エリザベート・バートリーはご満悦である。
なぜならいつも彼女を悩ませる定期的な頭痛がまだ一度もきていないからである。故に、あたし頭スッキリなう。
しかも今日はいつもより綺麗に使用人が髪を結ってくれたので余計機嫌がいいなーう。
「へぇ、今日はいい感じじゃない。気に入ったわ」
「あ、ありがとうございます、エリザベート様!」
「そういえばあなた、以前にも髪を結ってもらったわね。名前はなに?」
鏡台の椅子に座るあたしは背後にいる肩まで伸ばしたブロンド髪のメイドに話しかける。
「そ、そ、ソニアと申します……! わ、私ごとき一介の使用人がお嬢様に名乗る栄誉をいただけるなんて、大変光栄です……!」
「そ」
私は興味無さげに生返事を返す。
この娘は昨日兄に貸したはずのリスだったが、
『や、やっぱりオレの目が曇っていたようだ。やっぱ使用人はバージンに限るな。せいぜい可愛がるんだぞ、は、ははは!』
と歯切れ悪く、よくわからない理由で突き返された。
────いったいなにが原因だったのだろう。
というかこのリス、なんで自分の名前を名乗っただけでここまで感動しているのだろう。変なものでも食べたの?
「ペットのリスを飼うにも名前は必要だから。もう下がっていいわよ」
「……あ、はい」
リスメイドはなぜかしょんぼりとした顔で部屋から出ていった。
そういえば、あのリス、いつもより手際良かったし、目のクマもとれてたわねと一瞬頭に思い浮かべた後、
「ふ、ふふふ。やっぱり髪を結ったあたしの可愛さといったら……大人になるたびに美しく洗練されてる……ハッ! あたしったら、罪な女……」
鏡にうつる自分を見て頬を朱に染める。あぁ、今日も美しいわね、あたし! 鏡よ世界で一番美しいのはだれ? もちろんあたしよね! 答えたら気持ち悪いけど!
「いいえ、いいえエリザ。美しさは罪ではないわ。才、容姿、身分。あたしはすべてにおいて完璧な才女にして高貴なるエリザベート・バートリー。あたしは美の星のもとに生まれる運命に」
『あの、エリザさまーそろそろ入ってよろしいでしょう』
「────────ぎゃー!!!!!」
自分の世界を破るノックの音に酔いが冷め、現実に戻る。
……残ったのは、それを他人に聞かれたかもしれないという羞恥だけだった。
「ぎゃー!!! ぎゃー!! ぎゃあああぁぁぁ! なんで! なんで、ドアの前に立ってるのよ貴方ぁぁぁ!?」
『いや、だってもう授業の時間ですし……』
「……あ」
時計を見ると、髪を結われてから二時間は経っていた。自分の美しさについて自分で二時間も語れるなんて、さすがあたし。
────じゃなくて!!
「こほん、い、いいから入りなさい。にゅにゅ、入室を許可するわ」
あービックリした。以前にもお父様や従兄さまに聞かれた時はすごい優しい顔されてそそくさと立ち去られたのよね。
なによ、あたしが美しいのは事実でしょう!?
自分でその事実にふけってなにが悪いのよ!
一人お人形遊びを他人に見られたわけじゃないのよ!?
「いけない、いけない。早く自分の世界に戻らないと。……。ねぇ、まだなの!? もう入ってきていいわよ!」
いったいなにしてるのかしら。
もう部屋の前にいることはわかっているのよ!? ただ扉のノブを回して押せばいいだけでしょ!?
「ええい! なにしてんのよ痩せブ」
『わるいごはいねがぁ〜……っ!!』
ドアを開けた前に立っていたのは二本角をもった赤デーモン。
………………。は?
しばらくあたしは目の前の不可解に頭が真っ白になった。
さぁ、落ち着こう。あたし。ねぇあたし。そろそろ自分の世界に戻ってきていい頃よ?
悪魔はそんな逃避を打ち破るようにドアを閉めた。あ、うん。これ夢やないわ。
「ギャァァァァァァァァァァッ!!?!? 助けてお父様、ついにガボール伯父さまがサタンを呼び寄せたの!!! あたし悪魔の生贄にされちゃう!! いやぁぁぁぁ、助けてぇぇぇぇぇ!!」
あたしはズサーッと自分でも驚くスピードで部屋の隅へと後ずさった。
今になって後悔したのは、窓を開け忘れたことと私室も使用人への懲罰用に防音にしたことだ。
うん、いくら叫んでも外に聞こえるはずないわ。詰みねエリザ!
『いや、まさかここまで怖がるとはな』
「ギャー!!! ギャァァァァァ!! 増えた亜ァァァァァ!? いやぁぁぁぁ!! 食べるならイシュトヴァン兄様にしてぇぇ!」
『あの、さりげなく身内に酷いこと言ってますが』
『生存能力だけは高いからなあ、我が従妹ながら』
すると、悪魔の顔と思っていたのはお面らしくその下にあったのは、あたしの家庭教師であるあの男とアンドラス従兄さまだった。
「ふぃぁぁぁぁっ!?!? 悪魔が二人を喰らって化けてきたぁぁぁ!!! あたしの美しい容姿も乗っ取られちゃううう、いやあああ」
「……。いや、もう気づいてもいい頃ですよね」
「……妄想が大好きだからな我が従妹は。トラウマにならなければいいのだが。ちょっとお茶目がすぎたか」
アンドラス従兄さまの顔を被った悪魔がうずくまったあたしの頭を撫でる。
「落ち着けエリザ。私は正真正銘、お前の従兄アンドラスだとも」
「ああああ、悪魔め! にに、従兄さまの皮を被ってあたしを騙そうたってそうはいかないわ! あたしは聡明なのよ!」
「……いやさすがに気づこうエリザ様。こっちの鬼の面が偽物」
「ひぃ!? 皮をコレクトする趣味はないわ! 近づけないで!」
差し出された鬼の面をはたき落とす。
……あれ? 今少し触れた感触からいって、皮にしてはちょっと硬いわ。
「な、なんだ……本当にガボール伯父様が悪魔を召喚したと思ったじゃない……」
「いや、あの方が何千年かかろうと悪魔を召喚することはないだろう……。それより目は覚めたか、エリザ?」
よく見ると、あれは皮ではなくて仮面だ。それも悪魔というよりもどっちかっていうとある文献で読んだ東洋の鬼ね。
見ればなかなか趣のある面だけど……。
……。おい待てよ。それを着てたのは家庭教師、
「うぉぉぉぉぶっ殺してやるわ家庭教師ぃぃぃ!!!」
────あたしは正気に戻った!!
「ちょ!?」
「よくもあたしをハメてくれたわねぇぇぇぇぇぇ絶対に許さないんだからああああぁ!!」
「お、落ち着いてくださいエリザ様! いたっ!? 適確に胸板打ってこないで!?」
家庭教師を床に押し倒し馬乗りの状態で胴体を殴る。無論だが、彼は抵抗することもなく彼の身体からドムッドムッドムッと殴るたびに音が出る。楽器みたいね。
「さすがにいたい!!」
家庭教師は不敬にも四度目くらいに当たる直前のあたしの手を摘む。あたしはびくりと身体を震わす。
「ちょ、ちょっ!! なに手を掴んでるのよ! もっと殴らせなさい!!」
「いやですよ、痛いし!!」
「はぁぁぁぁあああ!?」
「────まぁまぁ。落ち着いてくれエリザ」
……アンドラス従兄さまに感謝しなさい。あたしは乱暴に家庭教師の手を振り解き従兄さまに顔を向ける。
「右の頬を打たれたら────なんとやらだったか。まぁいい。とにかく、彼の案に乗った私も同罪だ。彼を叩くなら私も叩くがいい」
「……それは」
「遠慮をすることはない」
アンドラス従兄さまは膝を折って姿勢を下げる。
「わかったわ」
「ん────────?」
あたしは遠慮なく従兄さまのみぞおちに拳をめり込ませる。
「ぉ、はぅ!?」
瞬間、従兄さまからソプラノのように裏返った声が出る。
ちなみにキリストの言葉である『右の頬を殴られたら左の頬を差し出せ』とは『敵を許し愛せ』という意味で、右の頬に鼻クソをつけられたら左の頬にも鼻クソをつけろとかそういう意味じゃ断じてない。
「けどこのエリザベートは違くてよ。右の主犯者を殴ったら次は左の共犯者を」
「え、えぇぇぇ────っ!? あ、アンドラス様ー!!」
アンドラス従兄さまはしばらくピクピクと痙攣してからようやく顔を上げて話し始める。
「ぉ、おお……いいパンチだ。レディー……」
「これに懲りたらもう二度とこんな真似はしないことね……ていうかなんでこんなバカみたいなことしたのよ!? 死ぬほど怖かったじゃない!」
アンドラス従兄さまはまだ痛いのか蹲ったまま答える。
「えと、んとな。いや、最近退屈そうな感じだったから……ちょっと刺激を、と彼が提案してくれてな……うん、すこし私もそう思うことがあったから……参加しよっかなって」
「……ちょうど僕が故郷から持ってきた般若のお面があったから驚かせてみよっかなって思ったら……その、あんなに怖がるとは」
「あんなにってなによ!? 最悪心臓が破裂するかと思ったじゃない! ショック死してもおかしくなかったわ!?」
「……いや、普通扉を開けてわぁって驚くだけで終わるだろう……? あんなに本気になって怖がるとは長年見てきた私でも予想外だった……というかお面と気がつかないか? 普通」
「気づくわけないじゃない!? いつもガボール伯父様がしてる悪魔召喚儀式とか奇行とか見てたら笑えないわよ!」
ガボール伯父様ったら、いっつもいっつも変な本を持って『エロイムエッサイム、エロイムエッサイム』とか変な呪文唱えてるわ、『あ、悪魔が勝手に!?』とか言って使用人の腕噛んでくるわ……
その呪文じゃサタンなんて出てこない……ていうかその本、どっから持ってきたのよ。
……それはそれとして、さっきあたしが錯乱状態で、仮面だと見て気づけなかったのは後々考えるとかなり恥ずかしいので怒鳴って勢いでやり過ごそう。
ていうか、イシュトヴァン兄さまに聞かれたら絶対に笑われる! やだ恥ずかしい!
「こうなったら二人の記憶を奪うしか……ていうかそれどうやったらできるのかしら。叩けば抜けてくれるかしら……」
「アンドラス様、なんかまずいこと言ってますよ……?」
「というか家庭教師くん、見たかあのエリザの怖がる顔……! めっちゃ可愛くなかったか?」
「いや余計に煽らないでください!」
急にアンドラス従兄さまがウキウキし始めた。
ていうかすげぇ聞き逃せないこと言ってるんですけど。
「いやぁー、貴重な休憩時間を君の提案に割いてよかったよ。おかげで珍しいものも見れたし仕事で溜まってたストレスもすっかり……はっ!?」
「アンドラス様っ!?」
……ふぅ──────────ん。
「……」
「え、エリザ。うん、ちがうぞ? 今のは言葉の綾というか。……いや、嘘はつくまい! しまった!!」
「しまった! じゃないわよ!!」
「ごめんなさい!!」
くそ、絶対にただじゃおかないわ……!
けど許しそうになる……はっ、あたしってばチョロすぎ……?
「────エリザ嬢、ともあれ計画したのは僕だ。……開き直るようですまない。けど……最近の君を見ていると……どうも」
そのあと、家庭教師は迷うように口を紡いでしまった。
「────発言を許可してあげる。続けて」
「……詰めすぎている。頑張りすぎていると思ったんだ」
……。どうして?
「飲食と身だしなみ、寝る以外の一日のほとんどは勉強に当てている。いや最近では睡眠時間も美容が崩れない範囲で削って。ほとんど休みも取らずに……」
あたしががんばるのは当然じゃない。
自分を磨くのは当然じゃない。だってそうでないといけないもの。
そうでないとバートリ家の名に傷がつくもの。あたしは美しくなきゃいけない。
あたしは完璧でなければいけない。
あたしは不完全ではならない。
そう、エリザベート・バートリーは全てにおいてパーフェクトでなくてはならない。
そうでなくては────────誰もあたしを見てくれない。認めてもらえない。名前だって呼んでくれない。存在さえいないものとされてしまう。
アンドラス従兄さまがあたしに声をかけてくれるのも期待してくれているからだ。
あたしが美しくて綺麗で可愛くて賢いからだ。
そうでないあたしは、きっと要らない。捨てられるに決まっている。
きっとアンドラス従兄さまは────あたしを見てくれなくなる。
完璧でなければ、お父様に見てもらえなくなる……!
男どもに求められるような女性にならなくては、お母さまに見てもらえなくなる……!
あたしは期待に応え続けなければいけない。
がんばらなくちゃ、いけないのよ。
────────あたし自身のためにも。
「きっと疲れていると思ったんだ。頭痛もだんだん悪くなっていると聞いてて……今日珍しく来ないから疲れたのかなと思って肩をほぐそうと……だから」
あたしは手で彼を静止する。
「……はぁ。わかった。もういいわ。あたしも時間通りに来なかった。従兄さまのこともあるし……今回のことはあたしへの罰だと思うことにするわ……なにより」
アンドラス従兄さまが。
家族が自分を気にかけてくれた。
たったそれだけであたしは満足していた。
……理由はわからない。美しいあたしを気にかけるのは当然。家族ならなおさら。
けれど────なぜか今回は。
「……エリザ。俺も気になったんだ……本当に、大丈夫か? 疲れたなら正直に言ってくれ。お母さまの方針はあるだろうが、君自身に悪影響が及ぶのなら少し休む時間を与えるよう説得を……」
「……いいの。従兄さま。お母さまは関係ないわ。たしかに結婚する相手を選べだの言われてはいるけど脅迫されてるわけじゃない。あたしが自分で勝手にしてることよ」
今日の授業の罰に、それは今まで受けた罰より満たされる暖かい罰だった。
****
結局、家庭教師の仕掛けたドッキリの後、エリザベートは休まず、予定通りの時間で彼の授業を受ける。
送れた分を取り戻すように彼女は必死に取り組み無事今日の課題を終えた。
授業を終えた家庭教師アベルはエリザと別れ、アンドラスの居る部屋へと向かっていた。
扉の前まで着き、丁重に扉をノックする。
「失礼します。エリザ様の家庭教師、アベルです。彼女のことで相談が」
『────────君か。入ってくれ』
ドア越しの了承を得た後、アベルはドアをゆっくりと開けて顔を覗かせる。
「少し散らかっているが、座れるところに座ってくれ」
おそらくアンドラスの仕事場なのだろう。彼の机の上だけでなく周りに紙の塔ができている。
あまりに多すぎてアンドラスの座る仕事机を玉座に紙の城が出来上がっていた。ひどく燃えやすそうな城だ。
「今日は────誠に申し訳ありませんでした」
「ん? いや、俺も面白半分でたまたま通りがかったお前の案に乗ったんだ。お互い様というものだろう?」
彼はまだ殴られたみぞおちが痛むのか腹をさすっている。
「それより、エリザは楽しんでくれただろうか? 彼女もすこしは息を抜いてくれると俺としても安心できる」
「……ど、どうでしょうか」
アベルは引きつった笑みを浮かべる。
「……く、はははっ! というか見たかあの顔? あいつが、人と向き合う時もいつもつまらなそうな顔をしていたあいつが! あんな風に怖がるなんて!」
「彼女が? 表情豊かだと思いますが」
「いーや。素直にいい表情を見せたのはかなり久しぶりだ。あいつは笑うことも泣くこともない。四六時中、ずっとつまらなそうな顔をしている。唯一見せるのは苛立ちだけだな」
アンドラスは再び思い出し笑いを再開する。
「くく……いや、すまない。だって悪魔ですわ、お父様ー! とか。思い出しただけで腹がよじれそうだ!」
「どちらかというとアンドラス様の方が楽しんでいたのでは……?」
「かもしれないな! 童心に帰ったみたいで楽しかったぞ!」
あぁ、まぁ……と表情を暗くする。
「……お前が言った通りだ。近頃、あの子はすこしがんばりすぎ……いや───────必死すぎる」
過剰すぎるとアンドラスは断じる。
「何かに対し情熱をかけられるのはいいことだ……芸術しかり文化しかり。人の熱意によって生まれ育まれたものだからな」
アンドラスは顔を俯かせる。
「だが今のエリザからはそれを感じられない……なにか嫌なものが彼女に取り憑いている。幽霊とか亡霊ではないんだが……なにかが彼女に取り憑いている気がするんだ」
アンドラスは窓とドアが開いていないかを確認し、アベルに耳を貸すように言う。
「……ここだけの話だ。お前も知っての通りだがバートリ家のほとんどが曲者揃いだ。血の呪いとも言うべきか……一族の多くがその突出した……その、性格によってロクな目に遭っていない。イシュトヴァンとか、もう手遅れな感じだ……」
「……そ、そうですね」
「────少し耳を貸せ」
アベルはアンドラスへと耳を近づける。
「────もうバートリ卿が長くないことは知っているか?」
「────!?」
アベルは自分の耳を疑う。
「……もうバートリ卿はベッドからほとんど動けずにいる。なんとか持ち堪えてはいるが……時間の問題だろう」
「なぜそんなことを僕に……」
「────私は明日仕事で遠くへ出かけなければならない」
「!!」
アンドラスは席を立つ。
「出発の朝に言うような話ではないだろう? 今言ったこと……エリザにだけ伝えてほしい。彼女はバートリ卿に甘えていたからな……」
「……どうして。それならば今からでも遅くはないです。今はちょうど授業もなく────」
「君が来てからだ」
食いかかるようにアンドラスはアベルの言葉を遮る。
「エリザはあそこまで感情豊かな子ではなかった。いや……本来あれが素なのかもしれないが……。俺が知るあいつは、いつも退屈そうな顔をしていた。窓の外へ何かを夢みて切ない顔を浮かべている。そういう従妹だった」
その習慣はあいつのよく読む海外の恋愛小説のせいだけどな、とアンドラスは笑っていった。
「案外、まともな話し相手がいると違うのかもしれないな。お前が……影響と言っては大きいがお前との会話が、彼女に刺激を与えているのかもしれない」
「アンドラス様……」
俺やバートリ卿はいつも忙しくてなかなか毎日ゆっくり話す機会を設けられないからな、と自嘲気味に答える。
「────お前を拾って良かった。俺では従妹に可愛くて、なかなか厳しくはできない。他の奴も立場上は物申しにくいが、お前はそうではないみたいだからな」
「……」
「一見ジャジャ馬娘だが、エリザは賢い子だ。きちっと言って叱れば事の正誤など後々自分で判断できるさ。これからもいつものようにはっきりと意見を言ってやってくれ」
君が必要だなーんて、色々立派なことを言ったが、と彼は続ける。
「本当は私が可愛い従妹の泣き顔を見たくないから、だがね」
「ずっ!? ズルイですよ! 押しつけるなんて!」
「卑怯者結構だぁ、はははは! じゃ、後は頼んだぞー!」
アンドラスは翌朝の出立の準備を始めた。
「……アンドラス様。部屋を出る前に一つ、申し上げたいことが」
「なんだ、エリザのことは任せるように言っただろう」
「そうではなく僕が言いたいのは他でもなく────あなたのことです」
****
「おぉ、我が甥イシュトヴァン! 先ほど客人が素晴らしい悪魔の面をくれたぞ!! これでサタンさまの眷属にふさわしき顔となれる! ふははは!」
「うああああ!! 今ノック無しで入ってくんなぁ、ガボールぅぅぅ!」
……自室でお取り込み中でした。
のちに伯父曰く、男と合体していたという。
*家庭教師ではない。どちらかというと中年のおっさんと。
本能寺イベには間に合わなかったけど、fate版森蘭丸の小説がやっと書けました……男の娘という情報もあって小動物系にしています!
興味があったら作者ページからアクセスしてみてください!
タイトルは、『ノッブと小さき小姓』です!