ありふれた職業と共に一刀両断!!   作:籠城型・最果丸

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『もう、無能とは言わせない』

ユエの全裸シーン目当ての変態の皆様は今すぐお帰り下さい(#^ω^)


痣が出ていますが、鬼滅の刃とは関係ございません。


第六陣 吸血幼女

扉には座学に励んでいたハジメでさえ全く読み取れない魔法陣が書かれていた。更にとても頑丈で、押しても引いてもビクともしない。ハジメが扉に触れ、錬成を試みると、赤い放電が走った。それを皮切りに二体の石像が一つ目の巨人サイクロプスへと姿を変える。どうやらトラップが仕掛けられていたようだ。

 

ハジメは持っていた剣でサイクロプスに斬りかかった。しかし、サイクロプスは硬化の魔法で自身の耐性を大きく上げた。タウル鉱石製の刃を弾き返してしまった。

 

「…ちっ……」

 

折れはしなかったもののサイクロプスの皮膚には傷一つ付かなかった。刀身を外し銃弾を撃ってみるも結果は同じ。

 

「ハジメくん!」

「ハジメさん!」

「ハジメ君!」

 

香織、雫、膵花がハジメに駆け寄る。食事の度に龍化を発動していたため、三人共魔力が枯渇気味だった。もうハジメ達に攻撃の手段は残されていないかのように思えたが…

 

「皆、下がってて。ここは私が斬る」

「膵花ちゃん! ハジメくんの剣も通じなかったんだよ?もう無理だよ!」

「確かに…今の貴方達には無理かもしれない……でも、今の私ならできる!」

 

膵花は自信ありげに刀を抜いた。そして構えを取る。

 

次の瞬間、大きく飛躍し、サイクロプスの腕に斬りかかった。

 

「【〝飛沫ノ舞 稜鱗(ぜいご)削ぎ落とし〟】!!」

 

膵花の左頬に鯵の稜鱗のような痣が表れ、膵花の刀がサイクロプスの腕を斬り落とした。刀身から無色透明の水が噴き出した。

 

「「綺麗……」」

 

香織と雫が膵花の剣術に見蕩れていた。膵花の刀から水が飛び散る様子は正に芸術だ。

 

膵花の刀は水を纏ったまま、サイクロプスの首を一度に二体分斬り飛ばした。

 

「ふぅ~」

 

膵花は血に汚れることなくサイクロプスを二体撃破した。

 

ふと、扉に二つ窪みがあったことを思い出し、ハジメはサイクロプスの死体を解体し始めた。そして体内から魔石を取り出し、扉の窪みに嵌めた。すると、魔石が輝きだし、魔法陣に魔力が注ぎ込まれる。そして魔石が砕け散った後、部屋全体に明かりが満たされる。

 

ハジメが扉を押し開くと、中は艶やかな石造りで、何本もの柱が奥へ向かって二列に並んでいた。そして部屋の中央付近に巨大な立方体の石が置かれていて、部屋に入り込んだ光でつるりとした光沢を放つ。

 

ハジメが凝視していると、立方体から何かが生えているのに気づいた。しかし、近くで確認しようと扉を大きく開けて固定する前に、それは動いた。

 

「……だれ?」

 

上半身から下と両手を立方体に埋めた状態で顔だけが出ていた。長い金髪が垂れ下がり、その間から紅眼の瞳が覗いている。見た目は十二、三歳ほどだろうか。

 

流石に予想外だった全員が硬直し、女の子もハジメをジッと見ていた。やがて、ハジメはゆっくりと深呼吸し決然とした表情で告げた。

 

「すみません。間違えました」

 

そういってそっと扉を閉じようとするハジメそれを金髪紅眼の女の子が慌てたように引き止める。もっとも、その声は何年も出していなかったように掠れて呟きのようだったが……

 

ただ、必死さは伝わった。

 

「ま、待って! ……お願い! ……助けて……」

「ハジメくん……どうする?」

「見るからに怪しいわね」

「でも困ってるみたいだし……」

「……なんでもする……だから……」

 

女の子は必死だ。首から上しか動かないが、それでも必死に顔を上げ懇願している。

 

「こんな奈落の底の更に底で、明らかに封印されているし……絶対ヤバいよ。見たところ封印以外何もないみたいだし……」

 

女の子は泣きそうな表情で必死に声を張り上げる。

 

「ちがう! ケホッ……私、悪くない! ……待って! 私……」

 

ハジメ達が女の子の方を向く。

 

「裏切られただけ!」

 

〝裏切られた〟――その言葉にハジメ、香織、雫、膵花は心を揺さぶられた。

 

目に浮かんだのは、檜山(あのクソッタレ)が放った魔弾がハジメを直撃してハジメの後方を走っていた来が剣で貫かれた光景だ。檜山(アイツ)はクラス全員の撤退の手助けとなった二人を裏切るような真似をした。鍛錬に夢中ですっかり忘れていた。

 

(裏切られた……そうだ、来が奈落に落ちたのも檜山(アイツ)が僕に向かって火球を放ったからだ……)

 

この時、ハジメの中にある負の感情が芽生えた。身を焦がすほどの強い憎しみだ。

 

(何故来が落ちなきゃけならない……彼が何をした……)

(なぜこんな目にあってる……なにが原因だ……)

(神は僕たちを理不尽に誘拐した……)

(クラスメイトは彼を裏切った……)

(まだ生きてるかもしれないのに勝手に死んだことにした……)

 

その憎しみはハジメの心を蝕んでいき、今まで檜山達に虐げられてきた耐えがたい記憶を糧に膨らんでいく。

 

(僕が弱かったから、彼を守れなかった……)

(僕はただ、来と膵花さん、香織さんと雫さんと一緒に暮らしたかっただけなのに……)

(弱さは邪魔だ。弱さがあるから守りたいものも守れない……)

(邪魔ならどうすればいい?)

(……消す)

(僕達の……俺達の暮らしを邪魔する奴は……)

(殺す)

 

この瞬間、少年南雲ハジメは弱さを捨てた。

 

「ハジメくん? さっきから怖い顔してたけど……大丈夫?」

「……え? ……あ、ああ、大丈夫だ。それで、裏切られたってどういう意味だ? 理由しだいでは……」

 

香織に現実世界に戻され、ハジメは少女に訊ねる。だが、口調は変わり果ててしまった。ハジメはドンナーを抜いた。

 

「どうなるか解ってるよな……?」

 

そして銃口を少女に向ける。

 

(ハジメくん……怖い……)

(どうしちゃったのハジメさん……?私には今の貴方が何を考えているのか解らない……)

 

香織と雫はハジメの変貌ぶりに恐れ戦き(おののき)

 

(あらあら……ハジメ君壊れちゃったね……)

 

膵花は特に気にすることは無かった…

 

「わ、私、先祖返りの吸血鬼……すごい力持ってる……だから国の皆のために頑張った。でも……ある日……家臣の皆……お前はもう必要ないって……おじ様……これからは自分が王だって……私……それでもよかった……でも、私、すごい力あるから危険だって……殺せないから……封印するって……それで、ここに……」

 

枯れた声で怯えながら必死にポツリポツリと語る少女。話を聞きながらハジメ達は呻いた。波乱万丈な境遇だった。ところどころ気になるワードがあったので、湧き上がるなんとも言えない複雑な気持ちを抑えながらドンナーを仕舞い、ハジメは尋ねた。

 

「お前、どっかの国の王族だったのか?」

「……(コクコク)」

今度は香織が尋ねる。

「殺せないってどういうこと?」

「……勝手に治る。怪我しても直ぐ治る。首落とされてもその内に治る」

更に雫も尋ねる。

「……そ、それは凄まじいわね。……すごい力ってそれだけ?」

「これもだけど……魔力、直接操れる……陣もいらない」

「なるほど~」

 

 

膵花は一人納得していた。

 

ハジメ達も傷口に膵花の血を垂らしてから、龍化状態ならば魔力操作が使えるようになった。身体強化に関しては詠唱も魔法陣も必要ない。他の錬成などに関しても詠唱は不要だ。

 

ただ、ハジメには魔法適正が一切無いので巨大な魔法陣は必要になる。結局碌に魔法が使えない。

 

彼女のように魔法適正と魔力操作があれば反則的な力を発揮できたのに。何せ周りが詠唱やら魔法陣やらを準備している間に詠唱も魔法陣も無しに魔法を連発できるのだ。勝負にならない。しかも不死身ときた。来も似た能力を持っているが、あちらは首を斬られれば普通に死ぬ。手足を斬られても再生などしない(ただしくっつけてしばらくすれば治る)。一言で言ってしまえば彼女の劣化版である。あの自己満勇者でさえ軽く凌駕してしまうだろう。

 

「……たすけて……」

 

ハジメ達が思索に耽り納得しているのをジッと眺めながら、ポツリと女の子が懇願する。

 

「……」

 

ハジメはジッと少女を見つめた。少女もハジメをジッと見つめる。香織が般若の形相を浮かべるまでの間見つめ(雫と膵花が必死で抑えた)、ガリガリと頭を掻き溜息を吐きながら立方体に手を置いた。

 

「〝錬成〟!」

 

そして錬成を始めた。龍化を得てから変質した濃い紅色の魔力が放電するように迸る。だが、立方体は抵抗の意を示すかのように錬成を弾く。

 

「駄目か……なら……!」

 

ハジメは龍化を発動させた。一般人が思い浮かべるようなドラゴンの姿で少女の前に立つ。

 

(これでどうだ……!)

 

魔物を喰らってぶくぶくと貯まった魔力を立方体にぶつけた。それでも変形しなかったので自棄(やけ)になり全放出してしまった。

 

自分でも何をやってるのかよく解らなかった。ただ、残った良心が置き去りにするのを咎めたのだ。こんなところでずっと独りぼっちの彼女を見捨てるのか、と。ハジメは持てる全ての魔力を注ぎ込み、意地の錬成を成す。

 

直後、それまで不完全ながらも錬成を弾いていた立方体が少しずつ液状化する。それと同時に少女の身体が露わとなった。長い間封印されていたためか、痩せ衰えてしまっている。それでも香織とは違う神秘的な美しさを放っていた。そのまま少女は地面に座り込む。

 

ハジメも龍化を解き、座り込んだ。龍化維持の分も含め魔力を全放出してしまったので激しい倦怠感に襲われる。

 

懐から神水を取り出そうとして手を少女に掴まれる。ほとんど力のない、弱々しい手だ。

 

紅眼に溢れんばかりの気持ちを宿し、少女は震える声で告げる。

 

「……ありがとう」

 

その言葉を贈られ、ハジメは胸を絞めつけられた。この少女からは香織とは違う魅力を感じる。だが腐ってもハジメは清純な男だ。今の彼は香織一筋。ハジメの正妻の座から香織が動くことはこれから先ないだろう。

 

少女は声の出し方、表情の出し方を忘れていた。慈悲深い来ならこう思ったことだろう。怖かっただろう、苦しかっただろう、寂しかっただろう、悲しかっただろう、と。

 

「神水を飲めるのはもう少し後だな」と苦笑いしながら少女の手を握り返す。少女の方も握り返してきた。そして少女はハジメ達の名を尋ねる。

 

「……名前、なに?」

「白崎香織だよ」

「八重樫雫よ」

「滝沢膵花だよ」

「ハジメだ。南雲ハジメ。お前は?」

 

少女はハジメの名を繰り返し呟いた。そして、ハジメにお願いをした。

 

「……名前、付けて」

「は? 付けるってなんだ。まさか忘れたとか?」

 

長い間幽閉されていたから自分の名前を忘れてしまったのかと思ったが、少女は首を振る。

 

「もう、前の名前は要らない。……ハジメの付けた名前がいい」

「……はぁ、そうは言ってもなぁ……少し待っていてくれ」

 

この少女は名前を変えることで過去と決別したいらしい。ハジメは香織と雫、膵花と話し合う。

 

「何がいいかな……」

「別に新しく名前を付けなくてもいいのに……」

「何か言った? 香織」

「え? いや、何も言ってないよ?」

「ハジメ君、吸血鬼と聞いて先ず何が思い浮かんだ?」

 

ハジメは吸血鬼と聞いて真っ先に思い浮かんだ物を思い浮かべる。

 

「そういえば最初にこの部屋に入ったとき、あいつの金髪とか紅い眼が夜に浮かぶ月に見えたな……そうか。ありがとう、〝膵花〟」

「どういたしまして……でも、私のことは今まで通りさん付けで呼んでくれないかな? 来君以外に呼び捨てで呼ばれたくないから」

 

たとえハジメでも膵花には来以外に呼び捨てで呼ばれたくないらしい。

 

「はぁ、解ったよ。〝膵花さん〟」

 

ハジメは少女の前に歩み、彼女に付ける新たな名を告げる。

 

「〝ユエ〟なんてどうだ? ネーミングセンスないから気に入らないなら別のを考えるが……」

「ユエ? ……ユエ……ユエ……」

「ああ、ユエって言うのはな、俺の故郷(より正確に言えば、中国)で〝月〟を表すんだよ。最初、この部屋に入ったとき、お前のその金髪とか紅い眼が夜に浮かぶ月みたいに見えたんでな……どうだ?」

 

相変わらずの無表情な少女。しかしその目は、嬉しそうに輝いていた。

 

「……んっ。今日からユエ。ありがとう」

「おう、取り敢えずだ……」

「?」

 

ユエは握っていたハジメの手を離す。

 

「膵花さん、替えの服持ってるか?」

「え? あ、うん。持ってるけど……」

「悪い、少し借りる」

 

ハジメは膵花から服を借り、ユエに差し出す。

 

「これ着とけ。いつまでも素っ裸じゃあなぁ」

「……」

 

忘れていたが、ユエは今現在()()()()()()()()()()()()()()である。反射的にユエは受け取った。

 

「ハジメのエッチ」

「……」

 

こういう時は何か言った時点で負けが確定なのでハジメはノーコメントだ。身長が百四十センチ位のユエには大きすぎたようだ。服の貸主である膵花は身長が百七十三センチもある。雫と同じ位高い。

 

「ハジメ君、六十五階層で何か遭ったみたい」

「ああ、直ぐに向かいたいところだが……如何やら上にも厄介な相手が張り付いてるみたいだ」

 

部屋が揺れ、天井から巨大な魔物が降ってくる。体長はベヒモスの半分程度だが、四本腕に鋏が付いていて、八本の足を動かしている。二本の尾には毒針が付いている。

 

部屋に入って来た時は全く気配がしなかった。如何やらユエを逃がさないための最後の仕掛けなのだろう。

 

ハジメ達は石製の試験管に入った神水を飲み干す。そしてユエにも神水を突っ込む。

 

「ハジメ君! ここは私が喰いとめるから、ハジメ君達はユエちゃんを連れて六十五階層に向かって!」

 

膵花の指示でハジメ達はユエを連れて六十五階層へ向かった。

 

「……さて、私の本気……見せちゃおっかな」

 

膵花は龍化を発動させ、四つ足のドラゴンとなった。体格でいえば膵花の方が圧倒的に有利である。化け蠍は毒針から毒液を飛ばした。膵花は口から炎を吐き、毒液を焼き尽くした。続いて化け蠍の方は針を撃ち出した。撃ち出された針は途中で破裂し、散弾のように広範囲を襲う。だが、ドラゴンとなった膵花を覆う鱗はそれを弾いた。膵花はやり返しだと言わんばかりにサソリモドキに襲い掛かる。

 

 

ハジメ、香織、雫、ユエが奈落の底へ到着した。川を遡って65階層の橋の下まで着いた。

 

「香織、雫、ユエ。全員俺に掴まってろ」

 

ハジメの指示で三人はハジメにしがみつく。

 

「……龍化」

 

ハジメは龍化を発動させた。ただし、大部分は人間のままだ。変化した部分は頭の角、背中の翼、両手、腰から生えた尾のみ。両手には鋭い鉤爪が付いている。

 

「飛ぶぞ」

 

ハジメは翼を羽ばたかせ、奈落の底から飛び上がった。実は、奈落の底から登ろうとすると魔力が分散されてしまうのだが、ある謎の力により無効化されていた。

 

 

ハジメがユエの封印を解いている時、勇者一行は六十五階層に辿り着いていた。

 

「気を引き締めろ! ここのマップは不完全だ。何が起こるかわからんからな!」

 

メルドの声が響く。光輝達は表情を引き締め、未知の領域に足を踏み入れる。

 

しばらく進むと、大きな広間に出た。何となく嫌な予感がする。そしてその予感は的中することとなる。

 

広間に足を踏み入れた瞬間、部屋の中央に直径十メートルの魔法陣が浮かび上がる。

 

「ま、まさか……アイツなのか!?」

 

光輝は冷や汗を流しながら叫ぶ。他のメンバーにも緊張の色がはっきりと浮かぶ。

 

「マジかよ、アイツは死んだんじゃなかったのかよ!」

 

龍太郎も驚愕の叫び声を上げた。それに険しい表情をしながらも冷静な声音のメルドが応える。

 

「迷宮の魔物の発生原因は解明されていない。一度倒した魔物と何度も遭遇することも普通にある。気を引き締めろ! 退路の確保を忘れるな!」

 

メルドが退路の確保を優先する指示を下す。それに光輝は不満そうに言葉を返す。

 

「メルドさん。俺達はもうあの時の俺達じゃありません。何倍も強くなったんだ! もう負けはしない! 必ず買ってみせます!」

「へっ、その通りだぜ。辻風の仇に何時までも負けっぱなしは性に合わねぇ。ここらでリベンジマッチだ!」

 

毎度の如く龍太郎も不敵な笑みを浮かべながら呼応する。メルドは肩を竦め、同じく不敵な笑みを浮かべた。

 

そして魔法陣が爆発したように輝き、かつての悪夢が一行の前に姿を現す。

 

「グゥガァアアア!!!」

 

ベヒモスは咆哮を上げ、光輝達を壮絶な殺意が宿った眼光で睨む。

 

ここに過去を乗り越える為の戦いが、今始まった。

 

 

光輝が〝天翔閃〟を放つ。以前は上位技の〝神威〟を以てしても傷一つ付けることは叶わなかったが、今回はベヒモスの胸をくっきりと斜めに切り裂いた。

 

「いける! 俺達は確実に強くなってる! 永山達は左側から、檜山達は背後を、メルド団長達は右側から! 後衛は魔法準備! 上級を頼む!」

 

光輝が次々に的確な指示を出す。あの時から確かに成長していた。ご都合主義は相変わらずだが。

 

「ほぅ、迷いなく指示をする。聞いたな? 総員、光輝の指示で行くぞ!!」

 

光輝の指示で永山勢はベヒモスの左側、メルド勢は右側、光輝勢は前方、檜山勢は後方に回り込み、ベヒモスを包囲する。

 

前衛組がベヒモスを後衛には行かすまいと必死の防衛線を張る。だが、ベヒモスは突然活動を停止した。

 

「動きを止めた? 一体どうなってるんだ……」

 

メルドが困惑していると、光輝に付けられた傷が塞がり、出血が止まる。それと同時にベヒモスの皮膚が赤黒く輝き、体も巨大化していく。額から結晶が突き出る。

 

「全員、撤退!」

 

メルドは危険と判断し、撤退の指示を出した。

 

「万翔羽ばたき 天へと至れ 〝天翔閃〟!」

 

曲線状の光の斬撃がベヒモスに再び直撃する。だが、今度は傷一つ付かなかった。

 

「何だと!?」

 

ベヒモスは元より更に禍々しい姿となった。体は赤黒い何がで包まれ、背中には炎のようなものが迸っている。ベヒモスが咆哮を上げると、ベヒモスと同じ色をした突起が突き出る。光輝達は避け切れず、突起に突き飛ばされる。

 

 

ベヒモスに突き飛ばされ、しばらく眠っていた光輝達が目を醒ますと、ベヒモスは口を大きく開き、大技のチャージを始めていた。光輝は退路の方に目をやるも、退路は既に塞がれてしまっている。もう光輝達に勝ち目はない。

 

光輝達は諦め、目を閉じて俯いた。ベヒモスは口から光線を放ち、彼らを跡形も無く吹き飛ばした……かのように思えたが…

 

「グォ!?」

 

光線は光輝達の遥か上を貫いた。ベヒモスの足元からは煙が立っている。

 

光輝達が顔を上げると、ベヒモスの前に立つ者が四人。光輝達には幼女以外の三人の後ろ姿に見覚えがあった。そう、ハジメ、香織、雫だ。

 

「香織、雫、ユエは後ろへ。コイツは俺が殺る」

 

香織は治療の為、雫とユエは防衛の為後方に下がる。

 

ハジメは猛スピードで飛び出し、ベヒモスの額に生えた結晶を新兵器のレオで叩き切る。トリガーを引くまでも無く結晶は砕け散り、ベヒモスを覆っていたオーラが消え、元の赤黒い皮膚が露わとなる。

 

「さ~て、じっくり痛めつけてやるとするか」

 

ハジメはベヒモスの胴体をレオで大きく横に裂く。裂いている途中でレオに取り付けられたトリガーを引く。すると、レオの刀身が爆発を引き起こし、ベヒモスの体を大きく抉る。ハジメは反動で吹き飛ばされる。が、たいしてダメージを負っていない。

 

「これで止めだッ!!!!」

 

ハジメはベヒモスの背中に飛び乗り、頭の方へ駆け抜け、レオを首筋に喰い込ませる。

 

「死ねェェェッ!!!!」

 

そしてトリガーを引いた。爆風でベヒモスの首が胴体から吹き飛ぶ。ハジメは再び吹き飛ばされるも、今度は空中で一回転して綺麗に着地した。

 

ハジメはレオを鞘に仕舞い、メルド達の方へ向かう。

 

「メルド隊長!」

 

メルドの前に立っていたのは見慣れない武器を提げたハジメだった。

 

「おお、坊主! 生きていたか!」

 

ハジメの姿に光輝は眉を顰め、檜山は舌打ちをする。

 

「あなた方に危険が迫っていたので急いで駆けつけました」

 

ハジメはまるで正義のヒーローのような台詞を吐く。一度でいいからこんな台詞が言いたかったというのがハジメの本音である。

 

「おい南雲、お前……香織と雫、それに膵花を連れて今まで何処に行っていた!? それに見たことも無い武器を背負っているし……さてはお前、ベヒモスを強化させて俺達を襲わせ、それを討ち取ることで俺が手にするはずだった称賛を得るつもりだったな! 答えろ、膵花は何処だ!?」

 

光輝はご都合主義の下にハジメを睨みつけて言った。しかしハジメは逆に睨み返し、光輝の胸倉を掴む。

 

「折角俺達がお前らを助けてやったのに何だその言い草は! 俺がんな事の為に自作自演をしたとでも言いたいのか? 俺達がここに来るまでに何が遭ったかは知らないが、お前だけは死んでた方がよかったよ!」

 

そう言って光輝を突き飛ばした。負傷者の治療を終えた香織と雫、ユエに指示を出す。

 

「香織、雫、ユエ、行くぞ。膵花さんの許へ」

 

ハジメ達は去ろうとしたが、光輝が引き止める。

 

「待て香織! 雫! 南雲みたいな男と一緒じゃ危険だ! 俺の所に戻るんだ! 俺なら君達を守れる!」

 

しかし香織と雫は上の空。香織は光輝の方に向いて、光輝に告げる。

 

「今の私達を守れるのはハジメくんだよ? 光輝くん、どうしてハジメくんを悪く言うの? ハジメくんに助けてもらったんじゃないの? ハジメくんに助けてもらったことがそんなに嫌だったの? そんなんじゃもし辻風くんが戻って来ても()()()()()()は助けてもらえないかもしれないんだよ? それでもいいの?」

「光輝、貴方はもう少し周りのことに目を配ってみたら? いい加減自分の意見だけを押し通すのは止めなさい」

 

そう言い残し、香織と雫はハジメ、ユエと共に去っていった。

 

 

一方、膵花はサソリモドキを巨体で抑えていた。だが思った以上にサソリモドキの力が強く、更に膵花の魔力も残り僅かとなり、あとどれくらい持ちこたえられるか分からない。

 

(もう……これ以上は……無理……)

 

膵花の龍化が解けた。サソリモドキは反撃と言わんばかりに毒針の付いた二本の尾を膵花に向ける。

 

(立てない……怖い……助けて……)

 

膵花は目を瞑った。

 

(助けてよ……来君……)

 

サソリモドキの毒針が膵花を襲う。が、突き刺さる前に引き千切られた……




次回
第七閃 彷徨う剣士

オリ主ヒロインにミレディ・ライセンを追加しようと思っていますが、入れてもいいと思いますか?

  • 入れてもいい(むしろ入れてくれ)
  • 原作重視(入れるな)
  • 死亡回避ならOK
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