世界への訪問者   作:ただの作者

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平行世界へと…②

「それはそうと」

 

議長は突然作業から目を離し獅子に目を向ける。

 

「彼女の事を聞くだけでいいんですか?」

「それは、どういう意味でしょう?」

 

笑みを浮かべて目を離さず質問する彼に獅子は少し背筋に冷ややかなものを感じながら聞き返す。

 

「聞きたいことがあるんですよね」

 

 

 


 

 

 

「なるほど、記録の閲覧すらも拒否されていたのにどうして捜索場所に指定されるのか疑問だと」

「その通りです。先ほどご存じの通り黒峰秘書にもいっておりましたがこれについてはお答え願いたい」

 

黒峰秘書にその場を任せ場所を離れた二人は自動販売機コーナーへと向かい、コーヒーとお茶を片手に会話する。

勿論人払いはしているため重要な話をしても問題はない。

 

「獅子君、日本というのは不思議なものだと思わないかな」

「…まあ確かに他の支部や本部にはないものというのはあるかもしれませんな」

「近年見つかった新事実も日本の不思議さを説明しているものだと思いませんか?」

「……まさか接続世界のSCiPの文書を指しているのですか?」

 

議長の突如発する不審な言葉に慎重になる獅子。それを気にとめる様子もなく続ける。

 

「日本の平行世界が更にまた平行世界に存在する龍王に守られるという…そんなことが書かれている文書を財団の施設で見つけることが出来るなんて考えもしませんでしたからね」

「しかし、あのSCiPはこの世界の日本支部には事実存在していません。議長、もしあなたが日本と古の神話が深く結びついていると考えて今回の捜索を行ったというのならば考えを改めて貰わなくてはなりませんよ」

 

厳しい眼差しで見つめる獅子の眼光に気づいているのかいないのか、議長は獅子に目を向けずコーヒーを少しずつ飲みながら話を聞いている。

 

「これは君達の為にもなるんですよ」

「…というと?」

「本部の上層部は日本支部を今でも疑っています。もし接続世界の日本支部のように好き勝手に動かれたらたまったものではないのですから。」

「ですがもし今回の捜索が無事遂行されればどうなるでしょうか。財団に貢献したとして信用を取り戻せるようになるかもしれません」

「議長は本当にそうお思いで?」

 

訝しげな顔で議長を見る獅子。確かにたかが一つの仕事を遂行できるだけで上層部の信頼を取り戻せるというのはなんとも不思議な話だ。

それを見た彼は少し微笑みながら話しかける。

 

「獅子さんは知らないと思いますが実はですね、この捜索は本部以外では日本支部が初めてなんですよ」

「…ほう」

「ある程度の技術力が必要なこの捜索をほぼ日本支部職員しかいない状態で無事に遂行できたら本部はどう思うでしょうか?」

「……どうなるんです?」

「本部に対して日本支部の利用価値がぐっと高まる」

「……ふむ」

 

まあ信用とは少し違うかもしれませんが、とここで議長は言葉を句切る。獅子も彼のいうことは理解できる。しかし彼は議長にこう投げかける。

 

「それはわかりますが、完全な信用とまでは行かないのではないですか?逆に反抗した際の危険性についてさらに議論される可能性もあります」

「確かに利用価値と信用は少し違うかもしれませんね、逆に君のいうとおり危険だと視られる可能性も少なからずある」

 

すっかりコーヒーを飲み終えた議長は空き缶をゴミ箱に捨て、獅子に振り返りながらこう話す。

 

「ですがストレートに言ってしまいますが支部としてならば利用価値がなければ信用はありません。ないのであれば最初から支部なんて作らず本部に集めればいいんですから」

「………」

「ですが支部は存在している。それは貴方方に利用価値があり、SCiPを収容させるに足るものだと信用されている証拠です。この関係はなくなることはないと僕は思っています」

「…議長は我々に本部としての利用価値が高まれば信用が生まれるとお考えで」

 

お茶を飲み終わってからになった紙コップをゴミ箱に捨てながら静かにそう質問する。議長はその質問に苦笑いを浮かべながら首を横に振って獅子に返す。

 

「無論そう都合良くはいかずその場しのぎにしかならないと考えてます。信用は本来長い間積み重ねて行かないといけないものですからね。とどのつまり、今回の件は本部の上層部を合理的に黙らせる方法だというだけです」

 

ここ数年ぐらい本部と日本支部の関係は冷えてますから試してみる価値はあると判断しました、と付け加えながら出て行く議長に後付けの説明がうまいことで、と心の中で苦笑しつつも獅子は後をついて行くのだった。

 

 

 

.....

 

 

 

...

 

 

 

.

 

 

ビーッ!!ビーッ!!ビーッ!!

 

「議長今すぐ戻ってきてください!!」

二人が戻ろうとした瞬間いきなり緊急を知らせる警報と緊急灯が赤く光り出し、それと同時に黒峰からの緊急連絡が入る。

「黒峰さん、現状についての報告をお願いします」

議長は気を落ち着かせ、冷静に状況を聞く。

 

「接触する平行世界が暴走を起こして空間を侵食し始めているんです!!」




結構入力したな…と思い文字数を見てみると全然入力出来ていないという…

議長がLobotomyの世界に転送された時、世界の時期は?

  • L社結成初期(カルメン登場)
  • Lobotomy社設立期
  • 本編開始期

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