錬金術師と心火を燃やしてみよっか?   作:神咲胡桃

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タク-Fさん、感想ありがとうございます!


77 最短で!最速で!真っ直ぐに!一直線に!

《三人称(装者)side》

 

フロンティア北側から侵入した装者たちは、生い茂る森の中を突っ切りながら、塔を目指していた。

 

「邪魔すんじゃねぇ!」

 

クリスが放ったミサイルが、トリロバイトマギアを吹き飛ばす。

装者たちは人数が多いからか、想定よりも大量のマギアが派遣されていた。

 

「きりがねえな……」

「このままじゃ、ネフィリムが手に負えなくなるほど強くなっちゃうデスよ!」

「それは御免こうむりたいわね」

「………………」

「翼さん?」

「……どうやら、幾らか手間が省けたらしい」

 

翼がそう言うのと同時に、森の奥から4足歩行の奇怪な動物が現れた。

その口にはトリロバイトマギアを加えており、時折咀嚼しているかのようにバキッ!ボキッ!と音を鳴らしている。

これが、完全聖遺物ネフィリムである。

 

「…ネフィリム!」

「なるほど、我々のシンフォギアに使われている聖遺物を嗅ぎつけたか」

「さすがは聖遺物を食らうだけあるわね」

「GUAAAAAAA!」

 

ネフィリムは咆哮を上げると、装者たちに向かって飛びかかる。

装者たちはそれを散開して躱す。

 

「まずはあたし様からだ!」

 

クリスが2丁のガトリングをぶっ放すも、ネフィリムは跳躍して木々を足場にクリスに襲い掛かる。

しかし、それを見逃す装者たちでもなく、響がネフィリムを殴り飛ばす。さらに調のヨーヨーとマリアの操舵剣で手足を絡め取り、そこに切歌の鎌の刃と翼の放った斬撃が命中する。

 

「よし!」

「はっ!この程度かよ!」

「油断するな!2人とも!」

 

翼の警告が正しいと証明するかのように、ネフィリムが咆哮を上げる。

その直後、ネフィリムの身体がボコボコと音を立て、不自然に隆起し始めた。

 

「な、なに!?」

「なんだか大きくなってる気が……」

「…というより、大きくなってる」

 

切歌と調の指摘通り、ネフィリムは徐々に巨大化していき、やがてはフロンティアにそびえ立つ塔ほどの大きさとなった。

姿も不気味な黒から、炎のように真っ赤な赤色に変わり、4足歩行から人型のような2足歩行に変わる。

 

「んなっ、なんデスかあれは!」

「さすがにでかすぎるぞ!」

「言ってる場合か!来るぞッ!」

「全員!命がけで避けなさい!」

 

マリアの警告の直後、ネフィリムはその剛腕を装者たちに向けて振るう。

巨大な質量をもったそれは、地面に叩きつけられると周囲の木々を巻き込んで、巨大なクレーターを作った。

装者たちも何とか範囲外に回避はしたものの、衝撃によって吹き飛ばされてしまった。

 

「う、く……」

「全員、無事か……?」

「…なんとか」

『みんな、緊急事態だ!』

「こちとらとっくに緊急事態だよ!」

 

通信機から聞こえた弦十郎の声に、クリスは噛みつく。

しかし弦十郎は焦りを含んだ声で、内容を伝える。

 

『国連から通達のないアメリカの艦隊を確認した!』

「なッ!?」

「どういうことですか!?」

 

その内容に装者たちは、驚愕に包まれた。

 

『アメリカはF.I.S.の一件がある。おそらく無理やりにでも戦闘に参加し、幾らか自分たちの功績とすることで、その件を有耶無耶にしたいのだろう』

「そんなこと言ってる場合じゃないだろ!ここに今、とんでもない化けもんが…ッ!」

 

クリスが話している途中、ネフィリムが()()()()

その動きに嫌なものを感じた装者たちは、ネフィリムの視線の先に目を向ける。

そこにはうっすらと、先ほど通信で聞いたアメリカの艦隊がいた。

 

「まずいッ!」

「司令!すぐに退避させてください!」

「すでにその旨を送っている!」

「だめデス!もう間に合わない!」

「だめぇぇええええええええ!」

 

響の叫びが木霊するのと同時に、ネフィリムの口から光線が放たれた。

それは艦隊を真っ二つにするように放たれ、爆発とともに津波を引き起こし他の軍艦を呑み込んだ。

 

「あ、ああ……」

「そんな……」

 

今の一撃でいったいどれだけの死者が出たのか。

装者たちは呆然とする。

 

『呆けるなッ!』

 

そんな装者たちを叱咤したのは、弦十郎だった。

 

「ッ!」

『俺たちは今から、アメリカ軍の救助活動に入る!君たちはネフィリムを倒すんだ!」これ以上、今の攻撃をさせてはいけない!』

「師匠……はい!」

「やってやる…やってやるよ!」

「一気にいくぞッ!」

「「「「「「デュアルシステム、コネクト!」」」」」」

《デュアルリンク!デュランダル》

《デュアルリンク!アメノムラクモ》

《デュアルリンク!ネフシュタン》

《デュアルリンク!ヘルメス》

《デュアルリンク!クルースニク》

《デュアルリンク!ツクヨミ》

 

リンクギアを展開した6人は、一斉に跳びあがる。

 

「景気づけの一発!派手に食らえやぁあああ!」

【GRATEFUL FLASH】

 

クリスが一対の大型ビーム砲を突っ込ませ、ネフィリムに零距離からのビームを食らわせる。

さすがにこれには堪えたのか、ネフィリムは数歩後退し痛みを和らげるためか咆哮を上げる。

 

「私は一撃の強さは皆より弱い……なら!」

 

マリアは大量の剣を召喚し、ネフィリムを覆うほどの数の剣を突撃させる。

しかし、ネフィリムに突き刺さった剣は、ズブズブとネフィリムの中に埋まっていく。

 

「まさか、皮膚からも吸収していると言うの!?」

「マリアッ!()()()!」

「ッ!分かったわ!」

《デュアルリンク!ヘルメス》

《デュアルリンク!ネフシュタン》

 

クリスの声でマリアは察し、クリスとリンクギアを入れ替える。

 

「行くわよぉ!」

「10億連発だ!」

 

マリアはネフシュタンの鞭を振るい、ネフィリムの身体に裂傷を増やしていく。

クリスはサブマシンガンを両手に持ち、同時に銃の形状の飛行ユニットを展開。ヘルメスによる俊足で動きながらサブマシンを撃ち、飛行ユニットにも攻撃させる。

銃弾はマリアがつけた裂傷に、抉りこむように撃ちこまれていく。

 

「くそッ!これもダメか!」

「それに回復速度が速い!」

 

見れば、2人がつけた傷は瞬く間に修復されていく。

さらにネフィリムの咆哮によって、空中に浮かんでいる2人の身体は猛スピードで吹き飛ぶ。

 

「月読ッ!」

「…はいッ!」

 

翼と調が、入れ替わるようにネフィリムに接近する。

ネフィリムは握りつぶさんと剛腕を伸ばすが、2人はひらりと躱して巨大な腕に乗る。

翼は足で走り、調は脚部のローラーで駆け上がっていく。

 

「我が剣の錆となれッ!」

「…これならぁ!」

【炎鳥極翔斬】

【α式・弧月斬光輪】

 

両手のカタナから炎を吹きだし、翼は己を青い火の鳥と化し突撃する。

調は右足を振るい、三日月状の斬撃を繰り出す。

2人の攻撃はネフィリムの顔面を直撃する。

 

「GUAAAAAA!」

 

顔面を攻撃されたネフィリムは、顔の周りを払うように巨腕を振る。

空中に飛んでいたことで回避行動を取れないため、ネフィリムの腕で吹き飛ばされる。

 

「翼先輩ッ!調ッ!」

「切歌ちゃんッ!今はネフィリムをッ!」

「ッ……!はいデス!」

 

響と切歌は未だにもがくネフィリムの真下に潜り込み、跳躍。

お互いの得物を、ネフィリムの胴体に叩き込んだ。

その威力は凄まじく、ズドンッ!という音が周囲一帯に響き、グラリと後ろに傾く。

 

「GAAAAAAAA!」

「うわぁッ!?」

「デェエス!?」

 

しかし、ネフィリムもただでは終わらず、当たらないと分かっていても口から光線を放ち、その衝撃によって2人を吹き飛ばす。

赤い光の線が、空へと昇っていく。

木々をなぎ倒しながらやっとのことで止まった響は、痛む体を押して立ち上がる。

 

『みんな……無事?』

『無事に思える、か?』

『それだけ軽口が叩けるなら、無事か』

『…このままじゃ、こっちが先に力尽きる』

『どうすればいいデスか……?』

「…………歌おう。みんなで」

『『『『『ッ!?』』』』』

 

響の提案に、通信機越しに他の装者の息を呑む音が聞こえる。

 

『ダメだッ!()()はお前に負担がデカすぎる!』

「大丈夫だよ、クリスちゃん」

『あれはまだ、訓練でも一回しか成功していない。賭けには分が悪すぎる』

「でも、こうしてる間にもネフィリムは回復してる。だったら、これに賭けるしかないと思うんです。私は、大丈夫ですから!」

『…………やる気はあるのね?』

「はいッ!へいき、へっちゃらですッ!」

『マリアッ!』

 

あたかもやる気のマリアに、翼が声を荒げる。

それも当然である。今からすることは、響にとって負担が大きく、訓練中も一回を除いてほぼ失敗している。もし今の状態で失敗すればどうなるか……考えたくもない。

だが、他に方法がないことを理解しているのか、翼も響に確かめる。

 

『……どれくらいの確率で行けそうだ?』

「思いつきを、数字で語れるかよ!」

『ふ……ああ、そうだな』

「あーもう!分かったよ!やってやる!」

『私たちの底力、あの怪物に見せてやるデス!』

『…うん。私たちの歌で!』

 

気づけば、全員の声に活力が溢れていた。

響は深く息を吐くと、歌を詠う。

 

「……セット、スネープソング。コンビネーションアーツ」

 

「Gatrandis babel ziggurat edenal」

 

6つの地点から、6色の光が立ち上る。

 

「Emustolronzen fine el baral zizzl」

 

「大丈夫ですか!?」

「……この歌声は、なんだ?」

「力が、湧いてくるぞ……」

「綺麗な歌だ……」

「この歌声は……翼さんたち」

 

その歌声は、絶望に沈む者に希望を与える。

 

「Gatrandis babel ziggurat edenal」

 

「GUAAAAAAAA!!」

 

その歌声は、悪しきものには毒となる。

 

「GUAAAAAAAA!!!」

 

苦しむネフィリムが、響に向けて剛腕を振るう。

 

 

――――そして、光が溢れた

 

「mustolronzen fine el zizzl」

 

「GRRRRUUUU!」

「…………これが――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――私たちの、シンフォギアァァアアアアッッ!!!」

 

 

 

光の中から現れたのは、手を繋ぐ6人の希望の歌い手。

彼女たちのシンフォギアは、白を基調とした色合いに変わりその姿も変化していた。

 

エクスドライブtypeデュアルバースト。

 

シンフォギアとは違いエクスドライブのような最終決戦機構を持たないリンクギアすらその機構に取り込み、彼女たちはまた一つ、奇跡を果たした。

純白の姿からは目映いほどの光が放たれ、目にする者たちに勇気と希望を与える。

 

「GRUUUUU……!」

「これが、私たちの奇跡」

 

響はマリアと繋いでいる手を高く掲げる。

上空に光り輝く巨大な剣が現れた。その大きさ……ネフィリムの約2倍。

 

「「「「「「いっけえええええええええ!!!」」」」」」

【Synchrogazer ~over the hope~】

 

「GAAAAAAAAAAAAA!!!!」

 

振り下ろされる剣を迎え撃つために、ネフィリムは光線を放つ。

響たちが振り下ろした剣は、あまりにも容易く……

 

 

 

……ネフィリムと放たれた光線を、頭から真っ二つに斬り裂いた。

 

 

切り裂かれたネフィリムは、2つに分かれて倒れる。

そして響たちもまた、なんとか地面に着陸すると一斉に崩れ落ちた。

 

「か、勝った~」

「うごけねえ……」

「成功したはいいけど、反動がきつすぎるわよ……」

『全員無事かッ!?』

「師匠……私たちやりましたよ!ネフィリムをたおs『空を見ろ!』……え?」

 

通信機から聞こえた弦十郎の声に、響は勝利の報告をしようとすると、それを遮って弦十郎の声が響いた。

装者たちが空を見上げると、そこにあったのは雲一つない青空……などではなく、空中に浮かぶ()()()()があった。

見れば、倒れたはずのネフィリムの遺体もない。

 

『皆さんッ!』

「エルフナインちゃん……」

『計測の結果が出ました!あれは、()()()()()()()ですッ!』

 

繭……?繭とはなんだ……?なら、()()()()()()()()()

誰もがエルフナインの言葉を、すぐに飲み込むことができなかった。

アメリカの艦隊を一瞬で壊滅させ、装者たちが決死の覚悟で戦い、エクスドライブを用いてやっとのことで倒せたというのに、それが繭の前、()()()()()()()()()

 

「ラーニング完了」

 

………喋った。

先ほどまで獣の唸り声のような声しか上げていなかったモノが、明確な言葉を発した。

そしてその声は、まるで機械が喋っているような、ゾッとするほど冷たい声だった。

 

『”悪意”の感情をラーニング。現存する全ての生命体は、存在するに価値あるかを餞別』

 

この物体は、何を言っている?

 

『解。この世界に現存する全ての生命体は……存在する価値なしと判断』

 

このおぞましいモノは、何をしようとしている?

 

『これより、ラーニングした悪意に基づき、行動計画を立案……了。行動を開始する。全ての生命体よ………滅亡せよ

 

 

 

 




悪意の感情のデータは、装者たちと戦う前にムシャムシャしていたフロンティアの機材から取り込みました。
ネフィリムさん曰く、「新たな境地が開けた気がする。また食べたい」だそうです。

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コラボ先「マジで……この世界!?」
https://syosetu.org/novel/234619/

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