錬金術師と心火を燃やしてみよっか?   作:神咲胡桃

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62 反撃の狼煙

《三人称side》

 

「こちらマリア。()()()、応答してちょうだい」

『俺だ、そちらは大丈夫か?』

「ええ。今のところはね。至って平和よ」

 

マリアはそう言って暇そうにしている切歌と調を見る。

 

『とはいえ、過去のデータを参照した場合、最速ならばもうすぐ襲撃が来るはずだ』

「分かっているわ。こっちも警戒を怠らないよ」

 

マリアがそう言って通信していると、突然爆発音が響いた。

 

「ッ!?来たわ!」

『ああ!こちらでも確認した!頼んだぞ!』

「了解!…切歌!調!セレナ!」

「「「はい!」」(デース!)」

 

マリアは調()()()()()()()()を引き連れ、爆発が起こった場所に向かう。

彼女たちがいるのは、海底の奥底にある深海の竜宮(アビス)である。

この場所には日本政府の所持している聖遺物が保管されており、マリアたちの目的はここの聖遺物を平行世界のキャロルが持つ完全聖遺物ネフィリムに食べさせないようにすることである。

 

「いたデス!」

「アハハハ…やっぱり来た」

「襲撃者はネリだけ?ネフィリムは!?」

「知らないよ。私の任務はここで手当たり次第に暴れることだけ」

「…なんだか、様子が変?」

「行け、マギア」

 

マリアたちが現場に着くと、そこにはいつもの無邪気さが欠片も見当たらないネリがいた。

ネリがテレポートジェムに似たクリスタルを地面に叩きつけて割ると、魔方陣が展開されその上にマギアが転移される。

しかし、出てきたマギアはトリロバイトマギアではなかった。

 

「なんデスかこいつら!?」

「ここで新型のマギアってことね……」

 

出てきたマギアは3体。

一体はカマキリのような見た目に両腕にある鎌が特徴のベローサマギア。

もう一体はカエルのような見た目のガエルマギア。

最後の一体は頭部と胸部がマンモスのような見た目のマンモスマギア。

 

「ですが、おそらくネフィリムも連れているはずです。暁さん、月読さん。ここは私と姉さんで抑えます!」

「そうね。2人はその間にいるであろうネフィリムを探して!」

「分かったデス!」

「…任された!」

「アハハハ…行かせると思ってるの!」

「押しとおります!」

《インフェルノウィング!》

 

スラッシュライザーのバックルを腰に巻いたセレナは、バーニングファルコンプログライズキーを起動する。

マリア、切歌、調も聖詠を紡ぎ、シンフォギアを纏う。

 

《バーンライズ!》

《Kamen Rider…Kamen Rider…》

「Seilien coffin airget-lamh tron」

「Various shul shagana tron」

「Zeios igalima raizen tron」

「変身ッ!」

《スラッシュライズ》

《バーニングファルコン!》

《The strongest wings bearing the fire of hell!》

 

仮面ライダー迅に変身したセレナとアガートラームを纏ったマリアが、突撃してきた3体のマギアを抑え込む。

 

「今です!」

「行きなさい2人とも!」

「分かったデス!」

「…気を付けて!」

「行かれたか……まあ、いいや」

「フッ!でやあ!」

「セイ!ヤアアッ!」

 

去っていく切歌と調を見ながらも、ネリは気だるそうにそれを見送るのみ。

ベローサマギアとマンモスマギアを斬り払ったセレナは、そのネリの様子に違和感を感じた。

 

「貴女…本当にネリさん、ですか?」

「ええ、そうよ。あなた達への復讐に燃えている、ネリだ!」

「復讐……?」

『人類、絶滅』

「ッ!くっ!」

 

ネリの放った「復讐」の言葉が引っ掛かったセレナだったが、ベローサマギアの攻撃に意識を引き戻される。

そのままベローサマギアの鎌を捌いていると、ガエルマギアを相手していたマリアと背中がぶつかる。

 

「やっぱり、トリロバイトマギアよりも強いわね……」

「それでも、ここで負けるわけにはいきません。私たちを信用してくれている皆さんの為にも!」

 

気合の声と共に、スラッシュライザーをバックルに戻したセレナは、セインティングペガサスムゲンライズキーを取り出し起動する。

 

《ブレイブ!》

《ムゲンライズ!》

《Kamen Rider…Kamen Rider…》

『人間、殲滅!…ガッ!』

 

ムゲンライズキーをスラッシュライザーに装填し、バックルから外して掲げる。

それと同じタイミングで、マギアが3体同時に仕掛けた攻撃が、セレナとマリアの周囲に現れた12本のソードクリスタに弾かれる。

さらに13本の光の柱によって編まれた、ペガサス型のファントムモデルがセレナをその翼で包む。

 

《スラッシュライズ!》

《Hope of legend! セインティングペガサス!》

The sword that pays the darkness is the proof of the king(闇を払う剣は王の証)

 

セインティングペガサスにフォームチェンジしたセレナは、ライトペガサスが合体したスラッシュライザーを振るって、ベローサマギアとマンモスマギアを吹き飛ばす。

 

『人間…殲滅!』

「ハッ!セヤアア!」

 

ベローサマギアの鎌を弾き、返す刀で斬りつけ蹴り飛ばす。

 

『撲滅!』

「フッ!」

 

その隙を狙ったのか、マンモスマギアが突進してくるが、セレナはマントをはためかせながら振り返り、マンモスマギアを殴り飛ばす。

 

「人間は破壊ぃい!」

「ああもう!うっとおしいわね!」

 

ガエルマギアは小型のカエル型爆弾「コガエルボマー」を、マリアに向けて大量に放つ。

マリアも、短剣を大量に展開して迎え撃つが、コガエルボマーが小さすぎて全てを破壊できないため、回避を余儀なくされてしまう。

 

「これなら!」

【SILVER†GOSPEL】

 

マリアは生成した操舵剣を振るって、一気にコガエルボマーを撃ち落としていく。

しかしその隙を狙ったガエルマギアが飛びかかり、マリアは反応が遅れてしまう。

 

「なッ!?しまッ!」

「姉さん!」

 

しかし、直前でセレナが飛ばしたソードクリスタが間に合い、ガエルマギアを弾き飛ばした。

 

「大丈夫ですか!?」

「ええ、助かったわ」

「アハハハ…ああ、ああ……何でまだやられないの?」

「ネリさん……」

「貴女たちがやられてくれないとモネが……モネが帰ってこないじゃないッ!!」

「それっていったいどういう……」

「もう良い……私がやる」

 

ネリが取り出したのは2丁のネビュラスチームガン。

片方に黒いギア、もう片方に銀色のギアが装填されている。

 

《ギアカイザー!》

《ギアブロス!》

《ファンキーマッチ》

「爆動……ぐ、グアアアアアアッ!!」

 

2丁のネビュラスチームガンの銃口から歯車型のエネルギー体が飛び出し、ネリの身体に張り付く。

強化スーツを纏っていないため、直でエネルギー体が張り付きネリは苦悶の声を上げる。

 

《フィーバー!》

《ミスマッチ》

「アアアアアア……ヘルカイザー…爆誕」

 

やがてネリの全身に線が走り、ようやくその身がスーツに包まれる。

全身の至る所に黒色や銀色の歯車型のパーツが装着され、その姿はバイカイザーやヘルブロスよりも禍々しい姿になっている。

『ヘルカイザー』……地獄より這い上がりし復讐に駆られた悪魔が、ここに誕生した。

 

 

《七海side》

 

私はとある施設の一室で、全身に吸盤やらコードやらを引っ付けてベッドに寝そべっていた。

 

「……大丈夫かなぁ。()()()は」

「信じるしかありません。それよりも、こちらもそろそろ作業を始めます」

「うん、よろしく」

 

エルフナインが退出し、目の前にあるモニターに了子さんの顔が映る。

 

『準備はいいかしら?』

「うん。お願いします」

「それでは、今から()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

事の次第は、3日前に遡る。

 

 

―――3日前。

 

「みんなに提案したいことがある」

 

その日、姉さんが装者たちや主な研究者を司令室に集めた。

 

「提案?」

「いったい何を言うつもりだ?」

 

皆からも疑問の声が飛ぶ中、姉さんはその提案内容を言った。

 

「私の提案は、なーちゃん…仮面ライダーグリスの強化形態を作ること」

「「「「「「「「「「「………ええッ!?」」」」」」」」」」」

 

その提案はまさに、私を含めた全員にとって寝耳に水だった。

驚愕で固まる私たちをよそに、姉さんはこの提案の理由を話した。

 

「私がまだ蘇ったばかりの時、彼女たちの拠点で何かを作っているのを見た」

「何か、とは……?」

「おそらくプログライズキー。それも、サウザーの強化用の」

「それって、不味いんじゃねえか!」

「うん、不味い。サウザーへの対策として作った新兵装は、全て過去のデータを基に作ったに過ぎない。もし、今までを超える者を作ってきたら……」

「対応は出来ない、か」

「だからこそのこの提案だよ。現状、この中で一番に戦闘能力が高いのはなーちゃんだ。だから、グリスを強化する」

「でも、今から考えるの?そんなこと、さすがに間に合わないわよ?」

「大丈夫」

 

そう言って、姉さんは手元の端末を操作して、あるデータをみんなに見せる。

 

「これは?」

「私が一昨日から考えていた、グリスの強化案」

「これだけの量を、たったの2日程度で考えたというのか!?」

「それで!どんな内容なの?」

「既存のライダーシステムに、錬金術、シンフォギアシステムを使って、なーちゃんだけに合わせたものを作る」

「へえ……なるほどな。こちらには過去のものも含めて、膨大な量のデータがある。新しいものを一から作るより、それらを組み合わせて強化を図るという事か」

 

了子さんのしゃべり方が、途中から普段とは違うものになった。この喋り方はフィーネとしてのもので、この時はかなり興奮しているという事だ。

ただ、話を聞く限りそう簡単にはいかないらしい。

 

「ただ、2つほど困ったことがある」

「それはなんだ?」

「まず一つ目。簡単に言うと、さっき言った3つのまったく違う技術体系を一つにするには、それぞれを同じ様に数値化する必要があるんだけど……」

「もしかして、それができないの……?」

 

マリアの言葉に、姉さんは首を横に振り1つのデータを新たに立ち上げる。

 

「いや、それは問題ない。そっちはすでに私がしておいた。やろうと思えば一日もかからない。問題なのは機材の方。この数値化を処理できるだけの機材はそうそうない」

「すでに数値化の理論は出来ているとは……つくづく化け物だな」

「そうなのデスか?」

「ああ、私だとしても少なくとも一年はかかる」

「僕もすぐには出来ないですねぇ。というより、これは錬金術を理解しなければならないので、ボクだと10年…いや、下手すれば寿命が足りないでしょう」

 

あのフィーネやドクターウェルでさえも難しいという作業を、2日程度で済ませるという明らかにおかしい姉さんに皆が唖然とする。

私も驚いたけど、それは前世で慣れたんだよなぁ。

 

「それで姉さん。2つ目は?」

「うん。2つ目は、確実性がないことが原因。実はある程度の理論は組み立てたとはいえ、それでも急造したものに過ぎない。だから、本当にうまくいくかは分からない」

「確率は?」

「五分五分……と言えたらいいけど、本当は大目に見て成功率四割…最悪1割以下」

「失敗したらどうなるの?」

「それすらも分からない。」

「ふむ……七海くん、君はどう思う」

 

不安要素を聞いた弦十郎さんは、私の方を向いて聞いてきた。

 

「この案に一番関係あるのは君だ。だから、君が決めると良い」

 

相変わらず男前な人だ。

……成功するかも分からず、失敗すれば何があるか分からない。はっきり言ってする必要はない。

だけど私には、ある種の予感がしていた。もし敵が平行世界のキャロルなら、一度負けた相手に同じように挑むか?キャロルがなんらかの対策をしていても不思議ではない。

なら私が取る選択は――――。

 

「………私は、案に乗ってみてもいいと思う」

「そうか」

「で、でももし何かあったら大変だよ!」

「そうデスよ!それに私たちだって強くなったデス!」

「ありがとう、響、切歌ちゃん。でもやっぱり、保険は必要だと思う」

 

私がそう言うと、響と切歌は俯いてしまった。

申し訳ない気持ちでいっぱいだが、やはりこの予感とやらが気になってしょうがない。

 

「ならば、後は黒夜くんの言っていた問題点だけだな。2つ目は仕方ないとして……一つ目の方だが」

「司令」

「どうした、緒川」

「松代にあるあそこなら、なんとかできるのでは……」

「ふむ……風鳴機関か。確かにあそこには、前大戦時の聖遺物研究に使われていた機材が残っていたな」

「風鳴機関……?あの、それってなn「それ、詳しく教えて。正確には機材の大きさが知りたい」……あぅ」

「あ、ああ。おそらくかなり巨大の物だろう。風鳴機関が2課に変わる際も、スペックは良かったがサイズのせいでもってこれなかったくらいだからな。今よりも小型化の技術が乏しかったこともあって、なおさらだろう」

「なら、それを改造すればかなりの容量になるはず……ねえ、その使用許可を取れない?」

「許可か……だがあそこは親父に許可を取らなければならん。ましてや、機材の改造など……」

 

姉さんの要求に、弦十郎さんが苦い顔をする。

……ああ、確か訃堂のお爺さんは息子である弦十郎さんや、翼のお父さんである八紘さんに忌避感を持たれてるんだったっけか。

話してみれば普通の爺バカなんだけどね。仕方ない。

 

「ちょっと待ってて」

 

私は断りを入れて、廊下に出るとある人に電話をする。

そして通話相手に用件を伝えて司令室に戻ると、正面の巨大なモニターにある人物が映っていた。

 

『話は聞かせてもらった』

「親父だとぉ!?」

「お爺様!?」

『風鳴帰還の施設、ならびにその機材の改造だったか?いいだろう。この儂が許可しよう』

「なッ!?どうして親父がその事を知っている!」

「まさか……」

「戻りました……お久しぶりですね。訃堂のお爺さん」

「前々からもしやとは思っていたが、やはり君は親父と知り合いだったのか?」

「まあ、そうですね。さっき電話して、許可を出してもらいました」

『そういう事だ』

「親父…あんたが何を考えているかは知らないが、今はその許可をありがたく頂こう」

 

いや(何も考えて)ないです。

 

『ふん。弦、貴様こそ、無様な姿を見せてみろ。お前にはそれなりの責任が背負わされているのだ。簡単に無茶な請け負いをしていると、いつか痛い目を見るぞ』

 

あんたもだよ。そんな言い方するから嫌われるんだって。本当は応援してるくせに。

 

「なあ翼先輩。あの2人って親子なんだろ?いつもあんな風に仲が悪いのか?」

「ああ、基本的にあんな風に腹の探り合いをするぐらいにはな」

「……でも、なんて言うか…そこまで険悪でもないような気も?」

 

響、良い勘してるね。勉強はできないけど。

そして訃堂のお爺さんからの通信も切れ、私たちは部隊を二つに分けることになった。

1つは予定通り、深淵の竜宮(アビス)で警戒する部隊。これは元FIS組の4人が。

そしてもう一つは、風鳴機関の施設がある松代に行き、強化アイテムを制作中の警護をする方に残りが。

 

なぜ松代の方にも部隊を残すかというと、どうも施設はすぐに使うことが難しく、さっき言っていた機材の改造など含めた準備にどうも2,3日かかるらしい。

さらに、大規模な機材の搬入となると敵側にも動きを察知される可能性がある。向こうがこちらの新兵装の対抗策を作っているなら、邪魔はしたいはずだ。そのため、こちらにも護衛を残すらしい。

そして、おそらくそれに来るのは平行世界のキャロルである可能性が高い。これは他でもないキャロルの弁だ。

 

 

そして準備が終わり、作業が開始した。

 

 

 




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