▼サガミくんがクロに決まりました。オシオキを開始します。
「え?」
「そ、そんな投票はしてない…です………。」
「これで全部終わろう。」
相模はさっきの裁判でも見たことのないような表情をしていた。
ガタガタと天井が揺れだす。上から銃が降りてきて、その銃口は相模に向かった。
「goodbye、だ。」
「まて…相模!」
俺の声も虚しく、プシュン、と音を立てて銃弾は撃たれた!
▼error!
「君をここで死なせてたまるか!」
刹那、蓮桜は相模を突き飛ばし被弾した。
「……え?」
「蓮桜……!!」
相模も予想していなかったのか、目を見開いたまま倒れゆく蓮桜をただ見つめる。
皆が慌てて蓮桜に駆け寄った。
「僕は…病気の進行上…もう長くは生きれない命だ。特効薬を投与したところで延命にもならないんだよ。なら僕は、ここで1人の命を救って…死して償う。」
「この世に未練がないといえば、嘘になるけど…例えば君とか。…でも皆が幸せでいてくれたら僕はそれでいいよ。」
蓮桜は俺を指さすと血を吐き出した。
「せめて…帰ろう…家に帰ろう……。」
愛教はもう手遅れなことを察知し、首を振りながら言った。もう、その場の誰もがわかっていた。どちらにせよ、蓮桜の命の灯火は消えかかっていたのだ。
「俺が死ぬべきだった……君をこれ以上巻き込むつもりはもうなかった…なのになんで…!」
「君には生きて、生きて、生きて…償ってもらわなきゃ。」
「……ごめん………雪雫ちゃん……。」
「僕にごめん、なんていらないよ。…本当の君は…優しい人でしょう。」
それは2人にしかわかりえない何か。
「ね、皆。これに絶望なんかしないで。世の中にはね、どうやったって捻じ曲げられないこともある。だけどね、その中でどう生きるか、が希望に繋がるんだよ。」
ああ、蓮桜は目を閉じようとしている。
「蓮桜、俺はお前が好きだった。」
「……僕もだよ、楼くん。」
ずっと伝えたかったことだった。蓮桜は満足げに笑った。
「さよなら、僕の大切な人達。」
そして、ゆっくりと目を閉じた。
「蓮桜……。」
「一度も愛したことがないままでいるよりは、愛して失った方が良い。…英国詩人の言葉ですよ。」
安心院は唖然とする相模を哀しげに見つめながら、俺に言った。
俺は涙を我慢しながら、目を擦った。泣くのはまだ少し早い。
「…楼くん……君は何歩も大人になったんだね。」
愛教が何かを呟いたが、俺には聞こえなかった。
俺は蓮桜から視線を逸らし、相模の方へ向く。
「…俺、どうしたらいいかわからない。死ねなかった……。」
言葉を点々と切りながら相模は言う。それはまるで小さな子供みたいで。隠された相模の一部分なのだろうか。
「貴方は大馬鹿者です……っ!まだわからないんですか…!」
安心院は相模を叱り飛ばした。初めて見せた怒りだった。
「雪雫さんが言った言葉、もう忘れるんですか?貴方は生きなくてはいけないのです!」
「罪を償うことが死ぬこととは限らないぞ、相模。」
「死ぬなんて…許しませんから。」
「これでもぼくは先生なんだ。君を死なせたりなんかしない。」
簡単に許せたりなんかしない。
それは全員同じことだろう。
それでも、相模が死ぬことの方が許せなかった。
「……俺は、生きて償うよ。」
しばらくの沈黙の後、相模はついにそれを言葉にした。
「なら、俺達はそれを支えるぞ。」
3人は頷いた。
相模は、初めてその赤い目から涙を流した。
綺麗事だと言われるかもしれない。けど、これは俺達が出した結論だから。
生きて、辛いことを沢山経験して、生きて、愛をもう一度経験して、生きて、心の底から命を実感して。そうして罪を償ってほしい。それが答えだった。
ーーー
相模に案内された真っ白な部屋の中、それは箱に入っていた。
「これが…特効薬か…?」
既に注射器になっており、何故だか少し眩しく感じた。俺達の命を繋ぐもの、とても大切なものだからだろうか。
ぐさりと腕に打ち込んだ。
「…っ。これで……。」
これで
コロシアイ病棟生活が終わったんだ。
憎しみは当たり前に、そして悲しみと優しさでできた感情だって時に絶望を産む。
だけど、その産声の中にまだ希望はきっとある。それを聞き分けることができたなら。
間違っても、迷っても、どこかに信じてくれる人が、支えてくれる人がいる。そういう風に世界は出来てる。
もがくことをやめない。諦めたりなんかしない。
抗うって気持ちが、希望を作るから。
Chapter 6
終焉の幕引き、合図は銃弾
意志は芽生えば何処へ行く?