明けない宴と蒼き新星   作:おうどん師

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深緑に開く桃の花

なんとなく、普段より古代樹の森全体が薄暗いように感じた、理由はきっと空に分厚い雲がかかったからだろう。

 

そのせいか、古代樹の奥は蒸し暑くてたまったものではなかった、ただ、痕跡はひたすら奥へと続いているので、追わざるをえなかった、所々に引っかき傷を残し、糞をしたりと、結構活発的に動いていることが察することが出来る、足跡の形からして、俺はとあるモンスターがこの痕跡の特徴と合致することに気づく。

 

キノコを主食とし、他者の縄張りを侵して、自身の場所であると傲慢に主張する糞を残して回る悪辣悪臭極まりないモンスター、

これは現大陸にいるモンスターの情報、そして、俺が探している痕跡の主の情報と完全に一致している。

 

それが指し示すのは……。

 

この森に新たなモンスターが訪れたのだ。

 

 

太い木の枝がたわみ、木の葉を掻き分け大きな影が俺の頭上を通って行く、俺の目の前に桃色の太い毛がふわりと影が起こした風でふわりと漂いながらひらひらと落ちてくる。

 

どすりと重い音を立てて巨影が地面に落ちてくる、土埃を上げ、空へと上がった落ち葉の隙間から覗く桃色の巨体、欲望にギラつく黄の眼球。

 

土埃が地面に落ちてハッキリと分かる、間違いなく”それ”は。

 

桃毛獣(ババコンガ)そのものだった。

 

「マジか…!」

 

思わず口からそんな言葉が漏れ、注意深く桃毛獣(ババコンガ)の行動を見る、

どうやらまだこちらの存在には気がついていないようで、スンスンと大きな鼻を鳴らし、周りの餌を探しているようだ。

 

俺は気づかれでもしたら抵抗すらままならないままに、打ち倒されてしまうと感じ素早く近くの丈の高い草の影に身を隠す。

 

その直後に桃毛獣(ババコンガ)は立ち上がり、辺りを見渡しはじめた、ボケーっと突っ立っていたら間違いなく見つけられていただろう。

 

冷や汗をかき、その冷や汗を拭おうと腕で額を擦ると、草が揺れ、ガサリと音を立ててしまった。

 

桃毛獣(ババコンガ)が耳をピクリと動かす、

 

 

”気づかれた………っ!…”

 

冷や汗がぶわっと吹き出て、明らかに俺の心臓がバクバクと煩くなりだすのを感じる、まずい。

 

桃毛獣(ババコンガ)は鼻を鳴らしながらこちら側に近づいてくる、お願いだ…それ以上近づいて来ないでくれッ………!

 

そんな思いは通じることなく、ずんずんと桃毛獣(ババコンガ)は俺の目の前まで歩いて、上から草に伏せる俺の姿を見る視線が突き刺さるのを感じた。

 

そこには強い威圧感、そして殺意、強いプレッシャーを感じて、俺は息すらまともに出来なくなってしまう、完全にパニックを起こしていた。

 

おお…ここで俺人生が儚く散ることになるとは思ってはいなかった…両親、なんの親孝行も出来ず、申し訳ありません、

 

先立つ不幸をお許しください…………。

 

そのようにお祈りを捧げると、俺の頭上で何かが、振り上げられるような風切り音がなり、拳を叩きつけようと構えている姿が頭の中に過ぎる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

____………おい、こんな所で死んでもいいのかよ?

 

 

 

 

 

 

誰かが俺の中で、呟いた。

 

心の中で、死を受け入れるのではなく、

 

死を拒む強い力が生まれたのを感じた、これが人生で初めて俺の中に宿った…………

 

 

 

闘志(鬼神)だ。

 

 

 

俺は目をカッと開き、強く腕で地面を押して、後ろへと飛び去る、

直後に強く地面が揺れ、土が、砕けた岩が飛び散った。

 

今は桃毛獣(ババコンガ)から動けない程に強いプレッシャーは感じはしない、ビリビリと感じる俺に降り注ぐ殺意は、狩りのスパイスとなり、俺の狩猟本能を激しく刺激する。

 

目の前が薄い赤に染まり、桃毛獣《ババコンガ》の動きがブレるように見える、これが何なのかは分からないが、全てが鮮明に映る、木から落ちる木の葉も、今にも俺に飛びかからんとする桃毛獣《ババコンガ》の動きもだ。

 

軽く俺は右に体を逸らし、真っ直ぐ猛進してくる桃毛獣(ババコンガ)の巨体をいなす、その隙に俺は腰のハンターナイフを抜き放ち、桃毛獣(ババコンガ)の右前脚を斬り付ける、すると桃毛獣《ババコンガ》は姿勢を崩し、少し前のめりになりながら止まる。

 

桃毛獣(ババコンガ)は強い視線でこちらを睨みつけ、忌々しげに大きく放屁する、つくづく下品な牙獣だ。

 

こちらも睨み返しておく。

 

すると桃毛獣(ババコンガ)は大きく息を吸い込んで腹を膨らませる、咆哮をあげる気か、なら俺も返してやろう、俺も息を吸い込む、冷静なら俺はきっとこんな事はしなかっただろう、ただ、この時の俺は、何かが宿っていたように感じた。

 

俺の喉から放たれる叫びは、もはやそれは人間の物とは思えぬ、まさに竜から放たれる、”咆哮”だった。

 

「GNNMOOOOOOOOOOO!!!!!!」

 

俺と桃毛獣(ババコンガ)が互いに咆哮を上げ、それが闘いのゴングとなり、俺も、桃毛獣(ババコンガ)も地面を踏み切り、飛びかかる。

 

桃毛獣(ババコンガ)は大きく発達した鉤爪を振るい、俺を切りつけようとしてくる、ただそんな単純な攻撃、見え見えだ、俺はそのババコンガの剛腕の下に滑り込むようにして、脇下を切りつけてやる、桃色の毛を断ち、確かに肉を切る感覚がする、丈夫な桃毛獣(ババコンガ)の毛であろうと、しっかり刃が通る場所はある。

 

俺の相棒でもしっかりと太刀打ちできることがわかれば全くもって問題はない、討伐までは行かなくとも、撃退程度なら叶う。

 

 

さて、狩猟開始だ。

 

 




桃毛獣(ババコンガ)

桃色の体毛を持つ牙竜種のモンスター、
現実世界におけるゴリラ、もしくはよく太った猿のような外見をしており、キノコを主食とする。
頻繁に糞を撒き散らし、縄張りを主張することがあり、攻撃手段としてはよく放屁を用いる下劣極まりないモンスター
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