パナケイアダンガンロンパ   作:ろぜ。

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非日常編

 

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「こんな裁判さっさと終わらせてしまいましょう。海老塚の為にも、です。」

「僕も強くそう思います。」

「で、でも本当にこれで犯人がわかるのかなぁ…。」

「私達ならきっと見つけることができます、頑張りましょう!」

 

「そうだな。じゃあまずは遺体について分かったことを述べよう。確か楼くん…君は見ていたと思ったが…。何かあるか?」

「あぁ、俺は遺体を少し調べさせて貰ったが、遺体はまだ冷たくはなかった。死んでから、人の体温は約1時間に0.5℃から1℃降下すると言われているが、まぁ見る限り、死亡から1時間も経っていないだろう。」

現さんが切り出し、楼さんがそれを継ぐ。

議論は落ち着いて始まった。

 

「るうが発見した時には13時でしたから…、12時からの1時間が殺害された有力な時刻でしょうか…。」

「そうだといえるな。」

月羽さんの呟きを楼さんがそっと拾う。周りはふむふむと考えるように頷いた。

 

「そういえば現場には薬が散らばってたな。」

「薬…確か薬品保管庫がありましたね。」

「ぼくは薬品保管庫を捜査したけど睡眠薬から痛み止めまで沢山の種類があったよ。」

「そんな沢山の種類の中から確実に殺せる薬を選ぶのなんて…言いたくないけど、カルテちゃんくらいにしかできないと思うんだけど…。」

 

「まぁ、看薬院ならできないことないよね。」

「看護師ですし…。」

じわじわとカルテさんへ疑いの目がいくのがわかる。

このままではカルテさんに容疑がかかってしまう。私が正しい否定をしなくては…。

 

「それは違います!」

 

 

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「この薬は病棟に存在しないもの…。そうですよね、カルテさん。」

「はい♡そして薬品保管庫と図書室を調べてみましたが、見た事のない成分で出来ていましたよ♡」

「ということは、その薬は志々水さん自身が持ち歩いているものでしょうか?」

と日和さん。

「そういうことだと私は考えました♡」

カルテさんは正解だと言うかのように笑った。

 

「いくらカルテさんが看護師だといっても、カルテさんの研究教室はまだ解放されていませんし、結びつけるのは早いのではないでしょうか?」

 

「そっか…たしかにそうだよな。ごめんな!」

「いえ♡気にしないで下さい♡」

 

「でも薬を持ち歩いているっていう事は自殺なのかな?」

「このコロシアイ病棟生活に耐えられなくなったとか?」

「…志々水さんがそんな事するとは考えにくいが。死亡前日も楽しそうにプールで遊んでいたし、そのような演技ができるとも考えにくい。」

 

そういえば志々水さんが薬を持ち歩いていた証拠があった筈…。

 

「自殺に用いたとは考えにくいのは確かですが…あの薬を志々水さんが持ち歩いている事を確かにする証拠があります。」

「……?」

「どっどういうことぉ?」

「スカーフリングです。ヒビが入っていて、開けられた跡がありました。でも中身は空だった。その中身は薬だったのではないでしようか?」

「そうか…じゃあその薬はやはり海老塚が持ち歩いているもので間違いなさそうだな。」

 

「死因が毒殺だとして…不思議だよね。あの首の絞め跡…。」

「でもどうして毒殺した後に首を絞める必要があったのかな?効き目に不安があったのかな…?」

「毒殺だけじゃ不十分だったということでしょうか?」

 

死因は本当に毒殺なの?

よく思い出して…。

あの時見落としていたもの……もう一度志々水さんの死体を…。

 

 

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「そうです、わかりました!」

 

「志々水さんの口の中の錠剤は溶けきってなかった…そして死亡してから時間は経っていない…つまり、死因は毒殺ではなく、絞殺なんです!」

「溶け切っていなかった?」

「そんな細かいところ…ボク覚えてないや…ごめんなさい。」

「私も…すみません。」

 

「それなら僕も溶けきっていない錠剤を見たよ。」

「はい、同じく私も確認しています♡」

无子さんとカルテさんの応戦。私は自分の見間違いではなかった事に安堵する。周りの皆も私以外にも見ていた人がいる事を知り、少しずつ納得した顔をしていく。

 

「じゃあ、犯人は何で海老塚の首を絞めたんだ?」

「紐状のものなら…結構持ち運びできますよね。」

「うーん、縄とかで首を絞めたのかなぁ?それなら倉庫にもあった筈だけど…。」

 

志々水さんの首を絞めた凶器…、彼女の首にはどんな特徴があっただろう?

 

「縄ではないと思います。志々水さんの首には何かが食い込んで血が流れていました。よほどかたいものでないと血は流れないのではないでしょうか?そしてその食い込んだ傷痕はそこまで太くなかった事から、細いという特徴も挙げられると思うんです。」

「…ピアノ線じゃないの。」

无子さんが呟く。

「ピアノ線、ですか?」

「そう、僕大体の物が何が切断されたかわかるんだ。別に切断されてたわけじゃないけどさ。…ピアノ線なら細いしかたい。食い込ませて絞める事もできると思う。」

「そういえばピアノ線は倉庫にありました……。」

 

「じゃあ犯人は先にピアノ線で首を絞めて殺したのか!それで死因を錯誤させる為に、たまたま見つけた志々水ちゃんの毒薬を飲ませた。」

「……。」

「ピアノ線ならポッケなんかにいれて簡単に処分することができますね♡」

 

使われた凶器も憶測がついた。死因は絞殺と考えていいだろう。

志々水さんの体格、体力を考えても絞殺は誰にでもできそうな気がする。即ち誰にも殺せる可能性があるということになるが。

 

「このままでは、私も含めて全員が容疑者ですね、この際アリバイを提示しませんか?」

「そうだな。そうして絞っていくのが妥当かもしれない。」

「ぼくも賛成だよ。よし…じゃあ糸針さんからいこうか。」

楼さんと育さんが頷いてくれる。私は育さんの言う通り自分のアリバイを話し始めた。

 

「私が志々水さんの死亡推定時刻…そうですね、13時頃までは厨房にいました。…プリンを中庭に持って行こうと思って。」

「俺も同じくだ。」

「つまり、2人はお互いにアリバイが証明できるという事か。共犯の線は考えにくいし2人はシロだろ!」

楼さんの賛同をきき、迅さんは深く頷く。

 

「月陰くんはどうかな?」

「………。」

育さんの問いかけに美尽さんはただ微笑むだけだったが、すかさず伊織さんが助け舟を入れる。

「月陰は僕といたんだ。まぁ、たまたまだが…。図書室にいるところを見た。」

「僕も図書室に寄ったけど、2人の姿

を見たよ。…何故って、水波に頼まれたからさ。“水泳の歴史”って本を探して欲しいって。別に特にする事もなかったから引き受けたけどさ…。」

 

「えっと…るうはアリバイがないです……。引きこもってたので……。すみません。」

「残念ながら僕もありませんね。食堂で繰生さんにお願いした後、すぐに自室へ戻りましたから。海老塚さんに運んでもらいましたよ。…つまり、その時は生きていましたね…12時前くらいでしょうか?」

 

「僕は日和ちゃんと育くん、迅くんと中庭でお昼を食べていたよ!」

「ボクは食堂にいたよぉ…えっと証明できる人は…。」

「俺だね、そしてひなのさん。」

 

「私にはアリバイはありませんね♡これでは、容疑者に逆戻りです♡」

カルテさんは困った様な笑いを浮かべた。

 

たまたまお昼時だということもあって、それぞれが互いのアリバイを証明する形が多くなった。

しかしアリバイがないのは、月羽さん、零さん、カルテさんの3人。

この3人の中に犯人がいるのだろうか…。

 

「迅くんも言っていたけれど、志々水さんを殺害するのに共犯がいるとは考えにくい。とりあえず、アリバイのない3人に詳しく話を聞こうじゃないか。」

 

「るっるうは犯人じゃないですよ…?大体もしるうが犯人ならアリバイを持つ人がたくさんいる中、第一発見者のフリなんてするはずがありません…。…るうにはアリバイがありませんから…。」

「私が何か主張できることがあるとすれば…志々水ちゃんを殺す動機がないということだけです♡」

「僕も同じく。何故僕が頼りにしていた海老塚さんを殺す必要があるんです?」

 

「うーん、でもやっぱり第一発見者が犯人ってのはよくききますね。ありきたりですけど。」

「そういえば僕が来るまで御伽はずっと座り込んでたわけでしょ?アリバイもないし、それまでに殺しておいて誰かが来るまで待った…違うの?」

 

「ちっ違います……。るうにそんな度胸ないです……雑草より価値がないのに……。それにるうは小柄な方ですし………首を長い間絞めるのは……。」

「この3人の中で誰が1番殺せる力を持っているかと言われれば水波ですかね。まぁ彼も長い間首を絞めるのは中々難しいと思いますが。」

「そしてカルテさんについてだが疑われた時、“看護師だから”ときたが、看護師だからこそもっと簡単な殺し方を知ってそうだが。…裏をかいたのか?」

 

「でも、零くんは自力で歩く事が困難な状態だったよね?それならいくら体格差が合っても志々水ちゃんを殺すのは不可能なんじゃないかな?」

「そもそも水波クンは車椅子だから…。すぐに移動ってことが難しいと思うな…。」

「それに志々水ちゃんの事を頼ってたんだぜ?」

 

 

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いや、何かがおかしい。

矛盾点を見つけなきゃ…。

考えて、考えて、考えるのだ。

私のできる事を、私がしなくちゃいけない事を。

 

私は今までのことを一つ一つ丁寧に思い返す。そして気づく。

「…1つおかしな所があります。」

「おかしな所ですか…?そんな点なかったかのように思えますが…。」

「そうだよ、今までにおかしい点なんかなかったよ!」

 

「はい、そもそもの話です。零さんは志々水さんに移動などのお世話をお願いしていたはずです。それなのに何故本を无子さんに持ってくる様、お願いしたのでしょうか?それこそ、志々水さんにお願いするか、運んで頂けばいいはずです。何故无子さんである必要があったのでしょうか?」

 

「…万が一海老塚が声を出しても…聞かせないようにする為?」

ひなのさんが私の目を見つめ口を開く。

「はい、そうだと私は考えました。病室はある程度の音は他の部屋に聞こえませんが、隣の部屋での大声…例えばコンポからの音楽は聞こえた筈です。それを聞いた零さんは、もし志々水さんが大声をあげたら、雪雫さんか无子さんに聞こえてしまうのではと考えた。

 

雪雫さんは日和さん達とお昼に中庭でピクニックをする事を計画していた。だから、お昼にはいない…この時間になら、殺せるかもしれない。そう思ったのでしょうか?そしてもう1人隣の住人であった、无子さんがお昼頃自室に来ないように仕向けた。」

 

「それに、志々水さんは私達とピクニックの約束をしていた筈です。でも彼女は実際来ず、自室で殺されていた。…それって零さんと約束をしていたからじゃありませんか?」

 

そう、その引っ掛かりに気づくことさえできたら。

零さんなら志々水さんの病室に出入りしていても決して不自然ではない。そして、ピクニックの約束よりも優先させる理由を持っている。恐らく何かを手伝って欲しいと伝えたのかも。そして志々水さんなら必ず来るだろう。

 

「じゃっ、じゃあ犯人は…!?」

「み、水波…?」

「水波くん…。」

零さんは私の指摘や、他の皆の声に黙っているだけだった。

 

「はいはいそこまで〜!!そろそろ投票タイムにうつろうよ〜!今までの議論を踏まえて犯人だと思う人に投票してね〜!勿論投票放棄はオシオキだよ!」

 

私は震える手を押さえつけながら、彼へと投票した。皆も次々とボタンを押していく。迷いながら、震えながら、淡々と…。

 

「ピンポンピンポーン!!海老塚志々水おねえちゃんを殺したのは、水波零おにいちゃんでしたぁ!!」

モノアピスがケタケタと笑いながら、残酷な結果を告げる。

 

「零くん…。」

「どっどうして!零くん!違う…違うよね!?」

雪雫さんが悲しそうに名前を呼び、零さんと仲の良かった育さんはボロボロと涙を零し訴える。

 

「…ごめん。」

零さんは目を伏せ、ただそう呟いた。その一言だけにどれほどの感情が詰まっているのだろう。感情の起伏が少ない彼が今初めて声を震わした。

 

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「どうしてぼくに相談してくれなかったの?ぼくたち……友達じゃないか!」

「……裏切ってごめん…ごめん。でも…どうしてもっ」

「…っ!」

零さんは一度育さんの目を見つめ、また逸らすと言葉を切った。

育さんの方はというと、それ以上何も言わずただ泣きじゃくり肩を震わした。

 

零さんは私達の方を向く。

「…全てを話さなくてはなりませんね。僕をすぐにオシオキしないのはそういう事でしょう?」

「さぁ?でも何でも話していーよ!最期の言葉くらいゆっくりどうぞ!いんちょーは優しいからさ!!」

 

「…そうですか、感謝します。…まずハッキリ言わなくてはならないのは、僕が海老塚さんを殺した、という事です。皆さんの推理通り、ピアノ線で彼女の首を絞めました。普段のお礼をしたい、と呼び出してピアノ線をネックレスとして細工しました。つけてあげる、と言うと海老塚さんは何も疑わず目を閉じました…そして…暫く首を絞めたら亡くなりました。遺体を床に倒した時、彼女のスカーフリングの存在…毒薬が入っている事に気づいたんです。だから薬をばら撒いて飲ませました。少しでも現場を錯乱させるために。あぁ、操生さんにお願いをしていたのも推理通りです。」

 

「…何故志々水さんを殺してしまったんですか。答えてください、零さん…。」

零さんと志々水さんがとても楽しそうにしているからこそ、志々水さんが私達の光だったからこそ、そして何より零さんを信じていたからこそ私は聞きたいと思った。

現実から目を背けない。それはとても大切な事だと思うから。

 

「…病気の進行です。泳げなくなる事が、何も感じなくなる事を恐れていました。このままでは、僕の生きる意味なんかなくなってしまう、そうして人の生を…海老塚さんの命を奪いました。僕は自分の才能へ夢中になってしまった。僕に残された才能が、積み上げた努力が消えるのが怖かった。毎日動かなくなる足が、何も感じなくなる舌が、知らずに血を流している手が…。怖かったんです。

だから自分に殺されてしまう前に…自由を手にしたいと思いました。

でも純粋な海老塚さんの気持ちを裏切って、手にかけてしまった。海老塚さんにだって、大切な才能とその努力、そして当たり前の幸せがあったのに。」

 

「…今まで零さんが積み上げた努力だけは決して消えたりしない、私はそう思います。」

「…ありがとうございます。さぁ、僕に正しい罰を。」

 

▼ミズナミくんがクロに決まりました。オシオキを開始します。

 

 

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ひきずられて

 

_______ガブリ

 

飲み込まれていった。

 

 

 

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零さんは本当にオシオキされてしまった。

私達の投票で。

 

それでも私達は戦わなくちゃならない。病気とも、この病棟生活とも。

「…糸針?大丈夫か?」

私は生きている。そしてあなたも生きている。

「はい!大丈夫です〜!…ってそれは嘘ですけど。だけどね、楼さん、現実から目を背けてはダメですよ。自分に負けちゃ、ダメなんです。私はとても弱い。だから心だけは強くありたいんです!」

 

「…泣かない事だけが強い事とは限らないぞ。」

「糸針さん…。」

楼さんの言葉が真っ直ぐ私の涙腺をさしていく。

そして育さんが私の手を握る。彼も大切な2人を失った。

そのあたたかさが、言葉が、張り詰めた心を溶かしていく。

「っ。…うっ、うっ、うわあああああああああ!!ひっ、ひっ、嫌だ!死んで欲しくなかった!わぁぁぁぁぁん!」

私は子供みたいに泣いた。大好きな志々水さん、零さんの死が悲しかった。一度我慢していたものだったからそれは止まる事を知らなかった。育さんと抱き合ってただ泣いた。

 

こうやって立ち止まりたくなる時もある。泣いてもいい。だけどやっぱり前は向かなくちゃ。人を信じる心、自分の才能を誇りに思う気持ち…2人の思いを抱きしめて、明日のため、誰かのため、私のため、前を向く。

人は沈まぬ様、必死に泳ぐのだ。

 

 

Chapter1

 

深海sinksick

 

 

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残り14人

 

 

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一章シロ 海老塚志々水さんの裏シートでございます。

 

 

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一章クロ 水波零くんの裏シートでございます。

 

 

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