ありふれた職業と共に一刀両断!!   作:籠城型・最果丸

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第四十三陣 一騎当千の者達

「何だったんだよさっきの……ビーム砲なんかなかっただろこの世界に……!」

 

翼竜から落とされ、即席の塹壕に結界を張りながら籠っているのは行方不明となっていた清水幸利その人だった。偶然とある男と密約を交わし、ウルの町を愛子達ごと壊滅させようと企んだ。

 

「なっ……俺が手塩にかけて造り上げた魔物軍団がッ……!!」

 

だが、容易に捻り潰せるはずの町や人は全くの無傷。それどころか逆に魔物軍団の方が捻り潰されていた。

 

 

「妖術 鳴時雨」

 

遥か天空から無数の(いかづち)が降り注ぎ、最前列の魔物を種類や強さに関係なく穿ち抜いた。

 

「この程度では終わらんよ。防壁展開 電電堀(でんでんぼり)

 

ウルの町を囲う防壁が、紫色の稲妻を纏う。壁に触れれば一瞬で絶命してしまうだろう。

 

「さぁ、祭りの始まりだ」

 

二刀流の青年は新たに解禁された能力「分子操作」で自身を亜光速まで加速し、魔物を辻斬りにしていく。血飛沫の華で彩られたジグザグのレッドカーペットの出来上がり。

 

「こちらも行きますよぉ~!! 〝白炎(びゃくえん)両筒鬼哭(りょうづつきこく)〟」

 

シアの刀から白い炎が迸り、魔物を斬ると同時に焼き焦がす。彼女には魔法適正が無い。が、自身の生命エネルギーを魔力の〝代わり〟として使用する術は身に着けることができた。故に、白い炎は魔法ではなくシア自身の生命エネルギーなのだ。

 

(魔力を持たない亜人族でも魔術師のように戦えるって言ってましたけど、まさかこれ程とは……)

 

初期の頃は名前を呼ばれるたびに「はい、役立たずシアです」と言いそうな程足を引っ張っていたのだったが、今となっては立派に戦闘を熟せる程成長していた。

 

シアの左にはティオが陣取っている。突き出す両手の先から紅黒い極光が放たれ、空気を焦がす。人間形態でも竜化状態と同じように放つことが可能である。来をして息の根を止められた殲滅の赤黒き炎は射線上の一切を刹那の間に消滅させ大群の後方にまで貫通した。ティオは、そのまま腕を水平に薙ぎ払っていき、それに合わせて真横へ移動する赤黒い砲撃は触れるものの一切を消滅させていく。

 

砲撃が止んだ後、大きく抉れた大地には灰すら残されていなかった。しかし、先程の砲撃でかなり魔力を消耗してしまった。ティオは疲労困憊といった所だ。しかし、すぐさま回復して再び背筋を伸ばす。髪飾りから自動で魔力が補充されたのだ。ティオが担当する範囲の魔物の先陣はあらかた消滅し、多少の余裕が出来たティオは、魔力消費の比較的少ない魔法を行使する。

 

「吹き荒べ頂きの風 燃え盛れ紅蓮の奔流 〝嵐焔風塵〟」

 

魔力消費を少しでも抑えるため、敢えて詠唱をして集中力を高める。そうして魔法は解き放たれる。F5の業火の竜巻だ。直径約六十三メートルの渦炎が魔物の群れを巻き上げ焼き尽くす。

 

来の右に陣取っていたミレディの殲滅力も飛び抜けていた。他の仲間達が攻撃を仕掛けている中、唯一人瞑目しながら詠唱を唱えていた。

 

「真空とは即ち滅諦の涅槃なり」

(訳:真空というものは、すなわち煩悩も苦も無い安らぎの境地である)*1

 

右側の攻撃が薄いと悟った魔物達が、破壊の嵐から逃れるように集まり、右翼から攻め込もうと流れ出す。既に進軍にすら影響が出そうなほど密集して突進して来る魔物達。

 

「偽非ざるが故に真、相を離れたるが故に空なり」

(訳:偽りでないから真であり、形を持たないから空虚なのだ)*2

 

そして彼我の距離が七百メートルを切った所で、詠唱が終了する。

 

「〝無翳無葬(むえいむそう)〟」

 

世の法則の一つに干渉する〝重力魔法〟の使い手たるミレディ。魔法に関して素晴らしき才覚を持つ彼女が放つこの魔法は、空中に作りだした漆黒の穴に魔物を押し込んで一点に潰してしまうという恐ろしい魔法である。一点に押し潰された魔物はその亡骸を跡形もなく霧散させる。

 

あまりに強い重力に、周囲には巨大な積乱雲が生じ、強力なダウンバーストが発生している。地面に向かった破壊的噴流は魔物を後ろへと吹き飛ばす。

 

「お次はこのプレゼントだよっ☆」

 

ミレディは片手を天に突き出し、そして振り下ろした。

 

「〝流群奔光〟」

 

一つの星が、天空を裂いて地に落ちて来るのが見えた。*3その星は、地に叩きつけられた瞬間に凄まじいほどの衝撃波を放ち、半径数メートルの圏内にいる魔物を一瞬で葬り去った。

 

落ちて来た星は、一つではなかった。数多の星が、魔物の群れの頭上に落ちて来た。地面は穴だらけのボコンボコンになり、魔物は肉塊と化した。

 

大地に吹く風が、戦場から蹂躙された魔物の血の匂いを町へと運ぶ。強烈な匂いに、吐き気を抑えられない人々が続出するが、それでも人々は、現実とは思えない〝圧倒的な力〟と〝蹂躙劇〟に湧き上がった。町の至るところからワァアアアーーーと歓声が上がる。

 

町の重鎮や護衛騎士達は、初めて見る来達の力に呑まれてしまったかのように呆然としたままだ。生徒達は、改めてその力を目の当たりにし、自分達との〝差〟を痛感した。本来、あのような魔物の脅威から人々を守るはずだった、少なくとも当初はそう息巻いていた自分達が、ただ守られる側として町の人々と同じ場所から、〝一騎当千〟のクラスメイトの背中を見つめているのだ。

 

愛子は、ただひたすら祈っていた。来達の無事を。そして同時に、今更ながらに自分のした事の恐ろしさを実感し表情を歪めていた。目の前の凄惨極まりない戦場が、まるで自分の甘さと矛盾に満ちた心をガツンと殴りつけているように感じたのだ。

 

やがて、魔物の数が目に見えて減り、密集した大群のせいで隠れていた北の地平が見え始めた頃、遂にティオが倒れた。渡された魔晶石の魔力も使い切り、魔力枯渇で動けなくなったのだ。俯せに倒れ込み、顔だけを来に向けて申し訳なさそうに謝罪するティオ。

 

「むぅ、妾はここまでのようじゃ……もう、火球一つ出せん……すまぬ」

 

顔からは血が抜けて真っ白になっている。文字通り死力を尽くして強力な魔法を放ち続けたのだ。

 

「お疲れ。下がって休め」

「はっ……」

 

魔力を枯渇させてしまったティオを前線から下がらせ、自身は高く飛び上がる。そして空中で停止し、頭を下、脚を上に向けた。

 

「群れの主は百体といったところか。大半が後方に下げられている」

 

主クラスの魔物を即座に発見し、熱線を撃ち込んで取り巻きごと九十七体程撃破した。そして仲間達に脳内会話を掛ける。

 

『中隊長級の魔物が後方に控えている。大部分は既に撃破しておいた。シアはこのまま進軍して残りの三体を相手してくれ』

『了解です!』

『ミレディはティオの復帰まで援護してくれ』

『合点承知の助だよっ!』

『僕は大群の大主を相手取る』

 

そう地上の仲間達に告げると、その大主の場所へと一直線に向かって行った。

 

 

「さーてと、魔物達のリーダーをちゃちゃっと殺っちゃいますよぉ~!」

 

地上を駆ける一羽の兎、シアは白炎を纏った刀を振るい、雑魚を狩る。

 

「白炎・兎波奔走(とはほんそう)

 

月輪を描くように刀を振るうと、二羽の白く燃える兎が現れ魔物の主の一体に飛び掛かる。主にぶつかると同時に兎は爆ぜ、魔物を骨まで焼き尽くした。残った二体も、白炎で葬り去った。

 

「よし、これでリーダー格は全滅ですね」

 

と気を抜いたのも束の間、シアの右後方から新手が高速で接近してきた。黒い体毛に四つの紅玉のような眼を持った狼型の魔物にも、シアは慌てず刀を振るった。だが、それを予期していたように寸前で急激に減速すると、見事にシアの一撃を躱してみせた。が、しかし…

 

「…『壊』!」

 

シアが「壊」と叫ぶと、狼の真下から白炎が上がり、その身を灰燼と化す。

 

「白炎・鬼兎首釜(おにうさぎこうべがま)

 

『いついかなる時も慢心はするな』と、彼女の師に教わった。故に万が一攻撃が外れた場合の代行措置として妖術をいつでも発動できる状態にしておいた。

 

「私はもう、慢心はしないです」

 

シアは刀を鞘に仕舞い、オーバーテクノロジーの結晶の一つ『草薙』を取り出す。魔力が流れ込み、碧白く光る刃が回転する。草薙を掲げながら、シアは左手を突き出して決め台詞を口にする。

 

「シア・刃卯鱗亜。推して参る」

 

渦のように回転し、魔物の群れに突進する。猪突猛進ならぬ、兎突猛進である。しかし、シアと魔物達との戦いに乱入者が現れた。

 

突然地面から管が数本飛び出し、黒い煙を噴き出した。黒煙は半径数十メートルの半球状となり、日光が遮られて暗くなる。

 

「これは一体!?」

 

管が突き出た地点が大きく盛り上がり、一体の魔物が姿を現す。全長は二十七メートル、右目は潰れていて、脇腹と喉笛には傷跡が残っていた。背中からは煙突のような管が六本突き出している。

 

(体に傷がある……以前誰かと戦って生き延びたのでしょうか……?)

 

黒煙のドームに閉じ込められた魔物は乱入者…ヌマスベリを見て一目散に逃げだす。が、逃げ遅れた一体がヌマスベリの顎門に捕らえられ、丸呑みにされた。

 

「共喰いしてる……群れとは関係ない魔物ってことですよね……」

 

ヌマスベリはシアを見つけると、物凄いスピードで迫って来た。シアはそれを慣れたように躱す。ヌマスベリは太い尾で立ち、両手でシアを掴もうと交互に突き出す。しかし、捕まえることはできなかった。

 

「そいやっさ!!」

 

シアは右手の掴み攻撃を躱し、そのままぐるりと反転して右手首を斬り落とした。ヌマスベリは右手を失った痛みに絶叫を上げる。

 

「肉を斬り……」

 

今度は太い尾を碧い刃で切断した。移動手段を封じられたヌマスベリはもう自在に動くことすらままならない。

 

「この一撃で、骨を断つ!!」

(白炎・月波氷兎(げっぱひょうと)

 

ヌマスベリの頸の上で、体を捩じって回転する刃を振るう。

 

その碧き刃は、巨大なヌマスベリの頸を断ち切った。

 

ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

 

巨大な蜥蜴の叫びが響き渡り、体を激しく揺らす。まるで頭部を失い、のたうち回っているかのように。

 

「凄まじい断末魔と揺れ……とりゃっ!」

 

シアは高く跳んで地に足を着けた。ヌマスベリは少しの間激しくのたうち回った後、振り上げた左腕を地面に叩きつけてそのまま動かなくなった。

 

「来さん……褒めてくれるかな……?」

 

シアは確かに成長していた。勇者一行でさえ取り逃がした巨大な魔物を、彼女はたった一人で討ち取ったのだから。

 

 

「何だよ……何なんだよ……有り得ないだろ……! 勇者を超えたと思ったのに……上には上がいたとでも言うのかよ……!?」

 

遠く離れた塹壕にて、幸利は戦場の有様を見ていた。

 

「彼奴に並ぶなんて夢のまた夢なのか…」

 

幸利が即席の塹壕から出て来て逃走の準備をした、その時――。

 

何かが落下してきたような衝撃音があり、地面が激しく揺れた。

 

「!?」

 

幸利が肩越しに振り返る。彼からそう離れていない場所にもうもうと土煙が立ち上っている。煙の奥に人影が見えた。

 

(な、何だ……? 嫌な予感がする……)

 

幸利が体ごと人影に向き合い、杖を向ける。

 

煙が晴れていく。

 

人影がゆっくりと顔を上げた。和装の若い青年だ。青年の両目は黄金色をしていた。そして髪色は月白色だった。

 

「!!」

 

腰には白と黒の刀を差している。

 

「久しいな」

 

幸利には、その声は聞き覚えがあった。

 

「なっ……まさか……」

「よく生きていたものだ」

 

青年は青筋を浮かべ、幸利に向かって微笑む。

 

「清水」

 

腰の黒い刀を抜いて人間離れした速度で振り薙ぐ。峰打ち。

 

「幸利!!」

 

幸利はそれをギリギリで躱す。彼に親しい人物が一人もいなければ、これほどの身体能力を有することは無かっただろう。

 

「辻風ェエエエ!!」

 

幸利が青年の名を叫ぶ。呼び声に反応した青年――来は刀を仕舞うと、幸利に向かって喋りかけた。

 

「四ヶ月振りだな。闇術は上達したか?」

「何で……お前、死んだはずじゃ……」

「僕にはまだ、すべき事があったからな……地獄から舞い戻って来たよ」

「……不死の炎鳥(フェニックス)みたいな奴だな」

 

来と幸利は、かつて親交があった。幸利の趣味を否定しなかったのは来だけだったのだ。兄弟にも虐げられていた彼に、来は狭いながらも居場所を与えていた。

 

異世界召喚の事実を理解したときの脳内は、まさに「キターー!!」という状態だった。愛子がイシュタルに猛然と抗議している時も、光輝が人間族の勝利と元の世界への帰還を決意し息巻いている時も、幸利の頭の中は、何度も妄想した異世界で華々しく活躍する自分の姿一色だ。ありえないと思っていた妄想が現実化したことに舞い上がって、異世界召喚の後に主人公を理不尽が襲うパターンは頭から追いやられている。

 

そして実際、幸利が期待したものと、現実の異世界ライフには齟齬が生じていた。まず、幸利は確かにチート的なスペックを秘めていたが、それは他のクラスメイトも同じであり、更に、〝勇者〟は自分ではなく光輝であること、そして、たった一人の友達である来はそれを超えるチートを秘めていた。その為か、女が寄って行くのは光輝か来で、自分は〝その他大勢の一人〟に過ぎなかった事だ。これでは、日本にいた時と何も変わらない。念願が叶ったにもかかわらず、望んだ通りではない現実に加え、友達に裏切られたような気がした。幸利は内心不満を募らせていった。

 

なぜ、自分が勇者ではないのか。なぜ、自分と来との間に大きすぎる差が生まれたのか。なぜ、光輝と来が女に囲まれていい思いをするのか。なぜ、自分ではなく光輝と来ばかり特別扱いするのか。自分が勇者ならもっと上手くやるのに。自分に言い寄るなら全員受け入れてやるのに……そんな、都合の悪いことは全て他者のせい、自分だけは特別という自己中心的な考えが清水の心に巣食った。

 

そんな折だ。あの【オルクス大迷宮】への実戦訓練が催されたのは。幸利は、チャンスだと思った。誰も気にしない。居ても居なくても同じ。そんな背景のような扱いをしてきたクラスメイト達も、遂には自分の有能さに気がつくだろうと、そんな何処までもご都合主義な幸利は……絶望を突きつけられることになった。

 

『人は誰もが特別だ。幸利は自分のできる事を頑張れば良い』

 

――偉そうに。

 

『どんなに強い人間だって、いつかは死ぬ。誰もが皆、死を避けられる者はこの世には居ない』

 

トラウムソルジャーに殺されかけて、遠くでより凶悪な怪物と戦う〝勇者〟を見て、抱いていた異世界への幻想がガラガラと音を立てて崩れた。

 

そして、橋の上で息絶えた〝たった一人の友達〟を目の当たりにし、心が折れた。前日に彼が言っていたことは、彼の〝犠牲〟を以て現実となった。

 

幸利は自室に引き籠るようになり、自らの天職〝闇術師〟に関する技能・魔法に関する本に読み耽った。そこから、魔物を従える機会と出会うために愛子達に同行し、姿を晦ませて魔物の大群を従えたのだ。

 

苛立ちを募らせた幸利は来に向かって針を突き出した。針には強力な毒が仕込まれており、刺されば数分と待たずに死に至ってしまう。そしてそれをそのまま受ける来。

 

「なっ……何で避け……」

「この程度の毒で、僕を殺そうだなんて無謀にも程がある」

 

来は幸利から毒針を取り上げた。

 

「何故、このような事をした?」

 

黄金の瞳が、幸利を射抜く。

 

「なぜ? そんな事もわかんないのかよ。だから、どいつもこいつも無能だっつうんだよ。馬鹿にしやがって……勇者、勇者、辻風、辻風うるさいんだよ。俺の方がずっと上手く出来るのに……気付きもしないで、モブ扱いしやがって……ホント、馬鹿ばっかりだ……だから俺の価値を示してやろうと思っただけだろうが……」

「皆を見返したいなら、どうして町を襲うようなことをしたんだ?」

 

幸利は少し顔を上げると薄汚れて垂れ下がった前髪の隙間から陰鬱で暗く澱んだ瞳を来に向け、薄らと笑みを浮かべた。

 

「……魔人族に俺の価値を示せると思ったんだよ。魔物を捕まえに、一人で北の山脈地帯に行ったんだ。その時、俺は一人の魔人族と出会った。最初は、もちろん警戒したけどな……その魔人族は、俺との話を望んだ。そして、わかってくれたのさ。俺の本当の価値ってやつを。だから俺は、そいつと……魔人族側と契約したんだよ」

「契約……とは」

「……畑山先生、あの人を殺す事だよ」

 

愛子は農業を司る作農師だ。それはすなわち、食糧の生産に関わる。故に、勇者とは別ベクトルで厄介な存在。

 

「俺は、魔人族側の〝勇者〟として招かれる。そういう契約だった。俺の能力は素晴らしいってさ。勇者の下で燻っているのは勿体無いってさ。やっぱり、分かるやつには分かるんだよ。実際、超強い魔物も貸してくれたし、それで、想像以上の軍勢も作れたし……」

「それであれだけの大群を用意できた訳か」

「だから、だから絶対、畑山先生を殺せると思ったのに! 何だよ! 何なんだよっ! 何で、六万の軍勢が負けるんだよ! 何でお前は生き返ってんだよ! お前は、お前は一体何なんだよっ!」

 

最初は嘲笑するように話していた幸利。だが、話している途中で興奮したのか来に向けて喚き始めた。自分の計画を台無しにした来への憎しみよりも、死んだはずの人間が生き返ったことによる恐怖が大きかった。

 

「僕は人間なんてとっくに辞めている」

「嘘だろ!」

「嘘じゃない。これを見ろ」

 

幸利の前で、来は〝龍化〟を発動させる。幸利の前には、全長三十五メートルの鉄色の龍が鎮座している。ティオを敗北に追いやった時の姿だ。

 

「辻風……お前は一体……」

「僕は〝限りなく完璧に近い生物〟、SFっぽく言えば〝高次元生命体〟だ」

 

来の口から語られる秘密に、幸利は唖然としていた。

 

「人間誰しも一つや二つ秘密を隠し持っているものだよ」

「お前人間じゃねーだろ」

「一応〝元人間〟なんだけど……まぁいいや」

 

先程までのシリアスな雰囲気はどこへやらとツッコみをかます来。そして再びシリアスな空気に戻る。

 

「で結局、幸利は『他人に自分を認めて欲しかった』。そうなんだろう?」

「……あぁ。けど誰も認めちゃくれなかった」

 

顔を俯かせた幸利に、来は「幸利」と名を呼び、言葉を投げかける。

 

「魔人族の助けがあったとはいえ、お前の闇術魔法は凄かったよ。見事だ」

 

幸利は生まれて初めて、自分の個性を認められた。だがしかし、「けど……」と言葉は続く。

 

「……罪も無い人を殺した事は許さない」

「……そうか……」

 

黄金の瞳には、曇りが無かった。幸利を褒めたのは、紛れもない本心だった。

 

「俺さ……お前が天之河よりチートだって分かってからずっとお前に裏切られたような気分だったよ。勇者は超えられても、お前は超えられないって事だったのかもな……」

「……」

 

来は言葉が出なかった。

 

(どうして、俺はこんなに満足してるんだろう……俺の欲望は、こんな程度で満たされる程大きく無かったはずだというのに……辻風に俺の力を認められて、こんなに満足感が得られている)

 

幸利は、在りし日の記憶を思い出していた。

 

 

『へぇ~。面白い趣味してるなぁ、幸利。今度おススメのやつ教えてよ。そういうのちょっと疎いからさ』

 

『色んなフィギュアが置かれてる。徹底してるなぁ……でも悪い事じゃないよ』

 

『情けは人の為ならず。人に親切にしていれば、巡り巡っていつかは自分に返ってくる。自分に親切にして欲しいなら、まず自分から他人に親切にしてやるんだぞ』

 

 

(そっか……俺はただ〝誰かに認められて欲しかった〟んだな……その〝誰か〟は誰だろうが関係なかった。こんなちっぽけな欲望の為に、俺はこんなバカな事をしたのかよ……)

 

幸利は自分の行いを後悔していた。もっと素直になるべきだったのだ。

 

「行こうか。畑山先生の許へ」

「……あぁ」

 

手首を縛られ、剣士に連れられて町へと歩んでいく闇術師。その目は先程までちっぽけで醜い欲望が宿っていたとは思えない程、晴れやかであった……

 

「なぁ、別に俺の手を縄で縛る必要なくないか?」

「一応この騒動の首謀者なんだからさ……」

「だよな……」

*1
行宗記より引用

*2
行宗記より引用

*3
ヨハネの黙示録 第九章 一節より引用




私です。

前回の投稿から半年以上が空いてしまいました。

もしや失踪してしまったのではと思った方、誠に申し訳ございませんでした。

文章書くのが下手すぎて清水がなんかちょろくなってしまいました。


次回 第四十四閃 襲撃終幕

外伝作品はどこまで進めて欲しいですか?

  • アニメ26話まで
  • 無限列車編まで
  • 無限城戦手前
  • 完結後
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