パナケイアダンガンロンパ   作:ろぜ。

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非日常編

第一発見者は看薬院と安心院。死体発見アナウンスは片倉と鳴らした様だ。

俺は2人に話を聞くことにしたが、安心院はまだ俯いていた。そこで先に看薬院に声をかけることにした。

「お前らは今朝、一緒に菓子作りをする予定だと食堂で会った時に言ったな。」

「ええ♡いくら経っても約束の時間に雪雫ちゃんがこなくて…呼びに行ったところ……♡」

そういうと看薬院は言葉に詰まってしまった。

 

「その約束をしていたのはいつなんだ?」

「一昨日です♡」

看薬院は、困ったようにマスク越しの頬を軽く掻いた。死んだという事実が受け入れ難いのか、どこか死という言葉を避けているようにも見えた。

 

「誰かいないですか?って看薬院さんが部屋を回ってくれたんだ。ボ、ボク以外は皆別の場所にいたみたいだよ…。」

それから、端の方でいつも通り怯えている片倉の言葉に相違点もなく、違和感はなにも感じなかった。

 

次に、俺はただ椅子に座り黙り込む安心院に声をかけた。正直、なんと声をかけていいのかわからなかった。蓮桜が大切な存在であったのは俺だけではない。

「…安心院?」

暫く応答はない。

 

今はそっとしておこうと安心院から離れようとした時、ぽつりとか細い声がした。

「………すみません。ショックが大きく……。」

「いや…当然だよな。」

更に沈黙が続き、また、安心院が口を開いた。

 

「…楼さんは強いですね。」

「強い、か?」

そう聞くと、安心院はこっくりと頷いた。

 

「強さは初めから備わってたものじゃなくて……俺は皆からもらったから。…安心院は違うのか?」

「日和…!俺が…いるから…。」

「そうですよ、日和ちゃんはまだ独りじゃないです♡」

相模と看薬院が安心院の背中をさする。安心院はぐっと何かを堪えて俯いたあと、

 

「私、もう少しだけ頑張ってみます。」

綺麗な笑顔で、ただ、そう言った。

 

蓮桜は口から血を流して死んでいた。近くには瓶が。

「これ……蓮桜さんを殺害した毒の瓶かな?」

愛教が瓶を指差し言った。俺も同意見だった。それ以外に何も思いつきはしない。一体どうやって飲ませたというのだろう。

 

「それに、これなんだろうね。」

戸棚から倒れたのだろうか。何故か小麦粉が遺体周辺に散っていた。ただ粉が散ったというよりかは、のびて床についている。

 

「この小麦粉は、材料集めの時に足りなかったものですから、モノアピスから雪雫ちゃんが貰ってきたものだと思います♡」

会話が聞こえていたのか横から看薬院が口を出す。ありがとう、と愛教は答えた。

 

俺は蓮桜の体をそっと起こすと頭の後ろら辺を確認した。血こそ流れてはいないが、内出血で小さなこぶが出来ていた。恐らく戸棚にぶつかった拍子にできたのだろう。

 

枕元には、古びた革が表紙の本。

何気なく手に取り中身をペラペラとめくる。

 

“今日は日和ちゃんと迅くんと育くんと緋巴銉くんと楼くんと志々水ちゃんでピクニックに行く約束をしました。”

 

“劇の練習は順調です。月羽ちゃんも生き生きしていてとても良かったです。”

 

日記のようだった。後ろの方を見ると、何故か数ページ破られた跡がある。

「どうしてここのページだけ破られてるんだ?」

「…書き違え、かなぁ?」

 

だが、部屋中どこを探しても破られたページは見当たらなかった。

 

「なんだか事件の証拠になりそうなものが少ないね。裁判で皆の力を合わせれば…わかるかな?」

愛教は捜査を終えると、不安そうに俺を見つめた。

 

「これだけ捜索しても犯人に直接繋がりそうな証拠はないしな…。でも今までだって俺達は事件を解決出来たはずだ。今回だってできるだろ。」

俺に不安がないと言えば嘘になる。

だが、必ず犯人を見つけるという強い意思だけが俺を動かしていた。

 

最後にだが、最早テンプレートとなりつつある、カルテの確認。俺は机の傍の引き出しをあけた。

「…え?」

 

そこに書かれていたのは、小さな体に抱えるには重すぎる病。

“何もかもを喪う”病気。

 

“喪う対象には体の機能も五感も記憶も含まれる。”

“細胞壊死。”

“二度と目を覚まさなくなる。”

 

無機質に並べられた言葉が針となり、俺を刺す。

 

皆で食べたものを、美味しいと笑ったのは、嘘?

見えなくなって、聞こえなくなって。

俺達の事も…いつかは忘れる運命だったのか?

 

クラっと、倒れそうだった。

 

「さてさて、そろそろ裁判を始めようか!」

これ以上もう何も奪わないでくれ。

そんな気持ちを隠すかのように、忘れさせるかのように、俺は強く地を蹴り裁判場へと向かった。

 

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