『事実は小説より奇なり』、とはよく言ったもので。
前世の記憶を持ったまま生まれるという現象が、実際に経験してみないと実在を確信できないように。
実はいろんな『一見嘘』が、『本当』だったりすることが多々あるのだろうと。
のんびり考える。
――――始めこそは、転生だなんて事実にとても驚いていたし。
狼狽えてもしていた。
幸い、家族やご近所は始めとした優しい人々に恵まれていたけど。
それすらも罪悪感を感じてしまって、怖気づいてしまっていた。
結局、俺を立ち直らせてくれたのは。
家に残っていた俺の先祖の記録。
『冨岡義勇』が遺した、『全集中の呼吸』と『鬼殺隊』の記録だった。
言わずと知れた、『鬼滅の刃』のメインキャラの一人。
主人公『竈門炭治郎』に、厳しくも優しく道を示してくれた恩人。
遠縁である俺の家に託したという、指南書の数々が。
檄を飛ばしてくれているような気がしたのだ。
『みじめったらしく蹲るのは、やめろ』と。
家が剣道場だったことと、世間には『鬼』の代わりに『ノイズ』がはびこっていたこともあり。
せめて人助けくらいは出来るだろうと、14になる今日まで修行を続けてきた。
技や呼吸の習得は楽しかったし、人助けだけにとどめていた最初の内ですら達成感で充実していたのだから。
やっていてよかったと心から思えるんだが。
まさか日輪刀でノイズを狩れるなんて、誰が予想できるだろうか・・・・隊服も普通に防いでくれるし・・・・。
いや、昔々に鬼をバッサバッサ狩っていたわけだから。
こう、怪異殺し的なサムシングが付与されたとか、そんなんと考えればワンチャン・・・・?
「おはよー」
「・・・・ああ、おはよう」
クラスメイトに声を掛けられ、俺こと『
「冨岡、今日もおねむちゃんだなぁ」
「一限目林田センセだから、目ぇ付けられんなよ」
「分かった」
友人、と呼べるかどうか悩ましい距離間ではあるが。
気安く話せる良い連中だと思える。
入れ替わるようにやってきたのは、逆立てた髪が特徴的な男子。
「おはよう静勇、昨日も人助け?」
「そんなところだ」
「お疲れ様」
幼馴染の『
なんなら同じ釜の飯を食ったと言っても過言ではない。
そして名字から察せる通り、『竈門炭治郎』の子孫でもある。
「あんまり無理はしないようにね。静勇の『強さ』は分かってるつもりだけど、何もできない身からしたら、やっぱり心配だ」
「ああ、ありがとう・・・・後、お前の美味いパンにはいつも元気づけられている。何もできないなんて言うな」
「はは、うん」
俺が毎晩行っている『人助け』についても知っており。
出撃前には、こいつの実家のパン屋『竈門ベーカリー』のパンで英気を養っていくのがルーチンである。
「たまには休んでもいいと思うな、睡眠不足は体に毒だよ」
「そこはぬかりない、ありがとう」
ちょうど会話が一区切りしたときに担任がやってきたので、席に座り直した。
今日も今日とて、人助けである。
『侍狐』の由来になっている、あの狐のお面をかぶって。
ビルの谷間を全力疾走。
『全集中・常中』の習得にはまだまだ程遠いけど、基礎体力は人よりあると自負している俺。
実際どれほど駆け回っても疲れないし、壁蹴りだって三角跳びだってほーれこの通り!!!
住宅くらいの高さなら、余裕で駆け上がれるんだなこれが!
さすが全集中の呼吸やでぇ・・・・。
これでまだまだ未熟の域なんだから、鍛錬のし甲斐があるというものだよ!
「・・・・ッ」
おっと、テンションを上げているところに今日の獲物の気配。
どこかのビルの屋上で、踵を返して急行。
たどり着いたのは、駅にほど近い一角だ。
確かここ、シェルターも近かったはず。
現場を見下ろせば案の定、時間稼ぎをする自衛隊員と、迫るノイズの群れが。
何にせよ、助けない理由が見当たらんな!
「捌ノ型 滝壺、陸ノ型 ねじれ渦・・・・!」
両者のちょうどど真ん中に、頭上からの強襲で一撃。
続けて飛び上がるようにしてねじれ渦を放つ。
本来ねじれ渦は、水の中で真価を発揮する技。
ただ、バカ正直に水中戦まで取っていると、こちらの手札がなくなってしまうので。
飛び上がったり、着地の衝撃を緩和するために使ったりしている。
もう何度も遭遇している自衛隊員の皆さんは、慣れた様子で撤退済みだ。
・・・・こんな、顔を隠してる様な不審者に託さなければならないほど。
ノイズへの対抗策は皆無なんだろう。
思ったよりも好意的なのはありがたいけど、これ、鬼が蔓延っていた当時よりもハードモードなんじゃなかろうか。
「ッ水面切り」
突撃してきたノイズを、紙一重で回避後迎撃。
今はこっちこっち!
一つ、二つ斬り捨てて『弐ノ型 水車』!
着地と同時に『参ノ型 流流舞い』!
そこから更に、『肆ノ型 打ち潮・乱』でお片付けーッ!
背中を向けて納刀すれば、タイミングよく爆散して・・・・。
っくぅー!こんな状況だけど、我ながらかっこよい・・・・。
こう、やってみたいシチュエーションがうまくはまると、テンション上がるよな?な!?
・・・・なんて。
昨日より少ない数に、のんびりしてしまっていたせいだろう。
降り立つ音に気付いた頃には、もう手遅れだった。
「やっと、追い付いた・・・・!」
「今日という今日はふん縛ってやる・・・・!」
背後、振り向けばあの二人組が。
ここのところ、接触を試みてきてる連中がいた。
――――俺は、この二人を知っている。
今でこそ刀に突撃槍と物騒な獲物を持っているが、普段はテレビなんかで歌を披露している彼女達。
確か、『ツヴァイウィング』と呼ばれていたか。
明らかに見目麗しい二人が、ノイズを倒す武器を携えている。
・・・・企業にしろ、政治にしろ、広告塔にするっきゃない二人の戦士がひた隠しにされているということは。
機密系の厄介事である線が濃厚だということである。
つまり、叶う限り接触を避けるべき。
何より、俺が引き継いだこの技と刀は、人に向けるものじゃない。
だから今まで早期決着、ならびに全力逃走を心掛けていたのだが・・・・。
ぐぬぬ、今回ばかりは俺の抜かりがでかい。
どう切り抜けたもんか・・・・。
「あなたの所有する対ノイズ装備、それをこちらに引き渡してもらえませんか」
「断る」
「お前なぁ・・・・!」
即答したんだけど、やっぱり反発が来る。
うーん、不審者を警戒する気持ちはわかるんだけど。
こっちもこっちで、譲れない事情があるしなぁ・・・・。
だが、簡単に逃げられそうにない。
本当にどうしたもんか・・・・。
「・・・・ノイズに対抗できる装備は、希少極まる価値があります。勧告は、あなたを保護する目的もあるんです・・・・どうか、是、と答えてください」
公的と私的という違いはあれど、同じく人助けを志す者同士。
道を共に歩む可能性もあったかもしれない。
だが、俺が人を傷つけたくない以上、そして、お前達が人を傷つける可能性を拭えない以上。
「・・・・断る」
首を縦に振るわけにはいかないんだ・・・・!
「・・・・そうですか」
「やっぱ、こうなるよなぁ」
静かに構える二人。
・・・・イチかバチか、やるしかなさそうだ。
俺も、日輪刀に手をかけて。
ひと呼吸。
「ヒュウウウウウウゥゥゥゥ・・・・!!!」
ありったけの敵意をぶつけてやった。
「っぐ・・・・!?」
「・・・・ッ!」
予想通り。
しっかり鍛えているらしい彼女らは、それを感じ取って目を見開く。
・・・・俺の一挙手一投足を、逃さぬよう。
全神経をとがらせている。
「全集中 水の呼吸・・・・!」
「来るぞ、翼!」
「分かっている・・・・!」
よし、よし。
そのまま・・・・そのままでいてくれよ・・・・!
威圧を維持したまま。
祈るような気持ちで、強く踏みしめて。
「――――玖ノ型改 水流加速ッッッ!!!!!」
爆速で、二人の間をすり抜けていった。
「――――はッ?」
そんな間抜けな声を置き去りにして、とにかく走る、走る、走る!!
息が出来なくなる覚悟で全集中を続けながら、足の疲労も無視しながら!!
とにかく、がむしゃらに、一心不乱に!!
スタコラサッサだあああああああああああああああああッ!!!!
――――なお。
「――――あ」
「あ・・・・!」
「 あ ん に ゃ ろ お お お お お お お お お お お お お ッッッッ !! 」
後ろで聞こえた怒号も全力でスルーした。
続くか続かないかは筆次第・・・・(切腹)
後、アンチ・ヘイトではないです・・・・。
書くにしても、チョイワルを優先させるのでノロノロすると思います。