《奏side》
あたしと翼、マリアはトレーニングルームにいた。
理由は、あたしがショットライザーを使うための訓練だ。
「だぁ―――!くそッ!今日も開かねえ!」
「か、奏落ち着いて」
「翼の言う通りよ。少しは落ち着きなさい」
「でもよぉ…」
翼とマリアに宥められたあたしは、不満を表す様にベンチにドカッと座り込む。
スポーツドリンクをがぶ飲みするあたしに、マリアが問いかけてきた。
「どうしたのよ。そんなに変身できないのがイラつくの?」
「そっちもだけど、それよりイラついてることがある…。七海のことだよ」
「七海?」
「ああ」と答えながら、あたしは腰から外したショットライザーを見る。
以前なら、喜んでこいつを使いこなそうとしたはずだ。
ガングニールを纏おうとした時のように、LiNKERのような薬が必要なら迷わず打っただろうし、無茶が必要なら構わずやったはずだ。
だが不思議なことに、今はそんな気がちっとも起きない。ずっと欲しくてやまなかったライダーシステムのはずなのに。
「それで、七海がどうかしたの?」
「……普通に考えておかしいだろ?こいつは、キャロルが使ってたんだぞ。普通なら、そいつが裏切ったからって、簡単に他の誰かに使わせるか?」
「それは…彼女が言っていたように、今の私たちが持つ、敵に有効な戦力だからじゃないのか?」
「そう言われたらなんとも言えねーんだけどなー」
「……確かに、少し気になるわね」
「マリア?」
意外なことに、マリアがあたしの言葉に賛成した。
気になって話を聞くと、どうやらマリアの妹であるセレナと話した際に、七海たちのことを聞いたらしい。
セレナの話だと、七海とキャロルはすっごい仲睦まじいのだとか。
そんな風に言われる七海が、キャロルが使っていたショットライザーを簡単に他人に使わせるだろうか。
それがマリアの気になったことらしい。
「はぁ……気になっても仕方ないか」
「そうね。やっぱり七海も、キャロルの裏切りに参ってるのでしょう」
「そう言う時の為に、私たちがいる。あいつが無理をしないように、気にかけるとしよう」
翼の言葉で休憩は終わり、再びプログライズキーを開けるための訓練が始まった。
結局、今日は一度も開くことはなかった。
《セレナside》
私は今、S.O.N.G.の潜水艦の通路を歩いています。目的地はエルさんがいる部屋です。
私たちがシンフォギアの改修をするにあたって、この潜水艦内で行うというのが任せられる条件でした。
当然ですよね。私たちはお互いに協力関係とはいえ、全てを信頼することは難しいと思います。……あ、ちなみに私はお姉ちゃんの陣営としてカウントされています。
そうこうしてると、目的地に着きましたね。
「エルさん?セレナです」
「はい、どうぞ!」
エルさんから許可が入ったので、中に入ります。
中では、エルさんがいろんな書類やデータとにらめっこしていました。
「どうしたんですか?」
「はい。ライダーシステムの改修状況について、一応エルさんに確認をと思って」
私たちが勧めている『Project:DUAL』の総括者は、エルさんという事になってます。私はその補佐ですね。
ただ、忙しくなったせいか、エルさんが睡眠時間を削りだし始めました。
あまり体に響いてはいけないので、基本は私が強制的に寝させます。もちろん添い寝です。じゃないと、抜け出して続きをしそうになりますからね。
ただ、私もライダーシステムの改修を担当していて忙しいので、毎日というわけにはいきません。
おかげで最近は、私の方が寂しく…イエ、ナンデモアリマセン。
「……はい、大丈夫です」
「ありがとうございます!…エルさん、ちゃんと睡眠取れていますか?」
「も、もちろん……」
「はぁ……だったらその隈は隠してください」
「あぅ」
しょぼんと落ち込むエルさんの目の下には、うっすらと隈ができていました。
エルさんはとても愛らしい顔立ちだからか、化粧が必要ないんですよね。なので本人も化粧の仕方が分からず、隈を化粧で隠すこともできないです。
「改修の方は一段落しますし、今日は一緒に寝ますよ?」
「えっ…で、でも、改修を主導しているボクが休むわけにも……」
「だめです!」
「うう……は、はい」
まったく、困ったものです。
エルさんはこう言っていますが、実はエルさんが睡眠をとることを望んでいるのは私だけではないのです。
この改修は大掛かりなものになるので、S.O.N.G.の方からも何人か人手を借りています。この方たちから、エルさんに休むように言ってほしいと頼まれています。
エルさんは私よりもはるかに年上ですが、その見た目は完全に小さな子供。そんなエルさんが、徹夜をして改修作業に励んでいると、休もうにも休みにくいと言われたのです。しかも、隈を隠そうとしないのでそれがより分かってしまうと。
そういうわけなので、エルさんにはしっかり休んでもらいます。
「エルさん。無理のし過ぎで倒れてしまったら、みんな心配します」
「すいません……」
完全に意気消沈してしまったエルさんに、言い過ぎたかなと思った私は、お姉ちゃんのように抱きしめてみました。
「セレナさん……?」
「エルさんが頑張っているのは、みんな分かっています。だから、心配なんです。ちゃんと自分を大事にしてください」
「……ありがとう、ございます……えへへ。セレナさんの腕の中、温かい、です…」
「エルさん?」
「スゥ…スゥ…スゥ…」
エルさんの声がだんだんと小さくなっていくのを感じて、エルさんを見ると小さな寝息を立てながら目を閉じていました。
エルさんを起こさないように、部屋に備え付けてあるベッドに寝かせました。
「フフ……可愛いなぁ、エルさん」
私の目の前には、無防備な姿をさらすエルさんがいます。
悪戯心から、エルさんの柔らかいほっぺをつっつくと、もちっとした感触が返ってきました。
最後に頭を軽く撫で、私は部屋から退出しました。
「もう少し、頑張りましょうか」
あの可愛い寝顔を見ると、もう少し頑張ろうという気が湧いて出てきます。
確かに休もうにも休めないな~と考えながら、私はフルライズアニマルの改修を終わらせるのでした。
《???side》
「ん……」
「マスター、お帰りなさいませ。同調はどうでしょうか?」
「んぅ…アウラネルか。頑固なものだ。未だにオレとの同調を拒んでいる」
「計画の方はどういたしますか?」
アウラネルの問いに、キャロルは少し考え込むもすぐに答える。
「計画は予定通り進める。まずは例の装置の試運転がてら、適当に暴れる」
「御意に」
「オレは少し休む。例の装置の開発に、精神世界へのダイブ。さすがのオレも、少し疲れた」
「それでは、お休みなさいませ」
「ああ」
アウラネルが出て行ったのを確認すると、キャロルはベッドに寝転がる。
「ふぅ…まったく、ままならないものだ。……しかし、この世界のオレは一体何をしているんだ……!」
覗き見た記憶の一部を思い出したキャロルは、顔をほんのり赤くしながらうつ伏せになると枕に顔をうずめる。
「なんだなんだ!あの見てるだけで恥ずかしい行為は!?あいつらはこんなことを毎日していたのか!?」
溜まりに溜まった叫びを枕にぶつけたキャロルは仰向けになり、睡眠に入ると同時に精神体で
「少しだけ…ちょっとだけだから」と誰に言うでもない言葉を漏らしながら……。
「近く、私たちは例の装置の試運転を行うとのことです」
「アハハハッ!それは楽しそうね!」
「ウフフフ…。そうですねモネ」
キャロルが眠りに落ちた頃、アウラネルはキャロルとの会話を、ネリとモネに伝える。
そして、アウラネルはモネに自身が使っていたリモコンギア、エンジンギアを渡す。
「これは…?」
「私は例のベルトが完成したため、これを使う必要が無くなりました。故にあなたが使いなさい。すでに貴方たちは、1人で2つのギアを使えるように改良してあります」
「ウフフフ…。分かりました、お姉さま」
ネリとモネが去った後、アウラネルは窓からソラに浮かぶ月を眺めていた。
「私の存在意義は、行動原理は全てマスターの為に。マスターの幸せこそ、私の幸せ」
基本的にキャロルちゃんは救済一直線です。当たり前だよなぁ!
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キャラクター紹介
マリア・カデンツァヴナ・イヴ/アガートラーム
シンフォギア「アガートラーム」の装者。セレナの姉。
ナスターシャ教授とこの世界では綺麗なウェル博士によって、F.I.S.引いては米国から暁切歌や月読調といったレセプターチルドレンたちと、日本に亡命した。
それが原因で、暴走していたF.I.S.が解体されると同時に、すでに装者であった切歌と調の自由を守るために、国連のプロパガンダとしての側面を持つ歌手として活動することになった。
とはいえ、歌手という方法になったのは、マリアがいくつかの芸能事務所からスカウトを受けていたからというのもあり、素質自体はあったのかあっという間に大スターになった。(所属は翼と同じ、架空の事務所)
しかし、セレナのアガートラームに適合したことで、装者としても活動するようになる。
本人は妹や家族同然の切歌や調を守る力を得たことで、戦えることに喜んではいる。
装者たちの切り札、どっちが良い?(本編に関係はありません)
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イグナイト
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デュオレリック
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心象変化ギア