二次 断編集   作:むにゃ枕

11 / 15
TSジオンオリ主2

 士官学校に入学し、ガルマの友人になってから数か月が経った。その間、特に大きな問題は起きなかった。しかし、火種は燻っている。その火種というのはシャア・アズナブルのことだ。

 シャアは勉学スポーツルックス、全てにおいてガルマより上を行っている。少なくとも私を含む学生たちはそう思っていた。それをガルマは気に入らないらしい。

 

 私? 私に関しては勉学は下から数えた方が早くて、身体を動かすことは得意。ルックスに関しては我ながらなかなか可愛いと思っている。茶髪ショートで、目鼻立ちの通った顔だ。一年戦争外伝漫画のヒロインやれるくらいのルックスである。

 結果、私の周囲からの評判が「ガルマの取り巻き」「逆ハー女」「あの子」「例のアレ」とか酷いことになってる。最後のやつとかなんだよ。

 

「リノくん! 私が例のアレ扱いされている理由を教えてくれないかな!」

「ヒッ!? あっ、アインさん……勘弁してください」

「えっ? なんのこと?」

「どうか勘弁してください……」

 

 私の友人のリノ・フェルナンデスくんだ。原作ではシャアの正体がキャスバルだという名推理を披露してシャアに消された奴である。

 例のカフェの映像を私に見せてきてなんか言ってきたので、ボコったら大人しくなった。

 

 ケプラー孤児院出身のジオン兵の配属先が追えないこと、キシリア機関の噂、私がテロリストを射殺した映像。それらを照らし合わせ私がキシリア機関員だと名探偵ばりに指摘したのは面白かった。孤児院出身者を追えないのは実験体にされているだけなんだよな。惜しい。

「それを指摘して消されると思わないの?」

「録音でもしてるのかな? その端末、壊させてもらうね」

 そういうことを言って、跡が残らないように軽く〆たら大人しくなった。

 

 リノくんがしどろもどろになりながら、私が例のアレ扱いされている理由を教えてくれた。ガルマの取り巻き女としての意味と、なんかカフェの動画がほんの一部に出回っているとかなんとか。なるほど。

 

 閑話休題。シャアの話だ。シャアは勉強もスポーツもできる完璧超人なのでガルマが嫉妬している。シャアに取り巻きを利用してちょっとした圧力を掛けたりしているのだ。

 近いうちに私も圧力要員になる予感がする。それが燻っている火種ということである。

 

「アイン、僕はあの男が気に入らない。僕はザビ家の男だ。常に一番で有るべきは僕のはずなんだ。それが何故かあの男に勝てない」

「ガルマはシャアに勝つ必要は無いよ。軍というのは組織なんだ。互いに高め合うことは必要だけど、勝負する必要は無い」

「分かってる。それでも僕はシャアに勝ちたいんだ」

「へー。男の子じゃん」

「うるさい。茶化すな」

 

 ガルマは流石に私を差し向けはしなかった。まあ、女の子使って圧力掛けさせるのも格好悪いからね。

 

 結果、なんか原作通りに仲良くなっていた。行軍訓練は男女で距離が違うので、本当にそれが切っ掛けになったのかは不明だ。でも、まぁガルマはシャアに利用され尽くす予感がする。

 

 士官学校の訓練内容について、一言で説明するとスパルタだ。ジオン軍は狂っている。

 地球連邦に比べてジオンは国力が劣る。そして国力に比例し兵力数も劣っている。兵の数が少ないなら質を上げれば良い。ここまでは論理的だ。

 しかしここからがおかしい。士官は複数の兵種の経験を持ちゼネラリストとして軍務に就くべきとされているのだ。軍事において専門性は重要だ。簡単そうに思われる歩兵には高度な教育が必要である。戦車兵や軍艦乗りは言わずもがなだろう。複数の兵種をこなせる士官を育成しようとするのだから本当にジオンは頭がおかしい。

 

 兵種の組織内での資格としてMilitary Occupational Specialityというものがある。特技とも言われるやつだ。MOSと呼ばれることが多い。

 ジオン士官は複数の兵種を務められるゼネラリスト育成のため多様なMOSを取得することが奨励されている。

 

 私は戦車、近接火器、レンジャー、航宙機、航空機、戦闘艦あたりをめっちゃ努力して取った。戦車の運用が出来て、航空機に乗れて、戦闘艦も動かせて、歩兵もできる下士官の完成だ。3年間で叩き込まれるのだから碌でも無い。平時というのに大変だ。

 戦場徴兵の学徒兵でMS乗りになる場合は、MSのMOSしか取れないし、取らないのだろうとは思う。

 

 後方の職種? ちょっと私には合わなかったかな……適性がね……努力したんだけど、後方の職種ガチガチの事務職だし、事務職のエリートじゃないと取れないレベルなので。他の医療職とか看護職とかも全然適性が無かった。

 薄々そんな気はしていたのだが、私に後方勤務は無理なのではないだろうか。

 ともあれ、訓練訓練また訓練って感じで士官学校の日々は過ぎていった。小さな出来事は有ったが、それは完全な余談なので割愛していく。

 

 

 運命というものは不可逆的なのかもしれない。というのも、サイド3での反連邦感情が高まっているのだ。

 発端となったのは、連邦軍艦の事故である。

 不幸なサラミス級が、コロニーベイで一般艦艇と激突、その後農場区画へ衝突する事故を起こしたのだ。その後、メディアによる過熱報道が起きた。そして、高まった原因究明への圧力を受け、早期に提出された事故調査委員会の報告書では、サラミス級が自己の優先航行権を不当に主張し、航海法を無視した運航をしていたことが事故の主原因だと結論付けた。

  

 更には報告書ではサラミス級の余罪も追求されている。

 連邦軍がブラックボックスや、人事記録の隠蔽を図ろうとしていたこと。艦長や乗組員には過去に事故を起こした経歴が有ったこと。連邦軍の急拡大に人員配置が間に合わなかったことなどが上げられた。FDR(フライトデータレコーダー)からはステライルコックピットの原則が破られ、世間話に講じていたブリッジの様子も確認できた。また、入港時のチェックリストもおざなりであったことが確認されている。

 

 事故原因が発表されてから数日後。農場で事故の被害にあった犠牲者の遺族が、生き残ったサラミス級の乗組員を殺害する事件が発生した。本人は乗組員には反省している様子がなかったからと供述している。

 この殺人事件に対し連邦軍は強硬手段を取り、この被害者遺族をテロリスト認定し軍事裁判に掛けた。ここでジオン国内の世論は爆発した。

 

 連邦軍をサイド3から排斥することを訴えたデモは、そもそも暴力的なものだった。デモ隊は連邦軍に関連するとされた商店などを襲撃し、連邦軍人の家族を狙った。

 この暴力を含むデモを連邦軍はテロ行為と認定し武力鎮圧を開始したのだ。

 

 

「連邦の奴らめ」

 

 士官学校のロビーに置かれたテレビの前で誰かが言葉を吐いた。感情は伝染していく。単純な話、自国民が殺害されているという事実はナショナリズムを煽る。その死に理不尽なストーリーが追加されれば尚更だ。

 こういうことにドライな私でも、空気に酔ってしまえるほどの熱量が士官学校には有った。

 

「決起だ」

「……連邦軍基地を」

「訓練の成果を」

 

 物騒な単語がポツポツと生徒から上がってくる。爆発は目前に迫っているのだ。

 

 その日の夜、ガルマは私に内心を打ち明けた。

 

「アイン、僕は決起を起こす。協力してくれないか?」

「え、やだ」

「なっ!?」

「士官学校の学生でも軍人は軍人だよ。サイド3の軍人が、地球連邦の軍人を襲った。残るのはこの事実だ。だから、私は反対するね」

「な、なら僕は君を閉じ込めなければならなくなる……」

「んー、まあ気持ちは分かるからね。抵抗はしないよ。私も連邦軍の治安出動で死ぬ人間が居ることは理解している」

 

 私は大人しく軟禁された。ガルマはやっぱり甘いんだよな。簡単に人を信用しすぎる。だから、結果としてシャアに殺されたのだろう。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。