《三人称side》
誰もいない休憩室で、奏は椅子に座り1人項垂れていた。
何度も願った力を手に入れたにも関わらず、その力に呑まれてしまい、結局は前と同じ過ちを繰り返してしまった。
「くそ……どうしてあたしは、いつもこうなんだ……誰も守れず、逆に傷つけてしまった。あたしは……」
目の前に置いてあるショットライザーと、シューティングウルフプログライズキーを見るたびに、自責の念に駆られていく。
その時、部屋のドアが開き、エルフナインが入ってきた。
「奏さん、ここにいたんですね」
「エルフナインか……一体どうしたんだ?」
「これを渡しに来たんです」
エルフナインが奏に渡したのは、1つのプログライズキーだった。
見た目はシューティングウルフプログライズキーに似ているが、他との大きな違いは片側に付いている円状の大きなマガジンだろう。
「それは、ランペイジガトリングプログライズキー。仮面ライダーバルカンの最終フォームともいえる形態へと、姿を変えるためのプログライズキーです」
「こいつも、何か条件があるのか?」
「はい。ですが、はっきりとしたことは何も……」
「そうか……」
「あの、奏さん。あんまり落ち込まないでくださいね。あれは、誰も予想できなかったことでしょうから」
奏がアウラネルを倒し、更にはキャロルに戦いを挑んだ時、エルフナインの観測では奏のバイタルが、異常に上昇していたのだ。
エルフナインが考察するに、おそらく強い感情の発現を必要とするアサルトウルフならびにシューティングウルフが、逆に奏の感情、否、激情とも呼べる思いに耐えることができなかったことが原因だろう。
だからこそ、エルフナインは奏をフォローしたのだが、奏には気休めにもならなかった。
「すまねえ……少しの間だけ、1人にしてくれ」
「あ……」
そう言って奏は休憩室を出る。一人取り残されたエルフナインは、今のこの状況にそこはかとない不安を覚えるのだった。
その頃、S.O.N.G.保有の潜水艦の医務室では、セレナと七海の言い合う声が聞こえていた。
「別にこれくらい大丈夫だって……」
「ダメです。しっかり大人しくしておいてください」
「キューキュルルー!」
「バウ!バウ!」
「クウー!」
起き上がろうとする七海を、セレナが押しとどめる。ちなみにこれで5回目である。
フルライズアニマルたちも、七海の上に乗っかり寝させようと躍起になってる。
やがて不貞腐れたようにベッドに寝転がる七海に、セレナは苦笑をこぼす。
「はぁ……」
「先生のことや持ち去られたハザードトリガーのことが心配なのは分かりますけど、今のお姉ちゃんは怪我人ですよ?」
「それだけじゃないんだよなぁ……」
「え?」
「実は、キャロルが裏切ったすぐ後くらいから、家の地下区画に置いてあるはずの聖遺物が消えてた。持って行ったのは、おそらくキャロルだろうね。」
唐突に語られたことに、セレナは目を見開く。
それもそうだろう。七海たちの家にある聖遺物は、いずれも七海たちが集め暴走することがないように封印したものばかりだ。
特に地下区画と言えば、かなりの危険を伴う聖遺物ばかりである。
その危険性から決して近寄ってはいけないと、セレナは口を酸っぱくして言われていた。
「それに加えて、いくつかの聖遺物も持っていかれたよ。全部持っていかれなかったのは、私が万が一に備えてつけておいた特製の警備装置のおかげかな」
「そんな呑気な!?持ち去られた聖遺物はなんなんですか?」
「いろいろあるけど……一番ヤバいのは、ネフィリムかな」
「ッ!?」
完全聖遺物ネフィリム。自立行動を取ることが可能な珍しい聖遺物であり、それ故に他の聖遺物を食らうことで成長する、まさに生きた天災。
過去にF.I.S.が暴走させ、セレナが命を懸けて鎮めようとした。しかしその記憶はセレナに深いトラウマを刻み、名を聞くだけでも体が震えてしまう。
「……大丈夫、大丈夫だよ」
「はい……」
案の定、震えだしたセレナを七海は抱いて、ゆっくり頭を撫でてやる。
落ち着いてきたのか、セレナの震えが収まったことを確認し、身体を離す。
「でも、あの聖遺物を一体何に使うつもりなんでしょう?」
「さあね。でもまあ、碌でもないことに使うつもりなんでしょうけど」
七海がそう言ったのを皮切りに、しばらく沈黙が続く。
その沈黙が気まずいのか、セレナはポケットからある物を取り出す。
「お姉ちゃん。これ、残りの修理箇所やっておきました」
「おお!ありがとうセレナ!」
セレナが取り出したのは、七海が修理していたクラッシュブースター。
これで七海はオーバーグリスに変身することができる。
「今までの戦闘データから、戦闘時間も大幅に伸びたし、これなら少しは戦える」
「だとしても気をつけてくださいね?私も、ようやく仮面ライダー迅のパワーアップアイテムが完成しましたし」
「クーゥ!」
セレナの言葉を肯定するように、ライトペガサスがセレナの肩に乗り、自身に装填されていたプログライズキーを取りだす。
そのプログライズキーは、白と銀の装飾が施されており、神々しい感じが伝わる。そして、そのプログライズキーが何なのかを、七海はよく知っていた。
「ついに出来たんだ。仮面ライダー迅の強化プログライズキーにして、まったく新しいプログライズキー」
「想像上の生物のデータが記録されたプログライズキーの強化版、ムゲンライズキー。その一番目。その名もセイントペガサスムゲンライズキーです!」
「クゥ!クーゥ!」
「おめでとう、セレナ」
「えへへ……」
自慢げなセレナの頭を撫でて褒めてやると、セレナはヘニャッと表情を崩してはにかむ。
その様子に、リボルウルフとクローズドラゴンも嬉しそうに跳ねていた。
トレーニングルームでは、エルフナイン主導で装者たちの強化システムの試運転が試されていた。
「すごい……これが……」
「はい、みなさんの新たな力です」
呆然と呟いた翼に、エルフナインが答える。
かねてより改修が行われていた天羽々斬、イチイバル、アガートラームの改修がやっと終わり、それぞれの装者が試運転をした。
結果はかなりのもので、仮想敵とはいえ大型のノイズ数体をあっという間に倒して見せた。
これならば、ライダーシステムとも戦えるようになるだろう。
「ふう……何とか完成に漕ぎ着けることができたわね」
「はい。協力していただいて、ありがとうございました、了子さん。そして
「こぉの僕が協力したのですから、とぉうぜんですよぉ!」
エルフナインが隣にいる協力者にお礼を言うと、1人の男の声が微妙に上から目線で話す。
この男性の名は、ジョン・ウェイン・ウェルキンゲトリクス。
元はF.I.S.の科学者だったが、マリアたちの亡命を手引きした人物の1人でもある。
マリアたちからはドクターウェルと呼ばれている。
F.I.S.解体のゴタゴタの後処理のために、一時的に米国に戻っていたが、日本での状況を聞いて後処理も終わりかけていることから、一足早く日本に来ていたのだ。
科学者としてはかなり優秀で、こうしてシンフォギアの『Project;DUAL』にも協力していた。彼のおかげで、想定以上に早く終わったと言ってもいいだろう。
ただ、彼の性格には少々難点があり―――
「しかぁし!この程度で終わりではありませんよ。今の試運転の結果から、いくつかの矯正するポイントも見えています。英雄ならばぁ!このような些細な点を見逃すなどありえなぁい!すぐに作業に取り掛からなければ!」
どうも彼は「英雄」というものに憧れているらしく、時々テンションが爆上がりすることがある。
黙っていれば優男だというのに、このテンションが全てを台無しにしてしまう。
しかし、意外にも彼と気の合う人物もおり、それがエルフナインだった。
「そうですね。装者の皆さんのポテンシャルも、想定以上の数値です。これなら、もう少し出力を上げても……」
「ふーむ。ですが、ほんの少しでも上げすぎると、シンフォギア自体が自壊してしまうでしょうね。やはりここは……」
根っからの研究者気質のエルフナインと、優秀な研究者であるドクターウェルはどうも気が合うらしく、彼が来てからは研究話を肴に盛り上がっていることもしばしば。
ちなみに、エルフナインが楽しそうな様子を見て、焼きもちを焼いてる少女が若干一人いたりするのだが……悲しいことにエルフナインは気付いていない。
今でもあーだこーだと話し合う2人を見て、了子はため息を一つ着く。
どうやら今日も残業の様だ。
《???side》
プシュー!と音を立てて、ポッドの扉が開く。
大量の煙と共にでてきたのは、全裸状態のアウラネルだった。
「起きたか、アウラネル」
「はい、マスター。不覚を取ったこと、誠に申し訳ありませんでした。処分はいかようにも……」
「いい。オレもまさか、あそこまでのものとは思っていなかったしな。やつのデータをラーニングさせた今、お前の敵ではない。それよりも……」
奏に破壊されたことを悔やむアウラネルを適当にあしらい、キャロルはカラフルな法螺貝――完全聖遺物『ギャラルホルン』が置かれている部屋に入る。
その隣には、七海から奪ったハザードトリガーが空中に浮いており、それを囲むように魔方陣が設置されていた。
「さあ!面白いことが始まるぞ……!」
キャロルが興奮したように、両手を広げるとハザードトリガーから黒い粒子がギャラルホルンに流れ込み、ギャラルホルンから紫電が発生する。
やがて黒い粒子はすべて吸い込まれ、ギャラルホルンから黒い光が放たれ人の形を映し出していく。それは次第に色が映り、細かいパーツが描かれ、1人の人間の女性として完成した。
「ククク……ハーハッハッハッハッ!」
キャロルの笑いが部屋に響きわたり、ギャラルホルンから現れた女性が顔を上げる。
その女性は透き通った黒い瞳と、サラリとした黒髪を持っていた。
そして、上も下も右も左もわからないような場所で、鎖に繋がれた少女は、ただ淡々と愛しの少女の名を呟いていた。
「七海…七海…七海…………助けて」
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キャラクター紹介
天羽奏/仮面ライダーバルカン
姉御肌な女性で、元アイドル。元々は翼とユニットを組んでいたが、ネフシュタンの鎧の起動実験を並行していたコンサートで起きた事件によって、精神的な問題で歌が唄えなくなり、アイドルを引退した。
一応シンフォギアの聖詠と戦闘時の歌は歌える。
ガングニールの装者だったが、キャロルの裏切りによって空いた仮面ライダーバルカンの装着者になる。
彼女の感情は時と場合によって、ライダーシステムに負担を与えるほど強力。
変身ポーズは原作のバルカンに準ずる。
装者たちの切り札、どっちが良い?(本編に関係はありません)
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イグナイト
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デュオレリック
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心象変化ギア