パナケイアダンガンロンパ   作:ろぜ。

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非日常編

「もう学級裁判も5回目か。」

「ここにくるまで何人の犠牲者が出たことか…。」

「残された私達に出来ることを精一杯尽くしましょう♡」

 

 

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「そうだな…。死因を特定できたらいいなって思うんだけど、皆はどう思う?」

裁判を積極的に進めようとしていた祇園寺はもういない。引き継ぐかのように、普段はチャラチャラしている相模が真剣な口調で切り出した。

 

「祇園寺さんは糸鋸で手足を切断されてたよね。だから出血死なんじゃないかな。」

愛教が自らの意見を口にする。

 

「ですが…抵抗したにしては…穏やかな顔をしてるん…で…す。」

 

 

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安心院の平静さはもうなかった。

 

「日和、本当に大丈夫?」

裁判席の向こう側から相模が言う。

 

「…私は大丈夫です…から絶対に裁判をやめないで……。」

口調や人称が捜査時から少しブレてきていた。安心院の病気がなんにせよ、恐らく進行が始まってきているのだろう。

 

「…私はその痛みや行使に…双方が耐えられるとは思いません。」

俺も安心院と同じ意見だった。並の人間であれば、四肢を切断して殺害する方法など思いつかないし、耐えられる筈がない。

 

「よっぽど恨みがあったのなら別だと思うけどな。」

「いや、祇園寺さんは人当たりも良かったし、そんなに仲の悪い子なんていたかな…?」

愛教の言う通りだった。基本的にこの病棟の中、不仲であったのは繰生と糸針だけだ。それも一方的であったし、そもそも2人はもう此処にはいない。祇園寺にも関係のない話であった。

 

…だが、1人だけ、祇園寺と仲の悪い人物がいた。

決して近くには寄らず、会話をしても向けられるのは冷たい言葉ばかり。

 

だがそれも此処にはいない人物だった。

 

「片倉なら祇園寺に恨みを持ってたかもしれないな。」

俺は恐る恐る口にした。もう既にこの世を去った人物に疑いを向けるのは心苦しい。

 

「あら、藍くんですか♡」

「確か片倉は首を吊られていたよな。もし祇園寺を本当に殺害したのなら、あいつはその罪を悔やんで自殺したのか?」

 

遺体のそばには椅子も倒れていたはずだ。

 

「いや、藍は自殺なんかじゃないよ。」

「相模?」

 

「あいつの首には確かに縄がかかっていたよな!だけどその縄の下には手で絞められた跡があるんだ。日和ちゃんも一緒に確認したし、カルテちゃんならわかるかな?」

 

「はい、私も確認しました…。」

「…そうですね、ええ♡ 言われてみればあの跡は縄にしては不自然です♡ 人の手によって絞められたと考える方が自然でしょう♡」

安心院と看薬院が相模の反論に賛成し、俺の推理は砕かれることとなった。

 

「そうか。…あ、それに部屋はすごく荒れていたな。もし片倉が誰かを殺して自殺に走ったとしても…あそこまで部屋を荒らしたまま命を絶つもんか?だってあいつは…。」

 

 

「超高校級の清掃員なんだ。」

極度の綺麗好きであった片倉がそんな場所で死にたがるはずがないのだ。

 

「確か現くんは塞ぎ込んでいらっしゃいましたし…もしかすると藍くん以外のどなたかと合意の上の殺人だったのかもしれませんね♡」

 

「ちょっと待ってくれ。片倉と祇園寺が同一人物による他殺だとしても、部屋が密室なのは不可思議じゃないのか。」

 

 

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俺は組み立てた推理を今度こそ合っているよう、披露する。

「犯人は鍵をずっと持っていたんだ。…モノアピスから受け取るまでずっとな。俺達が混乱している中、まるで元からそこにあったかのようにテーブルにそっと置いたんだよ。」

 

人間の錯乱した心理の中、これは然程難しいことではない。

 

「なるほど!それに賛成だ!」

 

 

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「ってことは、相模さんと安心院さんは犯人じゃないんだね。でもどうやって犯人を見つけようか。」

愛教が不安そうに呟く。

俺もさっぱりだった。

行き詰まったかと思った時、何かに気づいていたのか看薬院が俺に話しかけた。

 

「壊れた時計のこと、覚えてますか?…少しだけ時計のガラス破片に、血痕がついていたんですよね♡ ふふ、楼くん。この意味が分かりますか?♡」

 

「…そうか。犯人は時計も自分で割ったんだ。…止まった時間を正午と見せかけてから電池を抜いて、そのまま割った。だから犯人の手には傷痕がある筈。そう言いたいのか?」

 

「完璧です♡ 惚れ惚れしちゃいます♡」

「2人とも凄いよ…!」

 

 

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部屋を荒らしたりしていたのは仲の悪かった2人が争ったように見せるため。

時計を壊したのはアリバイを作るためだろう。だが昨日の正午は片倉が生きて俺達と一緒にいた時間のはず。全員がアリバイを持つため犯行は不可。

 

…最後の一手だ。

その傷痕を確認したら、犯人がわかる筈。 

 

「…皆、それぞれ手を見せてくれないか。」

俺がそう言うと、看薬院は手袋を外し、愛教はそのまま手を差し出してみせた。俺も勿論手袋を外し皆に見えるようかかげる。

 

手袋をつけたまま、仍仇は手をかざす。

 

「伊織?手袋を外さなきゃわかんないぞ?」

相模が首を傾げる。そんな様子にも仍仇は黙りこくったままだった。

 

「仍仇、手袋の下を見せてくれ。」

「伊織くん…お願いです…♡」

 

「見せない。そんな権利がお前らにあるものか。」

仍仇は頑なに首を振る。俺達がどんなに声をかけても無駄だった。

 

それは、仍仇が犯人であると、表しているようなものだった。

 

今まで犯人を突き止めるため、一緒に裁判で戦ってきたつもりだった。

それなのに、今目の前にいるのは、クロの仍仇伊織なのか?

 

「…伊織さん……私、貴方とお友達になれて嬉しかったんです…。」

ぽつりぽつりと言葉を…いや命を振り絞るように安心院が語りかける。超高校級のカウンセラーは未だ力を見せようとしていた。

 

「できるならば、貴方には清く正しい道を歩んで欲しい…私に言われたくないかもしれないですし、貴方の過去は知らない…けれど、貴方の生真面目さはよく知っていますから。」

 

「貴方にはやっぱりが真っ直ぐが似合う。…ね。見せて下さい……。」

安心院は仍仇を見つめた。

 

そしてついに、仍仇は諦めたように、安心院に自らの手を差し出した。

 

その真実は…。

 

「……。」

安心院は、仍仇が犯人だと告げるように、長い睫毛を伏せたまま俺達に頷いてみせたのだった。

 

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