途中まではすでに読んでいたんですけど、最終巻まで全部買いました。
まあ……折紙がドストライクとだけ言っておきましょう。
前回のあらすじ
ブラッドにより勇たち3人と分断された七海とキャロル(勇の世界)。
来禅高校に潜入する中、2人は異常な光景を目にする。
そしてブラッドに強襲されるが、コンビネーションの悪さから七海は負傷し、キャロルの判断で撤退する。
2人は無事に勇たちと合流できるのか。
「ぐっ……なんとか、逃げることは出来たか」
仮面ライダーブラッドの襲撃を受けたオレたちは、どうにか撤退して保健室に入った。
中は無人らしく、申し訳程度に人払いの術式を使う。これなら、少なくとも一般人はどうにかできるだろう。
気を失っている
「ぅ……ぁぁ……」
ベッドに寝かせていると、唐突に呻き声を上げ右足を一瞬ピンッと張るような動きを見せた。
気になって履いていた靴を脱がせると、右足首が酷く腫れていた。
「そう言えばこいつ、足を怪我していたんだったな」
確か起きた時にも、右足を庇っていたな。
思い返してみれば、さっきの戦闘でもこいつはどこか動きがおかしかった気がする。
「………仕方ない。本来なら治してやるなどごめんだが、こいつにはさっきの戦闘と……崖から落ちた時の借りもある」
ブラッドとの最初の戦闘(オレ基準)で、落ちるオレをこいつは必死で庇った。
どうにかして落下の勢いは減衰させたようだが、この怪我はその時に負ったものなのだろう。
とりあえず、こいつの怪我を治すとしよう。
「<
オレの手の中に古めかしい拳銃が召喚され、その中に一発の銃弾が装填される。
拳銃を患部に向け、躊躇いなく引き金を引く。
撃ちだされた銃弾は足首の腫れた部分に吸い込まれ、ビデオの逆再生かのように元の状態に戻った。
だが、何故かオレの胸にはもやもやとしたものが漂っていた。
「なんだ……何なんだ。こいつを見てると、何か心がざわめく。ふざけるな!オレは勇のものだ!こいつに心が動かされることなどない!」
自分の胸を掻き毟りながら、必死に感じるものを否定する。
だが、胸のざわめきはどんどん大きくなっていく。
「……そう言えばこいつ、ブラッドの言葉に噛みついていたな」
『幸せ……?幸せと言ったの?ここの光景が幸せ……?ふざけるな…ふざけるなぁ!』
「……試してみるか」
オレは寝ているこいつに顔を近づける。
オレや勇ほどとは言わないが、それなりに整っている顔を見ていると、更に心がざわめく。
「これは違う……オレの心は勇のものなんだ。だからこれは浮気だとか、至ってそういうものじゃないんだからな……」
誰に言うわけでもない言い訳を口にしながら、こいつにキスをした。
◇◇◇◇
『お姉ちゃんのように頑張りなさい』
『姉があれだけできるんだ。お前もできるよ』
―――――
『うわー!すごい!テスト満点じゃん!』
『頭良いんだ!』
『ねえねえ!今度勉強教えてよ』
――――
『まったく……なんでお前はあの子のように出来ないんだ』
『ちゃんと勉強したの?まさか…!変なことつるんでるんじゃないんでしょうね!そうに決まってるわ!』
―――――助けて
『ねぇ……なんか最近、あの子付き合い悪くない?』
『確かにー!声かけても無視ばっかするし』
――――助けて
『頭良いからって調子乗ってるんだよ』
『だったらさー
――――助けて
『お前は休日外に出ることを禁ずる。唯でさえ姉に劣ると言うのに、勉強をさぼっている場合か?』
『ちゃんとやりなさいって言ってるでしょ!この、出来損ない!』
――――誰か、助けて……
「ハァ…ハァ…ハァ……ハァッ!?……夢?」
「何のことを言ってるのかは知らんが、おそらくそうだろうな」
「ッ!……って、キャロルちゃんか」
突然かけられた声に、軽く体を跳ねさせた私は、その声の主が分かってホッとする。
キャロルちゃんは、私が寝ていた向かいのベッドに腰掛けていた。ただ、どこかその表情が暗いのは、私の気のせいだろうか。
「ここは……」
「保健室だ。何があったか、どこまで憶えている?」
「それほど時間は経ってないのか。えっと、私がキャロルちゃんを庇ったところまでかな?」
「なら良い。あの後、オレがお前が持っていたアルカノイズを使って、気を失っていたお前を連れてここまで逃げてきた」
制服のポケットを探ってみると、確かに入れていたはずのアルカノイズの結晶が無くなっていた。
実は勇君たちと自己紹介した時に、彼から貰っていた物だったのだけど、うまく役に立って良かった。
「…………なぁ」
「ん?どうしたの?」
「お前は…………何で人間を…いや、他人を守ろうと思える?」
「はい?どうしたの急に?」
何か言おうと口を開いては、何も言わずにその口を閉じるといったことを繰り返すといったことを繰り返しているキャロルちゃんは、どこか暗い表情で話しかけてきた。
「キャロルちゃん、なんか変だよ?さっきとは全然態度が……」
「―――お前の記憶を見た」
「………………」
私の声を遮るように放たれた言葉に、私の口は縫い合わせたかのように閉じていく。
私の記憶を見た。それは別に構わない。少なくとも私は、キャロルちゃんが私の記憶を悪用するとは思っていない。
しかし、
「見たんだね。私の………前世の記憶」
「……ああ」
私の問いかけに、キャロルちゃんは重い口を開いて答えた。
口からゆっくりと息を吐きながら、私は再びベッドに身を沈ませた。
私の前世の記憶を見たという事は、あの忌々しい記憶を見たという事だ。
「私が聞くのもあれだけど……どうだった?」
「正直言えば、オレの過去に比べれば
キャロルちゃんはより表情を沈ませた顔で、そう呟いた。
私にとっての過去、忌まわしき負の記憶。
天才な姉と比べられ、零れた蜜を求める両親の言葉を馬鹿正直に受け入れ、追いつくために全てを切り捨てて尚……天才には届かなかった無能な女の子。
「そっか……んん?っていう事は私にキスしたの?大丈夫なのー?それ」
「…………………」
「……ごめんね。変なもの見せて」
「そんなこと!ぁ……」
私の謝罪にキャロルちゃんは声を荒げて立ち上がり、やがて出そうとしていた言葉を見失ったように、よろよろとベッドに戻る。
「それで、キャロルちゃんの質問だよ。何で他人を守れるのか、だっけ?」
「………」
「そーだなー。少なくとも、私は他人を守っているという意識はないかな」
「……なに?」
「私が守っているのは、いつだって自分だけだよ」
私の返答に、キャロルちゃんは理解できないと言わんばかりに眉をひそめる。
「温かみを感じる家族。気兼ねなく話せる友人。そして……自分の存在意義。そのどれもが、私が持つことはなかったモノ。だけど私は、新たな存在を見つけた。私が知らなかったモノを与えてくれそうな、そんな
「それが、キャロル・マールス・ディーンハイム、か」
「父を殺され、胸に残った小さな、そして歪んだ希望を持つ少女。その最後は、残っていた希望をさえ奪われ、自分が何者かもあやふやなまま消えた……あ、えっと」
「オレの最期のことか?気にするな。前に勇から聞いてはいた。オレが勇に出会わなかったらどうなっていたか、な」
それから少しだけ重い空気がのしかかり、そしてまた口を開く。
「彼女は私の思っていた通り、知らなかったことを教えてくれた。だけどそれは、私のアイデンティティを崩していった。無知と羨望……それを胸に生きた私の価値観は、ちょうどいいと利用した少女に崩されるという皮肉で終わった」
「お前は、後悔しているのか?」
「後悔程度で済めばいいけどね。死後はあの子たちと離れて、地獄かな」
冗談めいたように言いながらキャロルちゃんを見ると、いつの間にか立ち上がっていた彼女が、私のベッドに歩み寄ってきていた。
ベッドの傍に来たキャロルちゃんは、私の胸ぐらを掴んで私の上体を持ち上げた。
「ふざけるな……ッ!」
「キャロル、ちゃん?」
「オレはお前が嫌いだ。勇を傷つけたことも、その飄々とした性格も、そのどこぞのバカみたいな自己犠牲も……自分が傷ついていることにも気付かないその性根も……全部大っ嫌いだ…ッ!」
どこか苦しそうに、悲しそうに話すキャロルちゃんの顔は、今までに見たことないほど
「何があいつらと離れて地獄へだ!たかだか
遂には涙さえ零した彼女に、私は胸ぐらを掴まれたまま動けなかった。
それほどまでに、キャロルちゃんの涙が衝撃的だった。
「……オレだって、たまには過去を思い出すさ。勇には言えないようなことも、昔のオレはたくさん犯してきた。勇はこのことも受け入れてくれるだろうがな。だが……時々思い出すんだ。その時踏みにじってきたやつらは、オレを恨んでいるんだろうなって。幸せな今だからこそ、なんだろうがな」
私の胸ぐらを離し、無気力に立っているキャロルちゃんは、独白するかのように話す。
その姿は、聖職者に懺悔する罪人の様だった。
「……ようやく分かった。何でお前を見るたびに、えも言えぬ衝動に心をかき乱されるのか。似た者同士だったからだ。過去に負い目を持ち、そして今では幸せになったことで、再び過去に悩まされる」
なんか、分かる気がする。
キャロルちゃんとキャロルが喧嘩した時に私が言った「同族嫌悪」。あれは多分、私も知らずの内にキャロルちゃんと同じような感覚を味わっていて、それで無意識に出たんだ。
「そっか……なら私たち、似た者同士か」
「相手がお前というのが不満だがな」
「あはは……もう」
これだけ話し合ったというのに、未だに変わらない態度を取るキャロルちゃんに、思わず苦笑してしまう。
だけど、この変わらない関係が、とても心地よい。
「……私はさ、過去に後悔はすれど、今に後悔はしない。だって、今の私は間違いなく”シアワセ”だから」
「ふんっ……そんなこと、貴様に言われずとも知っている。オレだって、勇と一緒にいる今が”シアワセ”だからな」
それからしばらく心地よい沈黙が場を包み、それを破るように私たちは同時に立ち上がった。
「そう言えば、あの時お前が怖い顔をしていたのは……」
「……うん。
そう。来禅高校に潜入してすぐに、私はもう一人の私を見つけた。
もう一人の私は、前世で私を虐めていた人たちと、とても仲良くしていた。
だからこそ、さっきの戦いで私はブラッドの言葉に憤慨した。
あんな奴らと仲良くすることが私の幸せ?冗談じゃない……そんな世界、私がぶっ潰す。
「行こう。なんだか急に、キャロルとシャナに会いたくなってきちゃった」
「オレもだ。早く勇に会いたい」
そんなことを言いながら保健室を出た時、ある2人が私たちの視界に映った。
「あ…ヤバッ……!」
「…………………………おい」
気づいた時にはもう遅く、キャロルちゃんがまるで地獄の底からひり出したような声を出していた。
めんどくさいことになったなぁと、私は天を仰ぎ手を頭に載せる。
「フ…フフフ……ソウカ。コレガ”シアワセ”カァ……アイツラハブッ殺ス」
七海とキャロルが見たのは、一体どこの何勇とどこの何未来さんなのか!
勇君と七海の世界のキャロルとシャナの様子は、タク-Fさんの投稿で確認ください!
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タク-Fさん投稿「マジで……この世界!?」
https://syosetu.org/novel/234619/
次回予告
己の弱さを打ち明け、その結束を強めた七海とキャロル。
それぞれの思いを胸に、彼女たちは倒すべき敵へと挑む。
手を取り合った2人の戦い。授けられる新たな力。そして再会。
戦いの果てに2人は、この事件の真相を知る。
次回もお楽しみに!
何も言わずに選んでください
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原作開始前に命題に気づいたキャロルちゃん