ありふれた職業と共に一刀両断!!   作:籠城型・最果丸

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アンケートの方は完全にノリで出してみましたが、多くの方が投票してくれました。
締めを切るのはライセン大迷宮編の直前にしようと思います(または100人超えたら)。


追記

ステータスを修正しました。


第九陣 一時の休息

来は記憶の海に揺蕩っていた。刻み込まれた数々の記憶だ。

 

 

『ハジメ。今日から住み込みでここの手伝いをすることになった、辻風来と滝沢膵花だ』

『どうも、滝沢膵花です』

『辻風来と申します』

『僕は南雲ハジメ。よろしくね、滝沢さん、辻風君』

 

(あれ? 何だ……この記憶……)

 

 

『ねえ滝沢さん、辻風君。君達は何処から来たの?』

『……私達ね、孤児院で暮らしてたの。親に捨てられて、院長に拾われて……あそこの暮らしも結構楽しかったんだよ? そして何年か経った後、ここに引き取られたの。その時私はとても怖かったんだ。でも、来君も一緒に来たから、怖くなくなったんだ。ねえハジメ君、何時か貴方にも大切な人ができた時は……私達と同じように守ってあげてね』

『うん、約束するよ』

『ありがとう……でも、できれば……下の名前で呼んでほしいな』

『だって、血は繫がってなくても、僕達は同じ家に住む家族なんだから……』

 

『解った。これからよろしく、膵花さん、来』

 

(ハジメ……膵花……何だろう、会ったことないはずなのに……凄く、懐かしい響きだ……)

 

 

『今日からこの道場に入ることになった……』

『辻風来です』

『滝沢膵花です』

 

『俺は天之河光輝だ』

『八重樫雫よ』

『『よろしく(ね)』』

『『よろしくお願いします』』

 

 

『辻風、膵花をかけて俺と一本勝負だ!』

『ちょっと光輝、膵花が嫌がってるでしょ! それに彼も初心者なのよ? 辻風君もあんな挑発に乗らなくてもいいのよ?』

『それは面白そうだ。いいだろう、天之河光輝、その勝負、受けてやる』

 

 

『始め!』

『(この勝負、俺が貰った!)』

『(甘い!)』

『んなっ!?』

『面!!』

『止め!勝負あり!』

 

 

『『『『『おぉぉぉぉ!!!』』』』』

『すげぇじゃん辻風!』

『ホントに初心者なの!?』

『噂じゃコイツ八重樫まで破ったらしいぜ?』

『マジか、すげぇ!!』

 

 

(そんなに強かったんだ……俺って……)

 

 

『私、白崎香織っていうの。よろしくね! 南雲くん、滝沢さん、辻風くん』

『『よろしく、白崎さん』』

『よ、よろしく。白崎さん』

 

 

『逃げろハジメ……お前だけでも生きてくれ……』

 

 

(南雲ハジメ……白崎香織……八重樫雫……会ったことないのに妙な親近感がある……じゃあ、滝沢膵花って女はどうなんだ? どうなんだよ! 辻風来!!)

(君にとって彼女は■■■■だよ)

(んなっ!?)

 

 

(最も古い記憶からずっと、その女はいた)

 

『滝沢さ……いえ、滝沢膵花さん、僕は……貴女を、この世で一番愛してます』

『私も、大好きだよ……来君。愛してる』

『これからよろしくね、膵花』

 

 

『何が遭っても、僕と君との絆は決して千切れない』

『うん……これからもず~っと、ずっと一緒だよ』

『だから、僕のお嫁さんになってください』

『……はい♡』

 

 

「はっ!?」

 

来はベッドから飛び起きた。あれ程身体を痛めつけた痛みは消え去り、ほぼ万全の状態だった。心臓が露出してしまう程の傷は塞がっているが、傷跡が残ってしまっていた。

 

来はヒュドラとの戦いで折れてしまった刀を手に取り、ジッと見つめていた。

 

「……」

 

 

『来たのね……世界を救う希望が』

『ああ、御先祖様もこの時をずっと待っていらしたんだろうな』

『この子ならきっと、世界を太平に導いてくれるはず』

『誰もが皆、平穏に暮らせる未来を作ってくれ、来』

 

 

「そうか、そうだった……」

 

来は刀身の無くなった刀を握り締め、ベッドの上に置いた。

 

「俺は……僕は……」

 

そして決意した。

 

「世界を、太平に導かないと……」

 

 

ベッドルームから出た来は、周囲の光景に圧倒され呆然としていた。

 

「地下深くなのに太陽がある?」

 

地下深くの空間に太陽を模した球体が円錐状の物体の底面上に浮遊していた。球体の放つ光は僅かに温かみを感じさせ、蛍光灯のような無機質さを感じさせなかった。後で分かったことだが、夜には月のようになる。

 

人工太陽の光の温かさに包まれ、目を閉じていると、心地良い水の音が聞こえた。扉の奥のこの部屋はかなり広く、部屋の奥の壁一面が滝である。川には魚も泳いでおり、ここで釣りもできそうだ。

 

「まるで地球で見たナイアガラの滝のようだ……ここで瞑想するのも悪くない」

 

川から少し離れた処に、大きな畑もあった。今はまだ何も植えられていない。そしてその周囲に家畜小屋も広がっている。

 

「作物を植えたり、家畜を飼ったりすれば自給自足できそうだ。ここを造った人は凄いなぁ」

 

来はこの空間の出来に感服していた。ここはミニチュアの自然そのものだった。

 

そしてベッドルームに隣接した建築物に向かって歩き出した。

 

 

一階には暖炉や柔らかい絨毯、ソファのあるリビング、台所、トイレがあった。来がここを訪れる前は誰も住んでいなかったはずなのに、手入れが行き届いていた。

 

来は警戒し、折れた刀を反射的に握る。折れていることをすっかり忘れていたようだ。

 

「ごめん。ハジメ……また、刀を折ってしまった……」

 

さらに進むと、再び外へ出た。そこにはそこそこ大きな円状の窪みがあった。その淵に獅子のような獣の彫刻が口を開いて鎮座しており、横には魔法陣が刻まれている。

 

「円状に掘られた窪み……彫刻の横に刻まれた魔法陣……まさか……」

 

来はこれが何か判ったようだ。試しに魔法陣に魔力を注いでみると、温水が出た(42度くらい)。

 

「そう言えば奈落に落ちてからずっと風呂に入ってなかったからな……」

 

あの時の来はただ生きてここから脱出することに必死だった。

 

「どうせ一日で終わりそうもないし……入るか」

 

探索は一時中断して、湯船に浸かることにした。勿論先に身体を洗った(銭湯での常識)。

 

 

「はぁ~、いい湯加減だな」

 

現在、来は絶賛入浴中である。髪の色は身体を洗っている時に染めていた部分が綺麗に洗い流され、真っ白である。

 

「それにしても、落ちる前までは膵花と一緒に入ってたからな……一人で入るのは凄く久し振りだ」

 

 

 

「来君……」

「どうしたの膵花ちゃん?」

 

膵花達が奈落に落ちた来を捜して必死に迷宮を彷徨っている一方、当の本人はのんびりと湯船に浸かっていた。

 

「いや、何でもないよ……」

 

 

 

「そうか……記憶を失っていた間に、何故か心に穴が開いたように虚無感を感じていたんだけど、命よりも大事なあの人のことを忘れるなんて……嗚呼……旦那失格だよ……」

 

身体の汚れと疲れを十分に落とし、来は探索を再開した。

 

 

二階には書斎と工房らしき部屋があった。だが、書棚と工房の中の扉には封印が施されていて開かなかった。

 

「鍵らしき物は何処にもないな……」

 

二階の探索は諦め、三階に移動した。三階には部屋が一つしかなかった。部屋の中央の床には直径七、八メートルのかなり精緻で繊細な魔法陣が刻まれていた。あまりに精緻で繊細であるから、最早芸術と言ってもいい。

 

しかし、何より不可解なのは、豪奢な椅子に座っている人の亡骸だった。黒に金の刺繍が施されたローブを羽織っている。この人物は一体何を考えていたのだろうか。

 

「かなり怪しいが、書庫と工房に施された封印と何か関係があるのか……?」

 

来はそう言うと、魔法陣に向かって歩き出した。そして、魔法陣の中央に足を踏み入れた瞬間、純白の光が部屋中を染め上げた。あまりの眩しさに目を閉じると、頭の中に意味不明な言語が流れてきた。そして過去の記憶が走馬灯のように廻っていく。

 

やがて光が収まり、目を開くとそこには今までいなかった黒衣の青年が立っていた。

 

「こんなところに人が? いや……あの亡骸と同じ服装をしている……それに薄っすら光っているな……ホログラムか」

 

『試練を乗り越えよく辿り着いた。私の名はオスカー・オルクス。この迷宮を創った者だ。反逆者と言えばわかるかな?』

 

「反逆者? そう言えば城での座学で聞いたな……」

 

反逆者とは、トータスを創った(とされる)絶対神エヒトに歯向かった者達の総称である。現在では神と世界を滅ぼそうとしたとされる。

 

『ああ、質問は許して欲しい。これはただの記録映像のようなものでね、生憎君の質問には答えられない。だが、この場所に辿り着いた者に世界の真実を知る者として、我々が何のために戦ったのか……メッセージを残したくてね。このような形を取らせてもらった。どうか聞いて欲しい。……我々は反逆者であって反逆者ではないということを』

 

そこから、オスカーの話が長々と続いた。それは、聖都教会で教わった歴史を大きく覆すものだった。

 

神代の少し後の時代、世界は争いで満たされていた。人間と魔人、数多の種類の亜人が絶えず戦を繰り返してきた。領土拡大、種族的価値観、支配欲、他にも様々な理由があった。だが、最も大きな理由は、宗教戦争だ。今よりもずっと種族も国も細かく分かれていた時代、それぞれの種族や国が神を祀っていた。神からの神託、という理由で争っていた。

 

(人間が争う理由は……どの世界や星でも同じだな……地球でも全く同じ歴史を歩んできた……)

 

そんな長きにわたる争いに終止符を討たんとする者達、〝解放者〟が現れた。

 

彼らは全員神の直系だったのだ。それ故に〝解放者〟のリーダーはある時、偶然にも神々の真意を知る。神々にとってトータスはチェスや双六のような室内遊戯だった。

 

(人の命を一体何だと思っているんだ……)

 

神々が裏で戦争の糸を引いていたことに耐えられなくなった者達は同じ志の下に集い、遂に神々のいる〝神域〟の場所を突き止めた。オスカーを含む強力な力を持った七人を中心に彼らは神々に戦いを挑んだ。

 

だが、狡猾な神々は〝解放者〟の想像を絶する策を以て彼らと戦った。

 

神々は人々を巧みに操り、〝解放者〟達を神の恩恵を忘れ世界に破滅をもたらさんとする〝反逆者〟として認識させ、〝解放者〟達を次々と討ち取っていった。守るべき人々に力を振るえるはずもなく、ただ討ち取られていくだけかのように思えた。

 

しかし、〝解放者〟達はまだ、天に見放されていなかった。残った七人の許に、どこからともなく一人の剣士が三人の仲間を連れて現れた。その四人は七本の片刃の曲刀を託し、七人の〝解放者〟達にこう言った。

 

 

 

『今までよく堪えたな。後は俺達に任せろ』

『ここは私達が喰いとめます。皆さんは逃げて下さい』

『しくじってかつての俺達のように討ち取られるなよ』

『君達なら大丈夫! 今は自分達のすべきことをやってね』

 

 

 

(あれ……? その四人の喋り方……聞き覚えがあるな……)

 

その四人は人々を一切殺すことなく次々に無力化していき、〝神域〟の中に突入した後、そのまま姿を消した。

 

生き残った七人は大陸の果てに散り、それぞれ迷宮を創って潜伏した。試練を用意し、それを突破した強者に自分達の力を譲り、いつの日か神の遊戯を終わらせる者が現れることを願って。

 

オスカーは長い話を終え、穏やかに微笑んだ。

 

「君が何者で何の目的でここに辿り着いたのかはわからない。君に神殺しを強要するつもりもない。ただ、知っておいて欲しかった。我々が何のために立ち上がったのか。……君に私の力を授ける。どのように使うも君の自由だ。だが、願わくば悪しき心を満たすためには振るわないで欲しい。最後に、もしさっきの話に出てきた四人を知っている者と出会えたなら、どうか伝えて欲しい。『この迷宮を一度訪れてみてくれ』と。話は以上だ。聞いてくれてありがとう。君のこれからが自由な意志の下にあらんことを」

 

話を締めくくり、オスカーの立体映像は消えた。それと同時に来の脳裏に痛みを伴ってとある魔法が刷り込まれる。

 

痛みが収まり、魔法陣の光も収まっていく。

 

「はぁ……はぁ……神代魔法か……そうだ、ステータスプレート……」

 

来はステータスプレートを確認した。

 

 

===============================

辻風来 17歳 男 レベル:12

天職:剣士

筋力:947  [+龍化状態3950]

体力:1067 [+龍化状態4040]

耐性:965  [+龍化状態4710]

敏捷:1680 [+龍化状態1520]

魔力:2546

魔耐:1054

技能:雷属性適正・全属性耐性・剣術[+抜刀術]・天歩[+空力][+縮地]・剛腕・先読・気配感知・気配遮断・龍化・暗視・熱源感知・魔力感知・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮]・胃酸強化・魂の回廊・自己再生・思念通話・睡眠覚醒・錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成]・纏雷・風爪・石化耐性・毒耐性・麻痺耐性・言語理解・生成魔法

===============================

 

 

「……生成魔法か……魔法を鉱物に付加して、特殊な性質を持った鉱物を生成できる……ハジメにぴったりな神代魔法だな」

 

錬成師にはぴったりな神代魔法だ。ちなみにオスカーもハジメと同じく錬成師である。

 

「そう言えばこの世界に召喚された時に見た壁画、あれは間違いなくエヒトを描いたものだ。世界を腕で囲むように書きやがって……まるでこの世界を我が物としているようだ。けしからん。オスカーさんには感謝しないとな……」

 

来はオスカーの骸の前に歩み寄り、こう告げた。

 

「オスカーさん……いや、〝解放者〟オスカー・オルクス。あなた方が成し遂げられなかった世界の平和、〝解放者〟に代わり、この辻風来が成し遂げて見せよう」

 

来はオスカーの骸を運び、畑の端に埋めた。墓石には『〝解放者〟オスカー・オルクス、ここに眠る』と刻んでおいた。墓にはヒュドラとの戦いで折れた刀身をお供えした。柄の方は懐に仕舞った。

 

ちなみに羽織っていた服と指に嵌めていた指輪は拝借した。

 

「ん? 指輪に刻まれてるこの紋様、書斎や工房にあった封印の紋様と同じ紋様だ……」

 

来はまず書斎に向かった。封印の紋様に指輪をかざすと、封印が解除された。

 

「やはりこの指輪が封印を解く鍵だったんだ」

 

書棚を調べていくと、この住居の施設設計図を見つけた。

 

「あの魔法陣がそのまま地上にも繋がっているのか……あそこもこの指輪がないと起動しないのか」

 

人の気配がないのに部屋が綺麗なままだったのは定期的にゴーレムが掃除をしていたからだった。さらに、天上の球体は本当に人工太陽だった。

 

他に何か無いか探っていると、オスカーの手記が見つかった。

 

「他の迷宮でもここと同じように神代魔法を得られるのか……行ってみる価値はありそうだ」

 

しばらくして、来は工房へと移った。

 

工房にはオスカー製のアーティファクトや素材類、見慣れない作業道具、理論書が保管されていた。そして数ある保管されてある物のうち、一つだけ厳重に保管されてあった物があった。箱には『碧い(ほむら)を宿す者にこの刀を贈る』と書かれていた。

 

蓋はすんなりと開いた。箱の中には、鞘と柄と鍔が黒い一振りの打刀が収められていた。箱の蓋には防錆の魔法陣が刻まれていた。恐らくオスカーが刻んだのだろう。

 

「あれ……この刀って……」

 

刀を手に取ると、ひらひらと一枚の小さな紙が舞い落ちた。拾い上げると、漢字二文字でその刀の名が書かれていた。

 

その名は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『〝舞鱗(まりん)〟』




次回
第十閃 後を追う者達

オリ主ヒロインにミレディ・ライセンを追加しようと思っていますが、入れてもいいと思いますか?

  • 入れてもいい(むしろ入れてくれ)
  • 原作重視(入れるな)
  • 死亡回避ならOK
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