世界への訪問者   作:ただの作者

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ロボトミー(原作前)
迷い込んだ世界


彼は最初、自分がどこにいるかどころかそもそも生きているのかすらわからなかった。それもそのはず目を開けると太陽に照らされたビルの屋上にたっていたのだ。

一瞬思考を止めこの現実味のない状況から目を背けようとしたが足下に散らばっていた次元間移動発生装置の残骸が現実に引き戻す。

 

(ここはどこだろうか)と生存への安堵よりも先に辺りを注意深く確認する。

ここにいてわかることは下を向き目をこらせば小さいながらも人が歩いているということがわかり、あたりはビル群だということだけ。

財団が存在するかどうかどころか現在地すらわからない現状ではこれ以上得られる情報はなかった。

 

(自分の脚で確認するほかないようですね)

彼はそう思い立つと高層ビルから路地裏へ飛び降り他の人と同じように振る舞いながら表通りに出る。歩きながら道行く人の顔を確認してみると、皆一様に同じような表情をしており何を考えているのか見て取ることができなかった。

 

ここにいる人達に一抹の不安を抱きながら当てもなく歩いているとやがて広場に辿り着く。

数人の子供や若者たちは談笑したり遊び回ったりするような場所だと彼は思っていたのだがそこに人の姿はほとんど見えない。

ベンチに座りとりあえずこの世界についてメモを取り出し記録してみる。しかし見直してみると書かれてるのは今まで見たことだけで構成されており、とりとめのない内容だった。

 

(さて、これからどうしていきますかね)

メモを見てため息をつく。彼はふと図書館に行くことを考えた。

図書館は子供の絵本から大人向けの小説があり、法律や新聞という世界情勢を知るものも沢山所蔵している。

この世界の言語は見たところ元いた世界と変わっていない。ならば本も普通に読めるはずだと見込んでいるのだ。

しかし少し懸念がある。それは都市が見たところ富裕層と貧困層での区分や扱いが厳しいといういわゆるディストピアを感じせざるをえない状況であるということだった。

 

もしこの世界が極度の監視社会で監視カメラに撮られた場合、戸籍などがない自分の存在は危険として映ってしまうのではないか。

最悪の場合捕まえるために秘密警察のような存在が追跡してくるかもしれない。そんなことになったら本格的にこの世界の国家と対立してしまう恐れが出てくる。

 

ここまで考えてふと現実改変という不穏な四文字が頭を過ぎる。

議長も現実改変を行使することができるが、その能力は一般的な現実改変とは違い過去や未来までも疑念がのこらないように変えてしまうというものだ。

しかしその場合現実に伴って改変される過去や未来は意思にそって変えることが出来ないため、現実がどう変化するか予測して行使しなければ想定外の被害もありうるという便利とはとてもいえない能力である。

次元を越えて変化することはないため基本世界では議長という役職を変更させずに過去がない現状からこの世界で重役に入るように変化させることができるというメリットもあるが使うことは財団や自分の理念に反するため使うことはできない。

 

しかし、もし本当に行き場を失ったらどうしたらいいのか――――

「ねえ。」

悪い思考から抜け出せなくなった彼はふと明るい声を聞いた。

ハッと声の方を見るとこちらを見ている二人のアジア系の男女がいた。一人は10代前半で緑の髪をしている男子で、もう一人は年齢は同じように見える茶髪のサイドテールをしている女子だった。

当たり前だが見覚えはないので他の人にでも話しかけているのだろうと辺りを見回す。

 

依然として公園には人はほとんどおらず、周りには彼を含めた3人の姿しかなかった。やっと自分に向かって話しかけられたと気がつき、話しかけた少女はそんな彼の挙動に笑いをこらえた様子で緑髮の子に「ね、やっぱり悪い人じゃないと私は思うわ」といっている声が聞こえる。

 

「何か用ですか?」ととりあえず話しかけてきた彼女にとりあえず返してみる。

「いえ、ここでは見かけない顔だったから。私には悪い人には見えなかったけど彼は気をつけた方がいいって」

というと少女は隣の男子に目を向ける。当の男子は隣で警戒したようにこちらを睨んでいた。少女はそれを諫めているのを見て議長は男子の意見に同意する。

 

「しかし彼の意見が正しいと思いますよ。見ず知らずの人に話しかけるなんて度胸があるのか無謀なのか…」

「あはは…でも結果的には悪い人じゃなかったんだからいいでしょ?」

「まだいい人だとはいえないじゃないですか。これも君を騙すための振る舞いだったら…」

「こんな子供にそこまで言う人は少なくとも悪い人じゃないわ」

とここまでいって少女は自分が座っている隣に座る。

「カルメン!」

「なに?」

「その行動は危機意識が足りないと思うぞ」

「疲れたんだしいいでしょう?」

「とはいえその男の隣に座るのは危険だ」

「危険だったらもう私は襲われてると思うけど?」

「これから襲われる可能性もあるだろ」

「もう、ジェバンニは怖がりなんだから」

「カルメンはもう少し危機感を持つべきだと思うぞ…」

という風にあまりに危機意識が低い彼女の行動を諫める男子との押し問答があったことは言うまでもないだろう。

 

 


 

 

「…それに私は生まれ持って悪い人なんて居ないと思っているの。みんな生きたいと足掻いているからこそそう思われてしまうと私は思うわ」

「性善説を貴方は提唱するわけですね」

議長は若いながらに社会の事を考えている彼女をしばらく聞いていて驚きとそうならざるを得ないのであろう環境に少し哀しみを感じながらそうまとめる。

「そうね」と小さく答える少女。

「私はこの社会をよりよい方に変えたいと思っているの。でもどうしたらいいのかわからなくて…」

「方法はいくらでもあると思いますよ。問題なのは勇気があるかどうかですね」

「そうかなぁ」

「そうですよ。貴方はまだ若いですからまだまだ探すことはできますし勇気もあると思います。」

「そうかな?」

「そうですよ」

 

というような会話を一通り終えた後、彼は図書館についてを思い出しとりあえず向かってみようと思い立つ。

「じゃあそろそろ僕は図書館にいきますか。話し相手になってくれてありがとうございました」

「え?図書館に行くの?…ついていってもいいかな?」

「え、それはありがたいですけど大丈夫なんですか?」

「予定がないから大丈夫よ。それに薄々思ってたけどこの街のことよく知らないでしょ?」

「確かにそうですけど…」

「私の話をこんなに親身になって聞いてくれる人なんてほとんどいないから、手助けさせて?」

彼は少年からの視線が鋭くなったので思うように動けなくなることを危惧しながらも少女の提案には不慣れな土地にいる現状では魅力があるという思いの狭間で葛藤することになったのだった。




これ…書き辛すぎる…!!

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