生きているからこそ死は免れないし、
誰かの幸福は別の誰かの不幸の上で成り立っている。
理に適った予定調和が舗装されることは未だに無く、停止になった中途には理不尽が変わらず遺棄されたままで。
永久は無い。しかしされど、須臾も無い。
不変でいたかった。可変は避けようがないけれど。
善だけがあればいい?悪は本当に不必要?
この出会いは運命だったんだ。
じゃあそこに貴方の意思は無かったの?
夢は叶うから夢で、叶わないから夢?
……きりがないな。
___きっかけは、誰もが知らないあの憶持。
「全員をたすけよう」と唱え続けた片方は、理想を論じただけの空想家だったのか。
「それは出来ない」と異を告げたもう片方は、相方に非情で冷酷だと思われてもなお、落ち着いて現実を見据えていたのか。
死ねば命は戻らない。
けれど時が経ち過ぎてしまえば、もっと最悪な事態が起きていた可能性があったことも間違い無い。
___現在から綴るのは、とある病棟での記録。
…望みは絶たれた。それでもなお、貴方達は希むのだろう。
はじまり
_おい
_おい大丈夫か?
ぐらぐら
ゆらゆら
揺れる感覚。
誰かが呼んでいるんだね。
誰だろう。
お母さん?お父さん?先生?友達?
少しずつ視界に光が入るのを感じ、私は目を覚ます。
「私は__」
私は
確か病気の治療に呼ばれて、少し離れた街まで来た。ついでにドーナツを買って、大きな病院に行って…。それからは……
よく覚えていない。
そして今私はいた覚えのない教室でお行儀よく座っている。
ドーナツは机の上に乗っかっている。無事なようだ。
「やっと目が覚めたんだな。」
低い声。
そこで初めて私は横を向く。
そこには、1つに束ねた長い髪を少しいじり、真っ赤な瞳で私をじっと見つめる男の子がいた。
どこかで聞いたことがある声だと思ったのは…
「あなたが起こしてくれたんですね〜!」
私は先程声をかけ、軽く肩を揺さぶってくれたのが目の前の彼だと分かるとそっと笑った。
「ああ、お前が中々起きないもんだから…。触って悪かったな。」
彼は申し訳なさそうに言う。
「いえ!大丈夫ですよ〜!おかげで目覚められましたし!」
「いやでも女を揺するなんて……。」
「ふふっ。」
「……?何がおかしいんだ?」
「あっすみません。えーと、私は男なので心配いりませんよ♪」
「え?」
「…」
「えっ男、なのか……?」
彼は心底驚いた様だ。それもそうであろう。初対面の人は誰だって私の性別を聞くと驚く。
私は昔から可愛いものが好きだった。それを可笑しいだなんて思わなかった。女の子みたいに。もっと可愛くなりたい。そんな思いで女装をしている。女の子、だなんて嘘は全くもってつける気がしないので性別は明かす様にしている。早めに言っておいた方が良いに決まってるもの。
「はい、正真正銘貴方と同じ性別です!」
「驚いたな…いや、そうか。とても似合ってるぞ。」
彼がそんな風に真っ直ぐな目で肯定してくれるので、今度は逆に私がビックリしてしまった。
「結構簡単に受け入れてくれるんですね?」
「それはお前が好きでしているんだろ?」
「そうですけど〜。」
「ならそれでいいだろ、…お前の好きなものを否定する気は一切無い。」
彼は口下手なのだろうか。点々と言葉を区切りながら気持ちを伝えてくれる。
「ふふ、ありがとうございます〜!」
私はそれが素直に嬉しかった。この人とはきっと仲良くやれる、そんな風に思えた。会ったばかりだがこれは私の第六感だ。
「…ところであなたのお名前を聞いてもいいですか〜?」
「俺は
「私は糸針緋巴銉です〜!楼さん、一体ここはどこなんでしょうか?」
これはずっと私が思っていた事だ。不可思議……こんな場所私は知らない。
「悪い、俺も分からない。…病院に呼ばれて来た筈だったんだが、いつのまにか此処に…。」
「成る程、私も全く同じ状況です〜。
困りましたね…。」
「とりあえず外に出てみないか?何か分かることがあるかもしれない。」
「それもそうですね…あっ、楼さんと1つ!私は状況が違いましたよ〜!ドーナツを持っています!」
「ドーナツを食べてから外に出てみませんか?」