二次 断編集   作:むにゃ枕

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TSジオン下士官戦記2

 アイン・ルイン軍曹が着任したのは機動教導大隊だ。機動教導大隊はMSの訓練方法や運用方法についての研究、そして下士官や士官のMS訓練を目的に生み出された部隊である。機密を維持するために部隊の識別番号等はぼかされている。ちなみに一部の軍事オタクや軍事専門家、連邦軍情報部には存在が推測されていたりする。

 連邦軍はMSの存在を重視してはいない。巨大組織なので機材更新や部隊定数を埋めること、予算獲得が優先されるからだ。多少の研究は行っているが、最優先とはされていない。

 それに対しジオンは軍の規模の小ささからMSに存分に予算を割いていた。

 

 アインがブロンドのポニーテールを振りながらやってきたのは、教育隊だ。機動教導大隊に付属する教育隊でMSの座学教育やシミュレーターなどの技能教育を受ける。

 宇宙世紀でも教育は重要なのだ。

 

 MSの機能についての座学時間中、アインは居眠りをしていた。

 

「ルイン軍曹。罰則だ」

 

 爆睡しているアインは教官の注意に気付かなかった。彼女はそもそも体感で生きているタイプだったし、連日連夜、付属のMSバンカーで実機に触れていたことも、睡魔を加速させた。

 この小柄な少女は整備員の間では人気者だったが、座学を教える教官の間では問題児だった。

 

 座学と並行して実施されたシミュレーター実技で、アインはトップ層にいた。新兵でありながら好成績を叩き出す彼女は、ちょっとした注目株になっていた。とはいえ、この時期の訓練生は山ほどいる。本質的にはアインもその中の一人でしかなかった。

 

 シミュレーター訓練を修了し座学の基礎を修めたところで、アインたちは実機での訓練を開始することとなる。バンカーに鎮座する巨大な鉄の巨人。軍人でなくても驚嘆する巨大さを目の前の兵器は持っていた。

 

「こいつの正式名称が分かるな?」

「MS-05A-Tです」

 

 一人の学生が手早く答える。目の前にあるのは、一年戦争では旧ザクと呼ばれることになる機体。それの前期型を教育用に改修したモデルだった。

 

 各部に露出したパイプは洗練れていない印象を伝えるが、教育用に各部に様々な注意喚起やらを記されたそれからは、現場での使用感と信頼性が伝わってくる。

 

「視界が狭い。これじゃ棺桶だ」

「ルイン軍曹。無駄口を叩くな」

「了解です……」

 

 MS-05A-T(教育機)のコクピットは複座になっている。アインの前世の自動車学校と同じような古典的なスタイルだ。後方座席に座った教官が補助をしながら、学生が操縦をするのだ。

 アインにとって、例え教官であってもむさ苦しい髪の薄い中年男と狭いコクピットで過ごすのは苦痛だった。

 

「合格だ。スジが良い。軍曹は航空学校卒だったな。そこの教育が良かったのだろう」

 

 以前と比較すると航空学校の教育水準は、促成教育のために低下しているのだが、それをアインも教官も知らない。アインは教官が納得しているようなので、あー、だとか、はぁ。だとか適当な返事をしていた。

 

 教育機での実技試験を修了し、アインたちの部隊配属が始まった。とはいえ、教育隊とそこまで大きな違いはない。

 教育期間が修了しても、部隊での訓練が始まるだけなのだから。

 

「アイン・ルイン軍曹。着任しました」

「ご苦労。ワシがこの中隊の指揮官であるガデムだ。階級は大尉だ」

 

 緩みはじめた体形や白いものの混じりはじめた頭髪。しかし、双眸に鈍りはない。まさしくベテランといった風情が目の前の大尉からは伝わってくる。

 

「軍曹には第三小隊に入ってもらう。小隊長はアネット・ヴォーゲル少尉だ。ヴォーゲル少尉も士官学校上がりのペーペーだ。古参のクラウス・ダンブレラ曹長が貴官らのサポートをする」

「了解しました」

 

 アインはそのまま第三小隊の面々と対面することになった。

 

「ボクがアネット・ヴォーゲルだ。第三小隊の小隊長を務める」

「悪いな伍長。うちの小隊長はこんななんだ。俺はクラウス・ダンブレラ。曹長をしている。軍隊暮らしは十年ちょっとだ」

 

 アネットの勝ち気そうなアーモンド色の瞳は、ウルフカットの赤毛とよく似合っていた。恐らくアネットは、アインよりも年上だろう。それでも少女の表情を彼女は残していた。

 クラウスの印象はスポーツ選手といったところだ。短髪に体格の良い男で、髪に白いものや衰えが見られないので恐らく30前後だろう。

 

「アイン・ルイン。軍曹です。新米兵士ですが、精一杯頑張ります」

「アインも新米か! ボクもまだ軍には2年しかいない! 新米同士頑張ろうじゃないか!」

「アッハイ」

 

 アインは女の子が嫌いじゃない。しかし馴れ馴れしい人間は嫌いだ。馴れ馴れしい女の子も苦手だった。

 悪気なく距離を詰めてくるアネットにアインは、少し距離を取った。その距離をアネットは埋めてきた。恐らく無意識のことだろう。アインは早々にアネットと距離を取るのを諦めた。

 

「小隊の仲を深めるために、自己紹介をしてほしいな。それぞれの趣味とか特技を教えてほしい。軍に入った理由もね。ボクから行くよ。ボクの趣味はウィンドウショッピング! よく女の子らしくないって言われるけどボクは乙女だからね! 特技は人と仲良くなることだよ! 軍に入った理由はスペースノイドの独立を助けるため! スペースノイドがアースノイドに虐げられているなんて聞いて、ボクもなんとかしたいと思ったんだ! だから士官学校に入った! よろしくね!」

 

 アネットの自己紹介を聞いて、クラウスは肩をすくめている。彼が彼女に振り回されるのはいつものことなのだろう。

 アインはアネットのことがまた少し苦手になった。彼女は、自分よりも恵まれた環境で育った脳内がお花畑な人間だったからだ。

 

 スペースノイドの独立。そんな絵空事を頭から信じている。バカバカしい。そんなお題目を唱えるなら、貧困の中に取り残されたアインたちアステロイダーをどう考えるのだろう。自己防衛が出来なかった。努力が足りない。そんなところだろうか。それとも彼女のスペースノイドの定義にはアインたちは入っていないのだろうか。

 

「俺は、あークラウスだ。趣味はこれと言って無いな。嫁さんが妊娠してよ。赤ん坊の顔を見るのが楽しみなんだ。特技は仕事だ。入隊理由は生活のため。よろしく頼む」

「クラウス軍曹。つまんないよー。もっと無いの? ボクはさー」

「あーわかった。もう良い。隊長は静かに」

「はーい」

 

 アネットはクラウスに窘められ、静かになる。クラウスが促すようにアインに視線を向ける。アインは躊躇いがちに口を開いた。

 

「アイン……ルインです。趣味は寝ることです。特技はMSの操縦です。入隊理由は生活のため」

「あー。軍曹? 緊張しているのか?」

「あっ、いや別に。単に隊長が距離が近くてなんか嫌で」

「ヒドっ。ボクの距離が近いのがなんだって!?」

 

 アネットがピッタリとアインに密着する。それなりの大きさの胸が当たる。アインはこれはこれで良いかと思った。

 

「ね、ねぇ。ボクの胸を揉まないでくれないかな。しかも無表情で。怒ってる? アイン軍曹? 怒ってるよね?」

「いえ、別に」

「それ怒ってる人のセリフじゃん」

「怒ってないです」

「うん。ごめんね。そろそろ本格的に痛いからやめてほしいな」

 

 眉を顰めたクラウスが見かねて、仲裁に入る。

 

「あー。隊長は距離感が近い人だが、同性間でもセクハラは成立するんだ。やめてやれ軍曹」

「はい。わかりました」 

 

 アインが手を離すと、アネットは自分の胸を撫でた。かなり痛かったようだ。

 クラウスがアインに小声で耳打ちした。

 

「軍曹。事情は聞いている。お花畑の少尉サンだが、悪いやつじゃないんだ」

「はい。わかってます」

「それならいい」

 

「何? 内緒話? 私にも聞かせてよー」

 

 クラウスとアインはアネットの無邪気さに苦笑した。




これも、普通に面白くないか? 地味な小隊戦記としていけそう。プロットは無いです
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