やはり俺の実力至上主義な青春ラブコメはまちがっている。   作:シェイド

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書くか迷ったんですが、要望多かったので書きました。
基本、八幡の意識はどこか別の場所にあること前提でお読みください。
また、数日書いてなかったからか駄文かつ文章が変だと思われます。指摘してくださると嬉しい。

※大体皆テンションおかしいです。


番外編:夏休み6日目の真実

 早くも夏休みが五日経ち、一年生はあと二日で夏のバカンスに出かけることもあって、多くの生徒が楽しい日々を送っていた。

 この学校に夢と希望を持って入学してきた生徒たちの多くは、学校のシステムに動揺し、混乱し、不安な日々を送ってきたことだろう。

 それから一時的ではあるものの、解放されたようなものなのだ。思わずテンションが上がってしまっても仕方がない。

 

 だが、とある寮の一室は異様な光景に包まれていた。

 ある一人の生徒の部屋に、男子生徒が正座したまま眠っていたり、ベッドに2名の女子生徒が寝ていたりとおかしな光景だ。

 

「ん……」

 

 正座していた男子生徒が外から入ってきた光によって眼を覚ます。

 しかし、見開いた目はどこか焦点があっておらず、心ここにあらずといった様子だ。

 彼は起きたのにもかかわらず正座をやめない。それどころか動く様子すら見せなかった。

 

「ふぁぁぁ…」

 

「いつの間にか眠っちゃってたんだ……って、比企谷君まだ正座してたの?」

 

「……」

 

 ベッドで眠っていた二人の女子生徒が目を覚ます。

 二人とも部屋に襲撃したときに着ていた私服のままであった。

 

「一之瀬さんおはよう……///」

 

「うん、おはよう千尋ちゃん……なんか顔赤いね?具合悪い?」

 

「だ、大丈夫……顔洗ってくるね」

 

「(ど、どうしよう……一之瀬さんと同じベッドで寝ちゃった///さ、最高……!)」

 

 二人の女子生徒は一之瀬帆波と白波千尋。

 昨日、とある件について正座している男子生徒……比企谷を問い詰め、夜遅くまで説教やら拷問やらをしていたうちに眠ってしまったらしい。

 一之瀬のことが好きである白波は、一緒に寝れたことが嬉しかったようだ。

 

 ……その場所がクラスメイトの男子の部屋というのもどうなんだと言いたいが。

 

 二人は顔を洗い、一度部屋を出た。

 昨日のままの恰好なので、シャワー兼着替えを済ませることを優先させたようだ。

 ちなみにだが、未だに比企谷は正座のままである。

 

 

***

 

 

 二人が比企谷の部屋に戻ってくると、先客がいた。

 

「あ、二人ともおはよう!」

 

「おはよう戸塚くん」

 

「もしかして朝食作り終えちゃった?」

 

「うん、簡単なものだけど……」

 

 全員分のごはん、味噌汁、目玉焼き、サラダ、ソーセージ……四人分の食事が机の上に用意されていた。

 彼は戸塚彩加。外見が下手な女の子よりも可愛く、また、嗜好が乙女趣味であることから可愛らしいアイテムを好んで使う。

 そのためか、女子のみで行われていた非公式女子力ランキング第一位に輝いていたりする。

 

「ところでさ、八幡どうしちゃったの?近くで声かけてみたのに全然反応してくれなくて……」

 

「あー……実はね……」

 

 戸塚は比企谷の友人であると思っているし、実際比企谷の初めての友達と言えるだろう。

 そんな友達が、朝から虚ろな目で正座をし続けているのだ。不気味と言うほかない状況である。

 

「昨日、こんな内容のスレッドが更新されてね…」

 

「【一年の男女が図書館でイチャイチャしていた件について】?」

 

 戸塚に、ある学校掲示板の記事を見せる白波。

 内容としてはよくある男女の仲の下種の勘繰りなのだが、途中から話がおかしな方向に進んでしまい、比企谷が8股しているというデマ情報になってしまっていた。

 そして、そのメンバーに……男である戸塚も、入ってしまっていたのだ。

 

「あ、あはは……僕男の子なのに……」

 

「それにしても、比企谷君妙に他クラスの女子生徒と関わってたりするよね」

 

「教室だと本読むか寝たふりしかしてないのに……会話も全部受け身なのにどうやって話してるんだろ……」

 

 普段からやる気を見せず、教室でも静かに気配を消す勢いの比企谷。

 無論、戸塚が朝から話しかけ、そこに一之瀬が加わることで白波も集まり、神崎に柴田、小橋に網倉と集まっていくため結構目立ってしまっているのだが、本人たちは気にした様子がない。

 ……ただし、比企谷は除く。

 

「朝食も冷めちゃうから食べよっか」

 

「そうだね」

 

「おーい、比企谷くーん、朝ごはんだよー」

 

 三人が定位置に着くも、比企谷に動きは見られない。

 まだ目の焦点があっていないようだ。

 

「もう、いい加減起きなよ!」

 

 ついに我慢できなくなった一之瀬が比企谷を横から押した。

 結果、長時間正座をしていた比企谷は……

 

「%あ$samlio3p8m1%$!’&%9qnjd2p!”&#%!?」

 

 言葉にならない叫び声を上げ、床を転げまわることに。

 ……いや、転げまわっているのは足がなくなったと感じているからだろうか。長時間の負担は感覚器官を麻痺させ、痛みや痺れすらも感じない、自分の意思で動かせなくなるただの付随品のような扱いになってしまう。

 

「き、昨日の夜からずっと正座してたから……」

 

「ずっとって……今9時だよ?」

 

「12時間正座って……」

 

 数分の間、言葉にならない絶叫を上げながら床でゴロゴロしていた比企谷であったが、ようやくマシになったのか、はたまたお腹がすいたのかは不明だが、立ち上がろうと両腕で床を押す。

 しかし、両足が全くと言っていいほど言うことを聞かず、上半身が上に上がるのみだった。

 それでも何かしら食べたかったのか、腕のみで下半身を引きずるように移動した比企谷は、なんとかいつもの席につく。

 

「じゃ、じゃあいただきます」

 

「「いただきます」」

 

「……」

 

 三人が食べ始める中、比企谷は動かない。

 いや、動けないと言った方が正しいだろうか。

 両腕で上半身を起こしているため、手が使えず、箸を持てないのだ。

 隣で食べていた戸塚がそれに気づく。

 

「八幡、もしかして座れない?」

 

 ゆっくりと頷く比企谷。

 言語能力を失っているようだ。

 

「じゃあそのままでいてね……はい、アーン」

 

「aー……」

 

 自身の箸を使って比企谷の分のごはんを口に運ぶ戸塚。

 完全に幼児プレイにしか見えなかった。このシーンを他の生徒に見られれば、すぐさま掲示板のネタになり、一躍時の人となることだろう。

 

「こんな八幡新鮮だよ!次は何がいい八幡?」

 

 戸塚からの言葉に、顎でサラダを示す比企谷。

 

「サラダだね。はい、アーン」

 

「あー……」

 

 いつものようにテンションが低く、どちらかと言えばクールである比企谷の赤ちゃんのような姿に、つい微笑んでしまう戸塚。コイツもコイツで普段から大人しい真面目な様子を見せているのだが、今やっていることは第三者の目線から見れば変態プレイに見えなくもない。天使が堕落する原因にならないだろうか?心配である。

 

「わ、私もやっていいかな?」

 

「私も私も!」

 

 そんな戸塚と比企谷のやり取りを見ていた一之瀬と白波も、興味が湧いたのかやらせてほしいと言い出した。

 

「僕たちも朝食食べなきゃだから、交代でやろうよ!」

 

「分かった!」

 

「じゃあ次は私!」

 

 戸塚とは反対側に座っていた白波も自身の箸を使い、比企谷に食べさせる。

 三分の一ほど食べ進めたところで一之瀬へと代わる。

 

「はい、比企谷君。あーん……」

 

「あー……」

 

「ふふっ、なんか可愛いね?」

 

 ……傍から見れば美少女三人が一人の男を養って世話しているようにしか見えない。

 加えて三人とも気づいていないが、自身の使った箸をそのまま比企谷に食べさせるときに使用している。無意識とはいえただのハーレム状態となってしまっていた。

 ……もっとも、比企谷本人は心ここにあらず状態なのであるが。

 

 

***

 

 

 朝食を終えた四人は勉強に移る。

 だが、その前に比企谷を着替えさせようとのことで、一之瀬と白波はリビングで勉強、戸塚が比企谷をシャワーに入れ、着替えさせることとなった。

 比企谷は戸塚からマッサージをしてもらったことで、なんとか立つことが出来るようになっていた。生まれたての小鹿のようにガクガクしているものの、戸塚に支えられて室内を移動する。

 洗面所に着いたものの、比企谷は虚ろな目でどこか遠くを見つめていた。

 

「八幡脱げる?」

 

 フルフルといった感じで顔を横に振る比企谷。

 

「じゃ、じゃあ脱がすね?」

 

 見た目完全に女の子な戸塚が男である比企谷の服を脱がす。

 ……どこのエロゲ―だろうか。

 戸塚が顔を赤くしているところも危険な香りを漂わせている。この二人、正直いつ道を間違えてもおかしくないと思います。

 

「あ、あとは下着……まずは上からだね」

 

 どんどん服を脱がしていく戸塚。

 ついに、最終問題であるパンツのみになった。

 

「えっと、八幡?ぬ、脱がすから……///」

 

 ……結局のところ洗濯することに代わりはないため、最悪パンツ着用でも良かったのかもしれないが、戸塚はその考えに至らなかった。

 故に。

 

「………///」

 

「……」

 

「と、とりあえずシャワー浴びてきてよ!」

 

 風呂場のシャワーをつけ、その中に八幡を押し込む戸塚。

 彼は見てしまったのだ。

 これまで、一緒に風呂に入るような出来事はなかったし、着替えの時もお互いに気にせず(比企谷は興味津々でありながらも勇気が足りなかった)に着替えていたのだ。

 どうしてもその容姿と趣味嗜好から女の子と勘違いされることの多い戸塚。

 だからこそ、比企谷に憧れを抱いた。

 

「八幡、立派だったなぁ……///僕も男らしくなりたいや……」

 

 ……憧れだけだろうか?どことなく顔が赤い戸塚。

 この後、比企谷が長い時間シャワーを頭から被るのみで微動だにしなかったため彼も一緒に入ることになったのだが、中で何が起きたのかは……二人(比企谷は意識消失)しか知らない。

 

 

***

 

 

 風呂から上がったものの一緒に入ることになってしまった戸塚は、着替えるために一度自分の部屋に戻った。

 戸塚に服を着させられた比企谷は、いつものように(ただし足は震えたまま)一之瀬が作成した問題集を取り出し、黙々とし始めた。

 

「比企谷君意識戻ってきた?」

 

「いや、まだ目が虚ろなままだよ」

 

「ってことは習慣になっちゃってるんだ……」

 

「比企谷君が自分から数学を……頑張った甲斐があったや」

 

「(一之瀬さんが教えたところだけを覚えていない比企谷君と、そのことに怒る一之瀬さん……比企谷君は自分から勉強することで少しでも怒られないようにしてるんだろうなぁ…怒る一之瀬さんも天使だったけど!)」

 

 比企谷の数学嫌いは相当なものである。勉強をすること自体はボッチであったことから嫌いではないらしいが、数学だけは別で授業も聞くだけで眠たくなるほど。

 東育の授業はしっかりと聞けば分かりやすいためか、4月以降眠ることはほぼなくなった。しかし、理解しているのとは別で、自力だと赤点スレスレなため、クラスから退学者を出したくない一之瀬に指導されている。

 一之瀬の教え方は上手く、教師いらなくない?となるようなもののはずが……比企谷が一之瀬を基本的には苦手としているのに加え、自分にだけ厳しいと思っているからか覚えが極端に悪いのだ。

 他に戸塚や神崎といった男子にも教えてもらっており、そこで教えられたことは覚えているという……一之瀬が不満に思っても仕方ないかもしれない。

 

 そんなことを繰り返していくうちに、比企谷は自分から進んで数学をすることで少しでもいい印象を植え付けるという策を実行。

 結果として、一之瀬の機嫌は良くなったのだが……嫌いな数学をもはや無意識化でもやろうとしてしまう比企谷は、一体どれ程の恐怖を味わったのだろうか。

 

 ……一之瀬から逃げ出し路地裏に身を潜める比企谷。絶対に見つからないだろうと息を吐いたところで、自身の肩を叩く手が……そのことはまた次の機会に語るとしよう。

 

「よし、午前中は勉強頑張ろう!」

 

「うん!」

 

「……」

 

 少ししてから戸塚も合流し、四人で勉強に勤しむのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ねぇ、比企谷君あんなに数学出来たっけ?」

 

「基礎は完璧みたいだね……」

 

「もしかして、昨日図書館でCクラスの椎名さんに教えてもらったから、とか?」

 

「……そっか、比企谷君は他クラスの女の子から教わったら覚えられるんだ……」

 

「(あ、失敗したかも……ごめん、比企谷君。強く生きてね……)」

 

 

***

 

 

 本日の勉強時間も終わりを告げ、昼食の時間になった。

 四人での食事は外食するよりも作った方が安く済む。基本的にこの部屋を使用する者は自炊が出来るため、自炊が当然なのだ。

 ……朝同様、比企谷が食べさせられたことは言うまでもないだろう。

 

 昼食を終えた後、今日の予定であったケヤキモールでの買い物兼遊びに行くことに。

 

「八幡、歩ける?」

 

 一つ頷く比企谷。

 そうして歩き始めたものの、比企谷はどんどん遅れてしまう。

 

「腕を引っ張った方がいいかな?」

 

「でも、そんなとこ見られたら昨日のスレッドが事実だって思われちゃうよ?」

 

「あ、ならさ……」

 

 何を考えたのか、比企谷を連れて一度部屋に戻る三人。

 ……数十分後。

 

「着替えさせたよ!」

 

「おお~!」

 

「サングラスのおかげで誰か分からないね!」

 

 服を一之瀬と白波が決め(クローゼットを漁られた)、戸塚が着替えさせたことにより、普段の比企谷からは想像もつかないような格好の男子生徒が完成した。

 戸塚が持っていた(スパイ映画の主人公に憧れて秘かに買っていた)サングラスをつければ、確かに誰だか分からない。

 ……頭からアホ毛が飛び出ていることには変わりないため、気づく者は気づきそうだが。

 

「それじゃあ、出発しようか!」

 

「「おー!」」

 

「……」

 

 ちなみにだが、未だ比企谷は虚ろ(ry

 

 

***

 

 

 ケヤキモール。

 東育の敷地内でも一番の施設数を誇り、服から食品、ゲームセンターに映画館と一通りの生活用品と娯楽が集まっている生徒御用達のショッピングモール。

 夏休みということもあり多くの生徒がいるモール内。

 そんな中でも、一際目立つ集団がいた。

 

「一之瀬さん、最初に水着を買いに行くのはどうかな?」

 

「私もまだ買ってないけど……戸塚君は?」

 

「僕もまだだよ。多分八幡も買ってないと思う!」

 

「よし、なら水着売り場から行こうか!」

 

「うん!」

 

 その集団は四人で、見た目だけなら女子3男子1。実情は女子2男子2。

 Bクラスの比企谷グループである。

 ここに神崎、柴田、小橋、網倉が加わると一之瀬グループとなるのだが……その話は今はいいだろう。

 先頭を一之瀬と白波が歩き、後ろを戸塚と比企谷が歩いている。

 ……ただ、後ろの二人は少し違っていた。

 比企谷の手を戸塚が握り、支えながら歩いているのだ。

 傍からただのカップルにしか見えない。まぁ、グラサンかけた年上男性とか弱い年下女性と周囲は認識していたが。

 

 そうして四人が足を運んだのは夏限定の水着ショップ。

 多くの水着を揃えており、ポイントの少ない生徒にも手が届くような商品も置かれている多くの生徒が足を運ぶ人気店だ。

 四人ともBクラスな上に散財をしないタイプだからか、ポイントは豊富にある。

 

「よし、分かれて探そうか」

 

「そうだね」

 

「八幡のはどうする?」

 

 戸塚に寄り掛かる感じで立っている比企谷。

 グラサン越しで分かりづらいものの、意識はないままだ。

 

「それぞれ一つずつ持ち寄って、試着させて決める!」

 

「男の子の水着を……」

 

「二人が良いならそれでいいけど……」

 

「分かった、面白そうだしそうしてみよう!」

 

「「おー!」」

 

「……」

 

 勝手に着る水着を選ばれることになった比企谷。

 ノリノリの三人は意気揚々と自身の水着と比企谷に着させる水着を選びに行くのだった。

 

 

***

 

 

 数分が経ち、それぞれが自身の水着と比企谷に着せたい水着を持って集合していた。

 

「とりあえず試着してから比企谷君の水着を決めようか」

 

「賛成!」

 

「八幡、ここに座っててね?」

 

 頷いた比企谷を見て、三人はそれぞれ試着室に入る。

 しばらくの間一人でボーっと座っていた比企谷だったが、突然立ち上がった。

 

「……どこだここ……」

 

 なんと目を覚ましたのだ!

 ……いや、比企谷の様子が少しおかしい。

 

「夢か……?なら試着室に誰かいる、ってことか?」

 

 どうやら現状を夢と把握したらしい。

 そりゃそうだろう。何せ部屋で正座していたと思えば試着室前の椅子に座っていたのだ。そう思ってしまっても仕方がないかもしれない。

 夢だと思い込んでいるせいか、躊躇なく試着室のカーテンを開ける比企谷。

 

「ん?白波?」

 

「え……きゃああああ!!」

 

「ふげっ!?」

 

 ちょうど下着を脱いだ辺りだった白波は突然の比企谷登場に驚き、全力で試着室から追い出した。

 ……その勢いで対になっている試着室に突撃してしまった比企谷。

 

「痛っ……って一之瀬?」

 

「ひ、比企谷君!?目を覚ましたのって……きゃあああ!!?」

 

「ごはっ!?」

 

 最初、比企谷の目に生気が戻ったことに驚いた一之瀬だったが、自身が着替え中であったことを思い出し本気で殴り飛ばした。

 白波と違い、運動神経は悪くない一之瀬が本気で殴ったのだ。全く構えていなかった比企谷は外に出され、地面に倒れ込んだ。

 

「ど、どうしたの二人とも!?」

 

 比企谷が倒れ込んだところで違う試着室に入っていた戸塚が水着にパーカーの姿で現れた。

 それを見た比企谷は……

 

「彩加はやっぱ天使だな……」

 

 その一言を告げた後、再び意識を失ったのだった。

 一之瀬と白波も水着を着用してから外に出てくる。

 二人とも顔が真っ赤だった。仕方がない、まさか着替え中に比企谷が入ってくるなど思いもしなかったのだ。

 ……その比企谷は地面に倒れ込んでいたのだが。

 

「あ、二人とも似合ってるよ!」

 

「ありがとう……それにしても」

 

「そうだね……比企谷君には責任取ってもらわないと!」

 

「な、なにがあったの?」

 

「「着替え中に試着室の中に入ってこられた」」

 

「え!?は、八幡!そんなことしたらめっ!だよ!」

 

「……」

 

 戸塚が可愛らしく注意するものの、比企谷からの反応はない。

 いや、むくっと起きあがった。

 ……朝同様、目から生気が全くと言っていいほどしていなかったが。

 

「(ふー、どうやら記憶は消せたみたいだね)」

 

「(一之瀬さんの着替え中を見るなんて!全く比企谷君は……って私も見られた!?はわわ、お、男の子に見られた!?)」

 

「……水着は決まったから、比企谷君のを決めようか」

 

「そうしよっか」

 

「……」

 

「じゃあ僕が着替えさせるね」

 

 ……その後、三人がそれぞれ選んできた水着を戸塚によって着せ替えさせられた比企谷だったが、意識が覚醒することなく、水着を公開され、感想を言われ、決められ、全員分の水着を自身の端末で勝手に支払われたのだった。

 ……うん、ドンマイ。

 

 

***

 

 

 水着を買い終えた一行は甘いもの巡りを敢行することにした。

 実はだが、この四人は甘いものが好きである。

 一番の甘党が比企谷であることもどうなんだと言いたくなるが、二番手が一之瀬、戸塚と白波は普通に好きな程度という組み合わせなのだ。

 それ故に甘いものを巡るのはおかしくはないのだが……

 

「今日は比企谷君の奢りだぁ!!」

 

「いえーい!」

 

「いいのかな、八幡こんななのに……」

 

「昨日のスレッドの内容に今日の女の子の着替え中を覗いたこと!許されることじゃないんだよ!」

 

「そうだそうだ!」

 

「確かにそうだけど……」

 

「……」

 

 一之瀬と白波の言葉に反応したのか、無言で端末を差し出す比企谷。

 無意識化でも悪いことをしたと思っているのだろうか。

 

「え、八幡?」

 

「……」

 

「そっか、八幡がいいなら分かったよ」

 

「最初はあのカフェにしよう!」

 

 戸塚も、比企谷自身が良いと言っているし、とのことで折れ、女子二人が先導して良さげな店を突撃してはケーキやらプリンやらを頼んでいく。

 そして毎回あーんをさせられ、それを偶然近くを通りかかった柴田が目撃したことで一騒ぎが起きたのだが、とにもかくにも、比企谷の意識がないうちに三人との買い物兼遊びは終わりを告げたのだった。

 

 

 

 ……一体どうやって戸塚は比企谷と意思疎通を図っていたのだろうか?

 そして、三人とも明日は水着で肌を晒すというのにそんなに食べていいのだろうか?

 

 ……まぁ、本人たちが気にしないならいいのだろう。

 

 

***

 

 

 ~EXTRAステージ~

 

「ねぇ、プリクラ撮らない?」

 

「全員で撮る?」

 

「それはもちろんだけど……個別でってのもどうかな?」

 

「それはいいね。僕は八幡としか撮ったことないからなぁ……」

 

「(一之瀬さんとプリクラ!す、素敵!)」

 

「(比企谷君と二人でってのは初めてだなぁ……)」

 

「まずは四人で撮ろうか」

 

 一つのプリクラに四人で入り、一回写真を作る。

 そこで三人は気づいてしまった。

 

「(比企谷君の意識がないってことは……)」

 

「(何を書いたにしても……)」

 

「(ば、バレない!!)」

 

 以前、放課後に比企谷と二人でプリクラを撮った戸塚は、比企谷が『なんだこの如何にも頭悪い感じは……』と呟いていたことを覚えていた。

 その時は特に落書きも多くすることなく、いたって美化されたツーショット写真のようなものだったが……比企谷が嬉しそうにしていた。

 しかし、戸塚としては色々と文字を入れたかったのが本音であった。というかプリクラを撮りに行く時点でそれが目的なのだ。比企谷がおかしいということをここに記しておく。

 

「……最初は私と千尋ちゃん、戸塚くんと比企谷君でいいかな?」

 

「そのあと私と比企谷君、一之瀬さんと戸塚君で、最後に私と戸塚君、一之瀬さんと比企谷君かな」

 

「うん、分かった」

 

「じゃあそれぞれ撮ろうか。千尋ちゃん、どんな設定で……」

 

「恋人!」

 

「えぇ!?」

 

 女子二人が違うところに入っていくのを確認した戸塚は、比企谷の腕を取ってプリクラを撮り始める。

 撮り終われば楽しみにしていた落書きの時間だ。

 

「えっと、チャリできた、っと……」

 

 定番であるフレーズを書き入れ、夕焼けをイメージさせるような背景に変更して一枚を作る。

 さらに……

 

「……うん、恥ずかしいけど本当のことだしいいよね?」

 

 誰に言うわけでもなく、一人で呟いた戸塚。

 そこには一生友達だよ!大好き!と書かれた、比企谷の腕に抱きつく戸塚の姿。それを色々と弄っているうちに、顔を赤くする戸塚。

 ……この二人、本当に道を誤ってしまわないだろうか?高校一年生の夏でこれなら、来年や再来年が恐ろしいものである。

 

「戸塚くん撮り終わった?」

 

「うん!今終わったよ!」

 

「じゃあ次は私だね!」

 

 一之瀬とのプリクラが手に入ったせいか、テンションの高い白波。

 そして、テンションの高さは時に、自身のやっていることを把握できなくする。

 

「うーん、一枚は握手する感じで、二枚目は……腕に抱きついちゃえ!」

 

 先程一之瀬にやったことをそのまま比企谷にまでした白波。

 ……一枚目には『同士同盟!』、二枚目には『これからも一緒に過ごそうね!』に♡マークをつけたことで、自身の部屋に戻ってからしばらく、顔が熱くて仕方なくなる白波なのだが、今はそこまで考えが至らず、本能のままにプリクラを撮ってしまったのだった。

 

「終わったよ!」

 

「最後は私かぁ……き、緊張してきた」

 

「八幡が凄い遠くを見つめてるから、そこは少し弄った方がいいかも」

 

「分かった!」

 

 最後に一之瀬。

 ……比企谷はずっと一台の機械の中に立ち続けているが、焦点が合っていないので大丈夫なのだろう、多分。

 

「さて、どうしよっかなぁ……」

 

 そう言いつつ、一枚目は普通にツーショットを撮る一之瀬。

 前から色んな人と関わっているというのに、比企谷が『俺はボッチだ』と言い続けているため、友達だということを前面に出したのを一枚撮ろうと決めていたのだ。

 問題は二枚目。

 ……この時、一之瀬のテンションは普段に比べれば高く、それでいて比企谷が特段反応しないせいで、何を書いてもいいと思っていたのだ。

 だから……

 

「い、いいよね……///」

 

 とても人には見せられない、見返すだけで叫びたくなるような、他人に見られでもしたら部屋に引きこもってしまいそうなプリクラが出来てしまったのだ。

 

 全員が撮り終えたことと、そろそろ暗くなるとのことで今日はお開きになった。

 比企谷を支えながら戸塚が歩き、一之瀬と白波が前を歩く。

 ……全員もれなく顔が赤かったのは言うまでもないだろう。

 

 ……ちなみにだが、未d(ry

 

 

***

 

 

 

「……あれ?」

 

 そんな怒涛の一日、比企谷に自我があれば絶対にしないような、させないようなことが起きた夏休み六日目。

 その内容を、比企谷は覚えていなかった……。

 

「……あ、鼻血」

 

 ……断片的には覚えていたようだ。

 全てを思い出さないことを願うしかないだろう……もし思い出せば全員が特大の黒歴史として心の中に抱え、部屋に引きこもることが安易に想像できてしまうのだから……。

 




少しばかり長めになってしまった。
番外編最長ですね……八幡がこの日を覚えていなくて本当に良かった。
覚えていたら大量の鼻血を噴き出していたことでしょうし……。
あ、一之瀬のはわざと伏せました。今のところ公開したくないので。
春休みになぁ……公開したい(笑)
※全員とのプリクラが比企谷の使わない机の引き出しの奥に入れられています。

ちなみに堀北は昨夜のうちに帰りました……。

次は八&帆のチャットかな。


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