ノイズ、認定特異災害とも呼ばれる人類だけを殺す古代兵器。
シンフォギアや聖遺物を使わなければまともに戦えない存在。
「死になはれ」
だが俺はシンフォギアを纏えるからこいつらを殺せるという訳だ。
漆黒の水平二連ショットガンで包囲の一角を纏めて消し飛ばし、飛びかかってきた奴らを回避しつつフラググレネードで爆破、リストブレードで大型ノイズの首を刎ね飛ばしてトドメを刺す。
この孤立した「あてくし」が味方を得る為にはまず自分の有用性を示す必要がある、特に櫻井了子……フィーネにだ。
他の懸念すべき連中に比べればこのおばは……お姉さんはギリギリ話が通じる相手だ、そもそもの目的を知っていれば尚更。
ただ平行世界なのと拗らせた人であり、本当に頭のいい人である事を考慮すると無闇矢鱈に真実を話すべきでもない。
この世界で現状唯一シンフォギアシステムを弄れる人間であり、フィーネがどう動くかでこの世界の行く末が決まりかねない。
だからこうしてフィーネが作ったシンフォギアシステムで結果を出す事で目を付けて貰い、距離を詰めていくのだ。
……だとしても、これは少々期待に応え過ぎたか?ここ最近凄まじい頻度でノイズが出現する。
元々ノイズは通り魔に合う程度の確率でしか自然には出現しないというのに、二課の周囲だけでもほぼ週に一回ぐらいのペースで現れる様になった。
俺としては実戦経験が積めるので悪くない話でもあるが、何を考えているのかわからないのが怖いところである。
それはともあれ、俺の纏うギアを見る。
殺意に満ちた刺々しい赤黒い装甲、どうみても悪役のソレとしかいえない容姿に加えてアームドギアは尽く銃火器。
シンフォギアの武装は無数にあるロックの中から段階系譜的に使用者と状況に合わせた武器が選ばれ解除される仕組みだ。
例えば原作キャラでは同じ「ガングニール」を使っていた響と奏とマリアの違い、物語が進み心情の変化で「イチイバル」の形状を変化させたクリスがわかりやすい。
今の俺を動かす原動力は……怒り、といってもシンフォギアの適合の根幹たる愛からくるものだ。
記憶を思い出す前の花崎律(あてくし)ならば、おそらく国を守るという気持ちからティルフィングは原型通りの「剣」の形状になっただろうが、きっと幸福とまでは行かないが希望に満ちた世界に辿り着くであろう少女達の物語を壊そうとする侵略者に対する、きっと普通の人間的な怒りから、このショットガンが選ばれたのだろう。
神と銃のどちらを選べと言われたらやはり銃だな!
今の所ティルフィングの呪いらしき呪いといえばこの怒りが戦闘中にバカみたいに増幅されるぐらいで、日常生活には支障は出ていないが、油断は禁物だ、この世界は呪いがバカにならない。
それこそ、いつのまにか「怒りの化身」みたいな存在に自分が塗り替えられてしまう危険性もある。
だからこそだ、俺は自分を「律する」。
戦いを終えた後は心を落ち着かせる、いわゆる残心というものだろう。
気を抜く事なく、確実に敵を始末したとしてもそこで終わりではない、最終的に俺を送り込んだ奴を始末するまでが俺の戦いだ。
これは今生で学んだあてくしの在り方。
「相変わらず凄いわね、律ちゃんは」
「あてくしの心は常在戦場、ですわ。私の想定する敵はノイズだけではありません、より強くなければなりませんから……」
「それ以上強くなって、何と戦うつもり?」
「人がいつか繋がりあえる日までに訪れるありとあらゆる苦難に、ですわ」
本部に戻って行われるメディカルチェックを受けながらも決して気は抜かない、というか抜けない。
特にフィーネが側に居る状態で雑に隙を見せるのは絶対ダメだ。
月の遺跡から放たれるネットワークジャマー「バラルの呪詛」によって奪われた統一言語を取り戻し、再び愛する人と言葉を交わしたいと願い続けてきた巫女「フィーネ」。
だが想い人であるエンキは既に死して、今はその残滓が月で今も地球の人々を見守るだけで、取り戻すべき統一言語の中にはその想い人を殺した神シェム・ハが封印されている。
齟齬なくその事実を伝えられたなら物語の大半は楽になるのになぁと考えながら本人の前で攻略プランを練る。
そんなこんなで最近の俺のサイクルは基本的に訓練・訓練・実戦・メディカルチェック・休息・訓練といった感じだが、ただただ戦ってるだけじゃいつまで経っても味方は出来ない。
人間、何事も意志を通わせようとする行動がなければ伝わるモノも伝わらない。
「了子先生、もしよければ少しお時間いただけませんか」
「あら、いいわよ?何かしら?」
「デー……じょ……冗談です、鎮静剤で眠らせようとするのやめてください、あてくしは正気です」
「とんでもない堅物の律ちゃんが突然冗談なんて言い始めるからてっきりおかしくなったかと思ったわ、どんな心境の変化かしら?ティルフィングのせい?」
「……そうですね、今生では経験しえない筈の変な記憶がある……と言ったら笑いますか?」
「……やっぱりおかしくなったのかしら」
また鎮静剤をチラつかせられるので、極力伝わるように俺は言葉を選ぶ。
「月には神様がいる、名前はエンキ、愛する人の名前はフィー……」
途中まで口にした所で首を押さえられて、鎮静剤を思いっきりぶっさされた、フィーネは凄い顔をしていた。
目を覚ますと俺は家で自分のベッドに寝かされていた。
死んでなかった分、運が良かったが流石に初手本題はダメだったか……?
とりあえず拉致されてない分恐らくフィーネの自制心が働いたのだろう……月の欠片落としみたいなヤケを起こされなくてよかった……結構あの人激情的な所あるし……。
「ようやく起きたわね」
その声と共に現れたのは櫻井了子……ではなくフィーネの姿だ。
外見すら変えるのもまた異端技術のなんかだろうか?
とにかくしらばっくれるのは悪手、となるとやはりもう直球でぶつけるか?
「はい、貴女がフィーネさんで間違いはなかったようですね?とりあえず直球で行くと別にエンキさんは貴女を捨てた訳じゃなく、むしろ名前すら出すのがマズい裏切り者から人類そのものを守る為にバラルの呪詛を創りました。統一言語があるとその裏切り者が無限に復活するので……最後に「すまない」と貴女に謝っていました」
「…………」
フィーネは俺に背を向け、肩を震わす。
これはダメか……?
「……そう、ありがとう。でも少し時間を頂戴」
震え声でそう言って、部屋を出て行く彼女の背を見送る。
よし、殺されなかったな!セーフ!
初 手 公 開