ありふれた職業と共に一刀両断!!   作:籠城型・最果丸

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第四十陣 重力魔法を手に入れるまで

この話は、ハジメと香織、ユエがライセン大迷宮を攻略する前にまで遡る。

 

 

 

 

「……ついに見つけたぞ。ライセン大迷宮」

「うん、ここでも神代魔法を手に入れられるのかな?」

「オルクスで一つ貰ったし、ここでも貰えるはず」

 

ライセン大峡谷に入って僅か二日で入口を見つけてしまった。看板にミレディ・ライセンの大迷宮と彫られていたので、ハジメ達はここがライセン大迷宮だと確信した。

 

「何でこんなにチャラいんだよ……」

 

三人共大迷宮の過酷さを理解しているので、誰かのいたずらではないかと思っていた。

 

「でも、他に入口らしい場所は見当たらないよ? 奥も行き止まりみたいだし」

 

ここで立っているだけでは、何も起こらないので、ハジメは注意深く壁を探った。壁のある個所に触れた瞬間、壁が突然回転し、壁の裏へハジメが姿を消した。

 

「ハジメ!!」

「ハジメくん!!」

 

壁の裏では二十本の矢が飛んできた。ハジメはそれを〝夜目〟で捉え、ドンナーで撃ち落とす。レオで全て弾く自信がなかったので拳銃で撃ち落とした。それでも十分凄いのだが。この後の挑戦者はなんと刀一本で捌いていた。

 

最後の矢が地面に落ちた瞬間、部屋がうっすらと明るくなった。

 

「香織、ユエ。俺が触っていた壁に触れ。矢が飛んできたが俺が撃ち落としておいた」

 

ハジメに言われた通り、回転扉に触れ、香織とユエもハジメと合流する。

 

「ハジメ、大丈夫だった?」

 

先にユエが声を掛けた。

 

「ああ、〝夜目〟とコレが無かったら危ないところだった」

 

ハジメはドンナーを右手に答える。

 

「うぅ……無事で……よがっだよぉ」

 

香織はハジメに抱きついて泣く。

 

「まだ俺は死ぬわけにはいかねえからな」

 

瞳には、決意の炎が揺らいでいた。親友を見つけ出すまでは、死ぬわけにはいかないと。

 

 

部屋の中央に置かれている石板には苛立たせる文が彫られていたので三人は放っておき、次の部屋を目指す。

 

道なりに通路を進み、滅茶苦茶な部屋に出た。

 

「こりゃまた、ある意味迷宮らしいと言えばらしい場所だな」

「……ん、迷いそう」

 

ハジメは「さて、どう進んだものか」と思案する。

 

「……ハジメくん。考えても仕方ないよ」

「ん~、まぁ、そうだな。取り敢えずマーキングとマッピングしながら進むしかないか」

「ん……」

 

香織の言葉に頷くハジメ。迷宮探索でのマッピングは基本だ。しかし、この複雑な構造の迷宮でどこまで正確に作成できるか、ハジメは思わず面倒そうだと顔をしかめた。

 

なお、ハジメのいう〝マーキング〟とは、ハジメの〝追跡〟の固有魔法のことだ。この固有魔法は、自分の触れた場所に魔力で〝マーキング〟することで、その痕跡を追う事ができるというものだ。生物に〝マーキング〟した場合、その生物の移動した痕跡が水晶玉(神結晶玉)に映るのである。今回の場合は、壁などに〝マーキング〟することで通った場所の目印にする。〝マーキング〟は可視化することもできるのでユエやシアにもわかる。魔力を直接添付しているので、分解作用も及ばず効果があるようだ。

 

ハジメは早速、入口に一番近い場所にある右脇の通路に〝マーキング〟して進んでみることにした。

 

ハジメ達が進んでいる通路は当たりの通路だった。ハジメが某天空の城を思い浮かべながら進んでいると、突然ハジメの足が床のブロックの一つを踏み抜いた。そのブロックだけハジメの体重により沈んでいる。ハジメ達が思わず「えっ?」と一斉にその足元を見た。

 

その瞬間、

 

シャァアアア!!

 

そんな刃が滑るような音を響かせながら、左右の壁のブロックとブロックの隙間から高速回転・振動する円形でノコギリ状の巨大な刃が飛び出してきた。右の壁からは首の高さで、左の壁からは腰の高さで前方から薙ぐように迫ってくる。

 

「回避!」

 

ハジメは咄嗟にそう叫びつつ、自身も海老反りで二本の凶刃を躱す。ユエは元々背が小さいのでしゃがむだけで回避した。香織も何とか回避したようだ。後ろから「はわわ、はわわわわ」と動揺に揺れる声が聞こえてくる。苦悶の声ではないようなので、怪我はしていないのだろうと推測するハジメ。実際は髪の毛の先が数ミリ程切断されたのだが問題は無い。

 

二枚の殺意と悪意がたっぷりと乗った刃はハジメ達を通り過ぎると何事もなかったように再び壁の中に消えていった。第二陣を警戒して、しばらく注意深く辺りを見回すハジメ。しかし、どうやら今ので終わりらしい。ホッと息を吐き後ろを振り返ろうとして、ハジメは猛烈な悪寒を感じた。

 

本能の命ずるまま飛び出し、香織とユエを回収して勢いそのままに前方に身を投げ出す。直後、今の今までハジメ達がいた場所に、頭上からギロチンの如く無数の刃が射出され、まるでバターの如く床にスっと食い込んだ。やはり、先程の刃と同じく高速振動している。

 

冷や汗を流して足先数センチに落とされた刃を見つめるハジメ。香織とユエも硬直している。

 

「……完全な物理トラップか。魔水晶玉じゃあ、感知できないわけだ」

 

ハジメが、まんまとトラップに掛かった理由は、魔法のトラップに集中していたからだ。今までの迷宮(オルクスのみ)のトラップと言えばほとんどが魔法を利用したものだった。そして、魔法のトラップなら、オルクス大迷宮で作った魔水晶玉は尽く看破できる。それ故に、魔水晶玉に反応しなければ大丈夫という先入観を持ってしまっていたのだ。要は、己の力を過信したということである。しかし、ハジメ達の後にこの迷宮に挑戦したある者は、足音でトラップと床との微妙な隙間を感知していたので事前に回避することに成功している。

 

「し、死ぬかと思った……」

「ああ。この先はちょくちょく〝龍化〟を発動させないとダメみたいだ」

 

三人の中でトラップに掛かっても死なないのはユエのみだ。ハジメと香織は魔力と魔耐以外のステータスはユエに少し劣る上、〝自動再生〟が無いので死んでしまう危険性があった。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

ハジメ達は、トラップに注意しながら更に奥へと進む。そして、通路の先にある空間に出た。その部屋には三つの奥へと続く道がある。取り敢えず〝マーキング〟だけしておき、ハジメ達は階下へと続く階段がある一番左の通路を選んだ。

 

階段の中程まで進んだところで、トラップが作動した。階段が滑るスロープに早変わり。

 

「くっ、このっ!」

 

段差が引っ込んで転倒しかけたハジメは咄嗟に、靴の底に仕込んだ鉱石を錬成してスパイクにし、クライミングピッケルも取り出して滑り落ちないように堪える。香織とユエは、咄嗟にハジメに飛びついたので滑り落ちることはなかった。ハジメが、踏ん張ることを読んでいたのだろう。阿吽の呼吸だ。

 

が、三人分の体重にクライミングピッケルが長時間耐えられず、折れてしまった。

 

「不味い!!」

 

三人仲良くスロープを滑り落ちていく。ハジメは靴のスパイクやスペアのクライミングピッケルを突き立てるも既に速度が出すぎていて、中々上手くいかない。ならばと、直接階段の錬成を試みるが、迷宮の強力な分解作用により上手く行かない。

 

「!? ハジメくん! 道が!!」

 

前方を見た香織が焦燥に駆られた声を上げる。

 

ハジメはそれだけで悟った。この滑落の果てに、どこかに放り出されるのだろうと。

 

「っ! ユエ!」

「んっ!」

 

咄嗟にハジメはユエの名を呼ぶ。それだけでユエはハジメの意図を正確に読み取った。

 

「香織、しっかり掴まってろ!」

「うん!」

 

香織はハジメの右腕にしがみつく。

 

そしてスロープが終わりを迎え、ハジメ達は空中へと投げ出された。一瞬の無重力。その隙にユエは魔法を発動する。

 

「〝来翔〟!」

 

風系統の初級魔法だ。強烈な上昇気流を発生させ跳躍力を増加させる魔法である。熟練者は擬似的に飛翔の真似事もできる。しかし、この場は魔法の力が及ばない領域。ユエの魔法は、ほんの数秒の間、ハジメ達を浮かせる程度の効果しか発揮できなかった。

 

「十分だ」

 

ハジメの称賛まじりの声が響く。

 

「〝龍化〟!」

 

そう、ハジメにとっては、放り出された先でほんの少し〝龍化〟を発動させる余裕があれば十分だったのだ。ユエは、その期待に見事に応えたというわけである。

 

ハジメの体が光に包まれ、そこそこの大きさのドラゴンへと姿を変える。魔力を放出しているわけではないので分解作用は通じない。

 

ハジメは空を飛びながら、香織とユエを両腕で抱えている。ハジメ達は、〝龍化〟が切れないのを確認すると一息ついた。

 

そして、下を見た全員が青ざめた。

 

おびただしい数の蠍が蠢いていたのだ。体長はどれも十センチくらいだろう。かつての蠍擬きのような脅威は感じないのだが、生理的嫌悪感はこちらの方が圧倒的に上だ。〝龍化〟を発動させて空を飛ばなければ、蠍の海に飛び込んでいたかと思うと、全身に鳥肌が立つ思いである。

 

「「「……」」」

 

思わず黙り込む三人。下から目を逸らし、天井に視線を転じる。すると、何やら発光する文字があることに気がついた。既に察しはついているが、つい読んでしまうハジメ達。

 

リン鉱石の比重が高いため、薄暗い空間でも目立つその文字。ここに落ちた者は蠍に全身を這い回られながら、麻痺する体を必死に動かして、藁にもすがる思いで天に手を伸ばす。そして発見するのだ。天井の巫山戯た言葉を。

 

「「「……」」」

 

また違う意味で黙り込むハジメ達。「相手にするな、相手するな」と自分に言い聞かせ、何とか気を取り直すと周囲を観察する。

 

「……ハジメ、あそこ」

「ん?」

 

すると、ユエが何かに気がついたように下方のとある場所を指差した。そこにはぽっかりと横穴が空いている。

 

「横穴か……どうする? このまま落ちてきたところを登るか、あそこに行ってみるか」

「私は……ハジメくんの通りに従うから」

「そうか。まぁ、戻るより、進む方が気分がいいし、横穴を行こう」

「……ん」

「うん」

 

香織とユエを抱え、ハジメは〝龍化〟を解いて横穴に降り立つ。そして、三人はこの先にも仕掛けてあるであろうトラップに辟易しながらも前に進み続けるのだった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

とある通路の出入り口は、行き止まりに見えるが実は天井が落ちて来たのだ。ハジメ達は〝錬成〟が無ければ押し潰されていただろう。

 

「ぜはっーぜはっー、ちょ、ちょっと焦ったぜ」

「死ぬかと思った……」

「……ん、潰されるのは困る」

 

ハジメ達は、蠍部屋の横穴からしばらく迷宮を彷徨よった。そして、たどり着いた部屋で天井がまるごと落ちてくるという悪辣で定番なトラップが発動し潰されかけたのである。

 

逃げ場はなく、奥の通路までは距離がありすぎて間に合いそうにない。咄嗟に、ハジメと香織が膂力で天井を支え、その隙にハジメが天井を錬成し穴を開けたのだ。もっとも、強力な魔法分解作用のせいで錬成がやりにくい事この上なく、錬成速度は普段の四分の一、範囲は一メートル強で、数十倍の魔力をごっそりと持っていかれることになった。そうやって、なんとか小さな空間で三人密着しながらハジメの錬成で穴を掘りつつ、出口に向かったのである。

 

「くそ、〝高速魔力回復〟も役に立たねぇな。回復が全然進まねぇ」

「……取り敢えず回復薬…いっとく?」

「うん、一杯飲もうよ」

「お前等、何だかんだで余裕だな……」

 

ハジメが少し疲れた様子で壁にもたれて座ると、ユエが手でおチョコを使って飲むジェスチャーを、香織がポーチから魔力回復薬を取り出す。魔晶石から蓄えた分の魔力を補給してもいいのだが、意思一つで魔力を取り出せる便利な魔晶石は温存し、服用の必要がある回復薬の方が確かにこの場合は妥当だ。

 

ハジメは回復薬を受け取り、飲み干した。魔晶石から魔力を取り出すのに比べれば回復速度も回復量も微々たるものだが随分活力が戻ったような気がするハジメ。「うし!」と気合を入れ直し立ち上がった。

 

そしてミレディの煽り。

 

「「「……」」」

 

最早反応すらしなくなった。ミレディが見ていれば面白くなさそうな顔をするだろう。

 

その後もハジメ達は様々な罠を掻い潜り、遂に迷宮で最も大きな通路に出た。

 

そして勝手にトラップが作動する。カーブから大玉が勢いよく転がり込んできた。

 

香織とユエは踵を返し脱兎のごとく逃げ出そうとするが、ハジメが付いて来ないことに気づいた。

 

「……ん、ハジメ?」

「ハジメくん!? 早く逃げないと潰されちゃうよ!」

 

二人の呼びかけに、しかしハジメは答えず、それどころかその場で腰を深く落としてレオを構えた。

 

ハジメは、轟音を響かせながら迫ってくる大玉を真っ直ぐに見つめ、獰猛な笑みを口元に浮かべた。

 

「いつもいつも、やられっぱなしじゃあなぁ! 性に合わねぇんだよぉ!」

 

大玉とレオの刀身が激しく激突する。ハジメが激突と同時にトリガーを引き、爆発させた。大玉は爆発の衝撃に耐えられず、粉々に砕かれた。

 

ハジメはレオに異常が無いことを確認すると、香織とユエの方に振り向いた。

 

その顔は実に清々しいものだった。「やってやったぜ!」という気持ちが如実に表情に表れている。ハジメ自身も相当、感知できない上に作動させなくても作動するトラップとその後の煽り文にストレスが溜まっていたようだ。

 

今回使用したのは、かつてベヒモスの頸を飛ばし、ガハルド皇帝を戦闘不能にまで追い込んだ爆発攻撃だった。

 

満足気な表情で戻って来たハジメを香織とユエがはしゃいだ様子で迎えた。

 

「流石ハジメくん! カッコイイ!! 見ているこっちまでスッキリしたよ!」

「……ん、すっきり」

「ははは、そうだろう、そうだろう。これでゆっくりこの道……」

 

二人の称賛に気分よく答えるハジメ。しかし、その言葉は途中で遮られた。

 

笑顔のまま固まるハジメ。同じく笑顔で固まる香織と無表情ながら頬が引き攣っているユエ。ギギギと油を差し忘れた機械のようにぎこちなく背後を振り向いたハジメの目に映ったのは……

 

――――地面や壁を溶かしながら迫り来る、黒光りする金属製の大玉だった。

 

「嘘だろ……」

 

ハジメは思わず笑顔を引き攣らせながら呟く。そして、笑顔のまま再度ユエ達の方に顔を向けた。そして笑顔がスっと消えた。

 

「逃げるぞぉ! ちくしょう!」

 

いきなりスプリンターも真っ青な見事な踏切でスロープを駆け下りていった。

 

直後、香織とユエも一瞬顔を見合わせ、同時に踵を返しハジメを追って駆け下って行った。

 

三人の背後から、溶解液を撒き散らす金属球が轟音と共に速度を上げながら迫り来る。

 

「どうにかならないのぉ!?」

「ありゃ()()じゃなきゃ無理だ!! 兎に角逃げろぉ!!」

 

金属球から逃げる事数分、通路の終わりが見えた。しかし、その下は溶解液のプールが広がっていた。

 

「真下に降りるぞ!」

「うん!」

「んっ」

 

ハジメ達は、スライディングするように通路の先の部屋に飛び込み、出口の真下へと落下した。

 

「げっ!?」

「んっ!?」

「ひっ!?」

 

そして、三者三様の呻き声を上げた。

 

「〝龍化〟ッ!!」

 

すかさず〝龍化〟を発動させ、プールを通り過ぎる。直後、溶解液を撒き散らしながら金属球が飛び出していき、眼下のプールへと落下した。そのまま煙を吹き上げながら沈んでいく。

 

ハジメ達は溶解液の飛沫を避け、部屋の床に降り立つ。そして〝龍化〟を解除した。

 

ハジメは周囲を見渡しながら微妙に顔をしかめた。

 

「いかにもな扉だな。ミレディの住処に到着か? それなら万々歳なんだが……この周りの騎士甲冑に嫌な予感がするのは俺だけか?」

「……大丈夫、お約束は守られる」

「また来るんだね……」

 

そして恒例のお約束。トラップ発動である。

 

壁の窪みに収まっていた騎士達が一斉に起動した。起動した時点でハジメ達は完全に包囲されていた。

 

「ははっ、ホントにお約束だな。動く前に壊しておけばよかった。まぁ、今更だよな……香織、ユエ、やるぞ?」

 

ハジメは自身の愛銃二丁を取り出す。本当は機関銃がよかったのだが、他にトラップが仕掛けられていないことが証明できないため、むやみやたらに撃ってトラップが作動でもしたら目も当てられない。

 

香織もユエも、ハジメの言葉に気合に満ちた返事を返す。香織は元々攻撃手段は少ないのだが、彼女にはハジメが作った武器があった。ユエは攻撃手段が大きく制限され、一番火力不足である。それでも、足手纏いにはなるまいと意気込む。

 

ゴーレム騎士五十体とハジメ達との戦いが、今火蓋を切って落とされた。

 

ゴーレムが二体、急速に迫り来る。

 

「これでも喰らってな!!」

 

威力は半減しているが、二体のゴーレムの頭を吹き飛ばすには十分な威力だ。

 

香織も、威力が若干下がったとはいえ、拳銃二丁から放たれる魔力弾はゴーレムの頭を破壊できている。

 

ユエが行使しているのは水系の中級魔法〝破断〟である。空気中の水分を超圧縮して撃ち放つ水の刃だ。

 

ユエは両手に金属で出来た大型の水筒を持っていた。肩紐で更に二つ同じ水筒を下げている。これらは、ハジメの〝宝物庫〟から取り出してもらった物だ。ユエが、その水筒をかざして魔法名を呟く度に水の刃が水筒より飛び出し敵を切り裂いていく。

 

ユエは、魔法で空気中の水分を集めるよりも、最初からある水分を圧縮してやる方が魔力消費が少なくて済むと考えたのだ、また、照準は水筒の出口を向けることで付けており、飛び出た水の刃自体は魔力を含まないものなので分解作用により消されることもない。彼女の読みは大当たり。魔力消費を抑えることに成功したのだ。

 

互いに互いの背中を補いながら戦う二人。騎士達は彼女達のコンビネーションの前に為す術もなく駆逐される。

 

「やるじゃねぇか。あの二人」

 

一人そんなことを呟きながら、ドンナー・シュラークを縦横無尽に振い近接戦闘を繰り広げるハジメ。

 

騎士の振り下ろした大剣をシュラークの銃身で受け流し、右手のドンナーを兜に突き付けてゼロ距離射撃する。弾け飛ぶ騎士には目もくれず、受け流した後のシュラークで、そのまま振り向かずに背後の騎士を撃ち抜き、横凪に振るわれた大剣を一回転しながらしゃがみつつ躱し、腕を交差させて両サイドの騎士達を撃ち抜く。

 

〝纏雷〟を使わず放たれた弾丸が、騎士の盾に跳弾して隣の騎士の膝関節を撃ち抜きバランスを崩させ、その上を側宙しながら飛び越えつつ反転した視界の中で頭上の騎士と隣の騎士を同時に破壊する。着地を狙って振るわれた大剣を銃撃で逸らしつつバク転でかわし、再度空中で四方に発砲して同時に四体の騎士の頭部を撃ち砕く。着地と同時に、〝宝物庫〟から虚空に取り出した弾丸を、ガンスピンさせながら一瞬でリロードし、再び回転しながら発砲。周囲の騎士達が放射状に吹き飛ぶ。

 

そうやって、不用意に部屋そのものに傷を与えないようにしながら次々とゴーレム騎士達を屠っていった。

 

しかし、ここでハジメが違和感に気づく。ゴーレムの数が全く減らないのだ。

 

「……再生した?」

「みたいだな」

「でも、ゴーレムなら核があるはずだけど……」

「魔晶玉に反応はないぞ……ゴーレム自体からは魔力が感知できるみたいだが」

 

そしてハジメは思いつきで〝鉱物系鑑定〟を行い、ゴーレムと床が感応石で構成されていることを知った。

 

五十体のゴーレムは、ミレディが遠隔操作していた。

 

「香織、ユエ。こいつらを操っている奴がいる。マジでキリがないから、強行突破するぞ!」

「んっ」

「…了解」

 

ハジメの合図と共に、香織とユエが一気に踵を返し祭壇へ向かって突進する。ハジメがドンナー・シュラークを連射して進行方向の騎士達を蹴散らし隊列に隙間をあけつつ、後方から迫ってきているゴーレム騎士達に向かって手榴弾を二個投げ込んだ。背後で大爆発が起こり、衝撃波と爆風でゴーレム騎士達が次々と転倒していく。

 

香織が、ハジメの空けた前方の隙間に飛び込みトリガーを引く。アイビーとイベリスが火を噴き、周囲のゴーレム騎士達を撃ち抜いていく。香織に盾や大剣を投げつけようとするゴーレム騎士達にユエの〝破断〟が飛来し切り裂いていく。

 

ハジメは殿を務めながら後方から迫るゴーレム騎士達にレールガンを連射した。その隙に一気に包囲網を突破した香織が祭壇の前に陣取る。続いてユエが、祭壇を飛び越えて扉の前に到着した。

 

「ユエちゃん! 扉は!?」

「ん……やっぱり封印されてる」

「やっぱりなんだね」

 

封印は想定内。

 

「封印の解除はユエに任せる。錬成で突破するのは時間がかかりそうだ」

 

ハジメが香織の隣に並び立った。ハジメの言う通り、錬成で強引に扉を突破することは、理論上は可能だが、この領域では途轍もない魔力を消費して、多大な時間がかかる。それなら、正規の手順で封印を破る方が早いと判断して、戦闘では燃費の悪いユエに封印の解除役を任せる。

 

「ん……任せて」

 

二つ返事で了承し、ユエは正双四角錐の黄色い水晶を手に取る。扉の三つの窪みを見て、物理的な分解を始める。

 

分解しながら窪みを観察していると、毎度の如く煽り文を見つけた。扉を殴りつけたくなったが、我慢してパズルの解読を続行する。

 

背後から怒気が溢れているのを、ハジメと香織は感じ取った。それに少し恐怖を覚えたのか、目の前のゴーレムの掃討に専念する。

 

「雫ちゃんと膵花ちゃんの方、大丈夫かな……」

「心配するな。あの二人なら大丈夫だろ。最強の剣士の許嫁が付いてるんだからさ」

「そう…だよね。膵花ちゃんがそう簡単に死ぬわけないもんね」

 

香織は何か思い詰めている様子を見せる。

 

「ん? どうした?」

「その……膵花ちゃんは辻風君と肩を並べて戦えるのに、私はハジメくんやユエちゃんの足を引っ張ってばかりだなぁ…って」

「いや、お前もちゃんと戦えてるよ。現に今ここで肩を並べて戦ってるだろ?」

「ハジメくん……」

「絶対にお前を死なせたりなんかしない。ユエや雫、膵花さんも一緒だが、お前は特に大事な人だからな。彼奴だったら絶対そうするさ」

 

今は此処にいない親友のことを思い浮かべながら、香織を鼓舞するハジメ。

 

騎士達を退け続けて数分が過ぎた。二人の間に、ユエが姿を現す。

 

「……開いた」

「早かったな、流石ユエだ。香織、下がるぞ」

「うん!」

 

封印を解いた扉の奥は何もない空間が広がっていた。香織とユエは先に扉を潜り、潜り抜ける間際に、ハジメが手榴弾を数個放り投げて騎士達を転倒させた隙に扉を閉めた。

 

「これは、あれか? これみよがしに封印しておいて、実は何もありませんでしたっていうオチか?」

「……ありえる」

「否定できない……」

 

三人が肩を落としていると、また仕掛けが作動した。ハジメ達の体に横方向の引力がかかる。

 

「っ!? 何だ!? この部屋自体が移動してるのか!?」

「……そうみたッ!?」

「うわぁ!?」

 

ハジメが推測を口にすると同時に、引力が下向きに変わる。急激な変化に、ユエは舌を噛んでしまい、涙目になって口を押さえながら震えた。香織は転倒してしまったが、ハジメが受け止めた。

 

幾度も方向転換を繰り返し、凡そ四十秒で移動を停止した。ハジメは途中からスパイクを地面に突き立てて体を固定したので急停止による衝撃に耐えた。

 

「ふぅ~、ようやく止まったか……香織、ユエ、大丈夫か?」

「うん……大丈夫」

「……ん、平気」

 

スパイクを解除したハジメが立ち上がる。周囲を観察してみたが何も見当たらなかったので、三人は扉へと向かった。

 

「さて、何が出るかな?」

「……操ってたヤツ?」

「その可能性もあるな。ミレディは死んでいるはずだし……一体誰が、あのゴーレム騎士を動かしていたんだか」

「……何が出ても大丈夫。ハジメは私が守る……」

「わ、私だって!」

 

ハジメは「何でも来い」と不敵な笑みを浮かべて扉を開いた。

 

「……何か見覚えないか? この部屋」

「……物凄くある。特にあの石板」

「まさかとは思うけど、最初の部屋だったりはしないよね……?」

 

そのまさかである。三人はめでたく振り出しに逆戻りだ。

 

そして元の部屋の床に浮き出た文字を見て三人は壊れる。

 

「は、ははは」

「フフフフ」

「ふふ…ふふふ」

 

その後、迷宮に三人の絶叫が響き渡る。部屋の構造も変化していたので、更に怨嗟の声を上げた。

 

何とか精神を立て直した三人は、再び攻略に乗り出す。だが、その後も一週間、三人は迷宮を彷徨い続けた。

 

 

休息と攻略を繰り返し、遂に一度も遭遇しなかった部屋と出くわす。最初にスタート地点に戻して天元突破な怒りを覚えさせてくれたゴーレム騎士の部屋だ。ただし、今度は封印の扉は最初から開いており、向こう側は部屋ではなく大きな通路になっていた。

 

「ここか……また包囲されても面倒だ。扉は開いてるんだし一気に行くぞ!」

「うん!」

「んっ!」

 

部屋に一気に踏み込み、騎士達を蹴散らしながら進むも、ゴーレム騎士達も床や壁、天井を走りながら三人を追ってくる。

 

ハジメが騎士を破壊すると、残骸は壁や天井、床に衝突しながら前方へと転がっていく。

 

「回避だ!」

「んっ」

「わわっ」

 

猛烈な勢いで迫ってきたゴーレム騎士の頭部、胴体、大剣、盾を屈んだり跳躍したりして躱していく。ハジメ達を通り過ぎたゴーレム騎士の残骸は、そのまま勢いを減じることなく壁や天井、床に激突しながら前方へと転がっていった。

 

「おいおい、あれじゃまるで……」

「ん……〝落ちた〟みたい」

「重力がちゃんと仕事してないよ!?」

 

ハジメ達は、銃撃や〝破断〟で遠距離攻撃しつつ、接近してきたものはハジメが打ち払い、足を止めることなく先へ進んでいった。

しばらくすると、ハジメ達は先の方に何かの気配を感じた。

 

「むぅ……ハジメ」

「ああ、わかってる。まぁ再構築できるなら、そうなるわな」

「は、挟まれちゃったね……」

 

先へと落ちていったゴーレム騎士達が、落下先で再構築し、隊列を組んでハジメ達を待ち構えていた。盾を前面に押し出し腰をどっしりと据えて壁を作っている。一列だけでは力押しで粉砕されると学習した二列目のゴーレム騎士達は盾役の騎士達を後ろから支えていた。

 

「ちっ、面倒な」

 

ハジメは舌打ちをするとドンナー・シュラークを太もものホルスターにしまう。そして〝宝物庫〟から一つの兵器を取り出す。

 

手元に十二連式の回転弾倉が取り付けられた長方形型のロケット&ミサイルランチャー:オルカンである。ロケット弾は長さ三十センチ近くあり、その分破壊力は通常の手榴弾より高くなっている。弾頭には生成魔法で〝纏雷〟を付与した鉱石が設置されており、この石は常に静電気を帯びているので、着弾時弾頭が破壊されることで燃焼粉に着火する仕組みだ。

 

ハジメは、オルカンを脇に挟んで固定すると口元を歪めて笑みを作った。

 

「香織、ユエ! 耳塞げ! ぶっ放すぞ!」

「うん」

「ん」

 

ユエは耳の穴に指を突っ込み、香織は両手で耳を押さえた。

 

そしてオルカンのトリガーが引かれる。

 

無数のロケット弾が狙い通りにゴーレム騎士達を粉砕する。通路全体を激震させながら大量に圧縮された燃焼粉が凄絶な衝撃を撒き散らした。ゴーレム騎士達は、直撃を受けた場所を中心に両サイドの壁や天井に激しく叩きつけられ、原型をとどめないほどに破壊されているので、再構築にもしばらく時間がかかるだろう。

 

ハジメ達は一気にゴーレム騎士達の残骸を飛び越えて行く。

 

再び落ちて来たゴーレム騎士達に対処しながら、駆け抜けること五分。遂に、通路の終わりが見えた。通路の先は巨大な空間が広がっているようだ。道自体は途切れており、十メートルほど先に正方形の足場が見える。

 

「香織、ユエ! 飛ぶぞ!」

 

ハジメの掛け声に香織とユエは頷く。落下していくゴーレム騎士達を背に、迎撃と回避をしつつ通路端から勢いよく飛び出した。

 

「「〝龍化〟!!」」

 

ハジメと香織は龍化を発動させ、二枚の翼をはためかせて宙に浮かぶ。飛べないユエは香織の背中に乗っている。

 

「多分、原因はここのようだな」

「そうだね、全部浮いてるもん」

 

形も大きさもばらばらなブロックがばらばらに動いている。

 

最初の頃と比べ、ゴーレム騎士達の動きが細やかになっていた。

 

「ここに、ゴーレムを操っているヤツがいるってことかな?」

 

ハジメの推測に香織とユエも賛同するように表情を引き締めた。ゴーレム騎士達は何故か、ハジメ達の周囲を旋回するだけで襲っては来ない。取り敢えず、何処かに横道でもないかと周囲を見渡す。ここが終着点なのか、まだ続きがあるのか分からない。だが、間違いなく深奥に近い場所ではあるはずだ。ゴーレム騎士達の能力上昇と、この特異な空間がその推測に説得力を持たせる。

 

ハジメは〝遠見〟で、この巨大な球状空間を調べようと目を凝らした。と、次の瞬間、赤熱化した物体が物凄い速度で迫り、目の前のブロックを破壊した。龍化を解除したハジメ達は近くにあったブロックに飛び乗る。

 

「おいおい、マジかよ」

「すごく大きいゴーレム……」

「……親玉って……感じ」

 

三人の前に現れたのは、全長二十メートル弱のゴーレム騎士・ミレディ・ライセンである。

 

「やほ~、はじめまして~、皆大好きミレディ・ライセンだよぉ~」

「「「……は?」」」

 

三人共呆然自失していた。厳つい見た目のゴーレムから、女の声がしたのだ。

 

そんな硬直する三人に、ミレディは不機嫌そうな声を出す。

 

「あのねぇ~、挨拶したんだから何か返そうよ。最低限の礼儀だよ? 全く、これだから最近の若者は……もっと常識的になりたまえよ」

 

ハジメは取り敢えず、探りを入れることにした。

 

「そいつは、悪かったな。自我を持つゴーレム何て聞いたことないんでな……お前は一体何者だ? この迷宮を造った奴のことはオスカーの手記に書いてあったんだろうが、生憎持ち出されて結局分からなかった」

「あれぇ~、こんな状況なのに物凄く冷静だねぇ、こいつぅ。っていうかオスカーって言った? もしかして、オーちゃんの迷宮の攻略者?」

「ああ、オスカー・オルクスの迷宮なら攻略した。というか質問しているのはこちらだ。答える気がないなら、このまま戦闘に入るぞ? 別にどうしても知りたい事ってわけじゃない。俺達の目的は神代魔法と友人を探しに来ただけだからな」

「ふ~ん、友人を探しに来た、かぁ……何か訳ありみたいだねぇ。まぁいいや。で、もう一個は神代魔法だっけ? それってやっぱり、神殺しのためかな? あのクソ野郎共を滅殺してくれるのかな? オーちゃんの迷宮攻略者なら事情は理解してるよね?」

「質問しているのはこちらだと言ったはずだ。答えて欲しけりゃ、先にこちらの質問に答えろ。俺達にはあまり時間が無いんでな」

「こいつぅ~何か偉そうだなぁ~、まぁ、いいけどぉ~、えっと何だっけ……ああ、私の正体だったね。うぅ~ん」

「簡潔にな。オスカーみたいにダラダラした説明はいらないぞ」

「あはは、確かに、オーちゃんは話が長かったねぇ~、理屈屋だったしねぇ~」

 

天を仰ぐミレディ。

 

「うん、要望通りに簡潔に言うとね。私は、確かにミレディ・ライセンだよ。ゴーレムの不思議は全て神代魔法で解決! もっと詳しく知りたければ見事、私を倒してみよ! って感じかな」

「結局、説明になってねぇ……」

「ははは、そりゃ、攻略する前に情報なんて貰えるわけないじゃん? 迷宮の意味ないでしょ?」

 

ハジメに向かって指を振るミレディ。

 

「お前の神代魔法は、残留思念に関わるものなのか? だとしたら、ここには用がないんだがなぁ」

「ん~? その様子じゃ、何か目当ての神代魔法があるのかな? ちなみに、私の神代魔法は別物だよぉ~、魂の定着の方はラーくんに手伝ってもらっただけだしぃ~」

「じゃあ、お前の神代魔法は何なんだ? 返答次第では、このまま帰ることになるが……」

「ん~ん~、知りたい? そんなに知りたいのかなぁ?」

 

再びニヤついた声音で話しかけるミレディに、イラっとしつつ返答を待つハジメ。

 

「知りたいならぁ~、その前に今度はこっちの質問に答えなよ」

 

最後の言葉だけ、いきなり声音が変わった。今までの軽薄な雰囲気がなりを潜め真剣さを帯びる。その雰囲気の変化に少し驚くハジメ達。表情には出さずにハジメが問い返す。

 

「なんだ?」

「目的は何? 何のために神代魔法を求める?」

 

嘘偽りなど決して許さないという意思が込められた声音で、ふざけた雰囲気など一切合切なく問いかけるミレディ。

 

ユエも同じことを思ったのか、先程までとは違う眼差しでミレディ・ゴーレムを見ている。深い闇の底でたった一人という苦しみはユエもよく知っている。だからこそ、ミレディが意思を残したまま闇の底に留まったという決断に、共感以上の何かを感じたようだ。

 

ハジメは、ミレディの眼光を真っ直ぐに見返しながら嘘偽りない言葉を返した。

 

「俺の目的は、生きて親友と再会して、仲間と共に故郷に帰ることだ。お前等のいう狂った神とやらに無理やりこの世界に連れてこられたんでな。世界を超えて転移できる神代魔法を探している……お前等の代わりに神の討伐を目的としているわけじゃない。この世界のために命を賭けるつもりは毛頭ない。俺は、仲間と無事に生きて元の世界に帰れればそれでいい」

「……」

 

ミレディはしばらく、ジッとハジメを見つめた後、何かに納得したのか小さく頷いた。そして、ただ一言「そっか」とだけ呟いた。と、次の瞬間には、真剣な雰囲気が幻のように霧散し、軽薄な雰囲気が戻る。

 

「ん~、そっかそっか。なるほどねぇ~、別の世界からねぇ~。うんうん。それは大変だよねぇ~よし、ならば戦争だ! 見事、この私を打ち破って、神代魔法を手にするがいい!」

「脈絡なさすぎて意味不明なんだが……何が『ならば』何だよ。っていうか話し聞いてたか? お前の神代魔法が転移系でないなら意味ないんだけど? それとも転移系なのか?」

 

ミレディは、「んふふ~」と嫌らしい笑い声を上げると、「それはね……」と物凄く勿体付けた雰囲気で返答を先延ばす。

 

「教えてあ~げない!」

「なら死ね」

 

問答無用にハジメが再び龍化を発動させ、ミレディの四肢を丁寧に噛み千切る。

 

「ななっ!?」

「俺達の攻撃はな、こんなもんじゃねーんだよ。香織!」

「オッケーだよ、ハジメくん!」

 

香織も龍化を発動させる。そして二人でミレディを掴んでその場に固定する。

 

「後は頼んだぞ、ユエ」

「ん」

 

ユエはハジメからガトリング砲・メツェライを受け取り、ミレディに向かって放つ。しかし、肝心の内部までは弾が届かなかった。漆黒の装甲に全て弾かれたのだ。

 

「……アザンチウムか、くそったれ」

 

手っ取り早く終わらせたかったハジメは遂に最終手段に出た。

 

「ちょっと粗削りになるが、こうなったら最大威力のブレスで粉々にしてやるよ!」

 

そういうとハジメと香織は口元に魔力を集中させる。ここでは放出される魔力は分解されるので、これを外してしまえば彼らに勝機はない。もっとも、この至近距離で外すとは思えないが。

 

「あれ? 何か嫌な予感がするんだけど、気のせいかな?」

 

ミレディは脱出を試みるもハジメと香織に掴まれて動けない。ならば四肢を再生しようとブロックを引き寄せてみるも弾き飛ばされる。

 

「こうなったら騎士で邪魔でも……」

「させない」

 

ユエがハジメと香織を囲むゴーレム騎士達を〝破断〟で切断していく。

 

「さあミレディ・ライセン。お前の敗北を素直に受け入れろ」

 

一度こういう台詞を言ってみたかったと、ハジメは心中で零す。

 

直後、二つのブレスがミレディの核を体ごと消し飛ばす。最大出力のブレスであれば、アザンチウムですら貫くことができる。

 

核を失った巨大ゴーレムの目から光が消え、機能を停止する。

 

 

今回の迷宮での最後の戦いは、圧倒的な力で無理矢理押し切った。

 

龍化を解除したハジメと香織はユエと合流し、更に向こうの部屋に移動した。

 

そこでも三人は、更に怒りを覚える。ミレディは小さなゴーレムの状態で巨大ゴーレムを操っていたのだから。

 

その後、三人は重力魔法と攻略の証をミレディから受け取ったが、ハジメには適正が全く無かった。

 

そして〝眼鱗〟の存在に気づいたハジメは七星刀をかけて人間の姿に戻ったミレディと対決するが、あっさりと破れてしまった。

 

重力魔法と攻略の証を手にした三人はミレディにより無理矢理外へつまみ出されるが、ハジメの最後の置き土産に悲鳴を轟かせ、泣きべそをかくことになった。

 

 

 

 

「ハジメさんの言ってた通り、かなり大変だったわよ。ライセン大迷宮の攻略」

 

雫がライセン大迷宮での苦労を語る。

 

「膵花がいなかったら死んでたと思うわ……」

 

香織は苦笑いだ。

 

「流石の来もあれは滅茶苦茶怒るだろうな……」

「あら、膵花の方はそんなに怒って無かったようだったけど?」

 

膵花の方も攻略時に怒り狂うことはなかったようだ。何度も心頭滅却した結果である。

 

「それほどムカつく奴だったからな、ミレディ・ライセンは」

 

そのミレディはというと…

 

「……らーちゃん…」

 

一人の剣士に文字通り夢中なのであった……




どもども、高一の時に節分で巻き寿司を食べた後、胃腸炎に罹ったことがある最果丸です。

まさかライセン大迷宮の攻略者の話を二度も書くことになるとは夢にも思っていませんでした。しかも一度目よりも原作に寄っているという。

本当にキャラこれで合ってるのだろうか……


次回 第四十一閃 漆黒の竜と鉄の龍

外伝作品はどこまで進めて欲しいですか?

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