やはり俺の実力至上主義な青春ラブコメはまちがっている。   作:シェイド

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UA50000越えありがとうございます。嬉しい限りです。

今回は夏休み前半4~6日目、プール回をお届けします。
初めて一話で20000字を超えました。後悔はない。テンションおかしい混沌とした事態になったが後悔はない。

《》はチャットのグループ、【】は電子掲示板のスレッド名を表しています。

テンションの上げ下げと話の展開のスピードがおかしなことになっておりますが、楽しんでくれたら何よりです。

……念のため言いますがハーレムではありません。断じてないから!!


八幡「うげっ…」 有栖「おや…」 翔「てめえは…」 学「……」

 例えば。

 例えばの話である。

 例えばもし、ゲームのように一つ前だけのセーブデータに戻って選択肢を選びなおせたとしたら、人生に変化は起りえるのだろうか。

 答えは否だと思う。

 それは選択肢を持っている人間だけが取ることが出来る手段、方法であり、俺のように強制であったりだとか、はたまた最初から選択肢を持っていない人間にとって、その仮説は全くの無意味になる。

 人生に後悔をしないことはありえない。なんなら人生全てに後悔しているまであるというのにだ。

 ifもパラレルもループも存在しない。だから結局のところ、人生のシナリオは一本道なのだ。可能性を論じること自体が虚しい。

 ……どうしていきなりこんなことを言い出したんだって?そりゃあ、お前……

 

「うげっ…」

 

「おや…」

 

「てめえは…」

 

「……」

 

 今しがた自分の行動に後悔していたからだ。

 つくづく、神様は俺のことが嫌いみたいである。

 

 

***

 

 

 夏休み四日目。

 

「比企谷君起きてー!朝だよ!今日も勉強頑張ろう!」

 

「……あと後生」

 

「寝すぎだから!それだと一生起きてこない人になっちゃうから!ほら、タオルケットを離しなさい!」

 

「だが断る!」

 

「もう、粘ったって結局起きることになるんだから、早く諦めなよ!」

 

 ……もう一之瀬が朝から部屋にいても違和感がなくなっている。慣れって怖い。このまま居座られたら俺の居場所が本気でなくなる。彩加だけなら一生この部屋にいてくれてもいいんだけどね。

 一之瀬と戦いつつ、部屋を見渡せば白波と俺の彩加が楽し気に朝食を作り、運んでいた。

 あれ?白波さんイチャイチャする相手間違ってるよ?ここの世話焼きっ子はいいの?男嫌いじゃなかったっけ……あ、彩加だからいいのか。

 とりあえず目で訴えてみよう。

 

「(おい、お前は一之瀬担当だろうが。彩加とイチャイチャするんじゃない!)」

 

「(戸塚君は別枠だよ?それに一之瀬さんから『私がやる!』って言われちゃったから仕方ないよ)」

 

「(仕方ないのか?)」

 

「(一之瀬さんと戸塚君を入れ替えて考えてよ!)」

 

「(……すまん、俺が間違ってた)」

 

「(分かればいいんだよ)」

 

「もうっ!起きて早々千尋ちゃんと見つめ合っちゃって!もしかして二人って……」

 

「「いやいやないから」」

 

「隙あり!」

 

「しまっ!?」

 

「タオルケット没収!さあ、観念しなよ!」

 

「……はい、顔洗ってきます」

 

「よろしい!」

 

 白波と同士としての意思疎通をしていたところを一之瀬に不意打ちされ、タオルケットから意識を離してしまったのが原因だな。俺の完敗である。くそ、オカンめ……。

 一之瀬帆波はBクラスを引っ張るリーダーとしての面が目立つため、意外かもしれないがそこらの女子と同じように恋愛系の話が好きである。自らが恋愛に巻き込まれるとダメなタイプだが、他人の恋愛は興味津々らしい。

 だからこそ騙されたんだが、白波はお前に告白してるよね?今でも好き好きオーラ凄いんだからそんなこと言うんじゃねえよ……。

 

 他人に対する配慮やサポート、周りと同調する能力が極めて高い一之瀬であるが、自分が絡むとその長所も消え失せる。これまで歩んできた人生によって出来た弊害だろうが……

 俺みたいに、自分のことしか考えない奴とは違う。心から他人に寄り添える少女。それが一之瀬帆波という優しい女の子だ。最近の俺に対する行動を見る限り決して優しいとは言えないが……それでも、一之瀬帆波は優しい(俺以外)女の子だと思う。

 

 だからこそ、自身の行動が他人を傷つけることをしっかり認識して欲しいと思うのだ。

 

 一之瀬が先程俺と白波はもしかして的な発言をしたとき、俺の目には少しだけ悲し気に目を伏せた白波の姿が映っていた。

 もちろんそれは俺のエゴだろう。他人の行動に口出し出来る人間でないことぐらい百も承知だ。

 そうだとしても、俺は一之瀬にそうあって欲しいのだ……今度それとなく伝えてみよう。

 ……白波とは協力関係にあるからな。べ、別に白波が可哀そうだとか全く思ってないんだからね!

 

「痛っ……」

 

 洗面台まで移動したのだが、思っていたよりも筋肉痛が酷かった。教官扱きすぎっす……今日一日は部屋で安静にすべきだ。それしかない。

 

「それで、二人は良い場所見つけた?」

 

「それがねー……」

 

「私も一之瀬さんも、小橋さんや網倉さんと一緒にいることが多くてね」

 

「あんまりそういった場所には行かないんだよね……」

 

「何の話?」

 

 痛みがところどころ走る身体を頑張って動かし、顔を洗いすっきりした俺がリビングへ戻ると、三人が何やら話をしていた。

 場所というからには明後日のことだろうか?一日目に俺が強制的に星之宮先生にデートさせられたため、一日目の予定を明後日に移したはず……はぁ、こんなに夏休みが予定で埋まるなんて、入学前の俺も、小町も信じられないだろうな。今でもたまに夢かもしれないと思うことがあるくらいだ。

 

「あ、八幡。この学校の敷地内でさ、のんびりできる公園とか知らない?」

 

「おー、知ってるぞ」

 

 何故そのことが知りたいのかは分からないが、そのような場所なら知っている。というよりベストプレイスの一つだ。

 入学して最初に俺が行ったのがマッカン探し&学校探索だ。監視カメラのない場所を確認したり、監視カメラに映らない箇所を把握したり、マッカンがどこにも売ってないと絶望したり、リア充がイチャイチャするゾーンを発見したり、生徒があまり寄り付かない広場を発見したり……収穫はたくさんあった。

 校門に近い場所に大きめの広場があることも、そんな探索中に知ったのだ。海から漂ってくる潮風を感じながら、ベンチで横になったらそれはもう気持ちよかった。読書するにもおすすめな場所だ。

 

「さすが八幡!これで懸念はなくなったね!」

 

「うん!朝ごはん食べて勉強したら、そこに行こう!」

 

 ……ん?

 

「なんだ、今日って予定入れてたっけ?」

 

「比企谷君忘れたの?今日はピクニックの日だよ?」

 

 ……マジですか、よりによって今日ピクニックに行くんですか。先に知っておけば昨日あそこまで自分を追い込まなかったのに……忘れてた俺が悪いけどさ。

 未だに予定が入っていることに慣れていないので、完全に忘れていた。今度からちゃんと端末のカレンダーにメモしとかないとだな。

 

 彩加と白波の作った朝食を頂き、今日も今日で数学の基礎問題集を解き進め、さらに一之瀬から化学の基礎問題集も授かり(強制)、出来るところをこなしていった。

 出来るところだけをしたのだが、如何せん空白が圧倒的に多い。一之瀬が彩加に教えているうちに、白波に助けてもらおう。

 

「白波、ここの計算なんだが……」

 

「ごめん、私化学出来ないから」

 

 白波ィー!!

 結局一之瀬に見つかり、付きっきりで数学と化学をとことんやらされた。その際に一之瀬の持て余し気味のたわわなモノが俺に幾度となくあたり、当然ながら白波がそれを見て目を血走らせることもあったが、無事に勉強会の時間をやり遂げた。

 

「じゃあ早速ピクニックの準備しよう!」

 

「私と一之瀬さんでサンドイッチとか食事の準備をするね」

 

「なら僕と八幡で飲み物を調達してくるね」

 

 気づけばそれぞれ役割が決められ、俺と彩加は一度彩加の部屋に向かい、お茶を作る。

 一人暮らし設定である寮の部屋のキッチンは、玄関から入ったリビングへとつながる廊下の途中にあるのだが、まず四人で動けるようなスペースはとられていない。せいぜいが二人まで作業できるかなぐらいなので、俺の部屋で料理を、彩加の部屋でお茶を作っているわけだ。

 ……思えば、今俺の部屋には美少女が二人だけでいるんだよな……白波が積極的に話しかけていて、それに笑顔で応える一之瀬の姿が浮かんできた。

 環境の変化……未だに完全に慣れたわけではないけれど。俺はこの四人での関係を、思っているより気に入っているのだろう。

 そうでなければ、こうして一緒にピクニックに行くだなんてありえないのだから。

 

 

***

 

 

「風が気持ちいいね~」

 

「あったかくて、眠くなってきちゃう……」

 

「八幡がここを気に入っている理由が分かるや」

 

「だろ?」

 

 俺先導の元、あまり生徒の寄り付かない広場まで来た俺たち四人は、のんびりと過ごしていた。

 一之瀬と白波が作ってくれたサンドイッチを時々口に運びつつ、潮風を感じながら談笑して過ごす……悪くないな。

 身体が痛いのは相変わらずだが、その痛みすら少し心地よく感じていた。って、それだとただのマゾになるじゃねーか。俺はMじゃない……違うよね?

 

「明後日は四人で買い物行って、その次の日はプールに行って、それからバカンスかぁ~。夏休み満喫しすぎてちょっと怖くなってきちゃうね」

 

「でも、夏休みくらいゆっくりしないと休まらないよ」

 

「あはは、学校に通ってると気を張っちゃうもんね」

 

 Sシステムはほとんどの生徒を翻弄し続けている。リアルタイムでの査定に、クラス間での争いを推奨させるような仕組み……自然と気を張ってしまうのは仕方のないことだろう。

 問題はバカンスが最高のバカンスになるのか、地獄のバカンスになるのか……坂柳は絶対だと言うし、葛城も疑っていなかった。ボイスレコーダーで僅かに聞き取れた上級生の会話も鑑みれば後者になるのは確実だろう。

 ……部屋に引きこもってちゃダメかな?バカンスにそこまで興味ないんすけど……。

 

「なんか眠くなってきちゃった」

 

「俺は寝る」

 

「あ、八幡……って寝るの早っ!」

 

 ここほんとに気持ちいいからな……寝なかったことがないぐらいには快適なんだよ。

 

 

***

 

 

「千尋ちゃん……眠かったんだね」

 

 私の膝の上にはすやすやと眠っている千尋ちゃんがいる。膝枕をしているわけだけど……千尋ちゃんの寝顔可愛いなぁ~。

 

「八幡、ほんとに寝ちゃったや」

 

 隣を見ると、戸塚くんの膝を枕にして眠る比企谷君がいた。彼はいつもここで昼寝をしているらしい。休日に部屋を訪ねてもいなかったときはここに来ていたのかもしれない。

 それにしても……寝顔だと目が開いてないからか、普段よりかっこよく見えるなぁ……本人曰く『目の腐りと理系教科の出来なさと彼女がいないことを抜けば俺はハイスペックだぞ』らしいけど、あながち間違いじゃないのかも。

 彼女をステータスに加えているのはどうかと思うけど……

 

「八幡、前々から休日は昼時まで寝て過ごすことも多かったらしくて、多分、最近は早く起きるようになったからなおさら眠くなったのかも」

 

「そっか、比企谷君には迷惑だったかな?」

 

 勝手に合鍵を作って、部屋に侵入し、勝手に居座り、勝手に予定を作って……あ、あれ?私結構酷いことしてたかも……。

 

「うんうん、そんなことはないはずだよ」

 

 私が自身の強引な行動に問題を考え始めた時、戸塚くんはそれを否定してきた。

 

「そうかな?」

 

「うん、前に八幡に聞いてみたんだ。僕たち勝手に部屋に侵入して、勝手に夜ご飯や朝ごはん作ったり、集合場所なんかにしてるけど、迷惑してないかなって」

 

「そ、それで……?」

 

「『迷惑に決まってるだろ。最初の頃なんてどう追い出してやろうかずっと考えていたしな……ただ、最近はむしろいないと違和感があるくらいだ。……だからって必要以上には来てほしくないのは変わらんけど』って言ってた」

 

 だから最初の頃はずっと顔が不機嫌だったんだ。照れ隠しだと思ってたのになー。

 それでも、比企谷君が一番信頼を寄せているだろう戸塚くんが言うんだから、すべて事実なんだろう。全く、捻くれた表現するなぁ。

 

「……一之瀬さんはさ、八幡のことどう思ってる?」

 

「ほえ……?」

 

 突然の戸塚くんからの質問に、咄嗟に応えることが出来なかった。

 比企谷八幡君、クラスメイトの中で一番に一人を好み、また、一人であろうとする人。

 比企谷君の考え方には驚かされてばかりだけど……好きな食べ物とか、飲み物とか、妹が大好きなこととか、戸塚くんのことも大好きなこと……あと本を読むのが好きなことぐらいしか知らない。

 Bクラスの皆は大小はあってもAクラスを目指すことに積極的だ。それは私だってそうだし、千尋ちゃんも、戸塚くんだってそうだ。

 でも、比企谷君からはそれが感じられない。だからってBクラスの不利益になるようなことはしてないけど、Aクラスになりたいとは思ってないみたいで。

 こうして一緒にピクニックに来たりしているけど、私は彼のことを多くは知らない。

 

「僕はさ……前にも言ったけど、八幡のことが好きだよ」

 

「「え!!」」

 

「あ、友達としてだよ!……白波さん起きてたんだ」

 

「あう……」

 

「……八幡と出会ったのは中学校の時に通っていた塾でね?初めて会ったのは近くのコンビニで、僕が男子高校生にナンパされてる時だったんだけど、他の人がみんな見て見ぬふりをする中で、八幡だけが僕を助けてくれたんだ。通報してないのに通報したなんて言ったり、動画を取りながら、周りの人に対して『男子高校生が女子中学生を襲ってるぞー!』なんて言ってさ。男子高校生が逃げた後、お礼を言おうとしたら八幡、自分は関係ないとばかりにすぐ行っちゃってね」

 

「(比企谷君らしいなぁ)」

 

「(戸塚君のこと、最初女の子だと思ってたんだ……ちょっと残念だけど、仕方ないか。戸塚君可愛いし)」

 

「たまたま学習塾が同じだったから話すことが出来たけど……もちろん、僕のことを塾で見ていたからってのもあったんだろうけど、他の人が出来ない行動が自然とできる八幡のことが……かっこよくてさ」

 

「確かに比企谷君は、自然に助けてくれるというか、届かないところに手を伸ばしてくれるところがあるね」

 

「(どうしてそこで恋愛に発展しなかったの!!)」

 

 ち、千尋ちゃん?今の話に泣く要素合ったかな……かなりショックうけてるようだけど……。

 

「塾でも一人で勉強しててさ。僕やほかの皆が話したり休憩してる時でも、一人で過ごしてて……なんか、そんな姿に憧れちゃって。一匹狼みたいでかっこいいなぁって」

 

「そ、そっかー……」

 

「(それ多分、比企谷君に話す相手がいなかっただけじゃないかな……)」

 

「この学校に入学してからも、すごいと思うことばっかりでさ。入学式の次の日に『五月は10万じゃないだろう』ってすぐに見抜いてたことや、僕の退学を取り消すために星之宮先生からテストの点を買うことを思いついたこととか……」

 

 え、えっと……なんだろう、惚れ気られてるのかな?

 

「だから、二人が八幡と普通に接してくれることが嬉しくてさ。ありがとうって言いたかったんだ」

 

「え、ええ!そ、そんな言われることでもないよ!」

 

「そ、そうだよ。戸塚君にお礼を言われるようなことじゃないよ!」

 

「……八幡はさ、誤解されることが多かった。僕は中学校が一緒じゃなかったから、学校でどんなことが起きたのかまでは知らない。でも、塾ですら避けられてた。休日に一緒に遊びに行った時も、横並びじゃなくて少し距離を作ってた」

 

「そ、それって……」

 

「八幡自身が言わないから詳しくは知らないよ。でも、休日に出かけた時なんか、僕と一緒にいることを周りに悟られないようにしていたんだ。最初はなんでなのか分からなかったんだけど……学校の友達が話してたんだ。総武中の比企谷八幡って奴が危ない男で、女子は近づいたら告白されるって」

 

「そ、そんな……」

 

 見た目だけで判断すると……確かに比企谷君は人相が悪いし、暗い。目付きも悪く感じる。けどだからって……やっている行為は……ただのいじめだ。寄ってたかって攻撃してるだけだ。

 前に告白について比企谷君が言ってた『告白して振られるのは当たり前で、酷いときには黒板に書かれてる』って話。あれが本当だとしたら……。

 

「もちろん、そんなことはないって分かってたし、憤りを感じたよ。八幡のことを何も知らないくせにそんなこと言わないでって。八幡にもそのことを言ったんだけど……八幡自身がどうでもいい感じで、むしろ『そんな男と関わってたらお前が狙われるぞ。もう関わらないで欲しい』なんて言ってきて……」

 

 それが、比企谷君の過去。あんな風に歪んでしまった原因。

 本人の口からよく出る黒歴史シリーズのレパートリーは凄まじい。その全てが実際のことだとは思っていなかったけど……すべて経験談だったんだ。

 あれ?でも比企谷君、この学校に入学してからはそこまで拒絶はしてない気が……?

 

「当然、僕はそれから八幡に毎日連絡して、一緒に勉強して、休日も一緒に出掛けたりする頻度を上げた!それからだったかな……少しだけ八幡が自分を否定しなくなった。まあ、それは僕に対してだけで他の人へはあんまり変わっていなかったんだけど……」

 

「(戸塚君ナイス!そんなことされたら比企谷君は戸塚君のこと大好きになるよ……改めて戸塚君ナイス!!)」

 

 だからCクラスに暴力を受けた時、皆からわざと遠ざかる言い方をしてたんだ……Bクラスの皆を巻き込ませないために……。

 あの時はテスト勉強の遅れを気にしてくれているんだとばかり思っていたけれど……やっぱり、比企谷君は捻くれている。

 

「だから、ありがとう二人とも。これからも八幡と仲良くしてくれると、嬉しい」

 

「「(か、可愛い……)」」

 

「もちろんだよ!比企谷君とも戸塚くんとも仲良くしていきたいよ!そうじゃなかったらこうやって四人で過ごしてないよ!」

 

「うんうん!この四人で過ごす時間、私も好きだから……」

 

「ありがとう、二人とも」

 

 今日は少しだけ比企谷君のことが知れた……よかったな。

 まだ比企谷君のことをどう思っているのか、私自身も表現できないけど……一緒に過ごしていけばそのうち……。

 あれ?比企谷君の耳が赤いような……気のせいかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(……ったく、彩加め、何の話をしてるんだよ……おかげで顔が熱くて寝たふりがバレるだろうが……でも、ありがとな)」

 

 

***

 

 

《天使を崇める会(2)》

 

『今日のピクニック楽しかったね』

 

『そうだな』

 

『特に……』

 

『特に?』

 

『一之瀬さんと一緒にサンドイッチを作ったことと、膝枕されたこと!!(≧∇≦)』

 

『俺も彩加に膝枕されたことだな。過去最高の寝心地だったぜ(*'ω'*)』

 

『その絵文字気持ち悪いよ?』

 

『酷くない?俺とお前同士じゃなかったの?このグループの中くらい使わせてくれよ』

 

『個人の方は連絡事項ぐらいしか話さないしね……』

 

『確かにキモいことは間違いないけどよ……』

 

『自覚有りで使ってるの……?』

 

『……お前今絶対引いただろ』

 

『ひ、引いてないよ?』

 

『文面で丸わかりなんだよなぁ……彩加に膝枕をされたことが嬉しすぎてつい付けました』

 

『なら良し!さすが同士!』

 

『でもその同士に引いてたよね……』

 

『そ、それより!なんと、膝枕時の写真が撮れました!』

 

『どうやって撮った?』

 

『一之瀬さんと戸塚君が会話してる時に、目線だけそっち向きながら、腕を回して……録画モードから無音でパシャリと』

 

『ガチ勢か……』

 

『そうだよ、私は一之瀬さんガチ勢だよ!』

 

『なら俺は彩加ガチ勢か……悪くないな』

 

『でしょでしょ!』

 

『あ、そろそろ寝る』

 

『ほんとだ、もうこんな時間、私も寝ようかな』

 

『じゃ、おやすみ』

 

『合言葉をまだ言ってないよ!』

 

『すまん、忘れてた』

 

『一之瀬さんは天使!女神!一之瀬さんを可愛くないと思う奴は人間じゃない!!』

 

『彩加は天使!神!彩加を可愛くないと思う奴は人間やめろ!!』

 

『じゃあ、また明後日ね~』

 

『ああ、おやすみ』

 

『おやすみなさ~い』

 

 

***

 

 

 夏休み五日目。

 今日は彩加がテニス部で一日練習、一之瀬と白波はクラスの女子と遊ぶんだとか。充実してるなぁあいつら。

 そんな俺はと言えば、ここ最近朝早くに起こされることが多かったせいか、起床時間が早まっていた。やべえ、俺まともな生活してる……小町、お兄ちゃん立派になったんだぜ。

 まあ、立派になった理由が学校による教育ではなく、クラスメイトに部屋が突撃されるという事態なのはどうかと思うが……過程は関係ないよ!結果が全てなんだよ!……多分。

 ラジオ体操に柔軟運動を行い、作り置きの朝ごはんを食べた後、俺は一之瀬の基礎問題集を取り出し……

 

「うわっ」

 

 嘘……だろ?俺が進んで数学に取り組もうとしている、だと……。

 まずい、これはまずい。

 何がまずいって、少しずつ一之瀬に調教されていっているのが行動に出てしまっているのがまずい。

 そのうち行動を制限されるようになり、俺の選択が全て一之瀬の掌の上でしか選べなくなる……待て待て、それだと一之瀬がヤンデレみたいじゃないか。さすがにそれはない……よね?

 ……ま、出したからには少しくらいやりますか。

 

 

 数十分後……

 

 

「あー駄目だ、分からん……やっぱ一人でやるのには限界があるか……」

 

 数学に手をつけ、化学に手をつけ……全然分からん。最初の方は出来るんだけどなぁ……途中から全然分からん。くそ、新しい分野に自ら飛び込んだ俺が悪いのか……悪いですね。

 部屋で勉強するのには限界がある……図書館でも行くか。

 

 基本、ボッチの行動範囲なんて限られている。

 この学校の特殊な制度のせいで学園中を歩き回ることはしているが……行くところなんて学校と寮と図書館ぐらいしかない。あと飲食店とコンビニ。

 そんなわけで、図書館に着いたのだが……

 

「……うっす」

 

「ヒキガエル君……?あなた、干からびていなかったのね」

 

 Dクラスの堀北と鉢合わせした。

 

「おい、なんでヒキガエルですら疑問形なの?あと干乾びてたと思ってたの?俺人間なんだけど」

 

「分からないわよ……もしや亡霊?」

 

「亡霊だとしたらなんでお前のところに現れるんだよ……」

 

「……それもそうね」

 

「お前は本を借りに来たのか?」

 

 堀北は肩から掛けるバックを持っており、中身は数冊の本のようだ。

 

「ええ、もう借りたから帰るところだけど」

 

「……お前、夏休み寮から出てないだろ?」

 

「別にいいでしょう。私は一人が好きなの」

 

「あー、わかるわー。わざわざ群れる必要性ないよな。一人の方が気楽なのに何故それが分からないのか」

 

「そうね、貴方と同じなのは少し癪だけれど……休みの日までクラスメイトと会うくらいだったら、部屋で勉強や読書に時間を費やした方が有意義だもの」

 

 やべ、コイツの気持ちめっちゃわかる。夏休みはクーラーの効いた部屋でアイスかじりながら、スイカ食べながら、だらだらするか、読書するか、ゲームするか……あ、読書しか一緒じゃないな。

 

「お前やっぱボッチだな。俺と同じ考え方してるんだけど……」

 

「同じじゃないわ。どうせヒキガエル君はだらだらと寝て起きての、だらしのない生活を送っているのではないのかしら?」

 

「……ふ、ふふふ……残念だったな!俺は毎朝8時には起きて、勉強している(させられている)ぞ!」

 

「そ、そんな……綾小路君、嘘をついたのね……」

 

 え、綾小路?アイツそんなこと言ってたの?……あーでも、朝からほとんど外出てないから、そう捉えられても仕方ないか。

 

「ちょっと用事が出来たわ。ここらへんで失礼するわね」

 

「お、おう……」

 

 堀北は誰かしらに電話をかけながら、寮の方向へと向かっていった。

 哀れ綾小路、奴はこのあと地獄を見るだろうな……確かに去年までの俺の夏休みはだらだらしてばっかりだっただろう。去年のことを思い出せば完璧と言っていいほどの推測だ。

 だが、今年は違ったんだ……なにせ部屋を乗っ取られているからな。行動の選択権は俺ではなく、合鍵保持者にある。もしあいつらが押しかけてこなければ……昼までは寝てるな。

 

 堀北が遠ざかっているのを尻目に、図書館の中に入る。

 中はクーラーが効いているのかとても涼しく、そこそこの生徒が利用しに来ていた。

 いつものように利用している席に向かうものの、さすがにこの人数じゃ誰か座ってる……だ、誰もいない!?なんで!?

 もちろん指定席みたいに使えるの嬉しいが……なんか悪いことしてる気持ちになる。ぶっちゃけて言えば座りにくい。

 よし、今日ぐらいは違う席に座ろう、そうしよう。

 

「あ、比企谷君、お久しぶりです。席空いてますよ」

 

「……おう」

 

 椎名がいた。普通にいつもの席に座った。他の人は誰も座らない。

 ……いや、これ座ったら駄目だろ。俺と椎名と……堀北で絶対変な目で見られてるって。

 俺はいつも座る席とは違うところに座ろうとする、が……

 

「「「……」」」

 

「……?」

 

 俺が他の空いている席を見渡せば、生徒たちは震えるように下を向き、椎名は『何してるんだろう?』みたいな感じで見つめてくる。

 ……ハァ、これはどうしようもないようだ。俺と一緒にいる椎名が変な目で見られないか気にしてたんだが……椎名は全く気にしていないようだし、周りの生徒も俺が来るかもとビクビクしているし……むしろここで違う席に行った方がよくないだろう。

 諦めていつもの席に座り、今日は勉強を始める。

 椎名は勉強をしている俺が珍しいのか、少しだけ目を見開いていた。

 

「数学ですか?」

 

「ああ、夏休みのうちに基礎ぐらいは固めようと思ってな」

 

「いい心がけですね」

 

 椎名が微笑みながら言ってくるので、つい目を逸らしてしまった。

 ……言えねえ、一之瀬にやらされて習慣づけされたなんて死んでも言えねえ。

 純粋に俺が頑張っていると思っている椎名に対しての心苦しさが半端ない。もうちょっと真面目に生きようかな……。

 

「あ、そこ間違えてますよ」

 

「マジで?」

 

「はい、ここは公式が違って……」

 

 数学のミスを次々と指摘しては、丁寧に教えてくれる椎名。

 す、すごい、戸塚や神崎、一之瀬と同じくらいわかりやすい。その上一之瀬みたいに怖くない!

 ここに天使がおったのか……これでこの学園の三大天使の内、彩加と椎名の二枠は確定だな。

 

「すまん、読書の邪魔してるよな」

 

「いえ、私がやりたくてしてますので気にしないでください。読書友達が困ってるなら、手助けぐらいしますよ」

 

「……ありがとな」

 

 何今の……滅多に見ない椎名の笑った顔……これが見れただけでも今日一日ここに来た意味があるな。

 数学を習っていると昼になったので、勉強を見てくれたお礼として昼ご飯をご馳走した。図太い奴なら高いものを頼むんだろうが、椎名はお手頃価格の料理を頼むことが多いので、結構奢り癖がついてしまっている。

 あかんな、そのうちCクラスに協力しろとか言われても断れなく……いや断れるな。Cクラスでまともそうなの、椎名と伊吹ぐらいしか知らないし。

 

 午後は読書をしつつ、数学と化学の勉強を見てもらいつつを繰り返し、忘れていた公式や化学式の復習をすることが出来た。

 それにしても、椎名は勉強できるな……中間考査と期末考査の結果を、お互いに見せ合ってみたが……唯一国語が張り合えているだけで、他の科目は負けていた。

 おそらくCクラスで一番勉強が得意であろう椎名に勉強を見てもらえたことは、貴重なことなんだろう。あんまりクラスメイトに仲のいい人はいないと言っていたし、クラスではボッチしながら本を読んでいる姿がありありと浮かんできた。

 俺みたいにボッチの極み(笑)ではなく、あくまで本を読むことが最優先であるだけだから、作ろうと思えば仲いい奴を作れそうだが……まあ、俺が何か言うことじゃないしな。

 

 分からないを分かるに変えられていき、気づけば俺たち以外には誰もいなくなっていた。

 それだけ夢中で勉強に読書が出来ていたということだ。明日、一之瀬や彩加に俺がやればできる子であることを示してやろう。

 

「だー……疲れた」

 

「お疲れ様です。今日一日でだいぶ基礎は出来るようになったと思います。私も復習になりましたし、楽しかったです」

 

「それなら良かったかな……悪いな、こんな時間まで付き合わせて」

 

「いえ、毎日この時間まではいますので」

 

 あー……夏休み始まっても、コイツ一日中図書館にいたんだろうなぁ。椎名程のスピードで読み進んでいれば、もしかすればここの本すべてを読むことも出来る……とは言えないが、8割方は読み終えるはずだ。

 

「今日はあんまし本読めなかったから何冊か借りていくか。椎名、お勧めはあるか?」

 

「はいっ、私も最近読んだ本で……」

 

 帰るついでに本を借りられるだけ借りていこう。椎名もお勧め出来ることが嬉しいのか、楽し気に色んな種類の本を紹介してくれた。

 自分の好きなものを他人と共有できた時の喜びは大きい。椎名にとってはそれが本なのだろう。本でつながった人脈の開拓が出来そうだな……。

 俺の場合はマッカンだろうか。でも今のところマッカンの同士は見つけられてないんだよな。綾小路に前に飲ませたら、顔色変えずに「これ、毎日飲んでるのか?」って心配されたし。

 誰か、誰かいないか?おーい……

 

 椎名に紹介された本のほとんどを借り、勉強道具を片付けてから寮へと帰る。

 隣には椎名がいる。どうやら彼女も直帰するらしい。

 自炊しているのか、どんな料理を作るかだの雑談しながら歩みを進め、エレベーターに乗り込む。

 

「比企谷君」

 

「なんだ?」

 

「連絡先を交換しませんか?」

 

 ……そういえば椎名とはしていなかったか。堀北のは何故か綾小路からもらったが、他は坂柳派の四人と綾小路、Bクラスの面々……よくよく思えば俺の携帯にこんなにも連絡先が載っているなんて不思議な感じがする……。

 

「おう、いいぞ」

 

 こうして椎名の連絡先を手に入れ、先にエレベーターを降りる。

 連絡先から椎名の位置情報が特定でき、逆に俺は椎名に居場所を特定されることになる。

 ……失敗したか?でも椎名からは何か裏がある感じはしなかったし……美少女の連絡先を欲しくない男子高校生なんていない。あ、櫛田は除くけど。

 

 

***

 

 

「つい、比企谷君の連絡先を手に入れてしまいましたが……」

 

 龍園君からの指示ではなく、私自身の意思で交換しました。読書友達だって立派な友達だと思いますし、比企谷君も交換に応じるということは、私のことを警戒はしていても嫌ってはいないということです。

 

「ふふっ」

 

 少しだけ、いつもよりも気分が高揚しています。久しぶりに彼と接し、楽しい時間を過ごしたからでしょうか?理系科目と文系科目の差が激しい彼ですが、そこも含めて面白い存在だと思います。

 バカンスでどんなことが起きるか分かりませんが……彼の行動が楽しみです。

 

 

***

 

 

【一年の男女が図書館でイチャイチャしていた件について(586)】

 

『あ、それ私見た!』

 

『俺も目撃した』

 

『あれで付き合ってないとかすごいよね……』

 

『はあ?付き合ってるだろ』

 

『いやいや、男子の方……Bクラスの比企谷君は、Bクラス担任の星之宮先生と付き合ってるって』

 

『マジで!』

 

『先生とか禁断の関係じゃん!』

 

『いや、それデマだぞ』

 

『そうなの?』

 

『ああ、正確には比企谷が一方的に惚れているだけだとか』

 

『うわぁ……そしたらあの女の子可哀そうじゃない?』

 

『僕一年Cクラスで、件の椎名さんに付き合っているか聞いたんですけど……』

 

『どうだったの?』

 

『ただの友達ですって言われました』

 

『ってことは、あの二人はあくまで友達としての関係だと?』

 

『そうなるな』

 

『……私、その友達同士のやり取りを見て砂糖吐きそうだったんだけど……』

 

『ああ、多分あの場にいた奴は、みんな同じ気持ちだ』

 

『耐えきれなくなって帰る奴が続出していったからな』

 

『最後は二人だけになったっぽいけど、他の人がいるときと変わらなかったらしい』

 

『勉強して、読書して、また勉強して……それでいい雰囲気にならないんだから凄いよなぁ』

 

『そういやよ、今更かもしれんが……誰もあの机には座らないよな?なんで?』

 

『……あー、それは……』

 

『比企谷君の目が不気味だったのが最初の理由だけど……Cクラスの椎名さんに、Dクラスの堀北さんが無視して座ってから、余計座りにくくなって……』

 

『なんか入れない空間だよな』

 

『会話も結構してるけど、ちゃんと周りに配慮した音量だからな。少しでも聞いてしまった身としてはあの中に入っていく勇気はない』

 

『やっぱ比企谷君は二股!?』

 

『星之宮先生も入れたら三股になる』

 

『前にBクラスの可愛い女の子三人といるところ見たぞ』

 

『六股!』

 

『Aクラスの杖ついてる子と、付き添いの女の子ともいるところを見たな』

 

『八股!!』

 

『南雲副会長超えてない?アイツが次世代の南雲に……』

 

「………え、なにこれ?」

 

 俺の空気と化す能力に、気配のなさを足しているというのにどうしてこんな噂が……最初は不気味な目と椎名と堀北という他クラスの女子と関わっていることが原因のようだが……星之宮先生の件は絶対クラスの誰かが漏らしたな。

 坂柳は俺を脅すネタとしてしか使わないから、その利点を放棄するとは思えない。必然とBクラスを疑うことになるが……部活に所属している生徒がうっかり漏らしたんだろう。

 よく考えたら口止めしてなかったな……今度からはしっかりと言い聞かせておこう。

 

 この内容をクラスメイトや綾小路、坂柳が把握しないことを祈るばかりだ。

 

 

***

 

 

「ふふふ、面白いネタがありますね……今度どうからかってあげましょうか」

 

「楽しそうね、アンタ」

 

「ええ。暇つぶしに比企谷君はもってこいですから」

 

「あっそ」

 

 

***

 

 

「え、ええー!ち、千尋ちゃんこれ!」

 

「一之瀬さん?どうしたの……こ、これは!?」

 

「明日は拷問かな」

 

「口割らせて理由を聞かないとね」

 

「全く、監視してなかったら碌なことしないんだから……うん、やっぱり今すぐ向かおう。明日は買い物をする予定だし、先に終わらせておいた方がいいもんね」

 

 

***

 

 

「堀北さん、あの、そろそろ正座をやめてもいいでしょうか」

 

「駄目よ。今日一日反省してなさい。ヒキガエル君に言い返されたのは屈辱的だったもの」

 

「(いやー、冗談で言ったつもりだったんだが……)」

 

「こんにちはー!」

 

「……櫛田さん、何か用かしら?私は今綾小路君への説教で忙しいのだけど」

 

「えっとね……二人ともこれ見て」

 

「【一年の男女が図書館でイチャイチャしてた件について】?」

 

「下種の考えそうなことだわ。本人たちへの迷惑を考えていないのかしら?……もっとも、その男女が周囲への迷惑を考えていなければ話は別だけれど」

 

「あはは……でもそれだけじゃなくて……」

 

「……堀北のことが書かれてるな」

 

「そうなの。堀北さん、八股のメンバーの一人になってるんだけど……」

 

「……綾小路君、ヒキガエル君は隣の部屋だったかしら?」

 

「ああ」

 

「……ちょっと行ってくるわ」

 

「い、行ってらっしゃーい……」

 

「……堀北相当怒ってたな」

 

「比企谷君は何もしてない感じだけど……ドンマイだね」

 

「(比企谷……骨は拾ってやる。強く生きろよ)」

 

 

***

 

 

『ちょっと、開けてくれないかしら』

 

「いや、なんでお前来たの?」

 

『少しあなたに説k……んんっ、話をしにきたの』

 

「(ま、まずい。あの記事書いたのは俺じゃないし、勝手に妄想豊かに暴走した思春期男女のせいなのだが、これは俺が怒られる流れだ)」

 

 鍵を掛け、一之瀬と白波に部屋にいないことをチャットで告げ、電気を消す。

 ふっふっふ……ベットに寝転がっておけば完璧だ。じっとしとこう。音出したらバレそうだし。

 

『あれ?堀北さん?比企谷君に何か用事?』

 

 は?一之瀬の声、だと……まさか連絡するのが遅かった?

 

『ええ、ちょっと掲示板のことについて』

 

『あ、一緒だ』

 

『でも、比企谷君部屋にいないって連絡してきてるけど……』

 

『さっき声を聞いたわ。確実に中にいるはずよ』

 

『『……へえ?』』

 

 あ、ヤバい。これは諦めて謝っていた方がいいな。罪は少しでも軽くしておこう……俺なんかした?何もしてないよ!とばっちりだって!!

 即座に明かりをつけ、玄関側に向けて土下座の姿勢を取る。

 ほぼ同時に、鍵が開けられた音がした…………。

 

 

***

 

 

 夏休み六日目。

 朝起きたかと思ったら、気づいたら夜だった。

 な、何言ってるか分からねえだろうが、俺だって分からん。昨日の夜、土下座をした辺りから記憶があいまいなのだ。足が尋常でないほど痺れていたことだけは感覚で覚えている。

 朝起きて(正座のまま寝てた)、生まれたての小鹿にすら負けるであろう足の力で立ったら、朝ごはんを食べていて(食べさせられた気もする)、椎名のおかげか無意識に公式を書き出して基礎問題集を完成させた……んだったな、確か。

 んで、着ていく服が勝手に決められ、彩加と一緒に着替えて……買い物に行ったんだったな。

 甘いもの巡りをしていた気がするが……な、何食べたか覚えてねえ……。

 あ、そうだ、端末のプライベートポイントはいくらだ?

 

「125289ppt……」

 

 あ、あれ減りすぎじゃない?昨日、椎名に昼を奢ったときは、まだ14万ぎりぎりあったはず……?

 いや、思い出すのはやめよう。なんか周り確認したら俺用と思われる水着があるし……彩加は水着の上にパーカーを羽織っていて、一之瀬と白波は……あ、鼻血。

 

 ……とりあえず寝るか。

 

 

***

 

 

 夏休み七日目。

 今日は一日プールの日である。

 俺が起きた直後に、三人が部屋を訪ねてきた。

 

「珍しいな。いつもなら俺のことなんて無視して居座ってるのに」

 

「い、いや~……」

 

「た、たまにはね!こういう日があっていいと思うの!」

 

「毎日朝からいるのは八幡に悪いと思って……」

 

「……まあ、おはようさん。入れよ」

 

「「「お、お邪魔しま~す……」」」

 

「(い、言えない……昨日はちょっとテンションがおかしかったとはいえ……あんな恥ずかしいことを///)」

 

「(比企谷君は覚えてないっぽいね……良かったぁ~、もし覚えていたら同士としての同盟関係が崩れるところだった……///)」

 

「(八幡……僕、悪い子になっちゃったや……///)」

 

 三人が妙によそよそしいが……特に何かやらかした覚えもないため部屋に通し、座らせる。

 今日は俺が朝ごはんを作ろう。そろそろ自炊の感覚を思い出しとかないと、この三人に頼りきりの生活に慣れきってしまう……。

 ご飯は昨日のうちに誰かが炊いてくれていたようなので、みそ汁と卵焼きと……簡単なサラダを作り、器によそっていく。

 三人には料理を運んでもらうことだけを手伝ってもらい、全員が席についたのを確認してか合掌する。

 

「いただきます」

 

「「「いただきます!」」」

 

 さて、味の方は……うん、三人や小町レベルにはまだまだだが、食べられないことはない。これなら手作り料理としては合格なのではないだろうか。

 

「美味しいよ比企谷君」

 

「うんうん!」

 

「八幡、腕を上げたね」

 

「お、おう、ありがとさん……」

 

 三人が妙に優しい。美味しそうに食べてくれているからまずいわけではないようだ。それだけで十分だろう。

 朝ごはんを食べた後、俺と彩加が食器を洗い、一之瀬と白波は一度部屋に戻るらしい。

 プールに持っていく日焼け止めや水着を準備してから、玄関前で集合することになっている。

 

「彩加は道具持ってきたのか?」

 

「うん、そこまで準備するものもなかったし……残りは僕がしておくから、八幡は準備してて」

 

「サンキュ」

 

 彩加の厚意に甘え、俺もプールに行く準備を整える……と、言っても水着と端末、部屋のキーカードくらいなものだが。

 俺が荷物をまとめ終わったときに、ちょうど彩加も片づけを終えたようだ。すでに自分の荷物を手に持っている。

 

「先に行っとくか」

 

「そうだね」

 

 部屋の鍵を閉め、彩加と二人で一階のエントランスで二人を待つ。

 神崎や柴田たちとは向こうで集合予定らしく、Bクラス八人でのプールだ。いやー、思ったより大人数で行くのね。

 つーか男子の面子……俺が浮くじゃねーか。でも眼鏡に慣れてないし、プールで万が一に怪我なんてしたらバカンスに影響が出そうだ。いや、出たら行かなくていいのか?

 少しだけ迷いつつも彩加と待っていると、一之瀬と白波がエレベーターから出てくる。

 

「早かったね」

 

「特段準備するものもねえからな」

 

「それじゃあ早速行こう!」

 

「「おー!」」

 

「お、おー……」

 

 テンション高いね君たち……まあ、プールだし仕方ないか。

 俺も行くのが久しぶりで、ワクワクしてるのは事実だしな。

 

 

***

 

 

 プールまで歩いていくと、こちらに手を振る生徒達の姿が。

 神崎に柴田、小橋さんに網倉さんの四名だ。

 ここに俺と彩加、一之瀬に白波が加わることで、八名のBクラスの集団が出来た。

 

「比企谷も来たんだな!お前のことだからサボるとばかり思ってたぜ」

 

 一番に話しかけてきたのが柴田颯。爽やかな運動神経抜群のイケメンである。

 柴田とは神崎を通して話すようになったのだが、話せば話すほど、一之瀬のスペックを運動神経に特化させた男版一之瀬のような存在だと感じるようになった。

 

「すでに予定として組み込まれていたからな。来ないという選択肢は選べなかったんだ」

 

「あー……お前、昨日大もががっ!?」

 

「柴田くん?」

 

「何か言いたいことでもあったの?柴田君?」

 

「ぷはっ……」

 

「おい、大丈夫か柴田?」

 

「……ああ、なんとかな」

 

 柴田が何を言おうとしたのか分からないが、一之瀬と白波が本気で止めるってことは相当言われたくないことなんだろう……柴田は変なところで口出ししたり、素直すぎるところがあるから、よくないことを言おうとしたのだろう。俺も気を付けとくか。

 

 全員が揃ったことでいよいよレジャー施設に向かう。既に外からでもわかる豪華な仕様。これが東育クオリティだとでも言うのか……

 

「あれれ?おーい!」

 

 一之瀬が突然声を上げたため、その視線の先を見ればDクラスの連中がいた。

 綾小路に堀北、櫛田に知らない女子生徒。三馬鹿の計7人だ。

 

「君たちもプール?」

 

「お、おう!そうだぜ!」

 

「ま、まさかBクラスと一緒の時間だとはなー!」

 

「あはは、奇遇だね」

 

「……とりあえず中に入ろう」

 

 神崎の一言で一緒に移動するが……三馬鹿が明らかに挙動不審だ。何か変なことをしでかさなければいいが……。

 

 

***

 

 

「いやー、それにしてもBクラスと一緒にプールだなんてワクワクするな!」

 

「そんなこと言って、一之瀬ちゃんたち女の子の水着が見たいだけだろ?」

 

「そ、そんなことねえし!?」

 

 露骨すぎないかこいつら……。

 男子の更衣室に入ったはいいが、三馬鹿と一緒だと変な目で見られそうだ。いや待て、すでに不気味な目をした生徒と周囲には認知されている……?

 

「比企谷は、この一週間どんな風に過ごしてたんだ?」

 

 俺の存在認知に対しての考察を始めようとしたところで、神崎に声をかけられた。

 この一週間……星之宮先生とのデートに始まり、勉強会からの遊びの流れ……言えることが少なすぎる!

 

「そ、そうだな……彩加達と過ごしてたぞ。あとは図書館に行ったり、筋トレしたりして過ごしてたな」

 

「なるほどな。道理で前よりも筋肉がついているのか」

 

「おっ、マジで?」

 

 それは嬉しいな。筋肉=強さではないが、最低限の筋力は必要だ。暴力を食らう前提で筋力をつけている時点で、ちょっと悲観過ぎるかもしれないが……。

 俺の経験上、暴力を振るうのは大抵が八つ当たりやストレス、ただのいじめによるものだったりする。

 しかしこの学校はルールがルールだ。暴力を立派な戦略として駆使しているクラス……一年だとCクラスがそうだが、そんなクラスに対抗、もしくは事を荒立てないようにするには自衛能力がいる。

 もちろん、相手を傷つけたりしたら相手の思う壺だったりするから、いなせる力が必要となってくるが……。

 

「ホントだ!八幡、前よりたくましくなってる!」

 

「そ、そっか」

 

 駄目だ、彩加が言うとエロくしか聞こえない。Dクラスの三馬鹿が興奮しているのが証拠だ……あれ、俺って三馬鹿と同レベルってこと?嘘だろ……いや、柴田もちょっと内股気味だからセーフだな。サッカー部のイケメンと同じならまだマシだろう。

 あと彩加。そのツンツンやめて!恥ずかしいから!なんか照れ臭いから!むずがゆくて変な気持ちになってきちゃうから!星之宮先生を思い出したりもしちゃうから……ね?

 

「よっしゃ、早速プール行こうぜ!」

 

「しゃあ!」

 

 しっかし……柴田と言い、レッドヘアーと言い、すごい筋肉してるな。運動神経がトップレベルなのも頷ける。神崎は俺より良い肉体だが、二人には劣るし……綾小路も何気にかっこいい肉体してるよな……。

 彩加に少し腹筋が見えて、ちょっとショックだったのは内緒である。

 

「「うおおおお!!」」

 

 中に入った瞬間、三馬鹿が声を上げている。やめて!君たちと同類に見られるの恥ずかしいからやめて!って、二馬鹿になってる。あと一人はどこ行ったの?

 

「さーて、存分に楽しんじゃお!」

 

「「おー!」」

 

 隣の入り口から一之瀬達も中に入ってきていた。

 しかしまあ……水着ってボディーラインが強調されるされる。一之瀬とかリアル『ボン!キュ!ボン!』である。白波に網倉さん、小橋さんも可愛らしい水着に身を包んでいる。駄目だ、直視したら駄目なやつだ!

 そうして視線を逸らした先には……櫛田……はチェンジとして、堀北と名前の知らない女の子がいた。

 堀北はまだ罵倒のイメージが強いせいか、直視をしてもそこまで問題はなかった。だが美少女に変わりはない。

 もう一人の女の子はラッシュガードとやらを身にまとっているらしい……この反応と後ろの方にいることから……さてはボッチ!

 

 新たなボッチ仲間の登場に思わず心が躍りかけたが、その女の子の綾小路を見つめる目で気づいた。

 これ、綾小路のこと好きなやつですね……。

 そういや前に一之瀬が言ってたな。監視カメラの策を使った後、綾小路に依頼されて警備隊を連れて指定された場所に向かったら、女の子が気持ち悪いおっさんに襲われていたって……。綾小路が助けたっぽいので今の状況は理解できるが……一之瀬が面と向かって気持ち悪いとか言っちゃうおっさんって、どれくらい気持ち悪いんだろうね。想像するのも嫌になるくらいだろうか。

 

「そ、そうだ……その、どうかな?」

 

「(一之瀬さんを褒めすぎても駄目だけど褒めなかったら殺す!)」

 

 いや、一之瀬さんちょっと近くありません?その豊満な二つのお山の谷間が……だからガン見しちゃダメだろ。

 それに白波さん?それは無茶ぶりすぎるよね?どうやれと?

 

「あーなんだ、その……似合ってんじゃねーの?」

 

「そっか……良かった」

 

「「……」」

 

 うわぁ……二馬鹿がめっちゃこっち睨んでる。男の嫉妬は見苦しいぜ?……調子乗ってましたすんませんした!

 結局白波たちの水着に関しての感想を求められたが……俺じゃなくて、神崎とか柴田とか彩加に言いなさいよ。あ、めっちゃ自然に褒めてる……こ、これが俺と三人の差とでもいうのか……

 

「あれ、山内君がいない……?」

 

「「!?」」ギクッ!

 

「あ、あれ?アイツどこ行ったんだろうな!?」

 

「そそ、そうだな?アイツいつの間に……」

 

「うーん、はぐれちゃったのかな……探しに行った方が……」

 

「大丈夫大丈夫!トイレか何かだよ!それよりさ早く何かで遊ぼうぜ!」

 

「あ!!向こうにバレーコートがあるぜ!やろうぜ!あれやろうぜ!!」

 

「な、なんでそんなに必死なの……?」

 

 一之瀬が困惑するくらいには、テンションがおかしい馬鹿二人。そんなにバレーしたいわけ?うっそだぁ!……俺もテンション高いかも。

 絶対何か企んでやがるな、こいつら……。

 

 須藤(思わずレッドヘアー君と言いそうになった)の案でバレーをすることになったのだが、如何せん数が合わない。Bクラス対Dクラスとしても、こちらが二人多い。

 で、ローテーションを回すことになったのだが……

 

「きゃあ!」

 

「おっと」

 

「あ、ありがとう比企谷君……」

 

「……どういたしまして」

 

 女子とバレーとかしたことないからどう動いていいか分かんない。まずバレー自体、対人でやったことがない。

 味方との連携とか分かんねえよ……。

 

「比企谷!」

 

「うおっ!?」

 

 そう思っていた矢先、柴田のトスに反応できず打ち損じる。さすが俺だぜ……ダサいな。

 

「ドンマイ八幡!頑張って!」

 

「……おう!」

 

 彩加に応援されちゃあ、仕方ない。俺の本気を見せるとしますか。

 試合が進んでローテが回り、俺のサーブターンがやってきた。

 

「あいつバレー下手だぞ!ここが狙い目だ!」

 

「おうよ!」

 

 須藤や池が好機とばかりに前に構える。弱い奴のサーブは緩いのが普通だ。当然、舐めきっている。

 ……もう一度言うが、俺はバレーの対人プレーをやったことがない。ハブられていたり、自ら迷惑にならないように参加していなかったからだ。

 だがそれは対人でのプレイだけだ。一人でできるものはそこそこ極めている。テニスだって壁打ちで鍛えたんだしな。

 それがバレーの場合、俺が極めたのは……

 

「ふっ!」

 

「よっしゃ、オーライ!……うわっ!」

 

「い、今、空中でぐねって曲がった……!」

 

「ジャンプフローターだと……?」

 

 サーブだけはやりまくっていたのだ。

 まあ、筋力なさ過ぎてスパイクサーブは打てないのだが……今ならワンチャンあるか?

 

「ま、まぐれだろまぐれ!おら、次打ってこい!」

 

 そう、一度だけではまぐれと思われる。

 だからこそ……もう一度池を狙う。狙い撃つぜ!

 

「ふっ!」

 

「また俺かよ!?」

 

「う、うめえ……」

 

「比企谷君サーブ上手なんだね!」

 

 そう、サーブだけ上手いのだ。スパイクとかトスとかレシーブ諸々下手なんだけどね。

 一人でできるものを極めているならトスだって上手いと思う奴がいるかもしれない。

 でもね?考えてみ?一人で壁パスし続けるのと、誰もいないところへボールをやる遊び……楽しくないよね?

 その点、サーブだけは飛距離を変え、威力を変え、軌道を変え……色々楽しめたからな……理由が悲しすぎる……。

 

「次は俺が取ってやる!」オラッ、コッチダ!

 

 なんか須藤がやる気になってやがる……仕方ない、打ってやるか。

 もちろんフローターなんて打ってやらない。スパイクで吹っ飛ばしてやる。

 

「八幡行けー!」

 

 天使の声援を力に変え、俺はこのサーブに全てを乗っける。

 

「青春の……馬鹿やろおおおおおお!!」

 

「今度は強打かよ!?」

 

 俺の渾身の一発は……

 

「オラァ!!」

 

「ナイス須藤!」

 

 須藤が完ぺきとは言えないが、しっかりと上げ……

 

「綾小路!」

 

「ほい」

 

「よっしゃ!」

 

「無理……!」

 

 須藤の強烈な一撃を食らい、白波が倒れてしまった。

 まじかー……あれ取られたら俺に打つ手ないよ?初めて決まったスパイクサーブだったのに……。

 

「……すまん、白波」

 

「もう……」

 

「ちょっとかっこつけたら取られちゃった」

 

「……キモ」

 

 ごめん、ほんとごめん。だから涙目で睨むのやめて。俺が悪かったから。

 あと一之瀬に聞こえないように調整された音量で罵ってくるのやめてくれませんかね……そこまで気持ち悪かったの?ソッカー……。

 

「ん?なんだろう、あれ……」

 

 一之瀬が指していた方向には……トイレに溢れる生徒達。

 

「トイレの方ね」

 

「何かあったのかな?私、見てくるね」

 

「ちょ、待てよ!!」

 

 明らかに何かが起こっているため、白波が様子を見に行こうとした。

 だがそれを池が止めた……異様に血走った目で二人を見つめている。

 

「今は行列とかどうでもいいだろ!集中しろよ、集中!」

 

「「きゃ!……あうう……」」

 

「池君、どうしちゃたんだろ?」

 

「さあ、変なものでも食ったんじゃないか?」

 

 なるほど……綾小路、お前……知ってるな?

 

「(比企谷がこっちを見ている……知らんぷりしとくか)」

 

 あ、目を逸らしやがった。アイツ……。

 また、しばらくバレーを続け、またも須藤の豪快なショットが決まったところで中断。

 

「ねえ、山内君遅くない?探しに行った方がよくないかな……?」

 

「い、いやいや!櫛田ちゃんの気にするようなことじゃないよ!」

 

「でも、何かトラブルに巻き込まれているかもしれないし……」

 

「いや、いやいやいやいや!」

 

 池……やはり馬鹿だ。そんなあからさまな態度してたら、自分から怪しいと宣言してるようなもんだぞ。

 

「池君、友達のことが心配じゃないの?」

 

「え……俺、薄情な奴だと思われている?そういえば女子は……」

 

 しばらくしゃがんだり頭を抱え込んでいたりした池であったが、何か決意したのか、立ち上がって腕を背中に回した。

 ……?池の背中を見ていた須藤が目を見開いていたため、こっそり確認すると、何やらモールス信号を発信していた。

 やっぱこいつら何かしらの目的で結託してやがるな……頼むから犯罪だけはやめてくれよ……ついでとばかりに俺も犯人にされそうで怖いし。

 何もやっていないのに、たまたま近くにいたのと目付きが悪いとの言いがかりから、いったい何度罪を被せられたことか……。

 

「謝られたってどうしようもねえんだよ!」

 

「すまない……!でも、櫛田ちゃんに嫌われてたくなかったんだ!」

 

「じゃあ、山内君探しに……」

 

「やあ!ただいまー!!」

 

 櫛田が我慢できないとばかりに行動に移そうとした時、全速力で三馬鹿の最後の一人がやってきた。

 

「山内君!」

 

「いやー!トイレが混んでてさー!」

 

「そっかぁ、でも良かった。心配してたんだよ?」

 

「あの、山内君が帰ってきたので、私は抜けて……」

 

「だぁー!!は、腹が痛いィィィィィィィ!!トイレ行ってくるー!!」

 

「交代……」

 

 交代しながら何かをしていることは確定したな。

 それにしても……ラッシュガードの子が不憫すぎる……仕方ない。

 

「あー……Bクラスの方が人数の周り遅いし、混合でやらないか?」

 

「八幡?」

 

「いや、手番が回ってくる回数に差があるだろ?Dクラスの方が疲れるだろうし、協力関係にあるんだから交友するってのはありじゃないか?」

 

「比企谷君が自分からそんなことを……なんか嬉しいや」

 

 ちょっとー、一之瀬さーん?そこで涙拭くような真似しないでくれません?白波たちに付き添われて、まるで問題児の俺に一之瀬が苦労してきたみたいになっちゃってるから……あれ、合ってるな?

 

「比企谷は佐倉のことを気にしてくれているんだ。アイツも人付き合いが上手いほうではないからな」

 

「あ、そうなんですか……」

 

 綾小路が何を言ったのかは知らないが、女の子が頭下げてきてるから余計なこと言いやがったな……。

 

「じゃあ再開しようか!」

 

 

***

 

 

 しばらくは楽しく遊んでいたのだが、またしても三馬鹿が動き出す。

 

「うおおおおおおおおおあああああ!?」

 

「きゃ!」

 

「足が攣ったああああああああ!!」ドドドドド!

 

「ええ……」

 

「機敏な足の攣り方ね……」

 

 絶対足攣ってねえだろ……元気に全力疾走していったんだが。

 向かった先は……更衣室?

 

「どうするんだ?人が減っていくばかりだが……」

 

「あの、一先ず二人が帰ってくるまで中断するのは……」

 

「諦めんなよ!」

 

 うわ、三馬鹿最後の一人がなんか言い出したぞ。

 

「俺がもっと動いてやんよ。だからやめるなんて言うなよ!!お前らの、ビーチバレーに懸ける思いはその程度だったのかよ!もっと、もっと熱くなれよおおおおお!!」

 

 どこかの修造が乗り移ったかのように荒ぶる三馬鹿の一人。こいつこんな奴だったの?熱血系男子?

 

「ええ……」

 

「山内君ってこんな性格だったっけ……」

 

「元々の性格が分からないわ。どっちが池君で、どっちが山内君か時々分からなくなるもの」

 

 違うのかよ。ここにきてテンションがおかしな方向に振り切っているのか……いや違うな。須藤や池を探させないのが目的?だとすれば……

 

「悪い、少しトイレ行ってくる」

 

「はあ!?そんなもん我慢できるだろ!」

 

「無茶ぶりすぎるだろ……俺抜きで進めてていいから」

 

「あ、待て!」

 

 山内が追っかけてこようとしたが、少し速足でトイレに向かう。

 ……と、思わせてバレーコートから俺が見えなくなってから、更衣室の方へと足を向ける。

 

 そうして更衣室前に着いたのが……なんか危険人物いっぱいなんですけど……。

 

「何を騒いでいる」

 

 更衣室の前に須藤、その前で向かい合うように坂柳派と龍園一行が対峙している。

 さらにそこへ、上から生徒会長が現れる!

 ……自然に着地してるけど、めっちゃ高いところから降りなかった?運動神経抜群過ぎるだろ……。

 

「レジャー施設として開放されているとはいえ、ここも校内だということを、理解していないのか」

 

「フフ、これはこれは生徒会長さん」

 

「お、おおう……」

 

 三人の化け物に囲まれた須藤。たまらず後ろに交代するが、引けない理由があるんだろう。通さないとばかりに腕を広げている。

 

 ……須藤、強く生きろよ……。

 

 元々何が起こっているのかを把握するために来たのであり、面倒ごとに首を突っ込む気はなかった。少しずつ後退していき、そして逃げられるような位置まで後退した……

 

「お、そこにいるのは比企谷じゃないか」

 

 そして橋本が声を上げたのだ。

 橋本ー!!お前ふざけんなよ!このタイミングで俺に気づいてんじゃねーよ!

 ほら、坂柳がこっち向いて視認しちゃったじゃん。龍園も会長もコッチ見てくるじゃん。

 

「うげっ…」

 

「おや…」

 

「てめえは…」

 

「……」

 

「ヒキガエル君、ご無沙汰しています。水が恋しくなったんですか?プールですよ?」

 

「ねえ、なんで俺がプールに来た理由が水求めてるの前提なの?違うよ?俺人間だからね?」

 

「てめえはBクラスの雑魚……いや、八股野郎じゃねえか」

 

「八股ネタどんだけ広がってんの!?ちゃんと確証取ってから言ってくれない?デマ多すぎて、ここの生徒の脳みそどうなってんのか心配になってきちゃうよ?」

 

「忘れてんのか、てめえとひよりのやり取りはすべて俺に筒抜けだ」

 

「……」

 

 忘れてたー!!

 そうじゃん、全然気にしてなかったけど椎名は毎回録音してたじゃん!

 

「さすがにセンコーにまで手を出しているのには驚いたが……ひよりとは随分と仲が良さげだな?」

 

「いやー、そんなことないぞ。友達ですらないレベル」

 

「ああっと、うっかり今の言葉録音してしまったぜ。仕方ない、今度ひよりに聞かせて……」

 

「すいませんでした初めて他クラスに友達が出来て舞い上がってました!!」

 

「クク、面白いなお前。坂柳にちょっかいかけられているわけが理解できたぜ」

 

「そうですよ、彼は弄れば弄るほど面白くなっていきます。無茶な命令をするのは楽しいです」

 

「へえ、俺も何かふざけた内容でもさせてみるか……」

 

 やめて!マジでやめて!俺を玩具みたいに扱わないで!あ、そういえば坂柳には玩具になります宣言したんだっけか……終わった……。

 

「茶番はそこまでにしておけ。まずは更衣室前のこの男が優先だ」

 

 会長の一声で、集まってきた野次馬も坂柳や龍園たちも須藤に注目する。

 会長……アンタは俺の恩人だ……この人は良い人だ。

 

「足が攣ってんだよ!やるんじゃねえよ!」

 

「そうは見えないが……」

 

 俺が会長に恩義を感じていると、須藤が会長、龍園、坂柳に囲まれていた。

 ……あの三人に囲まれるとか一生経験したくない出来事ランキングトップ3に入るな。

 

「おい、コッチで何かやるみたいだぜ!」「Dクラスの堀北とか言う奴が?」「行ってみようぜ!」「私も行く!」ワイワイガヤガヤ……

 

「(堀北?)」

 

「(Dクラス……)」

 

「(鈴音……一体何を?)」

 

 全員の注意が堀北の方へ向かい、移動していった。

 その際、

 

「……バカンスから帰ってきたら、生徒会室を尋ねてきてくれ。お前に話がある」

 

「へ?」

 

 会長が俺に耳打ちをしてきた。

 生徒会室に呼ばれたんですが……俺何かやらかしたか?も、もしかして八股の噂を……?

 色々考えつつ、須藤を含め全員が動いたのを確認して、俺は更衣室にとどまる。

 今回何が起きてたのか確認するのが先だ。堀北が何かしていても彩加や一之瀬に聞けばいいし。

 

「ふー、無事脱出完了と。って、はああ!?」

 

「えー……」

 

 途中腹が痛いと言ってトイレに行っていたはずの池が、女子更衣室から出てきた。

 これは……通報案件ですねわかります。

 

「お、お前なんでこんなところにいるんだよ!」

 

「お前らが怪しすぎる動きをしているからだろ……さすがにこれは見逃せないわ」

 

「ちょ、ちょっと待てよ!お前だって女子の生着替え見たいだろ?!」

 

 なるほど、仲間に入れることで見逃せと言っているのか。

 そ、そりゃ俺だって男だし?見たくないと言えば嘘になるが……あれ、でも俺見たことがある気がする……?昨日、一之瀬と白波の……くっ、靄がかかったように明確に思い出せねえ!

 ……まあ、それがなくともこいつ等が一之瀬と白波の裸体を見るとするなら……許せるわけがない。

 

「いえ、別にいいんで。通報してきます」

 

「まっ!待て待て待て待て!!頼む!それだけは勘弁してくれ!!」

 

 必至だなコイツ……盗撮なんて犯罪だろうが。通報するのは人として当然の行動だろう。

 Dクラスには迷惑をかけてしまうかもしれないが……自業自得だ。大人しく処罰を受けるんだな。

 

「な、なんでもする!俺と今回結託してたやつらもお前に従う!だから頼む!通報はやめてくれ!!」

 

「今なんでもって言ったな?」

 

「へ?い、いや……」

 

「『な、なんでもする!俺と今回結託していたやつらもお前に従う!だから頼む!通報はやめてくれ!』」

 

「そ、それ……」

 

「ボイスレコーダーだ。さーて、どうすっかなぁ~?」

 

「……」ドサ……

 

 池は口に出してしまった言葉を後悔したのか、その場に座り込んでしまった。

 あれー?なんか俺が凄い悪役みたいになってない?魔王みたいなポジション……いや、ナンバー2ポジションにいる参謀兼実は魔王より強いみたいな?何それカッコいい。

 ……しかしさすがに罪悪感が浮かんでくるな。さっき野次馬達が言っていた、堀北のなんらかの宣言も自らするとは思えないし、多分すでにバレている……最悪、一之瀬に伝えてあとからカメラのデータを抜き取ってもらえばいいしな。

 通報して俺まで疑いの目を向けられては勘弁だし、ここら辺で虐めるのはやめてやるか。

 

「まあ、黙っといてやるよ」

 

「ほ、本当か!?」

 

「今回結託していた奴らのプライベートポイントを全部寄越すなら、だけど」

 

「」

 

 それくらいなら請求してもよくね?Dクラスは全体的にポイント少ないし、バカンス中にまたポイント増えるんだからいいだろ。

 

「(いや、でも今日中に使い切ってから……)」

 

「言っておくが、0ポイントだとか100ポイントだったら通報するからな」

 

「……はい」

 

 

***

 

 

「私たちは、Aクラスを目指す!」

 

「「おおおお!!堀北さーん!!」」

 

「最高だぞ堀北ー!」

 

「素敵だー!!」

 

 どうやら、ちょうどこっちも終わったみたいだ。

 

「あ、八幡!さっきね、Dクラスの堀北さんが……」

 

 俺に気づいた彩加が、先程の堀北の宣言について話してくれた。

 ……すげえな、アイツ堂々としすぎだろ。絶対坂柳と龍園に目を付けられたな。これで俺から注目を逸らしてくれればいいんだが。

 

「ふふ、比企谷君。ここにいたんですね」

 

 ……振り返るな、振り返ったら負けだ。

 

「八幡?あの、後ろ……」

 

「さ、彩加!あっちのスライダーしに行かないか!行こうぜ!ほら、早く!!」

 

「で、でも……」

 

「比企谷君?」

 

 くそ、彩加の優しいところが仇になったか……。

 

「……はい」

 

「最初から気づいていましたね?そこまで写真を公開したいのでしたら……」

 

「すみません、ほんとにごめんなさい!この通りです!」

 

「こんな大勢の前ですぐに土下座できるなんて……さすがマゾヒストです」

 

 あー……これ電子掲示板に碌でもないこと書かれるわ。ちくしょう……。

 

「さて、私たちは着替えてきますから、待っていてくださいね。ここで正座待機です」

 

「い、いやあの、ここ目立つのですが…?」

 

「そうですか。橋本君、今すぐ電子掲示板に…」

 

「待たせていただきます!」

 

「ええ、苦しゅうないですよ」

 

 駄目だ、俺もう坂柳に逆らえる未来が見えない。このまますり減るまで使われて、飽きたら捨てられて……凄惨な未来しか浮かばねえ…。

 坂柳が嬉々として更衣室に向かっていくが、その際近くにいた神室や橋本、鬼頭に同情の念を向けられたのはお察しできるだろう。

 でもこの場所は良くないな。膝がめっちゃ暑いし、痛い。

 それに、ここに来た面子は……

 

「比企谷君、坂柳さんとどんな関係なの?」

 

 目が笑っていない一之瀬。凄い笑顔だ……ついに顔は笑っているのに目だけ笑っていない状態を会得したな!

 

「比企谷君が好きなのは戸塚君じゃなかったの!」

 

 いや、あの、坂柳のことは好きじゃないしむしろ嫌いなまであるんだが……あと周りに人がたくさんいるのに、そんなことを言うんじゃない!今日の掲示板は荒れそうだ。

 

「八幡……す、すごい人と知り合いなんだね」

 

 て、天使に引かれた……一生恨むからな坂柳!

 

「比企谷、お前……苦労しすぎだろ……」

 

 柴田……そうなんだよ、分かってくれるのはお前だけだ……。

 

「ハァ、相変わらずトラブルに巻き込まれているんだな」

 

 ちょっと神崎君?俺別に巻き込まれたくてやってるわけじゃないからね?なんか勝手に悪い方向に物事が進むだけだからね?

 

「「比企谷君……M、なんだ……」」

 

 女子二人はガチ引きしてるじゃねーか……俺はMじゃない!ノーマルだ!……って、この状態で言っても説得力ないな。

 龍園と取り巻きは帰ったらしく、ギャラリーもBクラスの面々の異様な雰囲気を怖がってか離れていった。

 唯一残ったのはDクラスだが、あまり首を突っ込むものじゃないと思ったのか、はたまた池が俺に盗撮の件がバレたことを告げたからか……あ、離れていきやがった。

 

 しばらくお説教という名の拷問を正座で受けていると、坂柳派が姿を見せた。

 ……いや、坂柳ほとんどというか全く姿変わってねえじゃねーか。先天性心疾患だしプールは駄目なんだろう。なんで来たんだお前!!

 

「それは面白いことが起きるかも、と思ったからですよ」

 

「ねえ、ナチュラルに人の心読まないでくれない?なんなの?お前サトリだったりするの?」

 

「比企谷が分かりやすいだけだぜ?俺だって今のは分かったし」

 

 マジで?橋本にも心読まれてたん?

 

「わ、私も分かったよ!」

 

「僕も僕も!」

 

「私も!」

 

 いや、別に張り合わなくていいから。一之瀬と彩加と白波が声を上げ、坂柳はその光景が面白いのか少しだけ笑った。

 

「随分と慕われているようですね。もう少しでAクラスに移動するというのに」

 

「ど!?どういうことなの比企谷君!?」

 

「それは前に断っただろうが……つかなんでここで言っちゃうの?みんな呆然としちゃったじゃん」

 

「比企谷君は私との密会を話していなさそうでしたので、Bクラスの皆さんの手助けをしているだけですよ」

 

「「み、密会!?」」

 

「は、八幡……?」

 

「お前……八股ってマジだったのかよ……」

 

 だ、駄目だ。この状況を打開できる策が思いつかない。……素直に全部話すか。

 密会は坂柳派の全員とであること伝え、少しばかり弱みを握られていることを説明する。

 

「その弱みって何?」

 

「……言えない」

 

「えー!なんで!?」

 

 言えるか……Bクラスにはただでさえ星之宮先生との関係を誤解されているのに、写真出されたら終わる。何が終わるって俺のBクラス内での立ち位置が終わる。

 今でも浮いているって?……確かに!

 

「今日は楽しめたので20枚差し上げます。あとで部屋に伺いますね」

 

「来るんじゃない、お前だけは来るんじゃない。出来れば橋本がいいな」

 

「すまん、比企谷……俺にそっちの気はないんだ!」

 

「違うわ!変な誤解してるんじゃねーよ!」

 

 どうしてここまで大声を出さなきゃならないんだ……今日一日で叫びすぎだろ俺……。

 

「坂柳さん、比企谷君に何を言ったの?」

 

 どうやら一之瀬達には聞こえてなかったようだ。俺やAクラスだけに聞こえる音量だったし、聞こえていたらいたで怖いか。

 

「ふふ、何を言ったでしょう?こればかりは私と比企谷君との秘密です」

 

「むー!」

 

 あしらう坂柳に、ほっぺを膨らませて抗議する目を向けてくる一之瀬。いや、君たち入り浸ってるよね?坂柳にそこを見られると困るから、来てほしくないってことなんだけど……。

 

「せっかくですし、AクラスとBクラスで遊びませんか?」

 

「……皆、Aクラスと一緒になるけどいいかな?」

 

 一之瀬の問いに俺だけは首を横にブンブンと振るが、他の皆は異存ないらしい。

 

「酷いです比企谷君……あんなに私に迫ってきていたのに……もう飽きたんですね……」ウツムキ

 

「比企谷君?どういうことかな?」ニッコリ

 

 (写真を返してもらうために)迫ったとは言えない……もう、疲れたんだけど。

 いっそ殺してくれないかな……楽になりたいです。

 

 

***

 

 

 バカンス前日はこの一週間の中でもダメージが特に大きかった。

 唯一の救いと言えば、Dクラスの盗撮魔達からプライベートポイントを根こそぎ奪えたことぐらいか。

 ……まさか本当に綾小路も関わっているなんてな。お隣さんは盗撮する変態さんだったらしい。あ、でも、俺は掲示板だと極度のマゾで女子の尻に敷かれている十股の最低野郎らしいから……俺の方が酷い気がする。

 ちなみに増えた女子二人は網倉さんと小橋さんだ。そろそろ誰かに刺されそうだな……誤解で死ぬとか嫌すぎる。

 

「全部で39003pptか……思っていたよりも綾小路が持っててびっくりしたが、アイツの部屋俺より何もなかったしな……」

 

 本当にモノがなかったので、試しにとばかりゲームをやらせてみたら思った以上にハマっていた。まさかスマブラが俺より弱いなんて……今度彩加たちとやるときは綾小路も誘おう。そしたら罰ゲーム二分できるだろうし……。

 

 明日からバカンスに行くことになるが、ここまで相当濃い毎日だった……もう電子掲示板はしばらく見ないようにしよう。見たらキレること間違いなしだし。

 俺がここまで夏休みを他人と過ごすなんて誰が想像できただろうか。俺自身も気づけばBクラスや他クラスと一緒にいるんだから、人生、本当に何が起きるか分からないものである。

 

「この学校に来たのは、ちょっとした興味からだったが……来て良かったな」

 

 人と触れ合うことがここまで楽しいとは思わなかった。小町と離れ離れになることとなんとか相殺できるくらいには、来てよかったと思っている。

 ……まあ、ちょっと、いやかなり混沌としていると思うが、楽しいと感じているのは確かだ。

 

「……マッカン飲んで寝るか。明日朝早いし」

 

 明日からはバカンス……無事に過ごせることを願いつつ、どこかで期待しながら俺は冷蔵庫へマッカンを取りに向かうのだった。

 




……言いたいことは感想欄にどうぞ。ちゃんと返信いたしますので。
突っ込みどころ満載な回となりましたが、笑ってくださる方がいれば嬉しい限りです。

さて、これで第二章は終了です。次からはバカンスと言う名の無人島生活編に突入します。
高円寺と櫛田と絡められたらいいなと思っております。

……無人島編はアニメと小説混ぜようかな。アニメだけだと分かりにくいにも程があるので。
池から言質を取ったのも次の無人島に関係してきます……割とわかりやすかったかもですが。

ではまた次の話で。
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