錬金術師と心火を燃やしてみよっか?   作:神咲胡桃

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本日2本目です。前話を見てない人は、先にそちらを見ることを推奨します。


76 繋がるココロ

《七海side》

 

目を開けるとそこは、白い空間だった。

 

「ここは……?」

「気づいた?ナナ姉え」

「……キャロル」

 

背後からかけられた声に振り向くと、いつもより落ち着いた…どちらかというと家にいる時のキャロルがいた。

 

「……ここはサウザー…平行世界の()の精神世界」

「そっか。じゃあ、成功したんだ」

 

さっきの必殺技は、サウザーを倒すために放ったわけじゃない。

響のガングニールの特性『結び繋ぐ力』。私は()()()()の為、この特性を使って精神世界に干渉することにした。

そして結果はこの通り、平行世界のキャロルの精神世界への干渉に成功した。

 

「ナナ姉え……こっち」

「う、うん」

 

キャロルに連れられ、何もない白いこの空間をただただ歩く。

ちなみに、ここにキャロルがいる理由は簡単だ。

平行世界のキャロルに一度操られていたことで、彼女はキャロルの記憶を見た。しかし逆に、この世界のキャロルも平行世界のキャロルの記憶をある程度覗いている。

つまり道案内を頼んだのだ。

 

「着いたよ」

 

そう言ってキャロルが立ち止った場所には、1つの扉だけがあった。

困惑する私に構わず、キャロルは勝手知ったる感じでその扉を開け、中に入っていく。

私も慌てて追いかけて中に入る。

 

『異端者を殺せぇ!』

『火あぶりの刑だぁ!』

 

扉の先には、狂気の光景が映っていた。

広場と思われる場所には大量の薪が組まれており、その周囲には村人らしき人たちがおり、口をそろえて「異端者」だの「火あぶりの刑」だのと叫ぶ。

そして、組まれた薪の中心に立つ丸太には、誰かが括りつけられている。

その人物を、私は知っていた。

 

「イザークさん……」

 

キャロル・マールス・ディーンハイムの父、そして私の恩人でもあるイザーク・マールス・ディーンハイムだった。

だけど私にこんな記憶はない。この世界のイザークさんは病死だったのだから。

なら誰の記憶か?そんなこと、考えるまでもない。

 

『パパぁ!パパー!』

 

イザークさんを囲む人たちとは違う声が聞こえて隣を見る。

そこには、村人たちに取り押さえられているキャロルがいた。

 

『火をつけろぉ!』

『パパぁ!パパぁ!』

『キャロル……世界を識るんだ。それが、キャロルの………』

『パパぁ―――!』

「ナナ姉え」

 

涙を零して泣き叫ぶキャロルの反対側から聞こえた、キャロルの声に視線を向ければもう一人のキャロル――この世界のキャロルがいた。

 

「こっち」

「……うん」

『いや…いやぁぁぁあああああ!』

 

背中にキャロルの慟哭を聞きながら、私はまた()をくぐった。

 

『これで動くはずだ。目覚めろ』

『………うん?ここはどこですか~?』

 

今度はお城のような場所で、玉座らしき場所に()()()()は座っていた。

その目の前には、ゴスロリ衣装の少女が直立不動で立っていた。

その少女の関節は、人形のような形をしていた。

 

『おい』

『ん?あっ!マスターじゃありませんか~。オートスコアラータイプ01と申します。よろしくお願いしますね~』

『ああ。オレの手足となり、存分に働いてもらうぞ。手始めに……そうだな。まずは名称をつけてやろう』

『名称……名前ですか?』

『そうだ。タイプ01だと長いからな。そうだな……よし。お前はガリィだ』

「ナナ姉え。次」

 

そのままキャロルに連れられ、いろんな記憶を見た。

研究に没頭している記憶。最初は自由気ままだった、ガリィという人形に頭を悩ませている記憶。父親の記憶を思い出して、人知れず涙を流す記憶。ファラ、レイアという人形を起動した記憶。立花響との邂逅の記憶。ミカという人形を起動した記憶。エクスドライブを発動させた装者たちと戦い、敗北した記憶。瀕死のエルフナインに、自らの身体を渡した記憶。

そして………

 

『ああ、憎い…にくい…ニクイ…』

『なぜ、この世界のオレはあんなに幸せそうにしている。オレは、こんなにも憎しみで震えているのに』

『なぜ、誰もオレを見つけてくれない…?なぜ、誰もオレを受け止めてくれない…?』

『ならばオレは、憎しみの化身となろう。そうすればきっと―――』

 

「ここが最後」

 

そう言ってキャロルが視線を向ける扉。しかし一向に開けようとせず、私の顔を見つめてくる。

自分で開けろという事か。

 

「……1つだけ聞かせて」

「……何?」

「ナナ姉えは、どうしたい?」

 

それはあまりにも、複雑な感情が混ざっていた。

同情、悲しみ、恐怖、不安……一時的とはいえ、平行世界のキャロルと同調しかけたからこそ、感じるものがあるのだろう。

でも、私の答えは既に決まっている。

 

「私がするべきことは、いつだって変らない」

 

そう言って、扉を開ける。

扉の先は、またあの白い空間だった。

 

「ひっく……ひっく……」

 

違うとすれば、こうして泣き声がするという事だろうか。

私は立ち止まることなく、白い空間を歩く。キャロルはついてきていない。

 

 

「ひっく……いやだ。いかないで……」

 

 

……ああ。

 

 

「1人にしないで……1人は怖いよぉ……」

 

 

…………ああ。

 

 

「……誰か私を………助けて……」

 

 

…………そうだったんだね。

 

 

歩いていた私は、足を止める。そして目の前には―――

 

 

 

「貴女はこうやって、ずっと助けを求めてたんだね……………()()()()

 

 

 

 

 

―――膝を抱えて涙を流す、1人の無垢な少女(平行世界のキャロル)がいた。

 

 

 

 

「……ごめんね。気付いてあげられなくて」

 

少女の傍に座り、伏せている頭を優しく撫でる。

いつの間にか、その涙は止まっていた。

エルフナインよりもキャロルによく似た顔。違うとすれば鈍く光る銀髪と紅い瞳だろうか。

僅かながらに身を寄せてくるキャロルを見つめながら、最後に見た記憶を思い出す。

 

 

『ならばオレは、憎しみの化身となろう。そうすればきっと―――オレを見つけてくれる』

 

 

それは少女の悲しい祈り。

全ての記憶を焼却しながらも、その断片が残した切なる願い。

家族を殺され、託された命題だけを頼りに生きてきた。それでも…いや、だからこそこの子は、”愛”に飢えていたのだろう。

しかしその感情は、記憶は、全てが燃え尽きてしまった。

その時、この子にとって転機が訪れた。

直前に行われていた戦いで、完全聖遺物ギャラルホルンが人知れず起動。

()()()()()()()()()()()()()がギャラルホルンを通り、この世界にやってきた。

 

「……だけど、平行世界に来たことである現象が起こったの」

 

私の考えを引き継ぐように、いつの間にか近くにいたこの世界のキャロルが語りだす。

 

「元が同質の存在であろうと、記憶の元の持ち主であるキャロルがいない世界に来たことで、存在を保つために記憶に自我が生まれた。それが、そこに居る私」

「……オレに芽生えた自我の元は、オレの記憶。しかしこの世界のオレは、すでに幸せな環境で、幸せそうに笑っていた」

「だからあなたは、それを憎んだ。その結果、自身を憎しみの感情が集合したことで生まれた存在だと()()()()()。だけど、その本質は全くの別。愛されたい、見てもらいたいと言う、寂しさの記憶、感情の集合体。だからこそ、ギャラルホルンを通ってこの世界に来るまで、形を保つことができた。」

 

抱いていた憎しみよりも強い感情だったから。

私の言葉に、平行世界のキャロルは甘えるように、頭を私の肩に載せる。

 

「だけど、もうすぐオレの存在も消える。だって、お前がオレを見つけてくれたから」

 

気づけば、平行世界のキャロルの身体が、光となって消えかけていた。

所謂、未練を叶えて成仏しようとしていると言ったところだろうか。

 

「最後にこうやって、オレを見てくれる人がいた。それでもう、十分だ」

「……本当に、そう思ってるの?」

「え……?」

 

私の問いかけに、平行世界のキャロルは不思議そうな表情を見せる。

私は彼女の肩を優しく掴み向き合う。

 

「私がやりたかったことは……家族を守ることじゃない」

「……………」

「私がやりたかったのはね、キャロルを救うこと」

「なにを……言って……」

 

そうだ。私はキャロルを救うために、この世界にやってきた。

悲しい運命を背負ったこの少女に、別の運命を見せることができたなら、それはきっと、素晴らしいことだと思ったから。

独善的で、偽善的で、傲慢で、それでも成し遂げたいと思ったから、私はここにいる。

 

「キャロル、私は貴女を離さない。貴女を……………私の物にする」

「~~ッ!?!?!?!?」

 

私の宣言に、平行世界のキャロルは顔を真っ赤に染める。

うん。すごくかわいい。

 

「ば、バカッ!そんなこと、急に言われたって……!?」

「返事は聞かない。拒否権だってない。貴女は私が幸せにする。愛して愛して、愛しまくって、自分は誰にも見られていないなんて馬鹿なこと、考えさせないようにする」

「う、あ………」

 

そのためには、やるべきこと…というより、やってもらわなければならないことがある。

 

「キャロル」

「うん」

 

この世界のキャロルを呼び、彼女に近くに来てもらう。

彼女は近づくやいなや、平行世界のキャロルの頬に手を添え、そのまま唇を奪う―――

 

 

「―――って、ちょっと待てッ!?」

 

 

……ことは出来ずにふり払われた。

 

「もう、騒がないで」

「いや騒ぐだろッ!?何いきなり…き、キスをしようと」

「貴女は肉体がない。だから、私の肉体を依り代にして、この世界に留まらせる。幸い、貴女の存在は個として確立されている。だから、私の精神と融合してしまう事もないから、大丈夫」

「そ、そうはいってもだな……自分とキスするのはいささか……」

「今日の楽しみと称して、私のナナ姉えとのスキンシップの記憶を見てたくせに、今更何を言ってるの」

「え、そうなの?」

「そ、それは言うなぁああああッ!!」

「私とナナ姉えがキスしてる記憶を見ては、顔を真っ赤にしてチラチラ見てたくせに……」

「やーめーろぉおおおお!!」

「ん……」

「んん……!?」

 

顔を振って恥ずかしがる平行世界のキャロルの隙を突き、この世界のキャロルがキスをする。

これによって2人の間でパスが繋がれるから、平行世界のキャロルが消えることはないはずだ。

 

「うう……もうお嫁に行けない」

「ナナ姉えが貰ってくれる……というか奪ってくれるから大丈夫」

「どこがだよッ!」

「それに私はもうナナ姉えの物だし、ナナ姉えは私の物だよ。だから、ナナ姉えの物になる予定の貴方は、私の物になるわけでもある。何も問題はないよ」

「問題ありすぎだろッ!」

「……ぷっ、あはははははっ!」

 

2人の掛け合いが面白すぎて、笑ってしまった。

突然笑いだした私に、2人は少しの間ポカンとしていたけど、やがて2人も笑い出した。

ああ……これが私が見たかった光景だ。

 

「ってナナ姉え、消えかけてる」

「……え?ってうわっ。本当だ!」

「おそらく時間が限界なのだろう。そうだ。最後に、1ついいか?」

 

現実に戻ろうとした時、平行世界のキャロルがもじもじと顔を赤らめながら、声をかけてきた。

 

「どうしたの?」

「名前……」

「名前?」

「同じキャロルだと、不便だろう?だから、私に名前を付けてくれ。その名を持って、私は過去を断ち切る。私を幸せにしてくれる人たちと歩むために」

「……なら、シャナ。貴女はシャナ・マールス・ディーンハイム。どうかな?」

「うん。いいと思う」

「シャナ…シャナか……ありがとう!七海!」

「それじゃあ、今度は現実で」

 

その言葉を皮切りに、私の意識を光が覆った。

 

 

 

 

 

 

「……戻ってきた」

「ナナ姉え……」

 

目を開けると、そこはさっきまで戦っていた部屋。

変身は解除されており、キャロルも気が付いたようだ。

 

「キャロル……サウ、シャナは?」

「ここにいる」

 

シャナの声が聞こえると同時に、キャロルから粒子のような物が出てきて人の形を成す。それは紛れもなく、シャナだった。

 

「良かった……」

「うん」

 

私たちはシャナを救えたことに安堵し、シャナを強く抱きしめた。

 

 

 




シャナちゃんという家族が一人増えたぞ!やったね!
ちなみにこの時、装者たちはまだ戦闘中なんだよなぁ……。

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