錬金術師と心火を燃やしてみよっか?   作:神咲胡桃

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27 亀裂、走ってみよっか?

《七海side》

――――どうしよう。今の私の心境はこの一言に尽きた。

 

「さて、お姉ちゃん?今回ばかりは言い逃れなんてさせませんよ?」

 

机を挟んで私の目の前にいるセレナが、笑顔で聞いてくる。怖い、すごい怖いよセレナ?笑顔だけどさ、なんか笑って無いもん顔が。私は優しく微笑むセレナが好きなんだよ?だからさ、もっとやさしめな笑顔をはいすいませんごめんなさい許してください。真面目にやりますのでその手に持ったスラッシュライザーは置いてね?

 

現在私たちは家のリビングで、絶賛家族会議中だ。議題は私と仮面ライダービルド…宵姫黒夜との関係性について

 

「それでお姉ちゃん?あの仮面ライダービルドの変身者について、教えてもらいましょうか?まずは名前を」

「……宵姫黒夜」

「お姉ちゃんとはどんな関係で」

「…………通信聞いてたんじゃ」

「ん?」

「いえ何でもないです言わせていただきます。……姉妹だよ。血は繋がってないけど」

「ナナ姉え。という事は、その黒夜さんという人も僕たちと同じという事ですか?」

「いいや」

 

エルの質問は当たり前だ。私とあの人が姉妹だと聞いたら、まずはそう思うだろうね。私とキャロルが出会ったのは数百年前。そこからホムンクルスに記憶を転写して生きてきた。実際姉さんなら学べば、私たちのように錬金術の奥義と呼ばれるホムンクルス錬成だってできると思う。でも、それは違うと否定できる材料が私にはあった。

 

「姉さんは錬金術士じゃないと思うし、何かしらの方法で永い時を生きてきたわけでもないと思う」

「え……?でも……」

「理由は2つ。1つ目は姉さんがわざわざ私のフルボトルを解析したってところだね。あの人ならそんなことする前に、自分で作ってるはずだよ。姉さんはそういう人だ」

「じゃあ、もう1つは……?」

「それは……」

 

2つ目の理由、それを言うには私は覚悟を決めなければならない。下手をすれば、私は彼女たちに嫌われるだろうから。でもここで言わなければ、彼女たちは納得しないだろう。だから、覚悟を決めた。

 

「……それは私が、この世界で生まれた人間じゃない、から……」

 

静寂が広がる。困惑、動揺、それらが感じ取れるほどエルとセレナは狼狽えていた。それもそうだろう。ずっと一緒に居た人が、この世界の人間じゃないなんて言い出したら、誰だって動揺する。私はちらりと視線だけを動かし、セレナの隣にいる人物を盗み見る。

 

「………………」

 

視線の先に居るキャロルは、借りてきた猫のようにおとなしかった。普段なら一番に私を問い詰めるであろうかキャロルだが、今はたいへんおとなしい。きっと理由はあれだろう。姉さんに向かったキャロルを制止した時に、私を振りほどいたことだろう。ただあれは私の自業自得だから、そんな気にしてない。でもキャロルのあの狼狽えようからして、やはりキャロルは責任を感じてるらしい。とはいえ、キャロルも話は聞いてただろう。この話において一番関係あるのはキャロルだ。

 

「ナナ姉え」

「何かな、キャロル?」

「ナナ姉えの話は本当なの?」

 

俯いていた顔を上げ、余程応えているのか甘々モードの話し方で問い掛けてくるキャロル。

 

「そうだよ」

「……前から気になってた。あの時、初めて会った時から気になってたんだ。ナナ姉えがパパと一緒に住んでた家を訪ねてきた時、私はナナ姉えを見たことなかったし、パパも知らなかった。パパを殺そうとしたあの村の人間たちも同じだ。なのにナナ姉えは、まるで分かってたかのように危機を伝えに来た」

「うん……」

「ナナ姉え―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――もしかしてナナ姉えは、知ってたんじゃないの?パパが殺されそうになることを。否、パパのことだけじゃない。セレナの一件も、下手したら2年前に起きたツヴァイウィングの事件、立花響というガングニールの装者の誕生も」

「………………」

 

キャロルの言葉に、私が返せるのは沈黙のみだった。そしてそれは、この状況において肯定の意味に他ならず。沈黙が場を支配し、やがてキャロルの体が何かを我慢するように震えだす。

 

「ナナ姉えの、ばか……」

「先生!?」

 

キャロルは席は立つと、リビングを走って出て行ってしまった。セレナが追いかけて行ったから、おそらく大丈夫だろう。というより、私が行ったところでどうするというんだ。

 

「ナナ姉え」

「うん?どうしたの、エル?」

「えっと、その………」

「ごめんね。今は、気分が優れないから」

「ナナ姉え!?」

 

私に声を掛けようと、しかし必死で掛ける言葉を探すエルを見ていると、なんだかとっても惨めな気がしてその場を離れる。きっと明日もいつものように幸せな日々が訪れると、無条件で信じていた。そんなことはないと、幸せとは容易く崩れ去るものだと学んでいたはずなのに。

これは報いなのだろう。自分に都合のいいことしか見てこなかった、浅はかで愚かな自分への。

 

《セレナside》

どうしてこうなってしまったんでしょう……。部屋を飛び出た先生を追った私は、先生が自身の工房にいることを確認し、ひとまず自分の工房に戻ることにしました。さすがに今回のことは、時間をかける必要がありそうです。

それにしても、やっぱりどうしてこうなったんでしょう。思い出されるのは先ほどの家族会議。お姉ちゃんがこの世界で生まれた人間じゃない、つまり別の世界の人間であるという事実。……ですが先生が堪えているのは、おそらく……。

そこまで考えたタイミングで、私の部屋の扉がノックされました。

 

「はい」

「セレナ姉さん。エルフナインです」

「どうぞ」

 

私の返事に反応して扉が開かれ、そこにはエルさんがいました。しかしその顔が暗く沈んでおり、その原因を察することは簡単でした。ひとまず部屋の中に招き、コーヒーを淹れます。

 

「あ、ありがとうございます」

「いいえ。それで、どうしたんですか?」

「その、なんというか寂しくなって……」

 

そう言って、先ほどからフーフーと冷ましていたコーヒーに口をつけ、少しづつ話し始めました。どうやら、昨日までとても仲の良かったお2人が喧嘩される様子を見て、”日常”が壊れてしまうのではないかと怖くなったそうです。私にも分かります。私の夢は、未だにF.I.S.にいるであろう姉さんたちと、お姉ちゃんや先生、エルさんと一緒に居られるようにすることです。もし、このままお姉ちゃんと先生の仲が、修復不可能なほどに徹底的に壊れてしまえばその夢は叶わなくなります。勿論、それを黙って見てることなどしません。ですが、一体どうすればいいんでしょうか……?

 

「あ、ああ!すいません、暗い空気にしてしまって」

「気にしないでください。う~ん。それにしてもお2人のこと、どうしましょうか」

「やっぱり、このままはよくないと思います」

「私もそう思います。でもこればっかりは時間を置くしかないかと」

「そうですよね……」

 

エルさんは顔を伏せ、しょんぼりと落ち込んでしまいました。その、幼い子供の姿で純情なエルさんが落ち込んでるのを見ると、罪悪感が浮かんできます。

 

「……なんで僕には、戦う力がないんでしょうか」

「え?」

「僕はいつも、戦いに出る3人を見送ることしかできません。オペレートもしてますが、それでも時々、自分の無力さに嫌気が差してしまいます」

 

メンタルが弱っているのか、自身の胸の内を吐露しだしたエルさんに、私は胸をキュゥと締め付けられるかのような錯覚に陥ります。私は我慢できず、エルさんを抱きしめます。

 

「セレナ姉さん?」

「良いですか?エル(・・)が家にいてくれるから、私たちは安心できるんですよ?エルの存在は、私たちを確実に助けてくれています。だから、もっと自信を持ってください」

「ぁ……」

 

誰かが家にいるという事は、とても大事なことです。エルが家で私たちの帰りを待っているから、何が何でも帰ろうと頑張れるんです。その大事な役目を引き受けてくれているエルは無力なんかじゃありません。そんな風に自分を卑下なんて、私が絶対させません。

 

 

それからしばらくの間、抱き合っていた私たちはどことなく恥ずかしさを憶え、そっと離れました。ただ、エルさんのぬくもりが離れた時に声を上げそうになったのはナイショです。

 

「そ、その、ごめんなさい」

「いえ、私もいきなり抱きついたりして、ごめんなさい」

 

よくよく考えたら恥ずかしいセリフを吐いていたことに気付いた私は、顔の火照りが引かずなかなかエルさんと顔を合わせられませんでした。

 

「あの、セレナ姉さん」

「ひゃい!ななな、なんでひょう!」

「あれってもしかして」

 

エルさんに声を掛けられたことに驚いて、変な声が出てしまいました。ですがエルさんは机に置いてあるものに夢中で、聞いてなかったようです。それはともかく、エルさんの視線の先にはアタッシュケースの形のアイテムが置いてあります。

 

「前々からエルさんの手を借りていたやつです。エルさんのおかげで何とか形に出来ました!」

「すごいですね。まさかここまで形にするなんて」

「いえ、エルさんに手伝ってもらわなかったら、きっと完成までこぎつけられなかったですから」

 

そう。これの完成は私一人では無理だった。エルさんの協力があって、やっと完成したのだ。

 

(やっぱり、エルさんは無力なんかじゃないです)

 

 

《クリスside》

 

「はあ……?この世界の人間じゃないって、どういうことだよ」

「そのまんまの意味だよ」

 

私は黒夜の言葉が受け入れられず、呆然としていた。どうやら私だけでないらしく、他の奴らもみんなポカーンてしてやがる。

私たちは現在2課の司令室に居て、黒夜を問い詰めていた。特にあの七海とかいう女と抱き合ってたから、こいつはあいつら錬金術師と繋がってんじゃねえのかって話が出てる。それを聞いた黒夜は、観念したのかいろんなことを話し出した。

ただ肝心の内容が意味不明だった。曰く、この世界の人間じゃない。曰く、あの白黄七海とは血は繋がっていないが、姉妹である。曰く、家族関係になったのは親の再婚がキッカケで、白黄は再婚前の名字だという事。

 

「はいはい!黒夜さんって錬金術士なんですか?」

「いいや?私はいたって普通の人間」

「だとしたらおかしくないか?あんたの妹さん、数百年生きてんだろ?なあ、了子さん」

「ええ。奏ちゃんの言うとおり、数百年前に私は彼女と会っている」

「それは知らないよ。というか、なーちゃんがこの世界にいると気付いたのも、2年前のことが原因だしね」

「そうだったのか……」

 

というかなーちゃんってなんだよ……。いや七海とかいうやつの渾名ってのは分かるけどさ。なんというか、すごく気に入らない。あいつ、あの白黄七海に会ってから、なんだかすっごく嬉しそう。あたしと一緒に居ても、そんな顔しねぇくせによ。

 

「叔父様、どうしましょう?」

「ふむ……。よし。時に黒夜くん」

「はい?」

「何故君が、仮面ライダーグリスが白黄七海という人物であることに気付きながらも、攻撃を仕掛けていたんだ?」

 

おっさんの言うことももっともだ。妹だっつってんのに、何で見かけるたびに攻撃してたんだろうな。

 

「なーちゃんは私を越えてくれそうだったから」

「「「「「「………………」」」」」」

 

はっ?こいつ今、なんて言いやがった?

 

「私はさ、自分で言うのもなんだけど、天才なんだ。そんな私を越えてくれそうなのは、なーちゃんだけなんだよ。毎日楽しみなんだよね~!いつになったら私を越えてくれるんだろうって。そしてそのために、私も同じ立ち位置に立った。それだけだよ」

「君は………」

「そんな……。でも、だったら何も戦う必要なんてないじゃないですか!」

「響ちゃん。それは無理なんだよ」

「え?」

「よく漫画とかであるでしょう?戦うことで分かり合うみたいな。あんな感じだよ。響ちゃんだってアウラネルに言ってたじゃん。守りたい人の為に拳を握って、次はその手を握るって」

 

そんなことを笑顔で言う黒夜に、アタシを含めて周りのやつらは何も言うことができなかった。きっと飲まれてんだ、アイツの異常性に。

 

「それじゃ、私はこれで~」

「……あ!おいちょっと待て!」

 

黒夜が部屋を出て行こうとしたので、慌ててアタシは追いかける。

 

「どうしたの、クリス?」

「どうしたのじゃねえだろ!?お前、あの錬金術師の野郎が出たらまた戦いに行くつもりだろ。……なんでだよ。どうして家族と戦えんだよ!」

 

小さいころに両親を亡くした私だからこそ、こいつを止めなきゃいけないと思った。家族と戦うなんて馬鹿げたこと、絶対にやらせ――――

 

 

「うーん、どうしてねぇ……。それはねクリス。私がどうしようもなく、狂ってる(・・・・)からだよ」

 

 

ゾワァと全身の鳥肌が立った。振り向いた黒夜の顔を見た途端、私の本能が一斉に拒絶した。それほどまでに狂ってる顔(・・・・・)だった。

黒夜はクルリッと体を回し、何も言わずに歩いていく。私はそれを見届けることしかできなかった。

 

「……く…しょ…。ち…しょ…う。ちくしょう、ちくしょう……」

 

大切なやつを止めることすらできねぇ自分が情けなくて、涙が止まらねぇ。本能が拒絶するのに、さっき見たアイツの顔が頭から離れねえ。すごく不気味な笑顔で、なのにどこか泣いているように見えて、救いを求めてるようで、どうしようもなく狂ってる顔が。

その後、心配してあたしを探しに来た翼先輩と奏先輩に発見されるまで、アタシはずっと泣いていた。

 




ここにきて広がる、両陣営ごとの溝……。次の話から無印編クライマックスに向かいます!

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  • 戦闘描写をもっと濃く
  • キャロルと百合百合せえや
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