始まり
目を覚ますとそこは屋上で
冷たい風に訪れる冬の予感が感じられた
なぜこの場所で寝ていたかは分からない
しかし特徴的な足音がした気がして目を覚ましたのだが
「誰もいないのか?」
返事はない
誰もいないのだろう
もう日は沈もうとしていて
空は橙色に染まっている
怒られる前に帰ろう
家に着くと姉が玄関で待っていた
「遅い!遅すぎるよ!」
「ごめん姉さん明日は早く帰るよ」
「もう...りゅーくんに何かあったのかと...」
「大丈夫心配しないでいい。屋上で寝てただけだから」
「へ?りゅーくん屋上で寝てたの?風邪引いちゃうでしょ!メッですよ」
あざとい...姉さんあざとすぎるよ?
だが可愛さのあまり少し顔が赤くなる
「明日はすぐ帰ってくるよ」
そう言って家に入る
もうリビングには姉さんの用意した料理が並んでいる
やはり姉さんの料理は美味そうだ
「りゅうにい...遅い...」
ボソボソと文句を言う妹
「ごめん...」
少し恨めしそうに見る妹に謝り席に着く
「じゃあ食べよっか。いただきます」
「「いただきます」」
やはり姉さんの料理は上手い
「姉さんは相変わらず料理が上手いな」
「そ、そうかな?ありがと...」
そう言って少し頬を染める
そうやって恥ずかしがると少し自分も恥ずかしくなる
「いや、まあ、なんだ、いつもすまないと思ってる」
「なんで?」
「いつも家事全部させてごめんって」
「え!?なんか今日のりゅーくん変...」
そう言って顔を真っ赤した
自分でもおかしいとは思っている
でも今言うべきだと思った
「姉さん...照れられるとこっちまで照れる」
少し顔が赤くなっている気がした
自分の部屋に戻る
ここ最近酷く苦しい悪夢を見ていたみたいに眠れない
寝れるようにホットミルクでも飲もうかと階段を降りていく
牛乳をコップにつぎレンジに入れ数分温める
スプーン1杯の蜂蜜を入れてかき混ぜた
すると2階から妹が降りてくる
「どうした?珍しいな」
妹は朝まで滅多に起きることはないから
不思議に思った
違和感があったとも言えるかもしれない
「兄さん...」
俯いたままとてもか細い声で呟くように喋る
「あのね...私ね...もう...」
そう言って少しずつ距離を詰めてくる
「兄さん...」
そう言って俯いていた顔を上げた
その瞳に光は宿っていなかった
とても冷たい瞳は深く奥を見通すことなどできない
「死んで?」
そう言って右手をあげると
その右手にはカッターナイフが握られていた
「おい!やめろ!どうしたんだよ」
そう言っても黙ったままこちらを向いている
「兄さん...」
そう呟くと妹はカッターナイフを放り投げた
こちらに向かって飛んでくるそれを紙一重で避け
もう一度向き直るとそこに妹はもう居なかった