「2人も殺されるなんて許し難いな。」
「あぁ、今回も絶対にクロを見つけなきゃ。」
「私達ならきっと真相に辿り着けます!」
「こういう時こそ協力ですよね…!」
「ひとまず死因だけど、これは毒殺だよね?」
「うん、それでいいと思うな…。2人の体にはなんの傷もなかったし……。誰かの目がある中殺すなら毒…だよねぇ。」
愛教と片倉が頷き合いながら、死因を決定させる。これには誰も異論がなかった。
「事件が起きたっていうか、2人に毒をもったのは確実に今日…でいいんだよな?」
と相模。
「あぁ、今日で間違いないだろう。」
「もし仮に、今日より前に仕込まれてたとするなら、多分じわじわと効き目がくるものだから…。劇中に2人が異変を示さなかったのは可笑しいよね!多分、時間帯とかも考えた上での犯行なんだと思う。ひなのちゃんは棺の中に入ってしまうから、症状が出始めても誰も気づけないし…。」
俺の後に蓮桜が補足した。
「今日は殆ど皆一緒にいたし、1人になることは少なかったよな。」
「はい、ですからもし毒を仕込むなら、皆一斉に口にしたものだと思うんです。それなら確実に胃に入りますから。」
「全員が食べたものといえば、劇の前のパウンドケーキと紅茶ですよね。」
仍仇、安心院、御伽だ。
「あ…ねぇ、ボク達席の指定はされなかったよね?」
「…全員のものが毒入りだったってことか…?」
相模の声に俺は背筋が凍った。
「紅茶を注いだのは美尽くんだから、もしそれに毒が入っていたのなら変だよね。だって自分で自分に毒を盛るなんてありえないよ。」
と蓮桜。
もしそうだとするなら、月陰が砂切を道連れにして死んだという事になってしまう。
わざわざ劇中に死んでしまった2人。
棺にはいった砂切をバレずに殺すのは簡単だが、月陰まで死んでいるのは疑問だ。
本当に道連れなら…?俺は嫌な考えを振り払った。
「パウンドケーキを作ったのは?」
「はい、私ですが…♡」
愛教の問いかけに看薬院が手を挙げる。
一斉に皆の目が看薬院にいった。
「あの…毒なんて入れてないですよ♡前もいいましたよね…殺す動機なんてないって♡」
皆の視線の意図に気づいたのか、看薬院は否定する。
「あぁでも…紅茶は美尽くんが淹れましたから…仕込める犯人は…わ、私しかいないと言いたいわけですか♡」
看薬院の声は少しだけ震えていた。
不自然だ。看薬院は1人、俺の意見に同意した時も堂々としていた。今ここで声が震えているのは…本当に犯人なのだろうか。
「…カルテさん。君は何か隠しているね?」
「え?♡」
「君は優しい人だけど…、その優しさは今は誰の為にもならないよ。」
祇園寺の言葉に、看薬院は何かハッとした顔をした。
しばらくの沈黙があった。
「…ごめんなさい……。紅茶を注いだのは美尽くんですが、その前にポットに用意したのは月羽ちゃんなんです…♡」
看薬院はついに口を開いた。
「紅茶と…確か飴も御伽が用意していたな?」
「そうですけど…、私が犯人って決めつけるのは早くありませんか?一緒に頑張ろうって…言ったのに、疑うんですか…?」
考えろ…考えるんだ。
飴は砂切以外が食べて、紅茶とパウンドケーキは皆食べて。
棺の中の砂切。
狙われたのは砂切1人。
でも死んだのは砂切と月陰。
御伽の飴と紅茶。
看薬院のパウンドケーキ。
どちらかは全員のものが毒入りで。
砂切以外は………。
わかったかもしれない。
この事件の真相が。
「なぁ、犯人は2人いました…なんて結末はないよな?」
俺は裁判場の奥に座るモノアピスに聞く。
「ん〜?今回の事件の犯人は1人だよっ!まぁ何人いたとしても最初に殺された人間を殺した奴がクロとしてオシオキされるけどね!」
モノアピスが口元に手をやり、クスクスと笑った。
なら、思いつく可能性が一つある。
「やっぱり、本当に毒が入っていたのは紅茶で、御伽が差し入れとして持ってきた飴は解毒薬だったんじゃないか?」
「月陰は手元の宝石から、オパールを選んで落とせるほどの余裕があった。言い換えれば、飴をその場で受け取っても、食べないという選択肢もできたと思うんだ。」
「そ…そんなの…月陰さんが自殺だって…いうの?」
愛教が震えた声を出す。
俺も信じたくはない。だが、飴が解毒薬で、それを砂切以外受け取ったというのなら、そう考えるのが妥当なのだ。事件の犯人は1人。つまり、看薬院と御伽が手を組んでる可能性はゼロだ。
「何か…砂切が飴を受け取らない理由があるはずなんだ。例えば犯人と何かあったとか。そうでなくても、砂切は警戒心が強い。大人数で用意されたものや、皆が必ず口にするものしか、受け取らないんじゃないか?」
砂切の事をわかったつもりで語っためちゃくちゃな論だった。でも、どうか…彼女のことをわかっていてくれ。今、1番理解している人はここにいないのだから。
「薬品保管庫から毒を調達して、紅茶と混ぜたんだ。ついでに解毒薬も作ってな。」
だが、この意見は弾かれる事になる。
「薬品保管庫はここ1週間くらい閉まっていたんです。だから、私が毒を調達するのは不可能なんですよ。」
「そんな筈ないよ!」
「あんまり信じ難いね。」
相模と愛教が首を振る。
「…いや、それは本当だよ。」
蓮桜だ。
「この前病院の探索を、また日和ちゃんとしてたんだけど…、いつも空いてるはずのそこはメンテナンス中だったんだ。」
「安心院さん、それは本当なのぉ?」
そんな事があるのかと片倉が安心院に首を傾ける。
「そういえば…そうでしたね。モノアピスに聞いたら、薬品の残りを管理する為に閉める、って…。すみません、もっと早くに言えばよかったですよね。」
安心院は申し訳なさそうに、うなだれた。
「そうしたら、どこで毒を調達したんでしょうか?♡」
「やっぱり、私は何にも毒なんていれてないんですよ!」
勝ち誇ったように御伽が言った。
「…いや、宝石にも毒を持つものがあったな。」
手に顎を乗せて思い出しかのように呟いたのは、仍仇だった。
「毒…?」
「あぁ、それも一つや二つじゃないんだ。死に至るものもあると…月陰に聞いた。」
いつも彼は大事なことを教えてくれる。
「じゃあどこで宝石を調達すればいいのぉ…?」
宝石を調達できるのは?
「確か月陰の研究教室は開放されてたよな?そこから調達できるんじゃないか?」
「あ…それならできそう…。そっか、開放されてたんだもんねぇ。」
「でも、研究教室には鍵がかかっているので入れるはずありません…!これは2人の自殺なんですよ!」
「それは嘘だよね、月羽さん。」
「え?」
「研究教室に鍵なんてかかってないんだ。開放された場所にはどこでも。」
祇園寺の言う通りだ。御伽の偽証は一瞬で見抜かれてしまった。
「…犯人はお前なんだろう?」
俺は御伽を指さした。
前を向いて頑張らなきゃ、と笑った御伽が脳裏から離れない。それはきっと皆も同じで、ただ悲しそうに御伽を見ていた。
「…………わた…るうじゃない。るうじゃない…。違う違う違う違う!!!!!!!!!」
ぐしゃぐしゃと頭を掻き毟る御伽。
「解毒薬の飴もガチャで手に入れたものなんです!私が作ったなんて証拠どこにもない!本当にただの飴なんですよ!」
「それは違うぞ!」
「証拠ならある。洗い場に大鍋があったんだ。それ以外に用途なんてないだろ。」
「ぼくも、看薬院さんもそれを見ているんだ。」
「……私じゃ…ない…………私じゃ……。」
「…もう、認めるべきだ……。御伽。」
「さてさて、もうみーんなわかっちゃったみたいだし!投票タイムといこうか!」
モノアピスが、御伽なんて知らんこっちゃと言わんばかりに言う。覚悟を決め、各々の気持ちを抱えたまま、ボタンを押していく。以前繰生に言われた言葉がまだ心の深くに刺さっている。
全員の投票が完了。
モニターに映し出されたのは御伽月羽だ。
御伽は肩で息をしたまま、下を向いた。
そして、笑い声を漏らす。
笑い声?
「…っはははは。お見事だね。そうだよ、僕だよ。今回のクロは御伽月羽さ。」
明らかな人称や喋り方の変化に皆がぎょっとする。
「御伽月羽さ、ってそんな他人事みたいに…。御伽月羽はお前じゃないのか?」
「月羽ちゃん…?」
「ど、どうしちゃったのかな…。」
「とはいえ、僕が殺したんじゃなくて、メルヘン野郎が殺したんだけどさ?」
御伽は忌々しげに呟いた。くるりと周りを見渡し、俺達が状況についていけていないことを察知したのだろうか。こう言ったんだ。
「あぁ。そうか。君たちは僕のこと知らないんだったねぇ。はじめまして。御伽月羽だよ。」