やはり俺の実力至上主義な青春ラブコメはまちがっている。   作:シェイド

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……なんか評価高くなってて怖くなる今日この頃です。
ですが読んでくださる方が増えているとも感じているので嬉しく思います、ありがとうございます。

さて、勝手に色々やってたり抜けている部分も多々ありますが八話目です。
星之宮先生と出かけます。デートです、ただのデートです。

なんていうか、星之宮先生は陽乃と同じ感じがします。作者自身の想像並びに妄想ですから実際には異なるかもしれませんが……もう少し俺ガイルとよう実原作を読み込まないと自分が求めてるモノが書けそうになくてもどかしいです……。

あと、タイトルで察せ(白目)


知恵「君はそんなつまらない子なの?」 八幡「……」

 突然だが、夏と言えばどんなことを想像するだろうか。

 仲のいい友人と海に行き、山に行き、プールに行き、キャンプをする。お祭りに参加しては花火を見て、スイカを食べる。

 多くの人間は、大体こんな感じではないだろうか。

 さらに言えば、多くのイベントで盛り上がるのはリア充かウェイ勢共だろう。俺の嫌いな人種であり、人様の迷惑を考えない愚かな連中だ。

 そんなリア充イベントと全く接点がない俺が……

 

「き、綺麗だと思います……」

 

「もう、ハチ君ったら!」

 

「いや、あの、知恵さん、当たってますから///」

 

「当ててるんだよー?」

 

 こんなことになるなんて、想像できるわけがなかった。

 ……いや、マジで何してるんだろうな、俺。

 

 

***

 

 

 7月も半ばに差し掛かったある日のHR。

 クラス全体がどこか浮ついた雰囲気になっており、誰も彼もが楽しそうに表情を緩ませていた。

 そういう俺も、心なしか気分は穏やかだ。

 

「明日からみんなが待ちに待った夏休みがやってきまーす!」

 

「「「おお~!!」」」

 

「一週間くらいしたら学校の方でバカンスに連れて行ってあげるから、それも楽しみにしててねー!」

 

「ほんとにバカンスに行くんだ!」「やったやった!」「いや、明日から夏休みとか最高だな!!」「自由な夏休みにバカンスで二週間、そのあとにも一週間の休みって……中学の時より夏休み多い!!!」「そうじゃん!」「うわ、マジか、すげえな……一学期頑張ってよかった~」

 

「はいはーい、注目注目ー!話はまだ終わってないよー?」

 

 星之宮先生の言葉に教室がすぐさま静かになる。浮ついていることに浮ついているが、やはり元々が真面目気質の生徒が多いのがBクラスだ。先生の話を真剣に聞く姿勢になる。

 あ、俺?半分くらいは聞き流してるぞ。暑いし、だるいし、めんどいし……あと暑いしな。

 

「夏休みだからって学生として最低限の勉学には励むように。まあ、もう言わなくてもわかってると一応言っておくね?」

 

 その言葉には暗に『授業ないからって勉強しないでいいと思ってるの?』と言っているようにも思える。

 東京都高度育成高等学校、略して東育は夏休みというのに課題類が一切出ていない。生徒の自主性を尊重すると言えば聞こえがいいかもしれないが、要は軽く試しているのだろう。

 この数か月に及ぶ、入学から今日までの過ごした日々を振り返ってみれば分かるかもしれない。

『日頃の努力が力になる』とまでは言わないだろうが、常に中間、期末試験に向けて勉学に励むことが試験を乗り越える近道である……ことに気が付くと、応用次第では社会でも通用する人材となれる力だと思えてくるのだ。

 毎日の積み重ねの大事さを伝えるために、試験結果次第で退学になる、といった一般的な高等学校ではありえない行いも容認されているのかもしれない。

 ……ま、すべて俺の想像に過ぎないのだが。

 

 この実力主義の学校が何の目的で設立され、どんな意義があるのか……少しずつ、見えてきた気がしないでもない。

 

「あとは一週間後、遅刻しないようにしてねー?遅刻しちゃったら、せっかくの皆でのバカンスに置いてけぼりにされちゃうから、気を付けてね?じゃあ解散!」

 

 HRが終わったことで、クラスメイト達はすぐに友達同士やグループで集まりはじめた。

 どうやら夏休みの計画を立てているようだ。

 ……ま、俺は関係ないし帰るとするか。

 

「八幡!ついに夏休みだね!一緒に遊ぼうよ!」

 

「お、おう!もちろんいいぜ彩加!!」

 

 やっぱ八幡帰るのやーめた!

 我が天使である彩加に誘われては帰るわけにはいかない。夏休みに彩加とイチャイチャ……想像しただけで素晴らしいと感じるわ……。

 

「あ、比企谷君に戸塚くん!明日からの夏休みさ、一緒に遊んだりしない?」

 

「うん!一之瀬さんたちも一緒だともっと楽しくなりそう!」

 

 おおっと、俺と天使の間に入ろうとしている不敬な輩がいますね……って一之瀬かよ。

 つーか一之瀬がいるってことは……白波発見。

 彩加と一之瀬が話し始めたことを皮切りにコソコソと移動し、白波に近づいて小さな声で話しかける。

 

「おい、なんで俺と天使の時間邪魔しに来たんだよ。協力関係どこ行った」

 

「最初は女子だけで話してたんだけど……一之瀬さんが、せっかくならクラスの男子も誘って遊ばない?って……」

 

「反対しなかったのか?」

 

「……じゃあ逆に聞くけど、比企谷君は戸塚君が一之瀬さんと同じこと言ったとしたら、反対できるの?」

 

「……すみませんでした」

 

 うん、無理だわ。彩加に『クラスの女子とも一緒に遊ぼうよ!あ、八幡は嫌だったりするの……かな?』とか言われたら反対する気が起きないのは当然だろう。

 ごめんな白波、俺が悪かったわ……止められないのが普通だったな。

 

「八幡と白波さんも、一緒に計画立てようよ!」

 

「あ、うん」

 

「おう」

 

 彩加に呼ばれ、俺たちも夏休みの計画立てに参加する。

 

「どこに行きたいとかある?」

 

「プールに行きたい!」

 

「僕は買い物に行きたいな!前は八幡と一緒に行ったんだけど、四人だともっと楽しくなりそう!」

 

「じゃあその二つは確定かな……比企谷君は希望とかある?」

 

「家に引きこもりたい」

 

「そっかー。確かに勉強会をするのは大切だし、部屋で遊ぶのもいいかもね」

 

「ならさ………」

 

 あ、あれれ?おっかしいぞ~?……つい某名探偵になりきってしまったが、それくらいには驚いてしまった。。

 だって、おかしくない?俺のは普通に外出たくないっていう意見だったはずなんだが……どんな解釈をしたのか、一之瀬がどんどん提案し、彩加と白波によって採決されていく。

 ……あの、俺に決定権はないのでしょうか……?

 

 余談だが、この四人で過ごすことは割と多かったりする。

 理由としては、全員が俺の部屋の鍵を持っていることだろう(神崎も持っているが、来るときは連絡してくる)。図書館から帰ったら勝手に夕食が出来ていたりするのだ。

 これが一之瀬や白波、彩加が料理が上手いもので、俺の出る幕がない。専業主夫を志す者としては如何せん立場がない状況で、むしろ教えを請いている。

 加えて、俺と一之瀬は妹好きであることから会話する間柄であるし、白波とは俺が彩加と、白波が一之瀬とイチャイチャするための協力関係にある。彩加と一之瀬は優しい者同士、波長が合っていることからこのグループが形成されている。

 神崎や一之瀬と白波の友達がここに加わることもあるのだが、大体は男版一之瀬のような存在である柴田と神崎は一緒にいることが多い。一之瀬と白波の友達もそこに加わっているため、この四人でのグループとなるのである。

 

 少しばかり問題があるとするならば、彩加のことを女子だと思ってしまった人間には、このグループが俺が女子を三人囲っている状態に見えることだ。

 少し考えてみれば、目の濁った大してイケメンでもない男に可愛い女子が三人も囲んでいることに違和感を持つだろうが、基本は殺気を受けることがほとんどで、如何に気配を消せるかが俺が闇討ちされないかどうかの境界線となっている。

 ……可愛いの三人に囲まれてる時点で詰んでる?ホットケ!

 

「この日とこの日は私と千尋ちゃんはクラスの女子と遊ぶことになってるから……こんな感じかな?」

 

「うん、いいと思う!」

 

「八幡、これでいいかな?」

 

 俺が一人でこのグループや生存率に関する考察をしていたら、日程が決まったらしい。

 

「どれどれ……」

 

 

一日目

・朝から八幡の部屋で勉強

・午後からショッピング

 

二日目

・朝から八幡の部屋で勉強

・午後からテレビゲームなど

 

四日目

・朝から八幡の部屋で勉強

・昼食はピクニック

 

七日目

・神崎君たちと一緒に一日プール

 

バカンス?二週間。

バカンス後についてはバカンス中に考える!

 

 

 ……おそらく書かれていない日は都合が悪かったりする日なのだろう。もしくは一人で過ごす日として作られているのかもしれない。

 

「って、朝から勉強って……」

 

「夏休みの課題が出なかったってことは、自分たちで復習しとけーってことだし、継続してやった方が効果があると思うの」

 

「な、なるほど……勉強しないって選択肢は?「「「ないよ!!」」」……デスヨネー」

 

 こうなれば勉強するのは得意な文系科目だけにするしかない。

 

「あ、ちなみにだけど、この勉強時間は各自苦手教科の克服に努める時間だからね!」

 

 くっ、俺の行動パターンを読んで先回りしやがったな………さすがは一之瀬、よくわかってやがる……さすいち!いや、これだと変だな……さすみなだな!

 でもこれ数学地獄ってことだよね?ハチマンシンジャウノカナ?

 

「八幡、数学はしっかりと教えるから一緒に頑張ろ?」

 

「もちろんだぜ彩加!よろしくな!」

 

 彩加に教わるならそれだけで地獄から天国に変わる……天使の力ってすげー!

 

「相変わらず戸塚くんが絡むとテンション高いね~」

 

「(……気持ちはよくわかるよ比企谷君)」

 

 白波が俺に向けてサムズアップをしていたので、俺もサムズアップして返す。やはり同類同士、話がわかって嬉しくなるもんだな……。

 

 ………あ。

 

「すまん、この一日目の予定、違う日に変えられないか?」

 

「え、いいけど……比企谷君予定あったんだ?」

 

「……ま、ちょっとな」

 

「……ふ~ん?」

 

 一之瀬に訝しむ様な目線を向けられたものの、なんとか誤魔化し六日目の予定に変えてもらった。

 ……これ、バレたら俺死ぬな。

 

 

***

 

 

 翌日、夏休み一日目。

 俺は朝からラジオ体操を行っていた。

 これは最近やり始めたもので、彩加からの賜りものだ。彩加に筋トレをするうえでまず何からすればいいのかを尋ねたところ、ラジオ体操と柔軟運動になったのである。

 一昨日に読んだラノベでもラジオ体操が行われていて『ついに異世界転移ものもラジオ体操の時代になったか……』と思っているのだが、ラジオ体操は身体を動かす上で非常に重要なものらしい。

 よく運動会やら体育大会などで『ラジオ体操とかだるいし、適当に済ますか』という人間がいる、というよりほとんどだと思われるが、実際のところラジオ体操程合理的な運動はないらしい。

 俺には身体の運動に関しての知識がないため『へーそうなんだー?』ぐらいでしか感じていなかったが、ラジオ体操を本気でやると意外とキツい。第二まで含めれば結構ヘトヘトになる。

 それをこなした後、柔軟運動を行っていく。俺は『長座体前屈の海藤』のようなあだ名はなかったし、むしろ身体が硬いほうでこれもきつかったりする。

 しかし、これで少しでも身体能力が上がるなら嬉しい限りだ。

 一通りの運動を終えたあと、シャワーを浴びて昨日の夕飯の残り物をそのまま朝飯にする。ちなみにカレーである。

 カレーなどの日持ちしたうえで美味しくなる料理は一人で生活する上で必須だ。

 むしろカレーを作れない主婦が存在するかどうか分からないが、みんな大好きカレーなら一人前の専業主夫になる者として最低限こなせなければならない。

 ……作ったのは一之瀬なんだがな。

 昨日は神崎も来ての五人での夕食だった。ポイントを全員で共有して使う分、無駄が少なくむしろ節約になる。一人一人が料理をするよりも多めに作った方が安上がりになるのだ。

 

 ……さて、集合は10時だったはずだ。非常に行きたくないが行くしかないよなぁ。

 必要な荷物をバックに入れ、俺は寮からケヤキモールへと向かうのだった。

 

 

***

 

 

 集合時間前に着いた俺は、早速男子トイレに向かい、周囲に人がいないことを確認してから個室に閉じこもり着替える。

 そのまんまの恰好でいいと言われているのだが、それだと俺の胃に穴が開くこと間違いなしだし、立場もある。

 それでも強制された結果、変装をすることになったのだ。

 髪にワックスを塗り、オールバック風に仕上げる。服も部屋でしか着ることが出来なかった(押し付けられてポイントを払わされて買った服)、普段の俺からは想像もつかないようなお洒落な格好に着替えていく。

 荷物を直し、最後に眼鏡をかけて完成だ。

 一応端末で確認してみるかな……。

 

「……いや、誰だこいつ」

 

 自分の姿を見て自分じゃないと思ったのは初めてである。眼鏡をかけるだけでは拭いきることの出来なかった陰キャらしさが鳴りを潜め、クール系男子になっていた。

 もうこれ俺じゃないじゃん。ただの別人じゃねーか。誰も俺だってわかんねえだろ……いや、分かんなかったら帰る口実になるじゃないか!完璧だ!

 

 よし、今日を乗り越えれば天使とお泊り会だ。頑張れ、俺!!

 

 

 

 

 

 

 

 ……そう思っていた時期が俺にもありました。

 

「ねえねえ、あそこの人めちゃくちゃかっこ良くない!?」

 

「ほ、ほんとだ!あれ、ここの生徒なの!?あんな人見かけた覚えがないよ!」

 

「こ、声かけてみる?」

 

「どこかのお店の人で、非番の人かな?」

 

「……あいつ良いケツしてるな」ハアハア

 

 早速心が折れそうです。

 誰だよ待ち合わせ場所モール前にした奴……夏休み初日だから当たり前なのかもしれないが生徒の数が普段よりも多い。その分注目されているのがわかる。視線めちゃくちゃ感じるしな……あと強烈な寒気が襲ってきた……だ、誰か息荒くしてない?気のせい?

 ……つか、あの教師、強制的に誘っておいてなんで遅れてるんだろうか。いや、わざとかもしれないな。俺が目立つのを嫌っていることをあの教師は知っている。羞恥プレイとでも言うつもりか?

 

 それに、どこかで写真とか撮ってそうだな……。

 

「あ、あの……!」

 

 あ、やべ声かけられても対処の仕方とか分かんねえんだけど……。

 

「ハチ君、お待たせー」

 

「え、ほ、星之宮先生!?」

 

 俺に声をかけようとしていたであろう先輩と思わしき女子生徒が驚いた声を出す。

 そりゃ驚くわ……だって教師が男と待ち合わせしてるんだぞ?驚くなというのが無理があるってもんか。

 

「ごめんねー?私の彼氏なのよー」

 

「あ、は、はい……」

 

 星之宮先生が俺の腕を取り女子生徒に笑みを向ける。こ、怖い!これが女子の戦争!?

 女子生徒たちは逃げるようにモール内へと入っていった。いや、そっちに逃げるのかよ……。

 それより当たってる!豊満で持て余し気味のモノが当たってるから!

 

「お、遅かったですね。帰っていいですか?」

 

「もう、気づいてたくせに。隠れて写真とってたんだよー」

 

 やっぱかよ!くそ、どうにかして消してもらえたりしないだろうか……。

 

「星「知恵」……ち、知恵さん、これからどうするんです?」

 

「そうだねー、まずは服見に行きたいなー?いこ、ハチ君?」

 

「ひ、ひゃい!」

 

 噛んだ……いやでも仕方ないだろこれ。

 星「知恵」……知恵さんの恰好から、まずそこらの男子高校生では緊張すること間違いなしだ。

 いくら中身が黒いおぞましい何かであっても隠しきっている強烈な仮面。元が美人であり、可愛い系であることを自覚してるのか可愛い系の服を着こなしている。

 今日の俺はだいぶ魔改造されているからか、服に着られている感じにはなっていないみたいだが、普段の俺なら間違いなく服に着られている状態になる。

 その点、普段から美容には気をつかっているのであろう知恵さんは元がいい。服でいかに着飾ろうとも素材がいいからか輝いて見えるまである。

 結論を言うとだな……

 

「俺、男子生徒に刺されたりしませんよね……?」

 

「どうかなー?君だって気づく生徒がいるなら別だけど、正直分かるわけないと思うよ。私も昨日見た時びっくりしたしね~」

 

 ですよねー。俺自身ですら『コイツ誰だよ』状態であるのに同級生が気づけるわけがない。目の部分も眼鏡によって緩和され、アホ毛以外は髪型が完全に変わっているのだ。服だって絶対に着ないと断言できるようなものばかりだ。

 

「そうだった、感想聞いてなかったよ」

 

「感想?」

 

 い、嫌な予感が……

 隣で歩いていた知恵さんが数歩分前に出てポーズをとる。この人恥ずかしくないのかよ……いや、あざとさにかけては随一の先生だ。まったくもって違和感を感じない。

 

「ほら~今日はハチ君とのデートだからめいいっぱいお洒落してきたんだよ?」

 

「そ、そですか……」

 

「……で、どうなのかな?」

 

「き、綺麗だと思います」

 

「もう、ハチ君ったら!」

 

「いや、あの、知恵さん、当たってますから///」

 

「当ててるんだよ?」

 

 あの伝説の『あててんのよ』と同じシチュエーションだからか顔に熱が灯るのを感じる。やわらか……お、落ち着け俺!相手はあの先生だぞ!中身はロクデナシだ!

 

「ハチ君……なーんか酷いこと考えてない?」

 

「べ、別に考えてないですよ?そ、それよりも早く行きませんか?」

 

「うん!やっと乗り気になったー?それじゃあいこっか」

 

 この状況から逃れたい一心でモールに向かおうとするも、腕を取られる……と思えば手をつないでいた。

 なんでこんなに女の人って手が柔らかいんだろうね……。

 

 

***

 

 

 最初にやってきた(連れられてきた)のはモール内にある服屋。

 服屋といっても種類が存在している。

 例えば誰にでも手が届くお手頃価格のショップ。庶民感あふれると言えば何様だと言われるかもしれないが、俺はこの手の店を利用する機会が多かったのは言うまでもない。

 東育に通い始めてからも部屋着や目立たない服を出来るだけ安く買えるように努力していた。時には掲示板なんかを利用して古着やら使わなくなった衣類を購入したこともあるしな。

 しかし、知恵さんに連れられてきた場所はそんな店ではなかったのだ。

 高級店と言えばいいのだろうか。普段の俺ならどれほど場違いに思われるのかを想像できないほどの店だったが、知恵さんは構わず店内に引っ張っていく。

 

「やっぱり、デートと言えば服屋は()()だもんね?」

 

「そうなんですか?」

 

「ハチ君はこれまでに彼女いたことなかったの?」

 

「ええまあ、進んで孤高を選んでましたから」

 

「単純にぼっちだったって言えばいいのに~」

 

 だから頬にツンツンすんのやめて!くそ、俺が物理的接触に弱いことに漬け込みやがって……なんなら女子からの行動はすべて弱いと言っても過言ではない。駄目じゃねえか。

 

「仲がいいカップルですね~」

 

「ありがとう!店員さんは良い人だねー!」

 

 全然良い人じゃねえな……むしろ嫌いな人種に入るまである。

 基本、接客業や販売員などは丁寧な対応をしてくれるが、それはただ商品を買ってもらうためだ。

 職務上仕方のないことかもしれないが……笑顔でお世辞をいくら言われようが、気持ち悪い以外の何も感じることはない。

 

「本日は何かお探しでしょうか?」

 

「うーんと、新作をいくつか見繕ってもらっていいですかー?」

 

「はい、少々お待ちください」

 

 知恵さんから注文を受けた店員は、商品を取りに俺たちから離れていった。

 終始ニコニコしている知恵さんに、違和感を感じるのは俺が警戒しすぎているからだろうか。

 

「……意外ですね」

 

「何がー?」

 

「いや、知恵さんなら店員の介入を断るかなと思っていたので、少々……いや、かなり意外でした」

 

「そーお?実はね……私自身、ファッションセンスがないの。プロに任せた方が確実だし無駄がないでしょ?」

 

「ま、そうですかね……」

 

「お待たせいたしました。こちらが今夏の新作です」

 

 帰ってきた店員さんは服を何着か運んできていた。

 ……一点だけ確実に俺のモノであろう服も紛れていたことは見なかったことにしてえな。

 

「ありがとうございますー。じゃ、ハチ君、試着室行くよ」

 

 そりゃそうなりますよね……逃げ道は……ないですよね分かります。

 試着室前に移動し、その前に設置されている椅子に腰かける。店員さんは別の客に対応しているからか、試着室には俺と知恵さんの二人しかいなかった。

 

「まずは私からだけどー……覗かないでね?」

 

「の!?……覗きませんって」

 

「ふーん?そっか……でも私はハチ君ならいいよー?」

 

「え?」

 

「ふふっ」

 

 そう言い残してカーテンの向こう側に姿を消した知恵さん。

 ……え、マジで覗いていいの、か?いや待て、普通に考えて覗くという行為はよくないだろうが。二人きりだからって……で、デートしてるからと言っても……仮にも先生と生徒の間柄だ。もしバレれば懲戒免職処分に退学処分では済まされない。学校側にも迷惑がかかる……いや、ここなら揉み消すか?

 

 シュル……シュル……パサ……。

 

 服を脱ぐ音、衣類を落とす音、それがしっかりと耳に届くことで顔が赤くなって……体全体が熱くなるのを感じる。

 無心だ、あんな音は聞こえない。聞こえていない。想像しちゃダメだ。知恵さんのいたずらに決まってる。そう、あのたわわなモノが……はっ!煩悩退散!煩悩退散!煩悩退散!!

 

「じゃーん!どうハチ君……って、なんか疲れてない?」

 

「いえ、全然疲れていません!!」

 

「思い違いかな?これでも保険医なんだから体調が悪いなら言ってねー?」

 

「も、もちろんですとも……」

 

 あ、少しだけ口角上がった……やっぱいたずら仕掛けてきていたのか。なんで試着するだけでここまで神経を尖らせなければいけないんだよ……。

 ニコニコしてる知恵さんから逃れたくてそっぽを向けば、見たことある顔がいた。と、言っても俺が一方的に知っているだけだが。

 Dクラスの高円寺と連れと思われる女性である。

 確かにあいつならこの店にいても違和感がない……むしろここですら最低限かもしれないと思わせられるが、生徒だとバレたらまずいな……。

 少しだけ、高円寺の方も気にかけながら知恵さんの方に向き直る。

 

「改めて……どうかなーこの服?」

 

 知恵さんが着ていたのは花柄のロングワンピースだった。

 加えてノースリーブである……いやもうちょっと歳考えないのかと考えたが、よく思えば美人に年齢はないな、うん。よくお似合いではないのでしょうか。

 決して、知恵さんの目が怖かったなどということはない。ナインダヨ?

 ……正直に言えば見惚れるほどの可愛さと美しさが混ざり合っている。これほどの女性は見た覚えがない。

 元々テレビの女優なんかも可愛い人だ、美しい人だ、と思うことはあっても熱狂的なファンだ、と言える人はいない。あくまで流し見しているだけだから名前やら中身やら性格やらに興味はないのだ。

 それでも、このレベルは見たことがなかった。

 

「あれれー?もしかして見惚れちゃったかなー?」

 

「……はい、正直見惚れてました。素敵です。可愛いです」

 

 ふっ、たまにはやり返さないと気がおさまらないってもんだ。ニヤニヤ笑ってる時点でからかう気満々なんだろうし、少しぐらいカウンター食らえって思った俺は悪くないはずだ。

 

 

 

 

「あ、ありがとう……///」

 

 

 

 

 ……あれー?

 なんか思ってた反応と違うんですけど?

 どうせ入学式の日みたいにやり返されるのがオチだと思ってたのに……ってやり返される前提でやってる時点で俺ってMなの?

 こんな反応は予想外だ。予想外過ぎて目の前の女性が本当に知恵さんなのか怪しくなってくるレベル。

 もしかして別人とか?熱とかでたんだろうか……しかしこの反応はぶっちゃけて言えば心に来た。キュン死するかと思ったぞ本気で……。

 恥じらう感じがもう可愛いとしか思えなくなってくるし、庇護欲をそそられて……年上だというのに悶絶しそうだ。

 

「……………くふっ

 

 今も顔を下に向けて俯いているし、恥ずかしがっているのか?

 ……ん?下を向いている……?

 

「……ふふっ、く、くふっ……」

 

 笑い声……アー、ハチマンコノナガレモウシッテルンダヨ。

 

「もう無理!お腹痛くなってきたー!あはははっ!ハチ君最高っ!」

 

 ほら、ほら出たよ……どんな演技力してるんだよ。人間観察を習慣とする俺ですら欺かれたんだが……いや、あれは無理だ。男なら絶対無理。さっきのを可愛いと思えない男は男じゃない。戸塚が可愛くないぐらいのレベルでありえない。

 一瞬グラってきた数十秒前の自分をぶん殴りたくてたまらなくなる。とりあえず太ももでも抓っとくか……痛っ…。

 

「……やっぱり演技でしたね」

 

「負け惜しみは素直じゃないなー?本当のことを言った方がいいんじゃない?」

 

「……めちゃくちゃ可愛いと思いました!」

 

「うんうん、素直が一番だよ~ハチ君~」

 

 こうしていつも通り手玉に取られ、新たな服に着替えては感想を言わされる地獄すら生ぬるいものを見せられた俺は、疲れ切った状態で唯一俺にと店員さんが持ってきた服を試着することに。

 はっきり普段の俺からしたら絶対に着ない。これから着る予定すらないものだったから知恵さんに試着する必要がないと伝えたのだが、曰く『次のデートの時に着てくる服がないよ?もしかして同じ服で来るつもりだったのー?』と、既に次のデートまで確定しているようなことを言われ試着室に押し込まれた。

 ああ……逆らえない相手が着実に増えていってるな。良くない傾向すぎる……。

 早く服屋から出るためにもパパっと着替え、カーテンを開ける。

 

「……あ」

 

「……」

 

 カーテンを閉め、もう一度開ける。

 ……うん、なんでこんな近くにいるの知恵さん?

 

「いや~もうちょっとだったのになあー。押し入ろうかと考えてたのにー」

 

 あんた教師だろうが。マジで何してんだよ……。

 

「……で、もう着替えていいです?」

 

「待って待って!写真撮らせてー……うん、似合ってる似合ってる!」

 

 何枚か写真を撮った後、感想を言い出す知恵さん。

 写真を満足するまで取り終えたので、椅子に座っておいてくださいと言いつけ、カーテンを閉める。

 鏡を見て、本日何度目か分からないが……

 

「だから誰だこいつは……」

 

 最初に服の解説をしてくれた店員曰く、あえてしわっぽさを出すことによって男らしさを演出し、ボタンの開き具合で印象から変わってくる綿麻のシャツらしいが……このボタンのせいで知恵さんに店内で上裸にされそうなところだった。

 嬉々としてボタン外すたびに写真撮りやがって……やっぱ幾度となくいろんな男をひっかえとっかえしてきたんだし、清純派ビッチって言葉が似合いすぎる……なんか強烈な寒気が全身を襲ってきたからこれ以上はいけない!俺のサイドエフェクトがそう言ってる!

 

 

***

 

 

 元の服に着替え、結局試着した服を購入。今着ている服と合わせてもなかなかの出費額になっている……この二着でI♡千葉Tシャツ何十枚買えるんだか……。

 服屋を出たところ、時間もお昼を過ぎていたことから、知恵さんに連れていかれる形で軽食もとれるカフェに移動した。

 店内は女子だらけで、知恵さんを知っているだろう生徒からはキャーキャー!という声まで聞こえてくる。

 ……帰りたい。

 幸いと言ってはなんだが、周りに生徒がいない席に案内されたため少しだけ息を吹き返す。

 

「ハチ君は何頼むの?」

 

「サンドイッチのコーヒーセットで」

 

「私は明太スパゲティでいいかな。食後にカフェオレもらおうっと」

 

 注文を終えた後で知恵さんが話しかけてくる。

 

「それにしても注目されるねー?」

 

「そりゃそうでしょ……学校の先生が夏休みとはいえ男連れてるんですからね」

 

「加えてその男がイケメンなら女子生徒は食いつくよね~」

 

 この状況を楽しんでいるのか軽く笑う知恵さん。

 ほんと、この人のことよく分かんねえんだよなぁ……一番理解できないのは綾小路だがあれは例外だ。隣人としても(俺としては)良き付き合いをしていると思うし、クラス間での同盟関係から情報交換もしている。

 ただ、奴は行動理念がまるで意味不明だ。

 坂柳といい、一之瀬といい、龍園といい、堀北といい……各クラスのリーダーたちですら行動理念的なものは感じるのに。

 その点で言えば、知恵さんは綾小路と近いものを感じることがあるのだ。

 

 そうして思い出すのは昨日の昼休みのこと。

 明日から夏休みだけどマッカン買いに、ここには来るんだろうなぁなどと思いつつ、いつもの場所で飯を食っていた時だった。

 

 

『比企谷くーん。明日から夏休みだねー?』

 

『そうですね、学校に行く必要もなくなって部屋に引きこもれるから最高の気分ですよ』

 

『またまたー。もうぼっちじゃないんだから友達と遊びに行くんじゃないの?』

 

『人間、少し環境が変わったからって行動まで変わりませんって。クーラーの効いた部屋でゴロゴロするか、図書館で本を読み耽るかですよ』

 

『……ふ~ん、そっかー……なら、先生とデートしよ?』

 

『丁重にお断りさせていただきます』

 

『ちなみに拒否権はありませーん!ってことではいこれ』

 

『……な、なんですかこの服。どこのリア充ですか』

 

『あ、いらない?それならそれで素の比企谷君でデートしてくれるなら『ください!』……一万prであげるよ』

 

『えぇ……金とんのかよ……』

 

『私だって教師としての立場があるんだから。ささ、ついでにワックスと眼鏡もつけるから』

 

『……行かないって選択肢は『ないよ?』ですよねー』

 

『ちなみにドタキャンしたらBクラスのみんなにあることないこと話すからねー?』

 

『はあ、わかりました』

 

『じゃ、一度セットしてみようか!似合ってるか分かんないからね~』

 

 

 って感じだったが、デートする意味が解らん。先生と生徒って時点で相当リスクあるのにこの先生押し切りやがったからな……目的があるはずなんだ。多分。

 それに名前呼びだの、なんだの条件突き付けてきやがって……べ、別に新鮮だなとか思ってないんだからね!

 

「イケメンってだけで食いつくとか、人間平等じゃなさすぎて嫌になりますよ」

 

「平等ね~比企谷君のいう平等ってどんなの?」

 

「そっすね……全員独りぼっちなら平等だと思いますよ」

 

 全人類ボッチ化計画……あ、彩加と離れ離れになるのは嫌だから計画中止で。

 

「でも、それって能力に差はついたままだよね?顔だって身体だって違ってる。それで平等なの?」

 

「平等でしょう。能力に差がつくのは仕方がないことです。得意不得意が違えば、才能だって違う。顔も身体も個性だと考えれば平等って言えるでしょ」

 

「男と女なら?」

 

「今の社会は平等じゃないのは目に見えてるじゃないですか。セクハラ、パワハラ、マタハラ……少し男性側に被害を受ければ女性専用列車だの、冤罪だの、レディースデーだの、女性を優遇して男性を冷遇する流れもありますし。あとカップル割とカップルプランとか、非リアに対して喧嘩を売ってるとしか思えません」

 

「最後のはただの妬みだねー?今ならすごいブーメランになっちゃうよ?……そだ、入学して随分と立つけど友達はできた?」

 

 平等についての話から友達の話へ……そういや入学式の日も同じような質問されたっけな。

 あのときは正真正銘のボッチだったが……今はどうだろうか。

 彩加とは名前で呼ぶ仲であるし、部屋を尋ねる間柄でもある。彩加の部屋に行ったのは一回しかないが、俺の部屋で集まるのはすでに日常と化してきているのは事実だ。

 一之瀬とは入学時から絶対に馬が合わないと思っていたが、今では入学時には考えられないくらい会話をしている。

 白波とは同類のような仲間意識もあり、話すようになった。神崎についても積極的ではない同士で話すことも多くなってきた。

 他クラスなら……椎名や綾小路辺りだろうか。椎名とは読書仲間だし、綾小路とは一緒に登校し、たまに一緒に飯を食う間柄だ。

 坂柳派?堀北?……知らない子ですね……。

 それはともかく、東育に入学する前には考えられないような人間関係になっているのは事実だ。

 客観的に見れば見るほど、入学してからの俺は過去の自分と重ねられないくらい人と接している。()()()()()()()()

 友達……俺が昔欲したもので、それでいて諦めたもの。

 

 今なら少しは…………いや、だからこそ、俺は。

 

「……出来てませんよ」

 

「そう……じゃあ恋人は出来た?」

 

「友達いなくて恋人居る奴とかいるんですか」

 

 最近のラノベにはひたすら彼氏彼女がイチャコラするだけの、その様を見せつけられて砂糖吐くことになる作品も存在している。その彼氏の方はそうだったりするかもしれないが、生憎俺は精神だけ異世界に飛ばされたりしてないし、あんなに常識外れでもない。

 友達がいなくて彼女がいる状況なんて、ぼっちが告白されないかぎりありえない現象だろう。

 

「うん、入学式の日と変わってないねー」

 

「人間、そんな簡単に変わりませんよ。俺は今の自分が好きですから」

 

「…………へぇ

 

「お待たせいたしましたー――――――――――」

 

 料理が来たことにより会話は中断され、サンドイッチが俺の前に、スパゲティが知恵さんの前に置かれる。

 腹が減っていたせいか、すぐにあーんしてこられたせいか……。

 知恵さんが会話の最後、俺を冷めた目で見ていたことには気が付かなかった。

 

 

***

 

 

「うーん!たまにはこうしてカフェでのんびりするのも悪くないね~」

 

「まあ、落ち着きますしね」

 

 軽食を取り終えた(食べさせ合いをさせられたせいで周りの生徒から歓声が上がり、疲れたのは言うまでもない)あと、コーヒーや紅茶を飲みつつゆっくりとしていた。

 朝からの連れまわしっぷりからして、他にもどこかに行くとばかり思っていたもんだが、どうやら勘違いであったらしい。

 こんなゆったりとした時間を過ごすのなら、デートも悪くない……いや、これは罠か……?

 

「……そろそろかなー」

 

「……何がですか」

 

 おい、意味深なこと言い始めたぞ……何かを待っている……?

 い、嫌な予感がするんだが……。

 

 

「あ!星之宮先生だ!」

 

 

 ……マジですかー、そうくるのかー……あんたマジで何がしたいの?

 声のした方を見れば、見たことある顔ばかり……Bクラスの女子が集団でこっちに向かってきていた。

 

「先生、そちらの方は……?」

 

「彼は私の彼氏だよー」

 

「「「ええ!?そうなんですか!」」」

 

 うわ、なんか目がキラキラしてる……女子って恋愛が絡むとこうなんの……?この場から逃げ出したいんですけど……。

 

「かっこいい方ですね!」

 

「でしょでしょー!彼を捕まえた時ラッキーって思ったもの~」

 

 俺の心境なんて知ったこっちゃないとばかりに、そのまま会話を始めだす一行。

 よく見たら一之瀬と白波までいるじゃないですか……な、なんとか誤魔化さないと死ぬ未来が待っていそうだな……。

 

「先生、好み変わったんですか?前に言ってた元カレと随分雰囲気が違いますけど……」

 

 一人のクラスメイトと思わしき女子が知恵さんに質問しているが……聞こえているからね、聞こえてない振りするの大変なんだからね?

 確かに最新の元カレのタイプとはかなり違っている。正直真逆と言っていいぐらいの差があると思う。

 ……さて、知恵さんはどうする?

 

「それはねー……」

 

 あ、猛烈に嫌な予感が。

 

「彼……ハチ君の方からアプローチされて告白されたのよー。ね?」

 

「お、おう。そうだったな……」

 

 してねーよ。一度たりとも俺からアプローチなんてしてないし、ましてや告白などトラウマ製造機とまで言われる危険な行為だぞ。するわけがない、が……。

 ここを乗り切るためには仕方がない。なんとか合わせることにしよう。

 

「その告白がねー……もう面白くて!」

 

「え、どんなのですか!?」

 

「く、詳しく!!」

 

 待て、待て待て待ってくださいお願いだから、頭に浮かんだ想像の中での最悪のパターンだけはやめて!……あれ、フラグか?

 

「ハチくーん、ここでもう一回やってもらっていいかなー?」

 

 知恵さんが上目遣いをしながら尋ねてくるが、目が明らかに「やれ」としか訴えてないのでやるしかない。

 もしやらなくて「彼、実は比企谷君なの!驚いた?」とかされたら終わる。主に俺のこれからの学校生活が終わる。

 くっ、ど、どうすれば……何か、何か……こうなったらトラウマの中から探してでも……。

 

「……しなきゃダメか?」

 

「えーやってよー、私の教え子たちが待ち望んでるよ?」

 

「「「………」」」ワクワク

 

 ……く、かくなる上は!

 

 

「知恵さん、俺を養ってください!」

 

 

 ……し、死ぬ、羞恥心で死ぬ!

 だってBクラスの女子全員目が点になってるよ!そりゃそうだよ!こんな告白ほぼプロポーズと変わらないし、ただの駄目野郎……もしくは専業主夫しか言わないだろ!……あれ、誰も言わなそうだな……?

 

「ふふ、あははっ、何度聞いても面白いなー!こんなこと告白する時に言う言葉だと思う~?」

 

「……な、なんていうか、すごく個性的な方ですね」

 

 目を逸らしながら気まずそうに言う、クラスメイトA……そんな言い方しかできないもんな。ほんとごめんな……って元凶は目の前に座ってるビッ……きれいな女性だけどな。

 

「せ、先生!」

 

「うん、千尋ちゃん」

 

「もしかして先生が学校で比企谷君に絡むのって……彼氏に似ているからなんですか?」

 

「あ、確かに!比企谷君なら養ってとか言いそう!」

 

 おーい、そんな風に俺のこと思ってたの?いやまあ専業主夫になりたくはあるが……って養ってとか露骨過ぎたか?俺のまんまじゃねーか……バ、バレないよな?

 

「そだねー、それはあるかも。ハチ君と比企谷君似てるところあるからねー……普段ハチ君とは会えないから、暇つぶしに絡んでるところはあるねー」

 

「そうなんですか……比企谷君これ聞いたら落ち込みそうだね……」

 

「だねー……ショックは受けるよね」

 

 なんか俺に同情の念が集まってる……どこぞの誰かが変なことを言う所為で、Bクラスでは未だに"比企谷は星之宮先生のことが好きだ"とかいう誤解が生じているのだ。

 加えて同情までされるとか……比企谷君不憫だなー(棒)

 

「皆、星之宮先生はデート中だし、これ以上邪魔しちゃ悪いよ」

 

「そうだね、一之瀬さんの言う通りだね」

 

「星之宮先生、デート楽しんでくださいね!」

 

「ありがと~」

 

 一之瀬の良心のおかげか、クラスメイト(女)達は違う席に向かっていった。

 ……し、死ぬかと思った。

 

「養ってください……ふふふっ、ハチ君も大胆だねー?」

 

「いや、今のは知恵さんが悪いじゃないですか。俺は悪くないですよ」

 

「それでもあのチョイスはさすがだよー!機転効きすぎ……んふっ、ふふ……」

 

 あああああー!!今日の夜は転がりまくること間違いなしだな(白目)。

 

「さて、待ってた出来事は起きたし、次のところに行こうか?」

 

「お、お手柔らかに……」

 

 ま、まだあるのかよ……彩加、小町、俺はもう駄目かもしれん……。

 

 

***

 

 

 結局あれからプリクラを撮ることになるわ、カラオケに行かされるわ、プリキュア熱唱したら大爆笑するわ……散々な目にあったもんだ。

 プリキュアの何が悪いってんだよ、最高だろプリキュア。毎週の俺の数少ない楽しみなんだぞ!一番好きなのは……迷うがやはり『ふたりはプリキュア』だろうなぁ……なぎさもほのかも可愛いし……感動するしな。

 オールスターなんか見たら号泣は必然だ。むしろ泣かない奴がどうかしてるまである。あれほど感動するアニメも中々ないと思うんですよ、マジで。

 それと知恵さんが地味に歌が上手くてびっくりしたな。それに、なんでか知らんけどキュアピースのとこだけ被せてきたし……似すぎて思わず感動した。あれは一生の不覚だな。

 

 色々連れまわされて、既に時刻は19時を回り、生徒の中には寮に帰っていく奴らも結構いる。

 そんな中、俺と知恵さんは人気のない広場のベンチに横並びで座っていた。手をつないでいたらここに連れてこられていたのだ。

 

「今日は楽しかったよー、ありがとねー」

 

「俺は大変な一日でしたよ」

 

「もーう、そんなこと言うなら明日もデートする?」

 

「大変楽しい一日でした」

 

「そういうとこ、私は嫌いじゃないよ」

 

 

 ――――――――――――それは唐突に、危機察知特化の俺の緩みの隙間を通してきた。

 

 

 

「比企谷君……今日、なんで誘ったか分かる?」

 

 先程までとは比べるまでもなく雰囲気が変わっていて。

 驚いて隣の星之宮先生を見るが、先生は前を向いているだけでこちらに目線を寄こしすらしない。

 そしてそれは、"デート時の知恵さん"ではなく"担任としての星之宮先生"として聞いているのだと感じた。

 俺を誘った理由……確かに、違和感はあった。

 どこか、言葉には出来ない居心地の悪さ。どこか、偽物であるような佇まい、行動、しぐさ、言葉。

 

 ……駄目だ、いくら考えても皆目見当もつかない……分からない。

 

「……分かりません」

 

「……そう」

 

 短く、それでいて凶器を向けているように冷たく返してきた星之宮先生は、俺に向けて視線を送ってきた。

 その目は……酷く、冷たく、暗く……まるで虫けらを見るような蔑んだ目で。

 

「君はそんなつまらない子なの?」

 

「……」

 

「入学式の日。君を初めて見た時、私は目を見て思ったの。あなたは酷くつらいことがあったんだろうなって」

 

「……」

 

 何を言ってるんだ、この先生は……酷くつらいことがあった?

 

「強い警戒を抱いていて、他人を拒絶していて……それでいてすぐに壊れてしまいそうな、儚い存在のようにも見えて」

 

 なんだよ……あんたが俺の何を知ってるってんだ?俺の何を理解してるんだ?

 どんな立場で……何を語ってるんだ?

 

「君は「何の話ですか?俺のことを勝手に語らないでください。不愉快でしかないです」……そっかー」

 

「そうです。なんですか、その、俺のことをよく知らないくせに、酷く辛いことがあっただとか、拒絶しているとか、壊れるだとか……あんたが俺の何を知ってるんですか」

 

 気持ち悪い。

 俺が感じたのはそれだけだった。

 好き勝手に自分を語られるのが気持ち悪くて我慢ならない。何を見てそんなことを言うのか、まるで理解できないから。

 

「……知らないよ。私は全く、君のことを知らない」

 

「なら、なんで」

 

「今の君は、酷くつまらない。君はもっと、求めているものがあるんだと思ってた」

 

「……何を言って」

 

「……もう分かってるんじゃないの?他ならぬ君自身が一番、さ」

 

 ……ああ、そうだよ。今さらになって自覚させられる、ここ最近の違和感。

 俺が俺じゃないと感じたのは恰好だけじゃなかった……()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 今の関係も、少し前の俺が嫌っていたもので。

 それは、ただの欺瞞で。

 気を遣ってるだけの壊れやすい関係で。

 俺が、一番嫌っていたはずのもので。

 

「俺は……」

 

「……今日はありがと。またね、比企谷君」

 

 今まで目を背けてきたことを指摘されて、いい様に誘導されて。

 様々な考えが頭を駆け巡り、それでいて答えはまるで出ない。

 先の見えない暗闇の森に一人でいるような、そんな感覚に襲われる。

 

 しばらくして隣を見るが、星之宮先生は既にいなくなっていた。

 

「……帰るか」

 

 近くのトイレに入り、着替えてから髪型も元に戻し、寮を目指す。

 幸いなことに俺以外に生徒は見えず、一人、ゆっくりと暗くなった中、重く感じる足で歩みを進めていく。

 

 

 

 

『君はそんなにつまらない子なの?』

 

 

 

 

 そんな星之宮先生の声音だけが、ただ俺の中で響いていた。

 




酷い文章だぜ……もっと俺に文才があればなぁ。。。

少し最初の方で一之瀬やBクラスの面々と仲良し気にしすぎたかと思っての牽制役です。
星之宮知恵のような『明らかに危険人物なんだろうけど嫌いになれない、むしろ好きなまである』キャラがこのような役にぴったりではないかと思っております。
実際生徒思いな先生には違いありませんし……アニメで見た時に可愛いと思ったのは必然とも言えます……よね?可愛くなかった?

3、4巻やら4.5巻やらを読み返した結果、夏休みの設定を一週間休み+バカンス(特別試験)二週間+一週間休みの一ヵ月構成にしました。
※よう実の設定をだいぶ個人的な解釈をしていたりします。
 その辺りは妥協していただけると嬉しいです。

次はハチトツ……トツハチ回にしようと考えております(変更したらごめんね)。
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