《三人称side》
優雅に微笑むアウラネルの目の前には、七海と黒夜が並び立っていた。お互いのことは嫌いなのだが、だからと言って脅威の優先度を無視するという愚かなことはしない。よって、2人が出した答えは同じだった。アウラネルを倒してから決着をつける。そのために今回限りの共闘が組まれた。
その時、全員に通信が入る。
『3人とも!話は聞かせてもらった。翼と奏は別の場所でも発生したノイズとスマッシュを対応している。それまで、仮面ライダーグリスと協力してネフシュタンの鎧を奪取してくれ!』
『ナナ姉え!キャロルとセレナ姉さんは、別の場所でノイズとスマッシュと戦っています。大丈夫だとは思いますが、気をつけてください!』
黒夜にはエルフナインから、黒夜とクリス、響には弦十郎から同じような内容の通信が届く。響とクリスは了解の意を返すが、黒夜と七海はそれどころではなかった。
「足引っ張らないでよ」
「その言葉、ひっくり返してあげる」
などと言い争っていた。その様子に呆れながら響は2人に声をかける。
「お2人とも、よろしくお願いします!」
「ん?まあ、よろしく」
「じゃ、さっさと片付けますか」
「じゃあ、まずはアタシからだな!」
クリスが言うと、小型のミサイルをアウラネルに向けて発射する。しかしアウラネルの鞭ですべて撃ち落される。だがその隙に、七海がアウラネルに接近し飛びかかりながら拳を放つ。
「はああああ!」
初撃から次々と拳打を繰り出し、両手でガードするアウラネルを押していく。その防御を崩すように蹴りを放ち、アウラネルの胴ががら空きになると、横から2人の間に割って入った黒夜が引き継ぐように拳打を浴びせる。
「ふっ!はあ!」
「ぐぅぅ!ガハッ!」
「響ちゃん!」
「はい!でやあああ!」
「ただの拳に!」
【ASGARD】
2人の間を通り抜けて、アウラネルに一気に肉薄した響が左の拳の一撃を叩き込む。しかし直前でアウラネルが発生させたバリアで、拳は防がれる。拳とバリアで激しい火花が散る中、響はアウラネルに問いかける。
「ねえ!どうしてあなたは、私たちと戦うの!」
「こんな時に何を!」
「私たちは話し合える。だから話し合おうよ!」
「私はただ与えられた命令をこなすのみ!貴女方と話し合うことなど何もない!」
「……ッ!だったらまずは、私が守りたい人たちの為に、この拳を握る!」
「何を言って……!」
「その後で、貴方とその手を握ります!」
徐々に響の拳がバリアを押していき、ダメ押しとばかりに振りかざした右の拳をバリアに向けて振り抜く。バリアは砕け、アウラネルの姿が無防備になる。だが、アウラネルもただでは転ばない。とっさに鞭を地面に叩きつけ、その衝撃で響は吹き飛ばされる。吹き上げた大量の土砂と粉塵が、またもアウラネルの視界を塞ぐ。
同じような状況で、つい先ほど不意を突かれたアウラネルは、周囲を警戒する。
「……ッ!そこですよ!」
【NIRVANA GEDON】
前方から気配を感じたアウラネルは、鞭の先端に発生させたエネルギー弾を投げつける。煙の中に見えるのは2人の人影。投げられたエネルギー弾は、その人影に向かっていき―――――
――――真正面から弾かれた。
「なんですって……!?」
「「はあああああ!!」」
《スクラップフィニッシュ!》
《ハザードフィニッシュ!》
両肩のマシンパックショルダーから、ヴァリアブルゼリーを噴射し勢いを増した七海のキックと、漆黒のオーラを纏い、まさしく死へと導く黒夜のキックが、同時にアウラネルを貫く。
「グッ…ガアアアアアアアアア!!!」
《ヤベーイ!》
アウラネルはなすすべなく吹き飛び、吹き飛んだ先でぶつかったであろう瓦礫が爆発した。地面に着地し、お互いに背中合わせになった2人は、爆発にもお互いにも目もくれず距離を取り離れる。
ある程度距離を取った2人は向かい合い、七海は左手を、黒夜は右手を胸の前に掲げる。一瞬の静寂。
「「おおおおお!!」」
同じタイミングで走りだし、振るった拳が相手の胴に同時に命中、助走によって勢いが増した拳に後ずさりのけ反る。
「えええええ!」
「なぁああ!?何やってんだお前ら!?」
いきなり戦い始めた2人に、響とクリスは盛大に驚く。だが七海と黒夜は意に介さず、拳を交わす。七海が左腕を振るうが、黒夜は右腕で防ぎ左の拳で殴り飛ばす。
「ぐぅ!」
「さあ…決着をつけようか!」
《ニンジャ!コミック!スーパーベストマッチ!》
《ガタガタゴットン! ズッタンズタン! ガタガタゴットン! ズッタンズタン!》
《Are You Ready?》
「ビルドアップ!ハア!」
《ブラックハザード!》
「……ッ!?いない……!」
ハザードライドビルダーが黒夜を挟み込み、開かれるとそこには黒夜の姿がなかった。七海は黒夜の姿が見えないことに驚き、周囲を見渡すがどこにも見えない。その時、七海の背後から煙と共に現れた黒夜が、漫画のような絵が描かれた刀「4コマ忍法刀」で背中を斬りつける。背後からの奇襲に直撃を食らった七海は、黒夜が振るう4コマ忍法刀で滅多切りにされる。
《火遁の術!火炎切り!》
「はああああ!」
「うわああああ!」
黒夜が炎を纏った4コマ忍法刀を切り上げ、七海は宙を舞い地面に叩きつけられる。灰の中の空気が全て排出され、息が詰まる。通信機からエルフナインの叫ぶ声が無ければ、気を失っていたかもしれない。
「ガハッ!」
『ナナ姉え!』
「ふ、ふふ…ふふふ」
「待ってください!」
「ん?」
笑みを浮かべながら七海に近づく黒夜の前に、両手を広げ庇うように響が立ちはだかる。
「七海ちゃんとは話し合えます!なにも戦う必要なんて……」
「……そこをどいて。立花響」
「……え?」
響の背後からかけられた声に、響が振り向くと七海がフラフラとしながらも立ち上がっていた。ダメージを受けたスーツやアーマーからは、所々スパークし火花を散らしていた。
「ここで決着をつける……」
「なんで、そこまで」
「どいててよ響ちゃん」
黒夜は響の肩を掴んで、押しのけてどかす。再び向かい合った七海と黒夜は、言葉を交わす。
「いいの?これ以上やっても勝つのは……」
「貴方は言った。私があの子たちを助けたのは、私の為だと。確かにそうかもしれない。突き詰めれば、結局は私の自己満足なんだろうね」
「ふ~ん。ようやく理解したんだ」
「……そうだね」
「……でもそれでもいい」
「は?」
「たとえ自己満足でもいい。それでもあの子たちは、こんな私のことを”姉”と慕ってくれた。……だから、私はあの子たちの”姉”であり続ける。頼りになって、困った時には何が何でも助けてあげる。そんな”姉”であるって決めたの」
七海の言葉を聞いた黒夜は、唐突にその動きを止める。まるで、それが信じられないかのように。七海はその変化に気付かず、否、気づいたが気にすることなく言葉を続ける。
「だから、何度でも立ち上がる。私が死ぬときは………あの子たちの姉でいられなくなった時だ」
そう宣言した七海は、ベルトに付けてあるホルダーからアイテムを取り出す。スクラッシュゼリーではなくフルボトルを細長くしたような形のボトル、メーターが付いた長方形のパーツが上部にくっ付いたアイテム。その名は「クラッシュブースター」。七海は長方形のパーツの右側にあるダイヤルを回す。
《チャージ!》
《オーバーグリスゥ!》
ボトル部分を下にして、スクラッシュドライバーにセットすると、七海の体をスパークが駆け巡り体を鋭い痛みが走る。
「グッ、ウウウウ、アアアアアアアアアアア!!」
「七海ちゃん!」
全身を駆け巡る痛みに、七海は絶叫する。そのあまりにも痛々しい叫びに、響は思わず声をかけてしまう。だがそれすら聞こえないのか、絶叫が周囲に響き渡る。しかし、七海の右手は確かにスクラッシュドライバーのレバーに伸びていた。
「グウウウウウウ!」
《オーバーチャージィ!》
歯を食いしばり、レバーを下ろすとクラッシュブースターのメーターの針が、左から右へと振れる。すると七海を覆うようにガラスの筒「ケミカライドグラス」が形成され、スクラッシュドライバーのプレス部分を模した「クラッシュプレス」が、ケミカライドグラスを挟むように展開される。そして、ケミカライドグラスの中がマグマのような煮えたぎった液体で満たされる。
《限界ブレイクゥ!激熱突破ァ!オーバーグリス!》
《ウラアアアアアアア!》
クラッシュプレスがケミカライドグラスを勢いよく挟み込み、粉々に破壊する。中の液体が溢れだし、ぼこぼこと沸騰した液体が爆発し七海の姿が現れる。
全身を輝く金色のアーマーが包み、その鎧には赤色の線が走り、左手にはツインブレイカ―ではなく手甲。そして装甲の至る所から蒸気が噴き出ている。その様子はまるで、暴走機関車のよう。
「……ははっ。ほんとうに、さいっこうだよ」
変わり果てた七海の姿に、響とクリスは開いた口が塞がらず、黒夜は高揚感が抑えきれなかった。七海は静かに、ただ静かに右の拳を胸に当てる。
「………仮面ライダーオーバーグリス。心火を燃やして、
囁くような、呟くようなその言葉を遮るように、蒸気が大きく噴き出した。
ついに出せた新フォーム!次話で新フォームの解説出します。
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なんか当てはまるものがある?
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もうちょっと更新頻度を早くしてほしい
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戦闘描写をもっと濃く
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キャロルと百合百合せえや
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早く話を進めてほしい
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特にないなぁ