二次 断編集   作:むにゃ枕

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お前ごときがダイクンの遺児を名乗るなと言われたので地球で静かに暮らしたい【未】

 俺は転生者である。名前はキャスバル・レム・ダイクン。ジオン公国を名乗って地球連邦に宣戦布告をするサイド3で俺は生まれた。なんでも、あまり泣かない冷静な赤子だったらしい。それもそのはずだ。キャスバルの中身は生前に転生世界を知っている転生者だったのだから。

 言葉を話せるようになると、俺の言葉は矯正された。なんでも言葉遣いが汚いということだ。そこで、一人称は僕となった。僕の一人称を巡っては、父であるジオン・ズム・ダイクンと母、トワ・アストレイアの間で喧嘩が起こったものである。母が父を責めたのだ。なんでも、母いわく父が酔って汚い言葉を吐くのを僕が覚えたのではないかということだ。しかし、残念ながらそれは前世の記憶故である。

 

 歩けるようになってしばらくしたころ、妹が生まれた。妹の名前はアルテイシア・ソム・ダイクン。後にセイラ・マスを名乗りホワイトベースに乗る人物である。今はただのかわいい妹だ。願わくば彼女が平和に過ごせるようになってほしいものだ。

 物心がつき始めるころになると、ジオン上流階級の子女は社交界というものに参加することになる。貴族の真似事とは滑稽なものだが、人間というものは特別なものを求めがちなので仕方がない。

 

 社交界では、ガルマ・ザビであったり、サハリン家の兄弟であったりと顔見知り程度にはなった。こちらの身分が高すぎるために、対等な友人関係というのは築けそうにない。社交界に参加しない人物も多い。何しろ社交界というものは肩がこる。

 11になった。父の訃報が耳に入った。ザビ家に暗殺されたのだ。真相は定かではないが、ザビ家の暗殺という説には一定の信憑性がある。

 

 ザビ家の敵対派閥の、ラル家に僕と妹と母は匿われた。ラル家の棟梁であるジンバ・ラルは全くもって頼りにならない老爺だ。ダイクンの遺児押さえたはいいが、政治カードとして有効に使えない気もする。価値がるのはダイクンであって僕たちにはせいぜいカードとしての価値しかないのだ。

 

「ジンバさん。僕たちには政治カードとしての価値しかありません。有効に使えるかもしれないカードを持っていても、大衆の心理を把握できないとザビ家には勝てませんよ」

 

 ジンバは、顔を引き攣らせながら僕を見た。ジンバ自身のビジョンの無さを指摘されるとは思っていなかったのだろう。

 

「キャ、キャスバル様。滅多なことを言うものではありません。お父上のことをジオンの者は誰よりも慕っています。簒奪者に過ぎないザビ家などに誰が耳を貸すものでしょうか。我々に大義があることを民は知っています!」

「ジンバさん。あなたは大衆というものをご存じないようだ。大衆はザビ家のプロパガンダを信用しきっている。父がザビ家に殺されたというのと、ザビ家のいう連邦により暗殺されたというもの、どちらを民衆が信じるでしょうか?」

「ま、まさかそんな! ありえない! ザビ家の奴らは簒奪者だ!簒奪者の言うことなど誰が信じるものか!」

 

 ジンバはぶつぶつとつぶやきながら、歩き去っていった。これは駄目だな。母と僕と妹の後援者には長期的なビジョンも無ければ、考えるだけの頭もない。自分の信じたいものだけを信じる愚かな大衆そのものだ。自分が大衆の写し鏡だとは、ジンバ自身考えていないだろう。

 ラル家への風当たりは益々強くなっている。地球連邦がラル家と組んだという根も葉もない噂がサイド3を駆け巡っているのだ。こういう流言飛語をばら撒いているのは、デギン・ザビだ。愚かな大衆はそれを鵜呑みにして騒いでいる。

 

 がやがやと屋敷が騒がしくなる。キシリアが! ザビ家だ! という屋敷に詰めた人間の声が聞こえる。キシリアが僕の方に歩んでくる。屋敷に詰めかけた人間はキシリアの覇気に怯えて、誰もそれを遮れない。

 

「僕に話があるんだろう?いいよ。僕は逃げも隠れもしない」

「流石はキャスバル様。腰抜けのラル家の連中とは違う。そこの二人!一対一の話の場に付き添いは無用だ!出ていけ!」

 

 物凄い剣幕でキシリアが捲し立て、僕の後ろに立っていた二人の護衛は逃げるように部屋を出ていった。

 

「さて、話は手短に済ませよう。僕の目的は母と妹の無事をザビ家が担保することだ。ザビ家と言ってもギレン・ザビがだ。僕には、人の上に立つ気はさらさらない。傀儡でも何でもなってやるさ。ラル家みたいな連中の頭を抑えるには、僕を確保していた方がザビ家としても都合がいいだろう?」

 

 キシリアは、僕に畏怖の目を向けた。僕みたいないたいけな11歳を怖がらる要素が皆無なんだが。天才児くらいそこらにいるだろう。転生者がインストールされてるくらいで驚くなよ。

 

「驚きました。話が早い。でしたらすぐにでもダイクン家の屋敷に参りましょう」

「いや、駄目だね。キシリアさん。貴女はギレン・ザビじゃない。ザビ家の中核はギレンだ。ギレンが僕に頭を下げて、それに僕が協力する。言っただろう、僕が欲しいのは安全なんだよ。ダイクンの子なんて機会が有れば殺したいに決まっているじゃないか」

 

 キシリアは沈黙した。少年相手に話す内容じゃないし黙りたくなるのは分かる。

 

「もしくは、これは仮定の話なんだけどさ、キシリアさんがギレン閣下に良くない感情を抱いているならさ、僕は貴女のモノになってもいい。ザビ家とダイクン家での結婚だ。これなら内部の対立を埋められると思うよ」

「結構。もう良いわ。キャスバル。貴方は異常よ。貴方の良く回る舌を引き抜いても、貴方は痛がらなそうね」

「僕を何だと思っているんだ。舌を引き抜かれたら痛みの余りショック死してしまうよ」

 

 キシリアとの話し合いは没交渉で終わった。しかし収穫はあった。どうもキシリアは僕を気に入ったようで、僕に連絡先を教えてくれたのだ。ありがたく活用させてもらおう。

 数日が経った。ラル家内部は末期戦の様相を呈してきた。元々勝ち目が薄かったのだ今更じたばたしてもどうしようもない。ジンバはいよいよ錯乱し始めた。

 

「ジンバさん。僕の言ったとおりになったでしょう?大衆というのは愚かなんですよ。信じたいものだけを信じたあなたには、それが分からなかった。で、この後どうするんですか?」

「黙れ!黙れええ!貴様!ザビ家に寝返ったな!恩義を忘れて裏切った屑が!お前ごときがダイクンの遺児を名乗るな! 誰か!誰かいないか!?この不埒者を叩き出せ!」

 

 ジンバは発狂したようだ。入り口から足音がした。ランバが帰ってきたのだろう。ランバが地球への逃亡先が見つかったということを話す。ジンバはそれを聞いて大喜びしていた。おいおいという感じだ。キシリアに連絡することで、何事もなく宇宙へ抜けられた。ガンタンクとかもうある世界なんだな……

 

 地球で逃亡生活を送ること、数年。厄介なザビ家アンチのジンバはキシリアに頼んで病死してもらった。アナハイムとかは呼んでいないし、刺客が来る要素はない。勝ったな!




狡猾なキャスバルさんェ……
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