錬金術師と心火を燃やしてみよっか?   作:神咲胡桃

71 / 103
61 少女たちの決意

《七海side》

 

キャロルの口から別世界のキャロルの目的が語られた後、私はキャロルを抱えて医務室にやってきた。

無理してまで抜け出したせいで、再びフラフラなキャロルを休ませるためだ。

 

「気分はどう?」

「ああ、問題ない」

「そっか……」

 

私たちの間に気まずい空気が漂う。

それもそうだろう。キャロルは操られていたとはいえこちらを裏切り、私はそのキャロルにコテンパンにやられた。

ただ、このままだとなにも進展しないのは事実なので、私は行動することにした。

 

「キャロル」

「ん?なんだ…むぐっ!?」

「ん……んむ」

 

キャロルがこちらを振り向いた瞬間、その唇を奪う。

慌ててるのか私を引き剥がそうとする両手を掴み、思うが儘その唇を貪る。

 

「ん……い、一体どうした……!?」

「……その、えっと、寂しかった」

「それは……そう、だな。オレも同じだ。だから、ナナ姉え(・・・・)、きて?」

「ッ!キャロル!!…んッ……」

「ん……はむ…んんッ」

 

再びキスをした。今まで会えなかった分を補うように、さっきよりも深いキスをした。

それからどれくらい経ったのだろうか。一分か一時間か、それほど長く感じていたキスも、来訪者のノックの音が終わりを告げた。

 

 

 

そして今、私は姉さんと通路を歩いていた。

 

「……それで、話って?」

「そう怒らないでよ、なーちゃん。2人のラブラブな営みを邪魔するつもりじゃなかったんだよ~」

「はぁ……姉さん。頼むから外でそういうことを言わないでよ」

「あれ?てっきり他の皆に入ってるものかと」

「それは、今言う事でないし」

 

そんなことを話しながら、私たちはとある休憩スペースに着いた。

近くに人はいない。偶然か、それとも姉さんが手を回したか、どっちでも構わないがそれほど重要な話なのだろうか?

 

「それで?話ってのは一体「ねえなーちゃん」……何?」

「ねーちゃんはさ、救いたいと思う?平行世界のキャロルちゃんを」

「……何の話?」

 

近くの自販機で買ったコーヒーを渡してきながら、姉さんはそんな問いを投げかけてきた。

その表情にいつもの様なふざけた雰囲気はなく、いたって真面目な雰囲気が浮かんでいた。

 

「……正直、分からない。私の家族に手を出して、それでも向こうもキャロルで。正直やりずらいと思ってる」

「なーちゃんはキャロルちゃん大好きだもんね~」

「それでも私は、きっと倒すことを躊躇わないと思う」

「それはどうして?」

「私の家族に手を出したから」

 

そうだ。たとえ同じキャロルだろうと、向こうはこの世界のキャロルに、私の恋人に手を出した。

だとすれば、それはもう私の()だ。

 

「……そっか」

「ねえ、どうしてこんな質問を?」

「………知ってるんだよね。なんて言うか、ああいう感じ。世界を壊すっていうのも本気だろうし、そこに一片の躊躇もない。だけど……あれはきっと、何かを失った人間と同じだって」

「何かを……失う?」

 

平行世界のキャロルが何かを失っている……考えられるとすれば、原作でのイザークさんの死。

彼は原作では異端者として、火あぶりで殺されてしまう。

だとしても、それは今さらだ。彼女はその憎しみを糧にして、元いたはずの世界を分解しようとするのだから。

……いや、待てよ?こっちのキャロルの言うには、平行世界から来たのはキャロルの魂とも呼べる存在。なら、元いた平行世界では、キャロルはすでに死んでいる可能性もあるわけで……。

 

「ごめん。変なことを聞いたよ。まあ、なーちゃんが倒すっていうんなら、それでもいいの。それじゃあね」

「あ、うん」

 

考えていても埒が明かない。ひとまずはキャロルも交えて、じっくり考える必要がありそうだな。彼女は今回の事件の、一番の被害者だからね。

去っていく姉さんの背中を見つめながら考えをまとめた私は、残っているコーヒーを全て飲み干した。

 

 

 

《黒夜side》

 

私はなーちゃんと別れた後、特に目的もなく艦内を歩いていた。

平行世界のキャロルちゃんによって蘇った頃から、何でか胸のあたりでざわめく。

でも彼女のあの憎しみ、あれはきっと生半可なものじゃない。私にはそれが確証に近い感じで分かる。

だって、私も前世であれと同じような憎しみを持ったことがあるのだから。

 

「あ!やっと見つけたぞ!」

「ん?クリス?どうしたの」

 

柄にもなく黄昏ながら歩いていると、反対側からクリスがやってくるのが見えた。

そのまま近づいてくると、彼女は私の腕に抱き着いてきた。

 

「どこ行ってたんだよ」

「ん~?ちょっとね」

「ったく…」

「それでどうしたの?」

「う…その、だな。あの、お前とはもう会えないと思ってたから、その……」

 

クリスに用件を聞くと、彼女は分かりやすく顔を赤らめて、歯切れを悪くする。

……そういえば、この子は変なところで素直になれないんだったっけ。

クリスの様子を見て、懐かしい思いにとらわれる。

 

「そうだね。せっかくまた会えたんだ。久しぶりに、クリスの手料理が食べたいな~」

「ッ!そうか!分かった、あたしが手料理を振る舞ってやる!」

「そっかそっか、ありがとう」

 

不思議だ。こんな感情、もう持つことはないと思ってた。

前世ではなーちゃんを守ってあげられず、この世界では未練がましい思いで狂い、なーちゃんを傷つけた。

こんな温かい感情、きっと持つことなく、その権利もないんだと思っていた。

 

「ふふ…」

「……なんかお前、変わったよな」

「そう?だったらそれはきっと、クリスのおかげかな」

 

もちろん、なーちゃんたちもね。

 

「そ、そうかよ……」

 

クリスは照れたのか、そっぽを向いてしまう。そんな彼女の素振りを可愛いと感じた。

やれやれ、これじゃあなーちゃんを馬鹿に出来ないや。

 

(そういえば、そろそろ夏休みも終わりか……それまでにはけりをつけたいかな)

 

 

《奏side》

 

「あ~暇だな~」

 

あたしは今、司令室のソファでだらけきっている。

平行世界のキャロルたちの次の目的が『深海の竜宮』って場所なのは分かったけど、おそらく向こうはそれなりの準備をし直さないといけない。

そしてあたしたちも、ここのところ戦いっぱなしだったから、短いながらも休息を取ることになった。のだが……。

 

「あー暇だー」

 

休息って言われてもなぁ……特にすることもない。

なのでソファの背もたれに頭を載せていると、ソファの後ろにいた翼と緒川さんが見えた。今は翼はこっちの事件に専念するために、一時的に芸能活動を控えてるんだったか。だったら今話してるのは、別のことかな。

でも、その光景を見ていると、ふつふつとある思いが湧きあがってきた。

 

「~~♪~~♪」

「……?この歌は………ッ!?奏!?」

「おわっ!?ど、どうした翼?」

「どうしたって、奏今、歌ってた!」

 

………は?

 

「歌ってた…?あたしが……?」

「うん!」

 

……2年前に起きたコンサートでの事件。七海たちに助けられたあの事件の後、あの時亡くなった人たちを助けられなかった後悔から、あたしは歌を歌えなくなった。

そのあたしが、歌を歌った?

 

「は…ははは……」

「奏?」

「なあ翼。あたしさ、もう一度歌おうと…いや、歌いたいんだ」

「本当!?」

 

そうだ。あたしは発電所の戦いの時に、思い出したんだ。あたしの本当の夢。

それは家族を奪ったノイズへの復讐でもない、ノイズを使ってたくさんの人を殺したあいつらへの復讐ですらもない。

歌を歌いたい。いつか自衛隊の人が、あたしの歌があったから諦めなかったと言ってくれた。その時に誰かの為に歌いたいとあたしは夢見た。

その夢を、もう一度見てみたい。

 

「そういや……あいつにもお礼を言っとかないとな」

「奏、どうかしたの?」

「……いいや、なんでもない」

 

そう翼に適当に返し、ランペイジガトリングプログライズキーを取り出す。

あの時会ったやつが誰なのか、今となっちゃわからない。だから、お礼も言えないし、穴に突き落としやがった礼もできない。

だから、この夢を叶えるところを、”あいつ”に見せてやんねえとな!

 

 

《セレナside》

 

《セインティングクロニクル!》

「ハアアアッ!」

『敵撃破、終了だ』

「ハァ…ハァ…」

 

大型のノイズを模した仮想敵を倒すと、了子さんの声と共に周りの風景がトレーニングルームに戻ります。

変身を解除して息を整えていると、マリア姉さんと暁さんと月読さんが入ってきました。

 

「お疲れ様デスよ!」

「…はいこれ、タオル」

「ありがとうございます」

「それにしても、急に訓練したいなんてどうしたの?」

 

月読さんから受け取ったタオルで汗を拭いていると、マリア姉さんが不思議そうな表情で聞いてきました。

 

「単純にムゲンライズキーに慣れておきたいというのもありますし、それにもっと強くなりたいんです」

「今のままでもセレナは十分強いデスよ?」

 

暁さんの言葉に、私は自分の顔が曖昧な笑みになるのを感じました。

確かにムゲンライズキーは強いです。しかし、それでも勝てるかと言われれば、確証はありません。

私は守りたいんです。大切な家族を、みんなで笑い合える未来を。

 

「ふぅ……セレナ、貴女の気持ちは分かる。でも、だからといって無理をするものではないわ。貴女には私たちがついてるもの」

「…うん。セレナが無理して倒れちゃったら、私たちも悲しい」

「そうデスよ。もし何かあったら、私たちを頼ってほしいデス!」

 

ああ……私の家族は、こういう人たちだ。誰かを思いやれて、誰かの助けになることを躊躇わない人たち。

だから私は、この愛しい家族を守りたい。

 

「そうですね。では、何かあった時は頼らせてもらいますね」

「ふふ……当たり前よ。私はセレナのお姉ちゃんなんだから」

 

そう得意げに言って、姉さんは私の頭を撫でる。

思えば、姉さんに頭を撫でてもらうのも、久しぶりな気がします。

発電所の戦いの時、私の目の前に現れた男の人が言った通り、私にはこうして気づかせてくれる人たちがいます。

あの男の人……あの人はきっと、ここじゃない、どこかの世界の仮面ライダー迅だと思います。そしてあの人も、何かを守るために戦っているんでしょう。

守りたいものを守る。それはきっと難しいことかもしれないけど、私は私に出来ることで守っていきます。

 

 





気に入っていただけたらお気に入り登録、高評価お願いします!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。