと、ミレディです」

「シアです」

「やっほー、ミレディちゃんだよぉ~」

「来さんの女ですぅ!」

「らーちゃんの女だよぉ~!」

「えっ!?」

「お、女?」

 

二人の爆弾発言に、来の背筋が凍りついた。愛子が若干どもりながら「えっ? えっ?」と来と二人の美少女を交互に見る。上手く情報を処理出来ていないらしい。後ろの生徒達も困惑したように顔を見合わせている。いや、男子生徒は「まさか!」と言った表情でシアとミレディを忙しなく交互に見ている。徐々に、その美貌に見蕩れ顔を赤く染めながら。

 

「ふ、二人共、お、女って、どういう……」

「そのままの意味だよ?」

「私達は来さんが大好きなんです!」

「いや、僕には膵花という想い人が……」

「へぇ~、私達の唇を奪っておいて、今更その子に縋りつくのかな? 私なんか二回も君としたのに?」

「へ? 奪う? あれはまぁ…わかるけど、二度、というのはどういう『辻風君?』……は、はい……」

 

シアの告白で遂に情報処理が追いついたらしく、愛子の声が一段低くなる。

 

顔を真っ赤にして、来の言葉を遮る愛子。その顔は、非行に走る生徒を何としても正道に戻してみせるという決意に満ちていた。そして、〝先生の怒り〟という特大の雷が、ウルの町一番の高級宿に落ちる。

 

「滝沢さんという人がいるのに、それだけでは飽き足らず他の女の子と口付けした上にさ、三股なんて! 直ぐに帰ってこなかったのは、遊び歩いていたからなんですか! もしそうなら……許しません! ええ、先生は絶対許しませんよ! お説教です! そこに直りなさい、辻風君!」

「誤解ですッッ!! 取り敢えず落ち着いて下さいッッッ!!」

 

この時、シアとミレディ、そして六人の生徒は白髪の青年がロリっ子のような見た目の大人の女性に全力で説教されている光景を初めて見たのだった……




IF編に関するアンケートは次回の投稿を以て締め切らせて頂きます。

少ないながらもあんなアンケートに投票して下さりありがとうございます。


次回 第三十七閃 悩み

IF編を書くタイミングで迷ってます。何時書いた方がいいですか?(但し書くなという意見は一切受けつけません)

  • 外伝をある程度進めてから
  • 今でしょ!
  • 別途執筆
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