錬金術師と心火を燃やしてみよっか?   作:神咲胡桃

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59 何があっても取り戻す

《三人称(七海)side》

 

七海、クリス、響のチームは、信じられないものを見るような目で、目の前の人物を見ていた。

 

「どうしてここにいる…宵姫黒夜ッ!」

「そんなの、蘇ったからね♪」

「さあいけ。貴様の役目を果たすと良い」

「…というわけだから、ごめんね。ハッ!」

 

形だけの詫びを入れ、黒夜はドリルクラッシャーを振るい七海に斬りかかる。

 

「このッ……貴女と言う人はぁ!」

 

七海もツインブレイカ―を振るい、黒夜を攻撃する。

ドリルクラッシャーとツインブレイカ―がぶつかり、激しい火花を散らす。

 

「よっと!」

「グゥ!」

 

拳撃の間を縫って、黒夜の蹴りが七海に突き刺さる。

七海はドリルクラッシャーをガンモードに変え、ラビットフルボトルを装填する。

そして倒れている七海に向けた時、その射線を遮るようにクリスが立ち塞がった。

 

「待てよ黒夜!お前……どうして…どうしちまったんだよッ!」

「クリス……そこをどいて」

「どかねえ!ぜったいにどかない!」

「はぁ……やれやれ」

《ボルテックブレイク!》

 

黒夜はため息と共に、呆れたように首を振る。

そして引き金を引いた。一切の躊躇いなく。

 

「え……?」

「どけええええ!……グアアアッ!!」

 

呆然とするクリスを押しのけた七海に撃ちだされた光弾が命中し、変身解除と共に地面に倒れる。

 

「お仕事かんりょ~」

「黒夜……お前」

「でやああああ!」

 

響が拳を振り上げて、黒夜に接近する。

 

「ハッ!」

「キャア!」

 

しかし、七海は回し蹴りであっけなく響を叩き落とした。

呆然としているクリスを尻目に、黒夜はキャロルへと視線を向ける。

 

「ねえ?依頼は果たしたんだ。そろそろ例の報酬、くれてもいんじゃない?」

「ふん。いいだろう。約束のものだ」

「フフッ……お帰り」

 

キャロルが黒夜に投げ渡したのは、黒夜が開発したハザードトリガー。

それを受け取った黒夜は満足そうに笑いそして、キャロルにドリルクラッシャーの銃口を(・・・・・・・・・・・・・・・・・)向けた(・・・)

 

「それは何の真似だ?」

 

いつもよりも低い声を出すキャロルに、それでも黒夜は飄々とした感じで答える。

 

「何のって…言ったでしょ。依頼は果たしたって。だから、ここからは私の好きなようにやる」

「黒夜……!」

「ハ、ハハハ……ハハハハハッ!!」

 

睨みあう2人をよそに、大きな笑い声が響いた。

大きな笑い声を上げているのは、倒れている七海だった。

 

「なーんか腑に落ちなかった。ある意味、自分の欲望に忠実な姉さんが、キャロルの下に就くのは、どうにも違和感があった。それがまさか…ハ、ハハハ……!」

「何がおかしい!」

「そーだそーだー。欲望に忠実って人聞き悪いぞー」

「これで、確信した。貴女はキャロルじゃない。あの子なら、こんな単純なミスはしない。私だから分かる。私じゃないと分からない。だけど、間違っていないと確信できる。」

「へえ……不明瞭で穴だらけで、勘で思いついたような理論だけど……なかなか悪くない」

「貴様らぁ……!」

「お前が私の知ってるキャロル本人じゃないなら、返してもらう。あの子を!」

《チャージ!》

《オーバーグリスゥ!》

 

七海はクラッシュブースターのロンダリングダイヤルを回し、スクラッシュドライバーに装填する。

 

「変身ッ!」

《オーバーチャージィ!》

 

レバーを下ろすとクラッシュブースターのメーターの針が、左から右へと振れる。すると七海を覆うようにガラスの筒「ケミカライドグラス」が形成され、スクラッシュドライバーのプレス部分を模した「クラッシュプレス」が、ケミカライドグラスを挟むように展開される。そして、ケミカライドグラスの中がマグマのような煮えたぎった液体で満たされていく。

 

《限界ブレイクゥ!激熱突破ァ!オーバーグリス!》

《ウラアアアアアアア!》

 

クラッシュプレスがケミカライドグラスを勢いよく挟み込み、粉々に破壊する。中の液体が溢れだし、ぼこぼこと沸騰した液体が爆発し七海の姿が現れる。

 

「私たちも忘れてんじゃねえぞ」

「七海ちゃん!私たちも、キャロルちゃんを助けるよ!」

「「デュアルシステム、コネクト!」」

《デュアルリンク!デュランダル》

《デュアルリンク!ネフシュタン》

 

七海と黒夜の両端に並んだ響とクリスも、左腕のコネクティブユニットのダイヤルを回し、中央のボタンを押す。

響は全身を、甲冑を思わせる鎧に身を包み、背部にはマント、両腕には†形状の装備が装着される。

クリスはもともと少なかった装甲をさらに減らし、両側に背部から伸びる巨大な一対の大型ビーム砲が装備された。

 

「度し難い……貴様らのような存在がぁ!」

「それはこっちのセリフだ!人の大切な家族を奪っておいて……ただで済むと思うな」

「ッ……トリロバイトマギアッ!」

「あいつらはあたし達に任せろ!」

「お2人はキャロルちゃんを!」

「ああ……心火を燃やして、ぶっ潰す!」

 

その言葉を皮切りに、響とクリスが同時に前に出る。

 

「こいつで、吹っ飛べぇ!」

 

クリスのビーム砲から、ピンク色のビームが放たれ、マギアたちを一瞬でスクラップに変えていく。

 

「キャロルちゃんの手を繋ぐ邪魔はさせない!」

 

響はインファイトに持ち込み、次々とマギアたちを沈めていく。

さらに響が斬りこんだおかげで、混乱状態のマギアたちに、七海と黒夜が跳躍してさらに奥深くへと突き進む。

 

「どけッ!」

「フッ!……ッ!?うぁ!」

 

マギアの一体を蹴り飛ばした黒夜に、キャロルが斬りかかった。

ドリルクラッシャーで何とか防げたものの、すぐに弾かれてしまい斬撃をその身に食らってしまう。

 

「キャロル……!」

「貴様らはやはり危険だ。ここで始末しなければならない!」

「なーちゃん。これ借りるよ」

「あ、ちょっと!」

《ニンジャ!》

《スマホ!》

《Are you Ready?》

「ビルドアップ!」

 

ニンジャボトルとスマホボトルで、トライアルフォームに変身した黒夜は四コマ忍法刀でキャロルに斬りかかる。

キャロルも迎撃の為にサウザンドジャッカーを振るうが、その攻撃は左手に装着された『ビルドパットシールド』で防ぐ。

 

「ハッ!」

「その程度でオレに勝てると思ったか!」

「悪いけど、今の私は一人じゃなくてね!」

「でやぁ!」

 

黒夜がビルドパットシールドで、キャロルを押し返した瞬間、割り込むように間に入った七海が拳撃を次々と繰り出す。

キャロルもうまい具合に不正ではいるが、さすがに防戦一方となる。

 

「くッ!甘く見るな!」

「そうはさせないっての!」

 

一瞬の隙をついてキャロルが反撃するが、その攻撃も横から差し込まれた四コマ忍法刀で防がれる。

さらに四コマ忍法刀のトリガーを3回引く。

 

《風遁の術!》

「ハアアアアッ!」

「グオオオッ!?」

《竜巻切り!》

 

四コマ忍法刀に竜巻が発生し、その竜巻ごとキャロルを弾き飛ばす。

キャロルは倒れることはなかったものの、フラフラとした足取りで体勢を立て直す。

そしてサウザンドジャッカーのレバーを戻した(・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

《ジャックライズ!》

「仮面ライダービルドのデータ、もらったぞ」

《JACKING BREAK!》

「ハア!」

 

サウザンドジャッカーを掲げると、2人を囲むようにアイコン型のエネルギー体が生成される。

エネルギー体は2人を中心に回転し竜巻が発生する。2人はその竜巻によって、天高くに打ち上げられてしまう。

 

「「ウワアアアアッ!?」」

「ちょっとちょっとー!?」

「くッ!姉さん!」

 

七海は腰のホルダーから2本のボトルを取り、黒夜に投げ渡す。

黒夜は受け取ったボトルとハザードトリガーを、ビルドドライバーにセットする。

 

《ハザードオン!》

《フェニックス!》

《ロボット!》

《スーパーベストマッチ!》

「ビルドアップ!」

《アンコントロールスイッチ!ブラックハザード!》

 

空中で逆さまの状態で、フェニックスロボハザードに変身した黒夜は、さらにビルドドライバーのレバーを回す。

七海もロンダリングダイヤルを回し、スクラッシュドライバーのレバーを下ろす。

 

《Ready Go!》

《オーバーバーストォ!》

「「ハアアアッ!!」」

「やらせるかぁ!」

 

2人が必殺技を放とうとしたの察知したキャロルは、跳躍しサウザンドジャッカーで攻撃しようとする。

黒夜は背部に『エンパイリアルウィング』、左腕にロボットアーム状の『ディストラクティブアーム』を展開してキャロルを迎え撃つ。

 

《ハザードフィニッシュ!》

「ハアアア!」

「グァアア!」

 

炎纏った体当たりによって、キャロルは打ち上げられる。

 

「ハァァ……ハアアア!」

《バーストフィニッシュ!》

「グ、グゥゥ……アアアアッ!」

 

無防備なキャロルに、七海のバーストフィニッシュが突き刺さった。

キャロルは地面に落下し、小さなクレーターを開ける。

フラフラと立ち上がり、交戦の意思は鳴りを潜める様子はない。しかし、キャロルの動きが唐突に鈍くなった。

 

「グ、アアア……まだ、まだだ。これいじょグァ!?なん、だ。これはぁ……」

「なんだ……?」

「な、ナナ姉え……今、だよ……いそいで、くぅ!」

「これは、まさか……キャロル!?」

「なるほど。支配に抗っているのか。なーちゃん、シンフォギアボトルを使って!」

 

目の前のキャロルから出てきた、聞きなれた呼び名に、七海は目の前のキャロルが知ってるキャロル(・・・・・・・・)だと確信する。

黒夜は、キャロルの様子から彼女の現状を推察し、最良の案を七海に伝える。

 

「シンフォギアボトル……これか」

 

七海は1つのボトルを取り出す。それは、黒夜によって作られたシンフォギアボトル。

シンフォギアの成分が入っているそれを、左腕のスチームパンツァーに装填する。

 

《フルボトル!》

「キャロル……」

「くそッ!やめろッ!この体の持ち主ごと殺す気か!?」

「おい!あいつ何する気だ!」

「七海ちゃん!」

 

キャロルの言葉に、マギアを殲滅した響とクリスが反応する。

七海を止めようとするも、黒夜によって遮られる。

 

「キャロル、最後の時だ」

《パンツァーブレイク!》

「豪快…無限…極致!これが私の、心火だぁッ!!!ウアアアッ!」

「グアアアアアアアアアアッ!?!?」

 

虹色のオーラを纏ったスチームパンツァーが、キャロルの胸部に命中する。

するとスチームパンツァーが命中した部分から、光が大量に漏れ出す。

 

「こ、これは……オレが、離れる。姿を、保て……」

「アアアアアアッ!!キャロルゥゥウウウウウウウウッ!!!!」

 

七海がキャロルに叩きつけていた左腕を、思いっきり引っ張る。

引かれた左手には、小さな手が繋がれていた。

 

「絶対に!私が助ける!アアアアアアア!!!」

 

七海の叫びと共に、渾身の力で小さな手を掴んだ左手が引っ張られる。

左手を引っ張り続けると、左手が掴む手の先から少しずつキャロルの姿が見えた(・・・・・・・・・・)

そして、完全にキャロルが引っ張り出され、七海は勢いよくしりもちをつく。

 

「うわッ!?」

「成功、か……」

「まじかよ……やりやがった。やりやがったぞ!あいつ!」

「やったー!」

 

黒夜は自身の目論見が成功したことに安堵の息を吐き、響とクリスは事の次第がよく分からずとも、キャロルを救い出せたことを理解し歓声を上げた。

 

「キャロル……キャロル!」

「……………ぅ、うう……ナナ、姉え?」

「良かった……良かった……ッ!」

 

変身を解除した七海がキャロルを抱きかかえ、キャロルに呼びかけると、薄っすらとキャロルが目を開ける。

無事だという事を確認した七海は、感極まりキャロルを抱きしめる。

 

「く、そぉ……依り代を奪われたか。だが、今までに行えた同調のおかげで、姿は保てる……憶えていろ!」

 

一方、キャロル……否、仮面ライダーサウザーは予想外のことが起きたことに動揺しながらも、テレポートジェムを使い撤退した。

それをキャロルは、悲しそうな表情で見届けるのだった。

 

 

 

 

 

 

「くそがぁ!あいつらぁ!」

 

隠れ家に撤退したサウザーは、手当たり次第に物へと当たり散らす。

それを少し離れた位置で見ているのは、奏と翼に倒されたはずのアウラネルだった。

 

「やつらめ!必ず許さない!世界を壊す前に、まずはあいつらから叩き潰す!!」

 

一通りの物に八つ当たりをしたサウザーは、自身を無理矢理落ち着けるように荒い呼吸を繰り返す。

その時、自動ドアが開き、意気消沈しているネリがトボトボと部屋に入ってきた。

そして、サウザーを見るやいなや、縋りついて懇願しだす。

 

「マスター!モネが、モネが壊れちゃった!お願い、モネを作って!」

「うるさいッ!そんなことどうでも良いわッ!」

「そんな……お願い!お願いします、マスター!」

「やかましいと言っているだろう!」

「グッ……う、ぁ……」

 

しつこく縋りつくネリを、サウザーは乱暴に突き飛ばす。

ネリはアウラネルのすぐ横に叩きつけられ、絶望とした表情を浮かべる。

サウザーは憎々しげにネリを見ていたが、ネリが絶望の表情を浮かべていることに気が付くと、何か思案する様子を見せる。

そして、良いことを思いついたと言わんばかりに、両手を合わせる。

 

「そうだ。おいネリ、貴様はあいつらが憎いか?」

「……あい、つら?」

「あの装者と仮面ライダーどもだ。貴様の姉を殺したのはやつらだ。どうだ?復讐、したくないか?そのための力を、貴様にやろう」

 

そう言ってキャロルは、自身の作業台の上に置いてあった黒いギアと銀色のギア(・・・・・・・・・・)を渡す。

それを受け取ったネリは、反芻するように呟く。

 

「復讐……それで、モネは」

「ああ、またお前の前に現れるかもなぁ」

「なら……やる。あいつらに復讐を」

 

ぶつぶつと同じ言葉を繰り返すネリを放って、サウザーは部屋を出る。アウラネルもその後を追う。

 

「マスター。今のは?」

「たかがアンドロイドだと思っていたが、思わぬ収穫だった。まさか、残りの黒い感情(・・・・・・・)を埋めるのがあいつとはな」

 

しばらく歩いた2人は、とある部屋の前で立ち止まる。

厳重なロックを解除し、部屋の中に入ると、そこでは10本以上の作業用アームが、2つのプログライズキー(・・・・・・・・)を制作していた。

キャロルが近くの端末を操作すると、動いていなかった4本のアームが動き、先からレーザーを2つのプログライズキーに照射する。

それらは、元々完成していた()に絵を刻んでいく。片方には荒々しいドラゴンを、もう片方にはまるで魔法使いのような帽子をかぶっている人の絵を。

 

「我々の目的は果たされている。後は、予定通りに事を進めるだけだ」

 

そう言って、サウザーは変身を解除する。

身長がサウザーよりも低く、幼女と呼べるほどに小さくなる。

銀髪と赤い瞳(・・・・・・)である点を除けば、その姿はまさしく、キャロル・マールス・ディーンハイムだった。

 

 

 




という事で、キャロルちゃんを奪還しました。

これでナナキャロの百合が書けるぜ……。

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