パナケイアダンガンロンパ   作:ろぜ。

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Chapter4 Heartful_Recollection
(非)日常編


「やっぱ、中々皆集まんないな!」

相模が足を投げ出して、少し不満げにつぶやいた。

「…相模、品がないぞ。」

劇の件もあり、また人数がもう残り1桁をカウントしていることもあり、なんとなくだが皆で集まる事は少なくなった。

 

午後3時、お茶をしにやってきたのは、相模、仍仇、愛教、蓮桜、そして俺だ。

看薬院と安心院、祇園寺に片倉は何処かにいるのか、それとも自室にこもっているのか、今日一日姿は見ていない。

 

「うーん…皆が見てる中で、だったからね。」

愛教も砂切、月陰、御伽の事件のことを言いたいらしい。悲しげに首を振った。

「きっと、皆避けてるとかそんなつもり無いんだろうけど…なんとなく疎遠になっちゃうね…。同じ屋根の下なのになぁ。」

蓮桜も同調するように言う。

 

「まぁ、何か出来事を起こす様な気にはなれないだろうし、暫くこんな空気感でも別にいいんじゃないか?」

そう言いながら、茶を呑む仍仇の横には分厚い本。

「…お前そんな厚い本読むのか?」

「特にすることもないから暇だろ。本は結構好きだから。」

と、言いながら内容を見せてくれるという意向か、本をこちらに寄越した。

 

仍仇から本を受け取り、表紙を開きペラペラとめくる。

「いて……っ。」  

めくった拍子に紙で指を切ってしまった様だ。

傷口こそ小さいものの、じわりと血が滲む。

「わ、大丈夫?」

蓮桜が横から覗き込む。怪我をしていないのに、痛そうな顔をするものだ。

 

「大丈夫だ、ほっときゃあいいだろ。」

「ううん、傷口か小さくてもやっぱりバイ菌が入ったら…とか考えたら心配だよ!保健室に行こう?」

蓮桜は首を傾け、いわば上目遣いなるものをする。そういう顔はずるいと思うのは俺だけだろうか。

 

相模はにやつき、愛教は「いってらっしゃい。」と小さく手を振った。

「さて、俺は日和を探しに行ってこよっかな!」

「それじゃあ、ぼくは片付けておくよ。」

「サンキュ!次は俺がやるから!」

「悪いな愛教。僕は本でも返してくるか。」

 

食堂はまたがらんとするらしい。

 

「さっ、行こう楼くん!」

俺は蓮桜に引っ張られるがまま、保健室へと連れられた。

「保健室なんて、久々に入るな。」

最後に世話になったのはいつだったか。此処に来てからの記憶は鮮明なのに、…いや鮮明だからこそ昔の記憶は朧げになる。

 

「え〜と………あったあった!」

脚立に立ち、棚から救急ボックスを取り出す。その中からピンセットや消毒液、コットンに絆創膏を出した。

「はい、手出してね。」

俺の人差し指をそっと触ると、蓮桜はトントンと消毒をし始めた。

 

コットンが傷口に触れるたびに染みて少し痛む。でもそれ以上にやけに心臓が痛かった。何かを誤魔化すように、俺は言葉をなんとか口にした。言葉になるなら、なんでも良かった。

「…慣れた手つきだな。」

 

救急ボックスをしまいながら、蓮桜はどこかかげった表情で言った。

「…確かに、僕はこうやって、血を止めることは出来るかもしれないね。だけど…傷口を塞ぐのは…死を防ぐのは…きっと楼くんの役目だよ。」 

 

「いきなりどうしたんだ?」

「…僕も希望を託してるんだよ。」

も、とは糸針や月陰のことを指しているのだろうか。蓮桜はやけに真面目な顔をして、真っ直ぐに俺を見つめた。

「希望を託すなんてそんな事言うなよ。まるでお前が死ぬみたいじゃねぇか。」

 

「違くて。…いや違わないのかもしれないけれど。いつ死ぬのか…もう皆分からなくなってきてると思うんだ……だから、手遅れになる前に言っておきたかったんだ。」

まるでそれは遺言の様だった。俺は引き留めていられる言葉をただ考えていた。

 

「…俺に希望を託しても…糸針みたいにはなれねぇぞ?」

愛教との夢の話を思い出す。愛教とも蓮桜とも皆とも生きたい。だからそんな事…言わないでくれよ。

 

_______夢は叶わないこそ…?

 

いや…叶うからこそ?

 

「ね、美尽くんとひなのちゃんが死んじゃった時の裁判さ、楼くんは初めて自分の意思でそれは違う、って言ったよね。…確実に君は進めてる。緋巴銉くんと同じ姿になる必要なんてないんだよ。」

 

「何か明るい事を考えるなら任せてよ!また皆が楽しくなれる様に、集まれる様に、考えてみるからさ!」

すぐに元の明るい笑顔を浮かべると、蓮桜は俺の手を握った。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「僕達は君のことを信じているんだよ。だから、君も自分を信じてあげてよ。」

 

「ね?」

俺はついに声を発する事ができず、勢いに押され頷いた。

 

「じゃあ、また明日!」

するっと俺の手を離すと、蓮桜は袖にすっぽりと隠れてしまった手を振る。小さな小さな体だった。

 

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